映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「角(つの)」 ヒキタ クニオ

2008年08月31日 | 本(その他)
角 (光文社文庫 ひ 13-2)
ヒキタ クニオ
光文社

このアイテムの詳細を見る

ある朝目覚めると、麻起子の頭に角が生えていた。
そんなところからこの物語は始まります。
さて、大変。
しかし、それによって何か特別なことができるようになるわけでもなく、麻起子は、とりあえず髪の毛を角に巻きつけ、変わったヘアスタイルという風なだけにして、日常の生活を続けるのです。

さて、彼女の仕事は出版社の校閲。
校正というのは字句の間違いを正す仕事ですが、校閲というのは、本文中の解説を借りれば・・・

間違ってはいないけれど、単行本の中の感じを統一するようなものまで含まれている。
例えば、『怖い』という文字と『恐い』という文字は同じような使われ方をするが、
それをどちらかの文字に統一する、という提案を作家に対して行う。

と、いうようなことだそうで・・・。
なかなか神経を使う大変な仕事のようですね。
というか、私は本の編集にこのような仕事があるということを、あまりよく分かっていなかった。
この作品中では、この校閲者と作家のやり取りで、もめるようなこともある・・・。

麻起子は保田という小説家の担当でもあるのですが、この作家の作品は結構気に入っている。
しかし、本人は自尊心が強くいつも話がこじれるので苦手。
彼女の角のことは、はじめ恋人の山平にだけ打ち明けていたのですが、
ある事件のためやむなく、編集部の何人かと、この保田にだけ明かすことになった。
ところが、そんなとき、保田から愛の告白を受ける。
山平と保田の間で揺れる麻起子。このあたりの心情が結構リアルです。
つい、二人を比べてしまい、どちらかを優位に立たせようと思っている自分に気付く、というように自己分析するあたり・・・。

結局この物語で「角」は何であったのか。
彼女は、繰り返される日常に閉塞感を覚えていたのですね。
仕事にも、付き合って長い山平との関係にも。
角は、彼女の感情によって、ほんのり暖かくなったり、すっと冷えたり、
それ以上の働きは特に何もしないのです。
しかし、ほんの少しずつ日常が変化していく。
何かそのような変化を呼ぶきっかけ・・・、そのようなもの。

ラストに思いがけない出来事が一つあります。
まさかそういうストーリーだとは思わなかった・・・。
けれど、それは当然の結果なのかも知れない、
そこで、振り返ってみれば、やはり納得の結果だったりするわけです。

それは悲しい作家の性をあらわしているのですが、
もしかすると、著者ヒキタクニオの心境を語るものなのかも知れません。

ちょっと風変わりで、ひきつけられる作品でした。

満足度★★★★

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

ぼくセザール10歳半1m39cm

2008年08月30日 | 映画(は行)
ぼくセザール10歳半 1m39cm スペシャル・エディション

アスミック

このアイテムの詳細を見る

主人公の少年セザールは、タイトルそのまま、10歳半、身長1m39cm。
やや太めで自分にあまり自信がなく引っ込み思案。
この映画は、終始カメラをこの少年の視点と同じ1m39cmに据えて撮影しています。
だから、天井は高いし、大人たちをみな下から見上げるアングルになる。
つまり、巨人たちから見下ろされているよう。
ちょっと威圧感を感じます。
満員電車に乗るシーンなどは本当に、ちょっと怖いですね。
そんな子供からの目線とセザールのモノローグで、自分も子供になったような、なんだか世界が新鮮な感じがします。

さて、セザールの両親は、何をしているかよく分からないパパと、今は産休中のママ。
親友モルガンはちょっぴり大人っぽくて、セザールは尊敬している。
モルガンの父はロンドンに住んでいるフィッツパトリックという人、わかっているのはそれだけ。
会ったこともない。
セザールの憧れは、同じクラスのサラというかわいい子。
でもセザールは自分に自信がなくて、とても無理・・・と、初めからあきらめ気味。
彼女の両親は離婚していて、時々妙に明るい彼女のパパが会いに来る。
フランスの学校事情や、家庭事情が伺われて、そういう点でも、なんだか興味深いのです。
子供は無邪気なだけではなくて、そういう大人たちのなかなか大変な状況もちゃんとわかっている・・・、そんな視点ですね。

さて、この3人は仲良しトリオとなりまして、ある日、3人だけでロンドンへ行ってモルガンのお父さんを探そうということになった。
お金も犯罪スレスレ(?)で工面して、親をだまし・・・。
フランス~イギリス間は列車一本ですからね。
行こうと思えば速いですね。
でも、男の子二人は英語も話せないし、電話帳で調べても、同じ名前の人はどっさりいる・・・。
途方にくれる3人。
サラとははぐれてしまうし、あたりも暗くなってきた・・・。絶体絶命!

この冒険劇は思いがけない救いの手があって、成功するのですが、
このことで、彼らは大きく成長する。
セザールはちょっぴり自信がついて大人に近づきます。
そして、彼らの周りの大人たちも、ちょっぴり、これまでの生活を反省。
なんだかささやかな幸せって感じのするエンディング。
いいですね、こういうの。

冒頭、お葬式のシーンから始まりますが、上空から人々を見下ろすカメラワーク。
雨が降ってきて、黒い傘が一つまた一つと開いていく。
ほとんど黒い傘が画面を埋め尽くして、最後に赤い傘がひらく。
・・・すごくおしゃれな映像です。
かと思えば、エンディングは、今度は色とりどりの風船が画面を埋めていく。
これがラストの幸福感とマッチしてるんですよ、すごく。
さすが、フランス人のセンス。納得してしまいました・・・。

2003年/フランス/99分
監督:リシャール・ベリ
出演:ジュール・シトリュック、ジョセフィーヌ・ベリ、マボ・クヤチ、マリア・デ・メディロス

 

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

みんな一緒にバギーに乗って

2008年08月29日 | 本(その他)
みんな一緒にバギーに乗って (光文社文庫 か 46-1)
川端 裕人
光文社

このアイテムの詳細を見る

この本の主人公は、保育士。
大学を卒業したばかりの男性。
そういえば、学校の先生が主人公の話はたくさんありますが、今まで男性保育士の話は、あまりなかったですね。
そもそも、まだ実際少ないですし。
我が家の娘二人もかつては保育園にお世話になったので、保育園の話は大変身近です。
学園ものだと、生徒側の視点もだいぶ入るのですが、こればっかりは、子どもの目線はでてきません。
あくまでも、保育士として見た子どもの様子が生き生きと描かれています。
さて、男性保育士。
・・・この本では、ちょっと、周りから偏見で見られるというようなところがありました。男のくせに・・・とか、女っぽいんじゃないか・・・、とか。
私は特に感じないですが。
ジェンダーフリーの時代ですからね、男だ女だなんていっていられない。
子どもが好きかどうか、やりがいが感じられるかどうか、問題はそこだけなんじゃないかなあ。
作品中にもありますが、たとえば女性の保育士なら、お母さん役、お母さんの代わり、そういった気持ちで子どもと接するのは、まあ、納得できますよね。
では、男性保育士はお父さんかというと、そうではないのじゃないかと。
しいて言うなら、お兄さん。
そういう役割になるのではないかと言っています。
あたっているような気がしました。

さて、この本は、新米の保育士として悪戦苦闘する田村竜太君をはじめ、その他の保育士さんの話も含めた短篇の連作となっています。
今の子育て現場の抱える問題も含めながら、楽しく読めるストーリーです。
モンスター・ペアレントも登場します。
でも、どんな苦労も、子どもの笑顔でむくわれる・・・。
そういう点ではちょっとうらやましい職業なのでした。

満足度★★★

コメント   トラックバック (1)
この記事をはてなブックマークに追加

イースタン・プロミス

2008年08月28日 | 映画(あ行)

バイオレンス・アクション・・・とでも言いましょうか、普段私の観るジャンルではないですね。
そこをあえてなぜ?かといえば、やはり、ヴィゴ・モーテンセンなんですねえ・・・。
でも、同じ監督と組んだ前作「ヒストリー・オブ・バイオレンス」は、まだ見ていないのですが・・・。

これはロンドンに暗躍するロシアン・マフィアの犯罪を描いたもの。
R18になっていたんですが・・・見て、そのわけはよく分かりました。
いきなり、床屋のいすに座っている男ののどをかき切るところから始まるんですよ・・・。
スウィニー・トッドじゃないってば・・・。
他にも、正視にたえられず、視線をはずしてしまったシーンもいくつか・・・。

病院の助産婦をしているアンナは、駆け込み出産で亡くなった少女の日記を手に入れます。
何か、身元がわかることが書かれていないかと、見るのですが、それはロシア語。
そこにはさんであった、ロシアンレストランのカードの店を訪ねてみるのですが・・・。実はそこが、ロシアン・マフィアのアジト。
ボスの息子キリルがヴァンサン・カッセルで、
こいつが、威厳のある父親に押さえつけられ、
軽薄、残忍、情緒不安定、というどうにもならない2世によくある設定。
そのチンピラ息子の運転手というか、用心棒というか、
とにかくなんにでも使われる役なのが、ニコライすなわちヴィゴ・モーテンセンなんですね。
徹底してダークなイメージ。

しかし彼は、亡くなった少女と、生まれた赤ん坊を気にして、店に何度か訪れるアンナには、どこか優しい気配も見せる・・・。
この人は、きっと何かのワケアリで、このマフィアファミリーに接近しているのでは・・・、と、まあ、それくらいは想像がついたんですけどね。

すごいのは、サウナの中でのヴィゴ・モーテンセンの全裸の死闘シーン。
敵は武装した二人。
彼は全裸、無論武器なし。
結構長いこのシーンは、目をそらさずに見てしまいましたが・・・。
はあ、強烈。
キリルとニコライの関係というのも、実に怪しい・・・。
う~む・・・。みだらな想像をしてしまう・・・。

アンナは正義感があって結構勇敢ですが、でも、踏み込んでいい部分とそうでない部分、良くわかっている。
結局、普通の市民なんですが、その辺のポジションがリアルでいい。
で、この映画は、実はこのあとが解決編?というあたりで終わっているんですね。
えっ、これでお終い?と思ったのですが、終わっちゃいました。
とりあえず、赤ちゃん事件だけがケリがついた形で・・・。
一応、ニコライの正体も明かされます。

いやはや・・・、やはり、あまりお近づきしたくない、ジャンルかなあ・・・。
かっこよかったですけどね。
やっぱり、アラゴルンのヴィゴ・モーテンセンがいいです・・・。

2007年/イギリス・カナダ・アメリカ
監督:デビッド・クローネンバーグ
出演:ヴィゴ・モーテンセン、ナオミ・ワッツ、ヴァンサン・カッセル、アーミン・ミューラー=スタール
「イースタン・プロミス」公式サイト

コメント (2)   トラックバック (1)
この記事をはてなブックマークに追加

この森で、天使はバスを降りた

2008年08月26日 | 映画(か行)
この森で、天使はバスを降りた

ワーナー・ホーム・ビデオ

このアイテムの詳細を見る

(DVD)
まさに、ヒューマンドラマです。
ドラマとはこうあるべき、の見本みたいな。
主人公は5年の刑期を終え、出所した若い女性パーシー。
メイン州のさびれた町に降り立ちました。
そこで、ハナの営む小さなレストラン”スピットファイア・グリル”に職を得ます。
小さな町なので、よそ者でしかも前科ものということで、なかなか町の人に溶け込めません。
彼女自身も、ついとげとげしい態度になってしまっていたのですが、それでも少しずつなじんでいきます。

彼女の犯した罪は傷害致死ということなのですが、
一体誰をどうしてそのような状況になってしまったのか、
それは最後に明かされます。
これには大変痛ましい事情があって、単に殺人犯と、呼べるものではないんですね。

この作品ではいくつかの気になる事象が同時進行していくのです。
レストランの裏庭に、缶詰など食料を置いておくと、夜中に誰かが人知れず持っていく、という謎。
ハナの甥、ネイハムの高慢な性格。初めから、パーシーに敵意を抱いている・・・いやな予感。
店を売りに出すためにはじめた作文コンクールの行方は?
ハナの一人息子イーライは、ベトナム戦争で戦死したというのだが・・・?

これらが、終盤一気にからみあって謎がとけていく、ここが見事です。
しかし、そのためには一つの大きな犠牲が必要でした・・・。
まさか、このようなラストとは思わなかったので、これもまたショック。
とにかくいろいろな面で揺さぶられてしまう作品なんですね。

こんな中で、ネイハムの妻が、いつもネイハムから無能扱いされているけれども、
レストランを手伝うようになり、自信を取り戻していく。
ここのところはとても好きでした。
そして、パーシーがつらい出来事を乗り越えて、前向きに誠実に生きようとするその姿勢も、もちろん。

また、ここに出てきた「作文コンクール」というのには興味を惹かれます。
たとえば、売りたい店、売りたい家があるとして、
でもなかなか買い手が見つからない。
そんなときに、「作文コンクール」として、作文を募集するのです。
最優秀者には賞品として無料でその店を譲る。
ここで、ミソなのは、応募料金として、一人につきいくらか必ず出してもらうということ。
この映画では100ドルでした。
およそ1万円くらい、とすれば確かに高いですけれど、
うまくすればそれだけで店が一軒手に入っちゃうということなので、応募する人は多いはず。
人数分の儲けはあるわけです。
すごく面白いシステムだと思いました。
日本ではあまり聞いたことがありませんね?

1996年/アメリカ/116分
監督:リー・デイヴィッド・ズロートフ
出演:アリソン・エリオット、エレン・バースティン、マーシャ・ゲイハーデン、ウィル・パットマン

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

空の中

2008年08月25日 | 本(SF・ファンタジー)
空の中 (角川文庫 あ 48-1)
有川 浩
角川グループパブリッシング

このアイテムの詳細を見る

この本は、有川 浩、まだ初期の作品ですね。
そのせいか、なんだかまだ完成されていない気がしました。
空中2万メートルに、謎の巨大生物「白鯨」がいる。
その単体生物は、人類の歴史よりはるか以前からそこにいるらしい。
自衛隊機が立て続けにその生物と接触し、事故を起したことで、ようやくその存在が発見された・・・、と、この想定はとても面白かった。

これって、なんだか、少し前に読んだ「深海のYrr」に似ています。
そちらは海底で独自の進化を経て、人類とは全く別の「意識」を持つようになった、これも単体生物で、時には無数に分裂も・・・。
海と空の違いはあれど、良く似ている。
しかし、スケールが、やはりあちらの方がすごいですけど・・・。

ここには二組の男女が主な登場人物となっていまして、
片や、女性パイロットと航空技師。
こちらが、「白鯨」本体であるディックと交信。

もう一方が、この「白鯨」から剥がれ落ちた小さな個体フェイクを拾い、世話をする高校生の男女。
彼らがまた、反発しあいながらも、お互い意識して、ベタ甘な関係に・・・
と、まあ、それはいつものことなのでいいのです。
そこが、この著者のいいところなわけで・・・。

そして、登場人物の論議の応酬。
まあ、これもいつものことではありますね。
でも、ここに出てくる瞬という少年は、主人公に据えるにはあまりにも未熟。
私はもともと、こんな論議のための論議は苦手ですけどね。
この子が、未熟な青臭い論理を抱えて、そのまま行動しちゃうところが、なんだか気になってしまって・・・。
その、成長を描いた、なんていったら、怒ります。
初めから、間違いと自分でわかっているのだから、そこで正せば良し。
これを最後まで引っ張るのはどう考えても不自然。
論理以前の問題のような気がする・・・。

材料が良かっただけに、この展開が、なんだか残念でした。

満足度★★★

 

 

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝

2008年08月24日 | 映画(は行)

おなじみハムナプトラ第3弾です。
今回は中国が舞台、というのは北京オリンピックもあって、タイミングは良かったですね。
中国皇帝のミイラが、2000年の時を越えてよみがえる。インディーも中国までは来なかったので、ちょっと目新しい感じ。
あの、兵馬俑がよみがえって動き出す、というのはよかったなあ。歴史のロマンでもありますね。
皇帝のミイラというのがジェット・リーだもんね。なんて贅沢な使い方。
動くたびに、粘土のかけらがぱらぱらおちてくるミイラというのも面白い。
3つの頭の龍に変身というのも意表を突くね。
こんなユニークな役なら、やっぱり受けてみたいと思うでしょう。
ついでにワイア・アクションでも入れれば、中国感たっぷりだったかも・・・。


それで、どうしても今回はインディー・ジョーンズと比べてしまうね。
どっちも久しぶりの続編なのに、なぜかほぼ同時になってしまった。
しかも、今回、どっちも、ジュニアが活躍するんですね。
こちらのジュニア、アレックス役は新人のルーク・フォード。
ちょっと地味な感じだけど、でも、なるほどブレンダン・フレイザーの息子っていう感じはしますね。
これがまた、勝手に大学を辞めて発掘調査に加わり、皇帝のミイラを発見したという。
そりゃもう、無鉄砲なところそっくりなんだから、文句はいえないよね。
前作からの流れを見ても、もともと息のあった家族っぽいよね。
でも、作品中は、父と息子が反目し合っていたことになってる。
・・・アメリカ映画だからね。
父子の反目は絶対必要な要素のわけ。
確かに初めから浜口親子みたいに息があって仲良かったらキモチワルイ。
私が好きなのはこれまた、いつも登場するジョナサン。
この、ぜんぜん頼りにならなさそうで意外と役に立つ、転んでもただでは起きないこの性格。好きだなあ・・・。
今回はなんと、上海でナイトクラブを経営していたりする。
結構堅実なやり手でもあったのか・・・。
上海のクラブですか・・・。ロシア亡命貴族の未亡人をマダムにして「夢のバー」を作ったのでは・・・。
こらこら、その話は、「上海の伯爵夫人」を見た人にしか通じないってば。


雪の山中で雪男が登場するのも、良かったなあ。
うん、ちょっと意表をつかれた感じで、しかもこれが味方となってくれたのがすごく頼もしかった。
雪崩に巻き込まれる寸前、雪男たちがオコーネルファミリーを覆って守るなんてシーンがね、良くできてるよね。
ついでにパンダも出てくればもっとよかったなあ・・・。
カンフー・パンダじゃありませんっ!

とにかく過不足なく楽しめる作品ということで・・・。

2008年/アメリカ/112分
監督:ロブ・コーエン
出演:ブレンダン・フレイザー、ジェット・リー、ルーク・フォード、ジョン・ハナ、イザベラ・リョン
「ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝」公式サイト

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

上海の伯爵夫人

2008年08月23日 | 映画(さ行)

(DVD)

1936年上海とくれば、イヤでもドラマチックな展開が予想されますね。
日中、そして、欧米各国の人々の政治的思惑が入り乱れた魔都。

主人公ソフィアは、ロシアの亡命貴族の未亡人。
貴族といっても名ばかり。
国を追われ、わずかな財産もすぐに使い果たし、
けれどプライドばかり高くて働くすべを知らない、という最悪な状況。
ベッドも交代で使わなければならない、というようなぎりぎりの生活。
ソフィアは、娘カティアと、義父母や義妹たちの一家を養うため、
ただ一人で、クラブのホステスをして稼がなければならない。
そのくせ、一家は、卑しい仕事といって、彼女を蔑む。
冒頭のこの辺で、私は相当むかついてしまったのですが・・・。

そのクラブで、ソフィアは盲目の元アメリカ外交官ジャクソンと出会います。
彼は事故で失明したばかりでなく、家族も失い、厭世的。
自分の理想のバーをつくろうとしている。
ジャクソンはソフィアこそ理想の女性と思い定め、
彼女を招いて、バー「白い伯爵夫人」を開くのです。

さて、そこに謎の日本人、マツダ登場。
これが真田広之。別に悪人じゃないんですけどね。
彼は大日本帝国の発展を夢見ている・・・。
詳しい正体は出てこないのですが、かなり日本外交の中心的人物であるらしい・・・。

ジャクソンは自分だけの小さな世界をバーの中に作ろうとした。
わざと様々な思想の人々を引き入れて、政治的緊張を作ったりもして・・・。
しかし、マツダはいうのです。
もっと大きなカンバスに絵を描いてみたくはないかと。
マツダは実世界を動かしてみたいという野望に燃えているわけですね。
この二人の対比がみせどころなのであります。
真田広之も国際俳優として、がんばってくれています。

いよいよ、上海に日本軍が突入、軍隊と逃げ惑う人々で、町は大混乱。
ところがですよ、なんと、例の一家はソフィアだけを置き去りに、
娘のカティアまで引き連れて自分たちだけ香港へ脱出しようとしていた!!!
むむむ、許せんっ!!!
その、費用も、ソフィアが工面したんですよ!
私はもう感情移入しまくりで、頼むから悲劇で終わらないで・・・と、思わず祈ってしまいました。

このロシア亡命貴族の他に、ヨーロッパの難を逃れたユダヤ人も登場します。
上海は流浪の人々の行き着くところでもあるのですねえ・・・。
しかし、わずかではありますが、希望も見出せるこの映画のラストには、満足しました。

脚本はカズオ・イシグロ。
この映画のためのオリジナルだそうです。
さすが、いい脚本だなあ・・・。

2005年/イギリス・アメリカ・ドイツ・中国/135分
監督:ジェームズ・アイヴォリー
出演:レイフ・ファインズ、ナターシャ・リチャードソン、真田広之、バネッサ・レッドブレイヴ

コメント (4)
この記事をはてなブックマークに追加

「ハリー・ポッターと死の秘宝 上・下」 J.K.ローリング  

2008年08月22日 | 本(SF・ファンタジー)

「ハリー・ポッターと死の秘宝 上・下」 J.K.ローリング  松岡佑子訳 静山社

さて、とうとうというか、やっとというか、ハリーポッターの最終巻ですね。
この本、発売日に手元に届いていたのですが、なんだかおっくうで、今やっと読んだんですよ・・・。
確かに、長いですもんね。
そうなんです、もう飽きた・・・というところもあるし、そもそも、前にどんな風に終わったのだったかも、あんまりおぼえていなかった。
・・・ところがですよ、読み始めたらやっぱり面白くて、結構ハマりました!
最後にはやはり、「例のあの人」との対決になるわけなんですね?
そうなんですが、それよりも、もっと、ハリーを取り巻く人々のいろいろな過去などの話がとても胸に迫りました。
そうですね、これぞ長い物語の集大成という感じで、これまでのいろいろなエピソードがすべて関連付けられ、大混乱と大団円へと突き進む。
まずはハリーの最も尊敬するダンブルドアですね。
ずっと、誰もが尊敬する高潔な人物として書かれていたように思うのですが、実のところ若い頃は権力欲にまみれた野心的な人物だったようだ・・・。
ダンブルドアは、「死の秘宝」を追い求めていたというのですね。
それはおとぎ話のようにして語られる三つの宝。
「ニワトコの杖」、「蘇りの石」、「透明マント」。
なんとその一つ、透明マントはずっと始めの方からハリーが持っていた。
ハリーは分霊箱を探しつつ、これら三つの秘宝の謎も解かなければならない・・・。
私が驚いたのはスネイプですね。
ここはネタばらしになるのであまり詳しく言いたくないけれど、
訳者の後書きにもあるとおり、最終章近くではなんとも切ないスネイプの過去が語られる。まさに圧巻です。
ここを描きたいために、著者はここまでしぶとく嫌味に彼を描き続けていたのか・・・。
スネイプがらみで以前から話は出ていましたが、亡くなったハリーの父親というのは、実は高慢ちきでいやな奴だった・・・というのも、ここに来てますます納得させられる部分ですね・・・。
こうしてみると、このストーリーは、人間の二面性を描いている、と言えなくもないのでは?
そうだねえ、魔法使いもマグルも同じ人間と考えてよければね・・・。
人は一方向から見ただけではわからない。とても複雑な生き物だってことだね。
でも、それは「一つの形」を別の方向から見て、違って見える、ってことだけではないのじゃないかな?
というと?
人はもともと「一つの形」なのではなくて、それ自体が変化するってことなんだと思う。
あー、たとえばダンブルドアは、若い頃はそうした野心家だったかも知れないけれど、年齢を重ねていくうちに、人間的にも成長して、周りの人たちの信頼を勝ち得たということだったり・・・。
あの、どうにもならない、落ちこぼれのネビルの成長のすばらしいこと!
それを言ったら、一番すごいのはやはりハリーですよ。
最後の「例のあの人」との対決シーン。

「誰も手を出さないでくれ」
ハリーが大声で言った。
水を打ったような静けさの中で、その声はトランペットのように鳴り響いた。
「こうでなければならない。僕でなければならないんだ」

・・・ここでは思わず胸が熱くなりましたね。
あの、ロンとハーマイオニーの助けでようやくここまで来たハリーが、
なんとりりしく、自信に満ちていることか。
数々の苦難、疑心暗鬼、自信喪失・・・。
すべてはここまで大きくなるための糧であったと、ようやく納得できるわけです。
映画的だなあ・・・。
小説中では7年。実世界では10年を費やしたからね・・・。
だから、人間ってどのようにでもなれるってことなんだと思う。
いい方に進むために必要なのは自身の強い意志と、人々の理解、友情・・・。
強い意志だけではなかなかつらい、というのはスネイプの例なんだろうね。

この本では、一番最後にうれしいおまけで19年後の彼らの世界が描かれています。
9月1日、新学期を迎える駅。9と4分の3番線。
ハリーやロンの一家が子どもたちをホグワーツに送り出すシーン。
・・・それぞれの妻は誰?
それは自分で確かめましょう!

結局、この本はやっぱり途中で飽きたからもうやめた、というのは絶対にダメだね。
最後まで読まないと、読んだ意味がない、そういう物語。
はい、著者が適当に話を引き伸ばしていたのではなくて、
初めから、きちんと結論が頭にあって書きつないでいた、ということをやっと理解しましたっ!

満足度★★★★★

 

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

「妃は船を沈める」 有栖川有栖

2008年08月21日 | 本(ミステリ)

「妃は船を沈める」 有栖川有栖 光文社

アリスと火村准教授のシリーズです。
あれ、助教授じゃなかったっけ?
これは別に出世をしたのではなくて、このたび、助教授の名称が准教授に変わっただけとのこと。
彼はなんと臨床犯罪学の研究をしており、たびたび、警察から協力要請があって、持ち前の鋭い洞察力で事件の解決に貢献している、という設定です。

さて、今回はもともと別個の中篇のはずが、同じ登場人物が出てきて、結果、一つの長編となったとのこと。
二つをつなぐ登場人物とは、三松妃沙子(ひさこ)。
40代、実業家。
貧乏な青年を拾ってきて世話をするのが趣味・・・ということで、
まあ、お妃様、のような存在。
この人物が犯罪の中でどのような役割を果たすのかは、まあ、ご想像の通り・・・ということになります。
この作品は、誰が犯人か、というよりは、どのように行ったのか、ということが問題となってくるわけですね。

このストーリーの中に出てくる「猿の手」という話があります。
怪奇小説の名作として名高いウィリアム・W・ジェイコブズの短篇。
(私は読んだことありませんが)。
そのミイラ化した「猿の手」は3度だけ願い事をかなえてくれる。
しかし、そのためには、そのつど、大きな代償を払わなければならない。
・・・という伝説のような話をモチーフにしたストーリー。
で、その短篇の解釈が読みようによっては、全く違うものになる・・・という話が出てくるのですが、これがすごく面白かった。

また、アリスの住んでいるのは大阪なのですが、文中、海遊館や天保山ミュージアム等、地下鉄大阪港駅付近の情景が出てくる。
実は私、先日大阪出張のついでに、そこへ行ったばかり。
これまで、大阪の地名など何も知らなかったのですが、
このように実際に行った地名が出てくるとすごく親しみがわきます。
アリスが一人でここの観覧車に乗ったりするシーンも、
ああ、先に読んでおけば、もっと、楽しめたのに・・・、と思います。

以前、横浜に行った時も私は、「馬車道」にぜひ行ってみたかったんですけどね。
(残念ながら、このときはかなわなかった)。
フィクションはフィクション、とわかってはいるのですが、つい、馬車道付近では、石岡氏の姿を探して、きょろきょろしてしまいそうな気がする・・・。

作品と、土地のイメージ、これも結構大事です。

満足度 ★★★★

コメント (4)   トラックバック (1)
この記事をはてなブックマークに追加

僕の大事なコレクション

2008年08月20日 | 映画(は行)

(DVD)

実は何も内容を知らないで見始めたのですが、これって結構掘り出しものでした。

アメリカに住むユダヤ人青年、ジョナサンは、幼い頃から家族にまつわるいろいろなものを黙々と収集してきていました。
ある日祖母が亡くなる前に、一枚の写真を渡されます。
それは亡き祖父が若い頃、故郷のウクライナで、命の恩人の女性とともに写った写真。
彼はウクライナへと旅立ち、その、トラキムブロドという村を訪ねることにしました。

さて、こちらはウクライナ。
アメリカ人の観光客を案内している一家。
ブロークンな英語通訳の青年アレックスと、
その気難しい祖父、そして、一匹の凶暴な犬。
この3人と一匹のロードムービーが始まります。
なんともユーモラスで、とぼけた味がある。
・・・この軽妙な珍道中を描く作品かと思ったら、
ところが終盤、ドンと核心を突く重いテーマが待ち受けていまして、感動します。

まず、めざすトラキムブロドが見つからない。
地図にも載っていないし、近辺と思われる土地の人々に聞いてもわからない。
それは、今はもうなくなってしまった村・・・。
かつてユダヤ人の村で、ナチスドイツにほぼ全員虐殺されて消えてしまった村だったのです。
今は石碑が残るだけのその村。
それは、ようやく探し当てた写真の女性の姉によって語られます。
広大なひまわり畑の中に一人住む老女。
彼女はその村の思い出の品をを大切にコレクションしていました。
ジョナサンのコレクションのルーツがここにあったという驚き。

このひまわり畑が、なんともいえませんね。
花自体は明るいのですが、かつてあった不幸な歴史を思うと、なんともいえない切なさがある。
ソフィア・ローレンもちょこっと思い出したりして。
あれはまた別の哀愁。
これは「さとうきび畑」の歌の感慨に近いでしょうか。
広い畑に、今もなくなった大勢の人々の悲しい思いが漂っているような・・・。

そしてまた、さらに、もう一つの大きな驚きがあるのですが、これはネタばらしなしにしておきましょう・・・。

この作品の監督リーブ・シュライバーは俳優さんですね。
割といい感じの俳優なんですよ。
主役以外、あまり名前を覚えられない私ですが、なぜか印象に残っているという・・・。
それから、この映画は、イライジャ・ウッド主演ということで、
どうも「ロード・オブ・ザ・リング」を意識しているようです。
「第一章 旅の始まり・・・」(すみません、実際の題名はよく覚えていないので、インチキです)なんて章立てがあったり、
「この指輪があなたたちを呼んだのです」なんて、セリフがあったり。
そういうことを踏まえて見ても、楽しい作品です。

2005年/アメリカ/105分
監督:リーブ・シュライバー
出演:イライジャ・ウッド、ユージン・ハッツ、ボリス・レスキン、ラリッサ・ローレッド

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

ダークナイト

2008年08月19日 | 映画(た行)

「ダークナイト」、つまりはバットマンのシリーズなんで、実は見ないつもりだったんです。
アメコミにさほど興味はないですし・・・。
でも、これ、割と評価は高いですね。
ヒース・レジャーも気になりますし・・・。
実は、男性が恋愛映画とかアニメを一人で見るのに気後れするように、オバサンもこのような映画に一人で入るのはちょっと・・・、というところはあります。
でもまあ、いまさら気にしにない。
そこがオバサンのおばさんたる所以。
好奇心に逆らわず、見ました!

それにしても、確かに、この作品は今までのアメコミの映画化の枠を超えている。
全体に、ダークなイメージ。
軽いノリはなし。
そういえば、あのバットマンですぐ思いだされるあの曲もなかったですね。

バットマンこと、ブルース・ウェインの住む町、ゴッサム・シティ。
今回は、悪のカリスマ、ジョーカーが登場。
まさに、「悪」を象徴する存在。
彼は金銭が目的ではなく、正義を実行しようとするバットマンと敵対することを目的としている。
強烈な悪意を持ってバットマンを揺さぶる。
バットマンが正体を明かさなければ毎日市民を殺す、と宣言。
人の心を揺さぶり、悪意を引き出すことに歓びを見出している。
白塗りの顔に赤く裂けた唇。
この強烈な存在。
どういういきさつでヒース・レジャーがこんな役を引き受けたものだか・・・。
しかし、彼のこの演技なくして、ここまでの映画の成功はなかったでしょう。
誠に鬼気迫るというか・・・。
普通、あのメイクでこの役をやったら、ただの、道化になってしまいます。
すごいものを遺して、逝ってしまいました。

私は以前から、ヒース・レジャーは「役」に添うタイプの役者だと思っていたんです。
黙っていれば、割と地味で目立たないタイプの青年。
その彼が、直接あのようなメイクを施してしまったら、もう人格丸変わりですよ・・・。
この先、渋いおじさまになった彼なども、ぜひ見たいところでしたが、残念です・・・。

もう一つの見所は、「光の騎士」と呼ばれる、正義を実行する、新任検事のデント。
しかし彼はジョーカーの策略により、恋人を失い、
また、顔の半面が醜く焼けただれてしまい、
怪人トゥー・フェイスとなって、復讐鬼に変身。
コインの裏と表。
顔の左右。
正義と悪の二面性を象徴するというわけですね。
・・でも、正直、ここのくだりが一番アメコミっぽくて、
彼の顔の特殊メイクもすごいですけれど、ちょっと興ざめ。
ここだけ、お子様向きになってしまったのが残念な気がするんです・・・。
これ、私が、バットマンの楽しみ方を間違えてるんでしょうね、たぶん・・・。

私はよくわかってないのですが、バットマンって、超人ではないのですね。
前作で修行を積んだのはわかっておりますが、
つまり、スーパーマンのように、不死身の体や超人的な能力を持っているわけではない。
スーツや車の装備で能力を高めたり補ったりしているだけ。
そんなところも、ちょっと、魅力です。
努力の人なんですねえ。
結局、彼ががんばればがんばるほど逆に悪を引き寄せているという、
皮肉な展開となっていますが、
映画の中に曰く、「夜明け前が最も暗い」。
負けるなバットマン。

二時間半たっぷり、間違いなく楽しめます!

2008年/アメリカ/152分
監督:クリストファー・ノーラン
出演:クリスチャン・ベール、ヒースレジャー、アーロン・エッカート、マギー・ギレンホール、マイケル・ケイン

コメント (3)   トラックバック (4)
この記事をはてなブックマークに追加

「オテル モル」 栗田有起

2008年08月18日 | 本(その他)
「オテル モル」 栗田有起 集英社文庫

私にははじめての作家さんです。
まず、「オテル モル」って何?ということですが、
これは、ホテルの名前で正式には「オテル・ド・モル・ドルモン・ビアン」。
フランス語。
まあ、「もぐらホテル」くらいの意味でよいとか。

このホテルは、ビルの隙間の、横にならなければ通れないような狭い路地を入ったところに入り口があって、ホテル本体はすべて地下にある。
快眠を得るためのホテル。
部屋にはテレビも、冷蔵庫も、窓もなくて、あるのはベッドと静寂。
安らかな眠りを提供するための会員制のホテル。
主人公希里は、そこのフロントの仕事に着くのです。
彼女には双子の妹がいて、しかし彼女は精神が不安定で入院中。
その妹の夫と、小学生の姪っ子と同居中。
この辺はなかなかリアルな日常なのですが、
なぜかホテルについては、シュールすれすれの不思議な感覚。
ちょっと異空間に足を踏み入れかけたような感じがします。
そしてこの感じが、この本の魅力だと思います。
完璧に浮世離れしている、ホテル。

しかし、それに対して希里の日常は心中複雑。
双子の妹、沙衣というのは、生まれたときから病弱で、とにかく周りの人たちにいつも心配され、かまわれていた。
にも係らず、少女時代には素行が悪く、夜遊びにふけり、ついには覚せい剤中毒・・・。
しかも妹の夫というのが、かつて希里と付き合いのあった学校の先輩で・・・という事実が明らかになれば、この同居の3人の微妙な関係が、気になるところ。
しかし、その辺は実に静かに淡々と触れているだけ。
そんななか、妹の沙衣が退院して帰ってくる。
そしてまもなく、また家から姿を消して・・・。

この作品では、希里は未来にすばらしい希望を抱いてもいないし、
妹に対してひがんだり絶望したりもしていない。
毎日歯を食いしばって苦しみに耐えているわけでもなく、
ぼーっと物思いにふけるのでもない。
ただ、普通に働きながら(普通より、ちょっとまじめかな?)
あらゆることを淡々と受け止めている。
この雰囲気が、なんだか等身大で、気に入ってしまいました。
等身大でありつつ、でも、生臭さがないというか一種の清潔感。
何度も使いますが「不思議な感じ」ですかね。やはり。
他の作品も読んでみたくなりました。

ここで、妹の夫、つまり希里のモトカレの心情を語るものが何もないというのも、ミソなのかも知れません。
この人たちの関係が、このあとどうなるのか、
それも宙ぶらりんのまま終わるのですが、これはこれでよし。ですね。

満足度★★★★
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

ヒトラーの贋札

2008年08月17日 | 映画(は行)

(DVD)
二次大戦下、ドイツ。
ユダヤ人強制収容所が舞台とくれば、すでにさまざまな映画作品がありますが、
これが特異なのはそこで、贋札作りをしていた、ということ。
これは、史実であり、実際に贋札作りに携わった印刷技師、アドルフ・ブルガー氏の著作をベースに作品化したもの、ということです。

ベルンハイト作戦と呼ばれるこのプロジェクトは、
大量の贋ポンド紙幣をばら撒き、イギリス経済を混乱させるという目的で計画されました。
各地のユダヤ人強制収容所から集められた職人たちが、技術の粋を集結して、贋札を製造する。
彼らは収容所の他のユダヤ人からすると破格の待遇を受けます。
まずまずの食事、やわらかいベッド(それでも、2段ベッドですが)、シャワーも浴びられる・・・。
監視つきとはいえ、手に入れたこの生活に安堵してしまうのは当然です。
しかし、塀一つ隔てた向こう側では相変わらず、惨めなユダヤ人がぼろくずのように生き、殺されている・・・。
そのことに対する、罪悪感。

さて、その贋札作りにおいては、これが成功しないことは、自分たちの破滅を意味します。
役立たずのユダヤ人ということになれば、秘密を守るためにも、あっさりと抹殺されてしまうでしょう。
しかし、それを成功させるということは、ますますナチスを増長させる。
つまり、同胞たちをさらに苦しめることにつながるのです。
この二面性の中で、苦悩する彼ら。

ここでは、それぞれの信条信念が、くっきりと浮かび上がってきます。
ナチスに協力し働くもの、作業を少しでも遅らせようとするもの・・・。
いずれにしても命がけです。
結局、ドイツの敗戦により、この作戦は終止符が打たれますが、
実際、その贋札は銀行家も太鼓判を押すほどに精巧であったということです。

異常な抑圧。緊迫感と諦念。生への執着。
こんな状況下では、個々の本性が丸見えになってしまうのが怖いですね。
それは、支配する側でも同じなんですが。
だからこそ、数々のドラマが生まれるのでしょう。

しかし、二度とあって欲しくはないですね。

2006年/ドイツ=オーストリア/96分
監督:ステファン・ルツォヴィッキー
出演:カール。マルコヴィクス、アウグスト・ディール、デーヴィト・シュトリーゾフ、アウグスト・ツィルナー

コメント (4)   トラックバック (1)
この記事をはてなブックマークに追加

あの日の指輪を待つきみへ

2008年08月16日 | 映画(あ行)

北アイルランド、ベルファストの丘で、50年以上前に墜落死したアメリカ軍航空兵の結婚指輪が見つかった。
このことが以前実際にニュースとなって流れたそうです。
この映画は、これをもとにして、作られたストーリー。

時は50年ほど前にさかのぼります。
アメリカの航空学校の親友同士の三人。
テディ、ジャック、チャック。
彼らはそれぞれ美しいエセルに思いを寄せていたのですが、ハートを射止めたのはテディ。
ジャック、チャックは二人を祝福します。
しかし、3人は航空兵として戦争へ向かう。
テディは言うのです、もし、自分に万が一のことがあったら、エセルを頼むと。
・・・そうして、実際、テディは事故で亡くなってしまう。
テディに指名されていたチャックが、エセルと結婚することになるのですが、
一生テディを愛すると誓ったエセルは、チャックを受け入れられない。
娘マリーが生まれても、愛情がわかない。
同じくエセルを愛していたジャックは、
彼がテディに指名されなかったことに傷ついていて、でも、エセルを見守り続けます。
結婚は何回かしたけれど、どれも長く続かない・・・。

誰も悪くはないのに、それぞれ満たされず傷ついている。
なんて切ないのでしょう・・・。
50年前に亡くなった一人の青年のために、誰もが運命を狂わされているかのよう。

ある日、アイルランドから50年前の指輪が見つかったと、エセルに知らせが入ります。
娘マリーは、このことでこれらのいきさつをはじめて知り、ショックを受ける。
亡くなった父も、自分も、母には全く愛されていなかった。
薄々は感じていたものの、このような事実を突きつけられては・・・。
エセルは、若き日の悲恋に決着を付けるべく、アイルランドに旅立つのですが・・・。

私は、このなかで、チャックが一番気の毒な気がしてしまって・・・。
実際彼はエセルを愛していたのですが、はなから、エセルの気持ちが自分にないことを知っている。
そんな妻と人生の大半を過ごし、亡くなったのです。
ただ、娘ができたことだけが救いだったのでしょう。
妻の関心が子供に向かない分、彼が娘を愛し尽くしたようです。
こんな人生って・・・。
好きな人を妻としてずっとそばにいられたことは、幸せといっていいのでしょうか。
全く愛されていないとわかっていても。
でも、テディとの約束があるので、逃げ出すこともできない。
これって残酷ですよね。

それぞれがつらい思いを抱えている中、このストーリーの救いは、ジミー青年かな。
彼が、指輪の発見者であり、わざわざ、エセルに指輪を届けに来るのですが。
彼の、まだ子供っぽい好奇心や屈託のなさが、全体の雰囲気を和らげています。
北アイルランドの紛争も、ちょっぴり勉強になりました・・・。

50年のときの流れは残酷ですね。
あの美しいエセルや青年たちが、50年経ったら見る影がない。
(無論、映画は別人が演じているわけですが)
50年経ったら、永遠の愛も恋もあったもんじゃない・・といってしまったら、ミもフタもありませんかね。
でもこの映画のように、気持ちはそのままなんですね。
これくらいの年になると、それは良くわかります。
いくつなっても、初恋の思い出はやはり甘く切なかったりしますもんねえ。

2007年/イギリス・カナダ・アメリカ/118分
監督:リチャード・アッテンボロー
出演:シャーリー・マクレーン、クリストファー・プラマー、ミーシャ・バートン

「あの日の指輪を待つきみへ」公式サイイト

コメント
この記事をはてなブックマークに追加