映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ゴールデンカムイ

2024年10月30日 | 映画(か行)

北海道に眠る金塊を求めて

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私、本作はアニメで見ていて、原作コミックは読んだことがありません。

それでこの実写版、興味はあったのですが、
どうせストーリーの途中で終わっているので慌ててみなくても良いかな?
と思い、スルーしていました。
するとこの度、この実写版映画の続きが、
WOWOWの連続ドラマで放送されることになりまして・・・。
それなら、やはり始めから見てみましょう、ということで・・・。

 

時は明治末期。
日露戦争の戦いぶりから「不死身の杉本」と呼ばれる杉本佐一(山崎賢人)。
戦争から帰還の後は、一攫千金を夢見て北海道の山奥で砂金掘りをしています。
そんな時に、アイヌ民族から強奪された莫大な金塊の存在を知ります。

 

金塊を奪った「のっぺらぼう」と呼ばれる男は、捕まる直前に金塊を隠し、
その在処を暗号にした入墨を24人の囚人の体に彫り、脱獄させたといいます。
杉本はその金塊を見つけようと、動き始めます。

しかしそんな時、ヒグマが杉本に襲いかかる・・・!
それを救ったたのが、アイヌの少女アシリパ。
彼女は金塊を奪った男に父親を殺されていて、
その仇を討つため、杉本と行動を共にすることに。

莫大な金塊を探し出そうとする者は他にもいて、
大日本帝国陸軍第七師団、鶴見中尉率いる兵団。

そして、もと新選組副長、土方歳三とその一派。

彼らは金塊を手に入れ、どうしても成し遂げたい野望があるのです。

 

当時のアイヌコタンの様子、アイヌの人々の生活の様子なども詳しく描かれていて、
そういうところで人気を得た作品でもありますね。
当時の小樽の街並みなども興味深い。

杉本は戦争でどれだけ敵兵を殺したか分らない。
けれど、根は優しいのです。
アイヌの人たちの生活も尊重していて、
アシリパのこともずっと「アシリパさん」と呼び続けます。
アシリパは「杉本」と呼び捨てなのですが。
無垢な人々を守ろうとする「大人」な杉本の魅力。
いいですよねー。

壮大で、冒険に満ちていて、ちょっぴり残酷、ちょっぴりクレイジー・・・、
本作はそんなストーリーの導入部といっていいでしょう。
巨大なヒグマが襲いかかってくるシーンなどは、
やはりアニメよりも迫力があって、コワイコワイ・・・。

次はじっくりテレビドラマの方を楽しもうと思います。
(Amazon prime videoでも視聴できます。)

 

<WOWOW視聴にて>

「ゴールデンカムイ」

2024年/日本/128分

監督:久保茂昭

原作:野田サトル

出演:山崎賢人、山田杏奈、眞栄田郷敦、矢本悠馬、玉木宏、舘ひろし

冒険ストーリー度★★★★★

満足度★★★★☆


八犬伝

2024年10月29日 | 映画(は行)

虚と実

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山田風太郎の小説「八犬伝」を映画化したものです。
豪華キャストの大作。

おなじみ「南総里見八犬伝」のストーリーを追いながら、
それを描く作者・滝沢馬琴のことが描き出されていきます。

人気作家・滝沢馬琴(役所広司)のもとを、
ときおり友人の絵師・葛飾北斎(内野聖陽)が訪れます。
馬琴は構想中の新作小説について語り始めるのです。

里見家の呪いを解くため、8つの珠を持つ「八犬士」たちが
運命に導かれるように集結し、敵と戦っていく・・・。

そんな中で、小説とはまた別に、馬琴のひとり息子のことや妻のことが描き出されます。
なにしろ「八犬伝」は書き始めてから完結するまでに28年を要しているのです。
その間、もちろん馬琴自身も歳をとるけれど、
妻のこと、息子のことも様子が変わっていきます。

馬琴の書く小説にはまったく興味を示さず、いつも文句ばかりを投げつける妻(寺島しのぶ)。
父を尊敬する真面目な息子(磯村勇斗)。
馬琴は息子を医者にしたいと考えているのですが・・・。

そしてまた、小説の「虚」と「実」についてのことも、掘り下げていきます。
馬琴は勧善懲悪を胸として、「正義は勝つ」結末を常に用意します。

でもある時彼は、鶴屋南北(立川談春)の怪談の舞台を見に行って衝撃を受けるのです。
いつも正しいことだけが勝つというのは、
それこそが「虚」ではないかと、南北は言う。
作中で、南北は舞台の奈落にいる馬琴を終始上から見おろすような形で話をするのです。
それこそが怪談めいているようで、どこか馬琴の平衡感覚を乱すようでもあり、
すごく練られたシーンでしたね。
そこは原作でもそうなっているのかどうか、ちょっと確かめてみたくなりました。

自分はこれまで人に迷惑をかけるでもなく、よい人間であったと思うけれど、
息子のことや自分の目のこと・・・不幸ばかりがつづく。
正しいことが勝つというのはやはり「虚」にしか過ぎないのか・・・、
晩年になってからそのようなことに思いを馳せてしまうのが、
なんとももの悲しいのですが・・・。

そして終盤では、馬琴の視力が失われてしまうのですが、
そんな絶望的状況に陥りながらも、物語を完成させることに執念を燃やす。
これぞ物書きというものでありましょう。

八犬伝の物語パートの方も面白いですよ。
私はやはり冒頭の、伏姫と魔犬・八房の下りが好きです。
八犬士たちの戦うシーンも迫力があってスバラシイ。

堪能しました。

 

<シネマフロンティアにて>

「八犬伝」

2024年/日本/149分

監督・脚本:曽利文彦

原作:山田風太郎

出演:役所広司、内野聖陽、磯村勇斗、寺島しのぶ、黒木華、立川談春、土屋太鳳、
   渡邊圭祐、板垣李光人、水上恒司、河合優実、栗山千明

八犬伝再現度★★★★☆

虚実を考える度★★★★☆

満足度★★★★☆


「日本扇の謎」有栖川有栖

2024年10月28日 | 本(ミステリ)

記憶喪失の青年の帰るところは

 

 

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舞鶴の海辺の町で発見された、記憶喪失の青年。
名前も、出身地も何もかも思い出せない彼の身元を辿る手がかりは、
唯一持っていた一本の「扇」だった……。
そして舞台は京都市内へうつり、謎の青年の周囲で不可解な密室殺人が発生する。
事件とともに忽然と姿を消した彼に疑念が向けられるが……。
動機も犯行方法も不明の難事件

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有栖川有栖さんのおなじみ、火村英生&有栖川有栖のシリーズ最新刊にして、
「ロシア紅茶の謎」から始まる国名シリーズ30年目の作品。
私、有栖川有栖さんについては、デビュー作からしっかりと読み続けているので、
なんにしても感慨深いのであります・・・。
その実、内容はあまり覚えていないのですが・・・。

本作は、国名シリーズでも使っていなかった「日本」を用いた記念的作品。
しかもこの「日本扇の謎」という題名は、エラリー・クイーンの幻の著作名。
実際、エラリー・クイーンにはこのような題名の著作はないそうなのですが・・・。

 

それで、本作の冒頭は、作家・有栖が編集者に依頼されて
「扇」を用いたミステリを書くことになった・・・というところから始まります。

しかしなかなか構想がまとまらず苦戦しているところへ、
火村から誘いがあって、とある屋敷の殺人事件の調査に同行することに。
奇しくもその実際の事件の中に、「扇」が登場するという仕組みです。
なかなか凝っています。

そしてまた、ここに登場するのが、記憶喪失の青年。
彼は自分の名前も出身地も何も覚えていなかったのですが、
持っていた扇が手がかりになり、実家が判明します。

記憶をなくしたまま、その実家に帰った青年。
ところが、青年の居室で不可解な密室殺人事件が起こります。
青年はそれと同時に姿をくらませてしまう。

となれば、青年が犯人なのか?それとも・・・。

 

なんというか最後まで読んでその青年の運命を思うとき、
切なくてしんみりしてしまいます。
作中、実際には彼は行方不明のままで
直接的に姿を現すところは冒頭付近しかありません。
後は登場人物から見た青年のことが語られるのみ。
それでも、なんだか私たちは彼に感情移入して、好きになってしまうようです。
だからこそ、なんとも悲しい幕切れ。

 

いつになく感情を揺さぶられたストーリーでした。

 

「日本扇の謎」有栖川有栖 講談社ノベルス

満足度★★★★☆


鯨の骨

2024年10月26日 | 映画(か行)

カリスマ的女性と群がる者たち

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結婚間近だった恋人と別れたサラリーマン間宮(落合モトキ)。

マッチングアプリで知り合った女子高生(あの)と会うのですが、
その彼女が間宮のアパートで自殺してしまいます。
慌てて死体を山中に埋めようとする間宮でしたが、
気づくと死体が消え失せていました・・・。

まるで夢を見たかのようで、心ここにあらずの状態になってしまった間宮。
やがて間宮は、スマホで撮影した動画を撮影場所に残せるARアプリ「王様の耳はロバの耳(通称ミミ)」で、
死んだ女子高生とウリ二つの“明日香”を発見します。

明日香は「ミミ」内に多くのファンを持つカリスマ的存在。
間宮は彼女の痕跡を追ううちに、
現実と幻想(デジタル世界)の境目を失っていきます・・・。

見ているうちに、なんだか訳が分らなくなってしまいました。
そもそも、この「ミミ」というアプリのことがよく分っていなかった。

つまり、Aと言う人物が、渋谷のハチ公前で何か話をして、その録画をアプリに登録したとします。
次に別の人がハチ公前でアプリを立ち上げてスマホをかざすと、
まるでその場にAがいるように、話を始めると言うわけ。
あ、なるほど・・・。
今になってやっと意味がわかってきた。

明日香はそんな風にして、何十カ所も映像をアップしていて、
明日香のファンはその場所を探すのに夢中になるということなんですね。

ところで、この明日香の投稿が、間宮があの自殺した女と会った日以降途絶えているということが分り、
やはり自分が会っていたのは明日香だったのか?と思う間宮。
しかし、死体が消えた謎は・・・?

デジタルの迷路に迷い込む間宮のストーリー?と思っていたら、
意外にも整合性のつく話に落ち着いていくようです・・・。

分ったような、分らないような・・・。

 

<Amazon prime videoにて>

「鯨の骨」

2023年/日本/88分

監督:大江崇允

脚本:大江崇允、菊池開人

出演:落合モトキ、あの、横田真悠、大西礼芳

 

不可思議度★★★★☆

満足度★★★☆☆


雪の華

2024年10月25日 | 映画(や行)

病気のオンナノコの話

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中島美嘉さんのヒット曲「雪の華」をモチーフとした作品。

余命1年の宣告を受けた美雪(中条あやみ)。
彼女は命のあるうちにフィンランドでオーロラを見ることと、
人生初の恋をするという夢をかなえたいと思います。

そんなある時、美雪はひったくりに遭ったところを悠輔(登坂広臣)という青年に助けられます。
彼はガラス工芸家を目指しつつカフェで働いて、
両親亡き後、弟・妹を1人で養っているのです。
そんな悠輔が、カフェ店の経営危機で100万円を必要としていることを知り、
美雪は100万円を支払うことを条件に、
一ヶ月限定の恋人になってほしいと、悠輔に頼みます。

 

いつも言っているのですが、私は病気の女の子の話が苦手です。
どうしたってお涙ちょうだいで、
最後も想像がついてしまうワンパターンにならざるを得ないので。

そう分っているのに、また見てしまった・・・。
まあ、仕方ない。
中条あやみさんの美雪、カワイイですもんねえ・・・。
余命1年というには元気すぎる気がしましたが・・・。

100万円もらって、恋人のフリをしてほしいと言われたら、やっぱり引き受けますよね。
しかも可愛い子なら。
これがどう見ても自分の好みではない子だったり、
ものすごく年上のバーサンだったりしたらどうなのかな?とは思いました。
プロのホスト根性のある人なら誰でもOKなのかも。
いや、本物のホストなら100万円どころかもっと貢がせて搾り取ることでありましょう。
100万円で済むならラッキー。

スミマセン、どーでも良いこと考えてしまった。
つまり、病気の女の子とは、若きカワイコチャンでなければダメと言うことで、
そうじゃなきゃ話にならないと言う私のひがみ根性の話でありました・・・。

まあつまり、やはり始めからラストが想像ついてしまうし、
まさにその通りのストーリーではありましたが、
それなりのムードはでていたのでヨシとしましょう・・・。

 

それと、フィンランドの寒さなめてるな、と、北海道育ちの私は思ってしまった。

 

<Amazonプライムビデオにて>

「雪の華」

2019年/日本/125分

監督:橋本光二郎

脚本:岡田惠和

出演:中条あやみ、登坂広臣、高岡早紀、浜野謙太、田辺誠一

病気の女の子ストーリー度★★★★☆

満足度★★★☆☆


「詩歌川百景 4」吉田秋生

2024年10月23日 | コミックス

下手な親ならいない方が・・・

 

 

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幼き日に生き別れた兄弟と、突然の再会。

町が登山道整備で揺れるなか、新成人として水神祭りを終えた和樹。
友人の類や類の妹・莉子そして和樹自身も
将来のことを考え始めていたがそんな折、
和樹と守の育ての義母が亡くなりその葬儀の日に現れたのは・・・?

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「詩歌川百景」新刊です。

本作の大きなテーマの一つは、
「血がつながっていても、親子関係はうまくいくわけではないし、
余計やっかいなことになることも多い」
というふうに言えると思います。

気持ちが通じ合わなければ、他人なら別れてそれでけりがつく。
けれど、血のつながりは切っても切れなくて、
いつまでもどこまでも呪いのようにつづいていく・・・。

例えば価値観がまるで違う、妙とその母。
子どもに対する愛情が欠如しているとしか思えない、和樹らの母。

本巻ではそういうことを踏まえつつ、
血のつながりではなくて「縁」があってつながった人々の
絆というか和を改めて考えさせられます。

下手な親ならいない方が良い。
皆で見守りながら子どもを育てて行くという新たな認識が、
世間で広がれば良いなあ・・・と。

 

それで本巻では、母の再婚(何度目でしたっけ?)のため、
離ればなれになってしまった和樹の弟、智樹が登場します。
彼は、母の連れ子として新たな男と共に暮らすことになったのですが、
すぐに母に捨てられて養護施設に入れられてしまった・・・。
それですっかりすさんでしまう。

母と共に暮らすことに危惧を覚えた和樹は、母と共に暮らさない選択をし、
よい養父母を得てとりあえず安全な生活を手に入れていたわけです。
ただし、生まれて間もないもうひとりの弟と共に。

それでどうも智樹は、和樹のことを恨んでいるらしく・・・、
というストーリーに見せかけて、どうもそう単純な話でもなさそう・・・
というのが、なかなかうまいストーリー運びですね。

なんだかんだと言っても、ある時期までは仲良く共に育った兄弟。
悪意ばかりが増幅していくわけでもないのですね・・・。
智樹にはよい「縁」の出会いが訪れなかった、そういうことなのでしょう。

それにしても彼らの母親が酷すぎ!!

 

本作にも、「海街diary」関係者が頻繁に登場。
それにしても、すずちゃんとそのダンナは話の中には出てくるのに、
直接的には登場しないのですね。
著者がそういう方針を貫くことにしたようですね。
残念。
ぜひ見たかったのに~。

 

「詩歌川百景 4」吉田秋生 小学館フラワーコミックス

満足度★★★★☆


まる

2024年10月22日 | 映画(ま行)

誰が描いても同じ?

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荻上直子さん監督作品は多分ほとんど見ているので、本作もその流れで見ました。
もちろん、主演が堂本剛さんというのも大きなポイント。

美大を卒業したもののアートで成功できず、
人気現代芸術家のアシスタントとして働く沢田(堂本剛)。
とうに夢も希望も忘れはて、言われたことを淡々とこなすだけの日々を送っています。
ある日、自転車の事故で腕に怪我をした沢田は、あっさりと職を失うことに。

やむなくコンビニでバイトを始めた沢田。
ある日、部屋に帰ると床に一匹の蟻がいて、その蟻に導かれるようにして思わず描いた○。
とにかくお金になれば良いと、骨董品屋で適当に「○」にサインを入れた絵(?)を売ったのですが、
それが知らぬ間にSNSで拡散。
沢田は本人の預かり知らぬ間に、正体不明の「さわだ」として、
一躍有名人になっていたのでした。

そんなところに、沢田のことを探し当てた者が訪ねて来て、
一枚100万円で買うので、もっと○を描いてほしいと言います。
さてところが、そう言われて意識すると、あの時のような○が描けない・・・。

どんどんユニークな展開になっていきます。

沢田の○は一人歩きして、平和の象徴だとか、無我の境地だとか、
有識者が適当なことを言うのでさらに箔がついていく。

芸術の評価なんてそんなものかも知れません。
でも確かに、蟻の歩みにつられてまったく無心に描いた○は、
何やら美しいのですよね。

芸術の本質に迫りながらも、そう重くはない。
さらりと軽く見られるところが魅力です。

さて、そこに沢田の隣室の住人登場。
こちらは漫画家を目指す横山(綾野剛)ですが、完全にいかれたヤツ。
それを綾野剛さんがやるからもう、これは無敵です。
この2人のやりとりを永遠に見ていたくなります。

あと、沢田の元同僚、格差社会にもの申そうという矢島(吉岡里帆)、
正体不明の謎のおじさん(柄本明)、
コンビニの先輩バイトくん(森崎ウィン)等々、
ユニークな人物が登場。

沢田と特別親しくなるというほどでもないのだけれど、
いろいろな考え方を示唆する大事な人々。
人と仲良くしようと努めているわけでもないのに、
決して孤独ではない沢田の生活環境がなんか良いなあと思います。
そして、そんな中で生きる方向性を見出していく、というのもまた、よきかな。

私は好きです。こういうの。

<TOHOシネマズ札幌にて>

「まる」

2024年/日本/117分

監督・脚本:荻上直子

出演:堂本剛、綾野剛、吉岡里帆、森崎ウィン、戸塚純貴、吉田鋼太郎、柄本明

不可思議度★★★☆☆

芸術を考える度★★★★☆

満足度★★★★★


「ショートケーキ。」 坂木司 

2024年10月21日 | 本(その他)

あなたは誰と食べますか?

 

 

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ショートケーキは祈りのかたち――。
悩んだり立ち止まったり、鬱屈を抱えたりする日常に、
ひとすじの光を見せてくれる甘いもの。

ショートケーキをめぐる、優しく温かな5編の物語。

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坂木司さんの「お菓子」の話と言えば、「和菓子のアン」を思い浮かべますが、
本作はそれとは別、「ショートケーキ」にまつわる連作短編集となっています。

実は今時、和菓子よりもショートケーキの方がうんと身近かもしれません。
日常食べる和菓子と言えば、お饅頭とか大福餅で、
きちんとした和菓子は滅多に食べない・・・というのは私だけかな?

 

そこへ行くとショートケーキは、確かに多くの人の生活の中にあるのではないでしょうか。

それを一緒に食べる家族の形、友達との語らい、
そしてお一人様サイズのショートケーキとなれば1人の思いもあるでしょう。
多くの物語を秘めたお菓子なのかも知れません。

私の心に残ったのは

 

「ままならない」

結婚し、子どもができたのは良いけれど、自分のための時間がとれないママたち。

少しも目が離せない赤子をかかえて、大好きなショートケーキをじっくりと味わう時間もない・・・。
あつこは、似たような思いを抱く2人のママ友と、互助会を結成します。

大変な時期に、助け合うことができる人の輪は貴重ですね。

 

本作、それぞれ前の話に登場した人物が
かぶってほんの少し登場したり話に出てきたりするので、
それを見つけるのも楽しいところです。

 

「ショートケーキ。」 坂木司 文春文庫

満足度★★★.5


劇場版ブルーロック EPISODE凪

2024年10月19日 | 映画(は行)

エゴなサッカーとは?

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週刊少年マガジン連載の人気サッカー漫画を原作とした
テレビアニメ「ブルーロック」の劇場版です。

実は私、「ブルーロック」第2シーズンのエンディングテーマ曲が
Snow Manの「One」という曲であると発表されてから、
慌ててアニメを見始めまして・・・。
特別サッカーファンというわけではないのですが、本作、なかなか面白いのです。

 

ブルーロック(青い監獄)に集められた300人の高校生FW(フォワード)が、
世界一のストライカーを目指して闘うという物語。

これまでなら、チームの絆とかチームワークを重視したストーリーになるであろうところを、
本作は真っ向からそういうものを否定し、個人の圧倒的個性やエゴを重視するのです。

物語本編は、潔(いさぎ)世一というブルーロック入所時には300人のうち最下位に近い成績の持ち主が、
様々な試練を乗り越えつつ幾度も覚醒して、ストライカーとして成長していく様を描きます。

さて本作は、本編とは別に、潔とぶつかりながら成長していく凪誠士郎の視点から描かれています。

凪は、「めんどくさい」が口癖の無気力な高校生。
W杯優勝を夢見る同級生・御影玲王にサッカーの才能を見出され、
彼に誘われるまま、サッカーを始めます。
すると圧倒的なサッカーセンスを発揮。
ブルーロックプロジェクトの招待状が届きます。

本編では語られなかった凪と玲王側の事情が描かれているのが嬉しい。
他にも登場人物は大勢いるのですが、凪は中でも特別ユニークで天才でチャーミング♡なので、
ここでクローズアップされるのも納得。

ということで、本作はやはり「ブルーロック」本編を見てから見るべきです。
いきなりこちらを先に見るとよくわからないと思いますので・・・。

で結局、徹底的にエゴに徹するといいながらも、彼らは友情を結び互いを信頼しつつ己を高めていくわけで・・・。
しっかりスポーツマンシップしてますのでご安心を。

そうそう、ここで登場した玲王のばあやさんというのが、
まるでジブリアニメに出てくる魔女みたいな厳つい婆さんなのが気に入ってしまった!

とりあえず、これで安心して、シーズン2のアニメに入ることができます!!
エンディング曲のところまで、じっくり楽しんでくださいませ。

<WOWOW視聴にて>

「劇場版ブルーロック EPISODE凪」

2024年/日本/91分

監督:石川俊介

原作:金城宗幸・ノ村優介

作画:三宮宏太

出演(声):島崎信長、内田雄馬、興津和幸、浦和希、海渡翼

番外編の意義度★★★★★

凪くんLOVE度★★★★☆

満足度★★★★☆


ほかげ

2024年10月18日 | 映画(は行)

戦後の生活もまた苦渋

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戦後間もない頃。

焼け残った小さな居酒屋に1人住む女(趣里)。
売春を斡旋する男に言われるまま、体を売ってなんとか暮らしていましたが、
とにかく無気力で、男に逆らう気持ちもないようです。
そんな彼女のところへ、食べ物を盗みに来た少年と、
行き場のない復員兵が入り浸るようになり、居着いてしまいます。
やがて復員兵は去り、女は少年との交流を通して、
ほのかな光を見出すのですが・・・。

戦争は終わったものの、誰もがその大きな爪痕に押しつぶされそうになっているのです。
男は生きて帰っては来たものの、
家は焼けて跡形なく、両親もどうなったのかも分らない。
生きる希望も意欲もない。

少年は、つまりは戦災孤児なのでしょう。
生きるために、食べ物を盗んで入手するしかなかった。

そして女は、夫は戦地に行ったまま帰らない。
子どもは幼くして亡くなってしまった。
生きる気力をなくすのも当然ですね。

けれど、少年と暮らすうちに、生きる先に光を見出したように思うのですが・・・。
ままならない事情ができてしまいます。

そして本作にはもうひとり、重要人物がいまして、
これもとある復員兵(森山未來)。
彼は、少年が拾ったという拳銃が入り用で、
少年を連れ出し、ふたりでとある人物の元を訪れます。
彼の戦争体験は悲惨で、そのことをなにかで決着をつけない限り
この先生きていけないというくらいに思い詰めていたのです。

 

終戦間もなくは、平和のありがたみを感じるどころではなく、
多くの人は、亡くなった人、失った生活への思いに、
押しつぶされそうになっていたのかも知れません。
皆、その日食べるものを手に入れるだけで精一杯。

 

私たちはその後の高度成長で、その頃のことをすっかり忘れてしまったかのようです。

戦争で命を失った人を悲惨と思い、戦争はいけないと言うことは普通だけれど、
でも、戦争でもなんとか生き残った人たちも、
亡くなった人たちと変わらず苦しみを背負うようになる、
とも言えるかもしれません。

 

<WOWOW視聴にて>

「ほかげ」

2022年/日本/95分

監督・脚本:塚本晋也

出演:趣里、塚尾桜雅、河野宏紀、利重剛、森山未來

貧困度★★★★☆

悲惨度★★★★☆

満足度★★★☆☆


静かな情熱 エミリ・ディキンスン

2024年10月16日 | 映画(さ行)

深い思索の中で生きた1人の女性

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1800年代を生きたアメリカの女性詩人、エミリ・ディキンスンの生涯を描きます。
正直、私は存じませんでしたが・・・。

エミリ・ディキンスンは、北米の小さな屋敷から出ることなく、
生前にわずか10編ほどの詩を発表したのみで、無名のまま生涯を終えました。
しかしその死後に、1800編もの詩が発見され、
繊細な感性と深い思索の中で綴られた詩の数々は、
後世の芸術家に大きな影響を与えたのです。

本作中のエミリは、気性が荒く、偏屈。
人と気安く打ち解けるような人物ではありません。
若い頃に寄宿学校へ入っていたのですが、
自分の信条と合わずに、戻って来てしまいました。
以後、ほとんど実家に籠もりきり。
思いを寄せる人は既婚者で、もちろん自分の思いを伝えることはしない。
逆に、彼女に思いを寄せる相手もいたのに(希少価値!)
そちらには手ひどく冷たい仕打ち。

ただ夜な夜な詩を書くときのみが彼女の安らぎの時。
しかしその詩は、当時「女が書く詩なんて・・・」と編集者に軽んじられて、
まともな評価を受けることができなかった訳です。

ただ1人の親友は結婚で離れて行ってしまい、
彼女の詩作を許してくれた父も亡くなり・・・、
いよいよ孤独の淵に立つ彼女を、さらにまた難病が襲います。

当時としては結婚もせず実家にいて、
自分のやりたいこと、詩を書くことだけをして生きていたというのは、
女性の生き方としてはまことに希有でありましょう。
つまり実家は並以上には裕福であったということで、
病気のことを除けば実は幸福であったのかも知れません。

彼女を見守る妹や兄、兄嫁もいて、
これで孤独だなどと言ったらバチが当たる。

逆に言うと、こういう境遇だからこそできた多数の詩編。
人生のままならなさは、そのままならなさから生まれる何かもある、
ということですね。

ちょっと退屈な作品かな・・・などと思いながら見ていたのですが、
今思えば、女性の生き方を考える上では意義深い作品のようです。

 

<Amazon prime videoにて>

「静かな情熱 エミリ・ディキンスン」

2016年/イギリス/125分

監督・脚本:テレンス・デイビス

出演:シンシア・ミクソン、ジェニファー・イーリー、キース・キャラダイン、
   ジョディ・メイ、ダンカン・ダフ

頑迷度★★★★☆

満足度★★★☆☆


パリのちいさなオーケストラ

2024年10月15日 | 映画(は行)

音楽を楽しむのに出自は関係ない

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実話を基にしています。

パリ郊外の音楽院でビオラを学ぶザイア。
パリ市内の名門音楽院に最終学年で編入を認められ、そこで指揮者を目指すことになります。
女性指揮者は世界でわずか6%という困難な道のり。
おまけに、クラスに同じく指揮者志望のエリート、ジベールもいます。
ジベールはザイアを移民の子でしかも女のくせに・・・と見下して、
それに同調する者たちと共に、ザイアの指揮の練習をバカにしたり妨害したり・・・。

そんなある時ザイアは、特別授業に来た世界的指揮者、セルジュ・チェリビダッケに気に入られ、
指導を受けるようになり、道がわずかに開き始めます。

パリの名門音楽院、というのがクセモノなのです。
多くはお金持ちの子息・令嬢。
クラシックは富裕層のもの・・・というような
鼻持ちならない特権階級意識で固まっています。
もちろん、そうでない人たちもいますが。
彼らにとっては、移民でしかも田舎町の音楽学校に通っていた子なんて、
ゴミみたいに思っているのです。

ザイアの家は、確かにお金持ちではないけれど、
ご両親はとても音楽が好きのようです。

だからザイアとその双子の妹フェットゥマに音楽を習わせた。
でも決して強要ではなくて、好きならどうぞ、という感じ。
ちなみに弟は音楽ではなくて、水泳に夢中。
そんな普通に愛情深い家族で、でも裕福ではないので、アパート住まい。
近所から騒音の苦情が来るので、
ファットゥマは家ではチェロの練習が思うようにできないでいます。

そして、ザイアは思い立つのです。
自分のオーケストラを持ちたい、と。
庶民の子、エリート校の子、どちらでもOK。
音楽教室の子も入れたりして・・・。
階級も出自も様々、これぞ多様性、今のオーケストラ。

ザイアが、身の回りの音からリズムを拾い上げていくシーンがステキでした。
そしてまたラストシーンが、素晴らしいんですよ。

分る分らないとか、好き嫌いを越えて、心を揺さぶる「音楽」というもの。
その神髄を見たような気がします。
感動!!

<シアターキノにて>

「パリのちいさなオーケストラ」

2022年/フランス/114分

監督・脚本:マリー=カスティーユ・マンション=シャール

出演:ウーラヤ・アマムラ、リナ・エル・アラビ、ニエル・アレストリュプ

音楽の素晴らしさ★★★★★

多様性★★★★☆

満足度★★★★☆


「また会う日まで」池澤夏樹

2024年10月14日 | 本(その他)

海軍軍人で、天文学者で、クリスチャン

 

 

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海軍軍人、天文学者、クリスチャンとして、明治から戦後までを生きた秋吉利雄。
この三つの資質はどのように混じり合い、競い合ったのか。
著者の祖母の兄である大伯父を主人公にした
伝記と日本の近代史を融合した超弩級の歴史小説。

『静かな大地』『ワカタケル』につづく史伝小説で、
円熟した作家の新たな代表作が誕生した。
朝日新聞大好評連載小説の書籍化。

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図書館で貸出を受け取って、そのボリュームに若干たじろぎました。
700ページを超える大作。
ですが、読み応えもたっぷりで、堪能しました。

 

本作の主人公は、著者・池澤夏樹さんの大伯父(お祖母さんのお兄さん)。
海軍軍人、天文学者、クリスチャンとして、
明治から戦後までを生きた秋吉利雄、その人であります。

 

先には、池澤夏樹さんの母方のご先祖を想起した物語「静かな大地」があって、
そちらもボリュームたっぷり、
アイヌの人々のこともおり混ざって素晴らしい一冊でしたが、
こちらも負けず劣らず、1人の人物と家族の歴史、そして日本の歴史を旅することになります。

著者は、
「大伯父の生涯に導かれて日本近代史を書いてしまった。とんでもなく手間がかかった」
と述べています。

まさに、明治~戦後間もなくまでの日本の歴史。
読者はそれを生々しく体験することに。

 

 

秋吉利雄は海軍軍人で、最後は少将。
海軍で、よくあの戦争を生き残ったなあ・・・と思うかも知れませんが、
実は「水路部」という部署にいて、戦闘にはかかわっていないのです。

水路部、というのは主に「海路図」を作成するところ。
また、自船の位置(詳細な緯度・経度)を正確に割り出す方法を考えたり、
世界各地の港の潮位を割り出したりします。

確かに、言われてみれば重要な役割ですが、
こんな仕事があるということを今まで考えたこともなかったかも知れません。
今でこそコンピューターですぐに答えが出ることなのかも知れませんが、
その当時そんなものはありません。
数学、物理学、天文学などの知識が求められます。

 

しかしともあれ海軍なので、訓練やその後若い頃に多くの戦艦に乗り、
世界を渡り歩いたりもしています。
その時にはまだ、戦争状態にはなかったのです。

様々な艦船の話もまあ、興味深くはあるのですが、
身内の驚きの妊娠事情などがあったりもします。
秋吉の妹が未婚で妊娠してしまうのです。
一体どうするのか・・・。
驚きの展開。
これってつまり、池澤夏樹さんの父である作家・福永武彦氏の出生の秘密(!)ということになります。
・・・ここはもちろんフィクションでしょうけれど。
それにしてもドラマチックではあります。

また、秋吉が日食の観測のために、昭和9年に
南洋の島ローソップ島に赴いた話がとても興味深かった。

なんというか、本作、近代史的側面もありながら、博物学でもありますよね。
好きです、こういうの。

 

戦後、軍人だった秋吉は職を失い、
以前アメリカ留学経験のある自立精神旺盛の妻の方が
GHQに取り立てられて、イキイキと仕事をする・・・というあたり、
まあ秋吉氏には気の毒ですが、私は好きな展開です。

秋吉の最初の妻や、幼子たちがあっさりと命を亡くし、去って行くという時代性。
でもそんな中でも、強く前向きに生きていく女性たちの姿も印象的でした。


<図書館蔵書にて>

「また会う日まで」池澤夏樹 朝日新聞出版

満足度★★★★★


彼方の閃光

2024年10月12日 | 映画(か行)

モノクロの美しさ

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生まれて間もなく視力を失い、10歳の時に手術を受けて視力を回復したものの、
色彩を感じることができない、光(眞栄田郷敦)。

20歳の時に、戦後日本を代表する写真家・東松照明の写真に導かれ、長崎を訪れます。
そこで知り合った自称革命家の友部(池内博之)に誘われ、
彼のドキュメンタリー映画制作を手伝うことに。

長崎、そして沖縄の戦争の痕跡をたどることになった光。
心に傷を負いながらたくましく生きる詠美や、
家族を愛する糸洲との出会いがあり、
光は様々なことを学んでいきます。

そして、大きく時を経て、2070年。
71歳の光は、大きく変容した世界で、何を見るのでしょうか・・・?

モノクロの世界で生きている光の視点に合わせて、
本作、ほとんどがモノクロで表わされています。
けれど、このモノクロ画面がとてもみずみずしくて美しく、魅了されました。
光は、色彩を感じられないにもかかわらず、美術を学んでいるのです。
10歳で目が見えるようになったときに、
世界の美しさによほど心打たれたのかも知れませんね。
そして今もそのモノクロの世界に「美」を見出そうとしている。
だからこそ、本作のモノクロ映像も美しいのかも知れません。

が、さすがに美大に入ると若干行き詰まりを感じてもいた、光。
ある時に見た東松照明の、海上に浮かぶ雲の写真に心打たれてしまう。
そして、関連する「戦争」のことにも無関心ではいられない。

結局戦争とは何なのか。
どうして人類は戦争をやめられないのか。

そんな問いを繰り返しながら、年を重ね老いていく光の未来とは・・・?

 

荒廃した世界で、光が取り戻すものの意味はいったい何なのだろうと今も考えているのですが・・・。
そこにはまだ希望があるということなのかな?
そうだと良いのですが。

 

<Amazon prime videoにて>

「彼方の閃光」

2022年/日本/169分

監督・原作:半野喜弘

出演:眞栄田郷敦、池内博之、Awich、尚玄、加藤雅也

 

モノクロの美しさ★★★★☆

戦争を考える度★★★★★

満足度★★★.5


窓ぎわのトットちゃん

2024年10月11日 | 映画(ま行)

こんな時代にもあった、個性を尊重する教育

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黒柳徹子さんが自身の子供時代を綴った往年のベストセラー
「窓ぎわのトットちゃん」のアニメーション映画化です。

好奇心旺盛でお話好きな小学生1年のトットちゃん。
あまりにも落ち着きがなくて教師の手に負えないということで、
学校を退学させられてしまいます。
そこで、東京、自由が丘にあるトモエ学園に通うことに。

トモエ学園は、小林校長先生の元、子どもの自主性を大切にする教育を展開しています。
何より、教室が廃車となった電車というのがトットちゃんは大いに気に入って、
毎日元気に通い始め、そこでのびのびと成長していきます。

今なら、トットちゃんは発達障害のナントカという症状名を付けられていたかも知れません。
けれどここでは「ちょっと変わった子ども」。

トモエ学園は、他にも事情のある子どもたちも多く、
それぞれの個性を尊重して1人1人の興味ややりたいことに意義を認めてくれるのです。
こういう校風が、子どもたちの間でも互いの個性を認め、
尊重し合い助け合うことにつながっていくのでしょう。

トットちゃんのお父さんは、オーケストラのコンサートマスター。
一般的な親ならば、トットちゃんのような子どもに対して、
叱ったり諫めたりするかも知れません。

けれどもここの両親もまた、子どもの個性を大切に思い尊重するという人たち。
学校がトットちゃんを受け入れられないのなら、
受け入れてくれる学校を探しましょう、ということですね。

そしてトットちゃんもいつまでもただの落ち着きのない子どもではなくて、
命のこととか大人の世界の事情とか、少しずつ学んで成長していきます。

しかし、時代は次第に軍国主義の波に飲み込まれていきます・・・。
トットちゃんのお父さんにとっても理不尽につらいことが・・・。

今、改めてアニメ化というのにも意義のある作品だと思います。

<WOWOW視聴にて>

「窓ぎわのトットちゃん」

2023年/日本/114分

監督:八鍬新之介

原作:黒柳徹子

出演(声):大野りりあな、小栗旬、杏、滝沢カレン、役所広司

教育のあり方を考える度★★★★☆

満足度★★★★☆