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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

かくしごと

2025年04月19日 | 映画(か行)

保護か、犯罪か

* * * * * * * * * * * *

北國浩二さんの小説「嘘」の映画化です。

絵本作家の千紗子(杏)は、長年絶縁状態だった父(奥田瑛二)が
認知症を発症したため、故郷の父の元を訪れます。
しかし、父はすでに千紗子を娘とも認識できない様子。
まるで他人のような父との同居に辟易する千紗子。
そんなある時、千紗子は事故で記憶を失った少年を助けます。
その体には、虐待らしき痕跡が何カ所も・・・。

千紗子は記憶をなくした少年を元の家庭に戻すことなどできないと思い、
自分が母だと嘘をついて、少年と一緒に暮らし始めます。

認知症の父。
父と疎遠だった娘。
そして、記憶をなくした血のつながらない孫。

千紗子は、父の認知症をいいことに、少年を自分の本当の息子だと言いくるめます。
そして始まった不思議な3人の生活。
けれど世の常で、老人と子供は相性が良いのです。

次第に父と少年は心を開くようになっていって、
そうなると千紗子との関係も良くなってくる。
3人は次第に打ち解けて、「家族」のようになっていきます。
そして、千紗子の友人(佐津川愛美)とその息子、
父の幼馴染みでかかりつけの亀田医師(酒向芳)という、
居心地の良い輪も生まれる。

しかし、元々の根っこは、千紗子が少年の実の両親に何も告げずに、
少年の素性を隠して自分のもとに置いてしまっているということ。
いかに少年を守るためとはいえ、これは犯罪なのです。
こんな平穏な日々が続くわけもなく・・・。

凍り付くような終盤へと物語は進んでいくことに。

現に児童虐待はあるわけで、
どうかいち早くそれを察知して救いの手を差し伸べることができる
有効なシステムが整備されてほしい。
もちろん今でもそれはあるのですが、もっと柔軟に、確実に・・・。

すべての親が満たされた気持ちでいることができれば、
こういうことはなくなるのかなあ・・・?

<WOWOW視聴にて>

「かくしごと」

2024年/日本/128分

監督・脚本:関根光才

原作:北國浩二

出演:杏、中須翔真、佐津川愛美、酒向芳、木竜麻生、安藤政信、奥田瑛二

隠し事度★★★★☆

満足度★★★★☆


片思い世界

2025年04月09日 | 映画(か行)

片側からしか見ることができない世界

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本作、恋愛ドラマなのかと思っていたら、予想外の展開。
しかし実際、究極の「片思い」ではあります。

相良美咲(広瀬すず)、片石優花(杉咲花)、阿澄さくら(清原果耶)の3人は、
東京の片隅の古い一軒家で一緒に暮らしています。
共に起きて朝ご飯を食べ、それぞれ仕事、学校、アルバイトに出かけ、
夜は共に晩ご飯を食べて眠る。
お互いを思いながら楽しく気ままな3人だけの日々・・・。
彼女たちはもう12年もこんな生活を続けていて、強い絆で結ばれているのです。
でも、それぞれに抱える強い思いがある・・・。

本作、ネタばらしをせずに説明しようとすると、ぜんぜん説明にならないんですよ・・・。
だからちょっと当記事は、歯がゆい書き方しかできないのです・・・。

まあ強いて言えば、この3人が同居して暮らすようになった理由が問題。
一番始めに書いたように、本作を恋愛モノだと思って見に行った方は、
ちょっと肩すかしを食らうかも知れない。
けど、別の方向のこれも悪くはないです。

本作を別の方向から見てみる。

過去の出来事に捉えられ、いまだに前を向いて自分の道を歩み出せない人が2人。
そしてまた、本来その過去にしっかり向き合ってから歩むべき1人の人物は
まったく向き合えていない。
これら3人が、何らかのきっかけで進むべき道へ向かうことになる。

そのきっかけに、前述の3人の女子がかかわっているかいないか。
かかわっているようなストーリー運びなのだけれど、
実はかかわってはいない、自然なことの成り行きのようにも受け取ることができる。

そのあやふやさこそが、この3人の「存在」と結びつくわけで、
意外と深い描き方をしていると思います。


<シネマフロンティアにて>

「片思い世界」

2025年/日本/126分

監督:土井裕泰

脚本:坂元裕二

出演:広瀬すず、杉咲花、清原果耶、横浜流星、小野花梨、西田尚美

思いの強さ度★★★★☆

満足度★★★★☆


52ヘルツのクジラたち

2025年03月21日 | 映画(か行)

聞き届けてくれる人はきっといる

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母親に支配され、ただ義父の介護にのみ生きて、
ほとんど自分をなくしていた貴瑚(杉咲花)。

ある出来事の後、1人で海辺の町の一軒家に越してきます。
そこで彼女は母から「ムシ」と呼ばれ虐待されている、
声を発することができない少年と出会います。

貴瑚は少年との交流を通し、
かつて自分の声なきSOSに気づいて救い出してくれた
アン(志尊淳)との日々を思い起こしていきます・・・。

 

アン(岡田安吾)はかつて、貴瑚の苦境に気づき、
義父の介護の公的な手続きや施設の世話、
そして支配的母親からの解放を図ってくれたのです。
貴瑚は当然のごとくアンにひかれ、ついには告白をするのですが、
アンは「いつも君の幸福を願っている」と言うだけで、受け入れてくれません。
どうもアンには貴瑚にも言えない秘密があるようなのです。

失意の貴瑚は、やがて別の青年を愛するようになるのですが・・・。
その先の出来事はさらにつらい・・・。
確かにこんなことがあれば、1人で見知らぬ町に住みたくなってしまうかも、ですね。

題名の「52ヘルツのクジラ」というのは、
他のクジラが聞き取れないほど高い周波数で鳴く
世界で一頭だけの孤独なクジラのこと。
このクジラのように、自分の声は誰にも届かないと思い、
孤独に陥る人が本作には登場するわけです。

以前の貴瑚、虐待される少年、そしてアンも・・・。

でも、貴瑚の声をしっかり聞こうとしてくれた人がいた。
今、少年の声を貴瑚が聞こうとしている。
では、アンの声は・・・?

もう少し、ほんのもう少し、アンが心を開いて声を発してくれさえすれば・・・。
無念さが滲みます。

 

本作のアンの役は、やはり志尊淳さん以外には考えられないくらい、はまり役でした。

<WOWOW視聴にて>

「52ヘルツのクジラたち」

2024年/日本/135分

監督:成島出

原作:町田そのこ

脚本:龍居由佳里

出演:杉咲花、志尊淳、宮沢氷魚、小野花梨、桑名桃李、金子大地、西野七瀬

虐待度★★★★★

孤独度★★★★☆

満足度★★★★☆


関心領域

2025年02月07日 | 映画(か行)

無関心なのか、無関心を装っているのか

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これはちょっと覚悟を決めてから見なければ・・・という作品。

まず「関心領域」とは。
アウシュビッツ収容所群を取り囲む40平方キロメートルの地域を表現するために、
ナチス親衛隊が使った言葉、とのこと。
本作は、まさにその関心領域内のことを描いています。

アウシュビッツ強制収容所と壁一枚隔てた屋敷に、
収容所所長とその家族―妻と5人の子どもたちーが暮らしています。
屋敷は、広くて清潔。
明るく、快適。
広い庭にはプールもあって、妻が草花を植えて楽しんでもいる。

しかし、塀の向こうからひっきりなしに銃声や悲鳴が聞こえてくるのです。
でも、ここでは誰もそれに気を止めず、というか聞こえないフリをして、
平和で豊かな日常生活を楽しんでいるのです。
銃声は聞こえないけれど、小鳥のさえずりは聞こえていて注意を払う・・・。

この豊かな生活に最も執着しているのは所長の妻。
彼女は塀の向こうで何が行われているのか、しっかり理解しています。
時にはユダヤ人から奪った衣服などを近所の奥さんたちと分け合ったりもする。
歯磨き粉の中に宝石が隠されていたなどという体験談も、
井戸端会議のほんの一つの話題にしか過ぎません。

おそらくこの妻は、これまであまりいい暮らしをしてきていない。
だからこの降って湧いたような豊かな生活を絶対に手放したくないと思っているのです。
夫が異動となりこの地を離れることになっても、
あえて上層部に願い出て、家族だけこの家に住み続けることができるようにと嘆願するくらい。
しかも驚くべきことにそれが通ったりする。

この暮らしのためなら、塀の向こうから聞こえる音などなんの問題もないと思っているのです。
いや思おうとしているのか。
・・・少なくとも本作上では、彼女はユダヤ人の苦しみを想像してみようとすら思っていない・・・。
人は本当にこんな風になれるのか? 
苦しい物語です。

けれど現実に、日々爆撃に怯えながら生活している人や
満足に食料も得ることができない人々がこの地球上に間違いなく存在します。

そのことを私たちは知っているけれど、何もせず、何もできず、
結局は自分の満足を求めて生きているわけで。
それはこの家族とそう変わらないのではないか・・・。

色々と考えさせられます。

<Amazon prime videoにて>

「関心領域」

2023年/アメリカ・イギリス・ポーランド/105分

監督:ジョナサン・グレイザー

原作:マーティン・エイミス

出演:クリスティアン・フリーデル、サンドラ・ヒュラー

無関心度★★★★★

執着度★★★★☆

満足度★★★.5

 


からかい上手の高木さん

2025年01月24日 | 映画(か行)

めんどくさい2人

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私は本作、劇場版のアニメ「からかい上手の高木さん」で知るのみだったのですが、
アニメ版は、それなりに楽しみました。
それでこの度の実写劇場版は特に見なくてもいいかと思っていましたが、
内容はそのままではなくて、それから10年後を描いているというところがミソだったのですね。
ということで、さっそく拝見。

 

とある島の中学校。
隣の席になった女の子、高木さんにいつもからかわれている男子、西片。
どうにかしてからかい返そうと様々な策を練るも、失敗ばかり。
・・・というのがアニメ版のストーリー。
その後、高木さんは引っ越してしまい、2人は離ればなれに。

そしてここからが実写版の本作。

それから10年。

母校で体育教師として勤務する西片(高橋文哉)の前に、
高木さん(永野芽郁)が、教育実習生として現れます。
2人の中学生時代を思わせるような少年少女の淡い思いや、
不登校の生徒の心などを絡めながら、
大人になった西片と高木さんが心を通わせていきます。
でも相変わらず、西片が高木さんにからかわれてしまうという関係性はそのままで・・・。

なんというか、中学生あたりだと女の子の方が先に精神的成長を遂げてしまうので、
西片がいつもからかわれてしまうというのは分かる。

でも、25歳くらいになっても同じなのはどうなのか?と思わなくもないけれど、
ずっと会っていなかった2人が、昔の関係性に引きずられてしまうのは
仕方がないのかとも思います。
・・・でも、中学生の高木さんはそれなりに子悪魔的な魅力があって可愛いけど、
大人の高木さんは、単にめんどくさい女に見えてしまった・・・。

終盤、教室で2人が話す長~いシーンがあるのです。
それはやっと2人が本音を話す大事なシーンではあるのですが、
このシーンもやたらと長いだけで、今度はめんどくさい人たちと思ってしまった・・・。

でも、西片が受け持つ少年少女たちの、青く硬質な思いがなんかステキでした。
ここのところはよいと思います。

高木さんの聖地、香川県小豆島で全編撮影ということで、
美しい風景やのどかな町の様子は堪能できますが・・・。
アニメで楽しむだけでよかったかな?

 

<Amazon prime videoにて>

「からかい上手の高木さん」

2024年/日本/119分

監督:今泉力哉

原作:山本崇一朗

出演:永野芽郁、高橋文哉、鈴木仁、平祐奈、白鳥玉季、江口洋介

 

からかわれ度★★★★☆

少年少女の思い度★★★★☆

満足度★★★☆☆


駒田蒸留所へようこそ

2025年01月17日 | 映画(か行)

ウイスキーを知ろう

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世界から注目されるようになったジャパニーズウイスキーの
蒸留所を舞台とするアニメストーリー。

日本酒なら醸造所、ウイスキーだから蒸留所。
そんな違いもよく分っていなかった私ですが、
本作に登場するニュースサイト記者の高橋光太郎もしかり。
私たちをゆったりとウイスキー製造の世界へ誘ってくれます。

亡き父の後を継ぎ、家業「駒田蒸留所」の社長に就任した駒田琉生(るい)。
災害の影響で製造できなくなった幻のウイスキー「KOMA」の復活を実現したと思い、
日々奮闘しています。

そんなところへ、ニュースサイトの新米記者、高橋光太郎が取材にやって来ます。
光太郎は、自分が本当にやりたいことを見つけられず、転職を繰り返して来ました。
この度の仕事も、ウイスキーに興味はないし、まったくやる気がなくて、
事前の下調べもおざなり。

そんな彼には、父親の後を継いでやりたい仕事をしている琉生が
「良いご身分」に思えてしまったのですが、
実はそんな簡単なことではなかった・・・。

経営難の蒸留所をまったくド素人の自分が継ぐと言う重圧、兄との確執・・・。
様々な困難を乗り越えながらも
夢に向かって力を尽くしている琉生の姿を見るうちに、
光太郎も変わっていきますね。

なかなか心地よい成長の物語です。
ウイスキーは日頃あまり縁がなく、
どちらかというと日本酒の方に親しみを感じておりますが、
時にはウイスキーもよさそうです。

<Amazon prime videoにて>

「駒田蒸留所へようこそ」

2023年/日本/91分

監督:吉原正行

原作:KOMA復活を願う会

出演(声):早見沙織、小野賢章、内田真礼、細谷佳正、鈴村健一

ウイスキー蘊蓄度★★★☆☆

家族愛度★★★☆☆

満足度★★★.5


グランメゾン・パリ

2025年01月15日 | 映画(か行)

お腹いっぱい

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テレビドラマ「グランメゾン東京」の続編映画版。

正直これは後で配信になってからで良いなと思っていたのですが、
他にタイミングよく見られるものがなかったという成り行きで、拝見。
とはいえ、以前のテレビドラマもこのお正月版も
しっかり見ていたので準備はバッチリです。

「グランメゾン東京」が三つ星を獲得した後。

尾花(木村拓哉)と早見(鈴木京香)は、パリに新店舗「グランメゾン・パリ」を立ち上げ、
アジア人初となるミシェラン三つ星獲得を目指していました。
しかし、この地でアジア人が満足のいく食材を手に入れることは難しく、二つ星止まり。
尾花はかつての師と、次のミシェランで三つ星をとらなければ店をやめ、
フランスから出ていくと約束してしまいますが・・・。

フランス料理の本場で、アジア人が開く店に
最上級の品物をそう簡単は売ってもらえない・・・という困難が、
本作の最大の難関ですね。
それと尾花があまりにもオレサマ体質なので、ついて行けないスタッフもいる・・・と。
そして、尾花のよきパートナー、早見との決別。

これら問題を乗り越えつつ、最後にはスタッフ皆、一致団結して取り組んで・・・
というお定まりのエンディングへと突き進んでいくわけ。

あ、厨房スタッフの1人が韓国人(オフ・テギョン)で、借金を抱えていて、
そのスジの連中に付け狙われているというエピソードは斬新でした。

結果、やはりこれはテレビドラマでもよかったし、
後に配信で見るので十分だったのではという感じです。
普通に面白くはあるけど。

三つ星のフレンチなんて、一体どれだけの人が食べるのよ・・・って、
反感を持ってしまう年金生活者なのであります・・・。
三種の肉が入っているパイなんて、
見るだけでくどくて、お腹いっぱいでした。

<シネマフロンティアにて>

「グランメゾン・パリ」

2024年/日本/117分

監督:塚原あゆ子

脚本:黒岩勉

出演:木村拓哉、鈴木京香、オク・テギョン、正門良規、冨永愛、及川光博、沢村一樹

 

高級料理度★★★★★

チームワーク度★★★★☆

満足度★★★☆☆


Cloud クラウド

2025年01月10日 | 映画(か行)

ムクムクと増殖する憎悪

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菅田将暉さん主演ということで興味はあったのですが、見そびれていました。
早くもAmazon prime videoに登場。

町工場で働きながら転売屋として日銭を稼ぐ吉井良介(菅田将暉)。
転売について教わった先輩、村岡(窪田正孝)からの儲け話にも乗らず、
コツコツと転売を続けています。

ある時、勤務先の工場の社長・滝本(荒川良々)から管理職への昇進を打診されても、
断って、辞職してしまい、転売業に専念することに。

郊外の湖畔に事務所兼自宅を借りて、恋人・秋子(古川琴音)との生活をスタートさせます。
仕事のアシスタントとして、地元の若者・佐野(奥平大兼)を雇い、
転売業は軌道に乗り始めますが・・・。
身の回りで不審な出来事が起こり始めます。

 

前半、特に何も起こらないのに、恐いのです。
吉井の身の回りの人々が、何を考えているのかよく分らず、とにかく不気味。
いや、そもそも吉井自身が、周囲の人に関心がない。
いや、周囲の人の感情に関心がないと言うべきか。

 

吉井がやっている「転売」というのは、
何でもかまわないので、とにかく人が興味を抱くかも知れない、格安物品を見つける。
それを実際、格安で買い付けて、ネットで売るわけです。
それも、購入した金額から想像もつかないような高額の値を付けて。
それで買い手がつかない場合は、値を下げていく。

時には、倒産した工場の売れ残り品を買いたたいて、
高額で販売すると、瞬く間に完売。
工場主の無念の気持ちなど少しも気にかけません。

また、吉井にも本物か偽物かよく分らない(というか、興味がない)バッグも、
格安で買い付けて、高額で販売。
高額で購入した人が偽物と分った時の感情にも、まったく興味がない。
とにかく、儲かれば良い。
・・・と言うか、ほとんどそれはギャンブルで、
依存症になっているようにも見受けられます。

吉井にとっては周囲の人たちも、ネットの向こう側にいる人々と同じ。
直接に感情を交わすものではないと思っているかのようです。

しかし、実際はそうではないですよね。
周囲の人々にも、ネットの向こう側の人々にも感情はあって、
特に、吉井への「憎悪」の感情を膨らませていくのです。
そしてその膨らんだ憎悪は、爆発的に成長して
どす黒い狂気の集団へとエスカレートしていく・・・。

さて、でもこんな吉井にも、彼女の秋子には若干の感情があったようで・・・。
しかしこの秋子も、何を考えているのかよく分らなくて。
どんなことになるのか、要注目。

そして最も謎なのは、奥平大兼演ずるところの、佐野。
一体どんな利があって、佐野はあくまでも吉井のアシスタントであろうとするのか・・・?
謎は謎のままというのがまた、ミステリアスで面白い。

ダークサイドの窪田正孝さんというのも、めずらしいですね。

 

<Amazon prime videoにて>

「Cloud クラウド」

2024年/日本/123分

監督・脚本:黒沢清

出演:菅田将暉、古川琴音、奥平大兼、岡山天音、荒川良々、窪田正孝

 

ミステリアス度★★★★☆

狂気度★★★★☆

満足度★★★★☆


吟ずる者たち

2024年12月28日 | 映画(か行)

百試千改

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一見、詩吟をする人たちの話?と思ったのですが、
そうではなくて、酒造りの人々の話。
つまり吟醸酒の「吟」でした。

東京で夢破れ、故郷の広島に帰ってきた永峯明日香(比嘉愛美)。
彼女は、ここの酒蔵の家で育ちました。
この酒蔵というのが、広島で日本初の吟醸酒を造った三浦仙三郎の杜氏の末裔が開いたもの。
明日香は酒造りに興味はあったものの、
養女である自分が家を継ぐことはそぐわないと思い、酒造りを避けていたのです。

実家に戻った明日香は目標を見失い、所在なく過ごしていましたが、
ある時、父が家宝とする仙三郎の手記を目にします。

仙三郎は明治時代、腐造を起こさず安定した日本酒醸造技術を確立しました。
「百試千改」を信条とし、研鑽を重ねて、軟水による低温醸造法を導き出したのです。

そんな千三郎の日本酒に対する執念に感化され、
また父が病に倒れたこともあって、明日香は酒蔵の仕事に就くことを決意。
そして、新たな挑戦を試みます。

本作は現代の明日香のパーツと、明治時代の千三郎のパーツが交互に描かれています。

当初、酒造りで最大の難関は「腐造」なんですね。
酒がうまく発酵できずに腐ってしまう。
そういえば、以前のNHK朝ドラで、牧野富太郎氏の実家が造り酒屋で、
最後は「腐造」が出たために潰れてしまった、というエピソードがあったような。
そんなことにならないための、一定の方法を突き止めたのが、
三浦仙三郎なんですね。

百回試して千回改める。
試行錯誤の繰り返しで、ようやく答えが出る。
「百試千改」。
良いことばです。

吟醸酒、飲みたくなってしまった・・・。


<Amazonプライムビデオにて>

「吟ずる者たち」

2021年/日本/115分

監督:油谷誠至

出演:比嘉愛美、戸田菜穂、渋谷天外、中尾暢樹、大和田獏、中村俊介

日本酒愛度★★★★★

満足度★★★.5


奇跡をつむぐ夜

2024年12月06日 | 映画(か行)

お節介な善意は、自分のためでもある

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実話をもとにしています。

ケンタッキーの小さな町で暮らすシャロン(ヒラリー・スワンク)。
離婚後ひとり息子を育てていたものの、うまく愛することができず、
今はほとんど音信不通。
美容師の仕事をしながら、ままにならない人生を悔やみ、
アルコール依存症となっています。
そんな彼女が新聞のある記事に注意をひかれます。

5歳の少女が母親を亡くし、そして肝移植が必要な病と闘っている、という。

その父、エド(アラン・リッチソン)は妻を亡くし、
娘2人を育てて行かなければならず、
しかも下の娘は肝移植をしなければ残りわずかな命といわれている。
今のままでも治療費は払えず、借金が膨らむばかり・・・
という悲惨な状態にあるのでした。

シャロンは、ほとんど押し売りのように、エドの元を訪ねて援助を申し出ます。
シャロンのために募金をし、エドの債務の整理をしようとする。
エドは、人からの施しなど受けたくないと思うタイプの人で、
シャロンの申し出をことわっていたのですが、
しかし、このままではどうにもならないことも事実。
シャロンの強引さにも負けて、受け入れていきます。

さてしかし、あまりにもエド一家への助力にのめり込んでいくシャロンに、
彼女の友人が言いますね。
「その行為自体が、依存なんじゃないの?」と。
うまく息子を愛せなかったから、代わりにシャロンを愛したい、助けたいと思う。
誰かの役にたって、人から必要な人間だと思われたい・・・。
彼女の今の状態はアルコール依存と根っこは同じなのかも知れません。

でも、アルコール依存はなんの役にも立たないけれど、
この度のことは確実にエド一家への助力にはなる。
今さら止められないのです。

そんなある日、ようやく肝移植のドナーがみつかって、
至急病院のある地までいかなければならない。
しかしよりにもよってケンタッキーに吹雪が・・・。
さて、どうなる・・・?

本作の感動は、シャロンのお節介すぎる善意のことはもちろんあるのですが、
それ以上に、地域の人や様々な人に波及していく善意の輪にあるわけで・・・。
事実にもとにしていると聞けば、実際泣いてしまいます。

感動作でした。

 

<Amazon prime videoにて>

「奇跡をつむぐ夜」

2024年/アメリカ/116分

監督:ジョン・ガン

出演:ヒラリー・スワンク、アラン・リッチソン、ナンシー・トラビス、
   タマラ・ジョーンズ、エイミー・アッカー

お節介度★★★★★

満足度★★★★☆


ゴールドボーイ

2024年11月23日 | 映画(か行)

人間のどこか大切な部分が欠落

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沖縄が舞台でありながら、薄ら寒い殺人ドラマ・・・。
原作はズー・ジンチェン「悪童たち」。

 

財閥の婿養子となった東昇(岡田将生)。
ある時、義理の両親(妻の両親)を断崖から突き落として殺害します。
本作はそれが冒頭シーン。
いきなりの岡田将生さんの悪人役にちょっと焦ります。

さてところが、偶然その現場を3人の少年少女がカメラでとらえてしまいます。
それぞれ複雑な家庭環境にある少年たち。
中でも頭脳明晰な安室朝陽(羽村仁成)が、
東を脅迫して大金を手に入れようと提案します。

少年たちは皆中学生。
中でも朝陽は成績優秀。
素行もよくて周囲の評判もよい。
ところが実は、人間性のどこか大切な部分が欠落しているようなのです。
少し前に、クラスメイトの自殺があったということなのですが・・・。

もうひとりは朝陽の幼馴染みの友人・上間浩。
そして浩の父の後妻の連れ子・上間夏月。
浩はいかにも悪ぶっている少年。
しかし、朝陽と比べると、ほんの不良でしかありません。
義理の妹である夏月とわけあって家出中。

この2人はつまり、朝陽のたくらみの捨て駒なのですが、
当人たちは友情だと信じて疑わない。

・・・とまあ、恐ろしい物語なのですよ。
昇も、あまりにも短絡的な殺人鬼ではありますが、それより一枚上手なのが朝陽。

こういうのはおそらく年齢とは関係ないのだけれど、
何しろ中学生の少年がそんなことを・・・という意外性におののかされてしまうのです。
だから、昇も相手を見くびって油断してしまう・・・。

ヤダヤダ・・・。
後味悪し。

 

<Amazon prime videoにて>

「ゴールドボーイ」

2023年/日本/129分

監督:金子修介

原作:ズー・ジンチェン「悪童たち」

脚本:港岳彦

出演:岡田将生、黒木華、羽村仁成、星乃あんな、前出燿志、北村一輝、江口洋介、松井玲奈

 

ワル度★★★★★

満足度★★★☆☆


グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声

2024年11月18日 | 映画(か行)

年月を経たからこその

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大ヒット作「グラディエーター」の、24年ぶりとなる続編。
私、つい最近「グラディエーター」は見直していて、予習はバッチリでした。

冒頭、舞台は北アフリカ。
将軍アカシウス(ペドロ・パスカル)率いるローマ帝国軍の侵攻により
敗れ、愛する妻を殺され、奴隷の身となったルシアス(ポール・メスカル)。
すべてを失った今、アカシウスへの復習を心に誓っています。

そんな時彼は、奴隷商人アクリヌス(デンゼル・ワシントン)と出会う。
アクリヌスは、ルシアスの中で燃えさかる怒りに目を付け、
彼を有望株の剣闘士(グラディエーター)として、ローマへ移送します。
そしてルシアスは、コロセウムでの戦いに挑んでいく。

さて、ルシアスは作中の半ばほどまでルシアスとは名乗らず、
別の名を名乗っています。

ネタばらしとなってしまいますが、これは本作の解説サイトなどでも言ってしまっているので、
ここでも、お許しを・・・。

つまりルシアスというのは、先々代の皇帝の娘にして、先代の皇帝の姉である
ルッシラの息子なのです。
今の皇帝は狂気の独裁者である双子の兄弟。
ルッシラは、この2人に必ずや命を狙われることになるであろう息子を逃し、
以後、行方も分らなくなっていたのでした。

ところが、なんとなんと、このルシアスは、
前作のヒーローであるマキシマスの息子であるというのです。
うそ~、と思いますが、前作でマキシマスとルッシラが
以前ただならぬ関係だったらしいとは誰もが感じるような作りになっていましたし、
一度だけ獄中にあるマキシマスと少年ルシアスの対面シーンは
妙に意味ありげで印象的な場面となっていました・・・。
実は親子であると、そうした含みがあったことを24年後の今知るなんて・・・。
恐るべし。

というように、本作、単に二番煎じではなくて、
年月の流れを経たことにこそ意義があるのです。
ルシアスは、他のいかにも筋骨隆々の戦士たちに比べるとやや小柄ではあるけれど、
あのマキシマスの血を引いているとなればその剣闘センスに納得なのです。
実の母との対面とか・・・エモい、エモすぎます。

そして、前作でもそうだったけれど、「独裁政治」の恐ろしさは、さらにスケールアップ。
トップがどれだけ横暴でバカであっても、
周囲の重鎮は我が身のかわいさで異論を挟むことをしない。
すべてが皇帝の意のまま・・・。

本作はこうした独裁政治の恐ろしさも強く訴えていると思います。
現在、大国のトップがいつこんな風に豹変するとも限らない恐怖・・・。
(いえ、豹変ではなくて、すでにそうなのでは? R国だけでなくA国も)

 

そして戦闘シーンの迫力も、スケールアップしています。
殺人ヒヒとか、巨大なサイとか・・・。
コワイコワイ。
あげくに、コロセウム内に水をたたえての、海戦シーン。
周囲には巨大なサメがうようよって、きゃー、しんどい。

結果、マキシマムがいてこその本作。
もちろん本作だけでも十分に楽しめるのですが、
前作と引き続き見たほうが、感慨もひとしおです。
ぜひ、「グラディエーター」を見てからこちらをご覧ください。

 

<シネマフロンティアにて>

「グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声」

2024年/アメリカ/148分

監督:リドリー・スコット

出演:ポール・メスカル、ペドロ・パスカル、ジョセフ・クイン、
   フレッド・ヘッキンジャー、コニー・ニールセン、デンゼル・ワシントン

迫力度★★★★★

残酷度★★★★☆

満足度★★★★★

 


グラディエーター

2024年11月08日 | 映画(か行)

コロシアムで繰り広げる死闘

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アカデミー賞作品賞など5部門受賞に輝いた、2000年の大作。

私はその時に見ていたのですが、この度その続編が公開になるということで、
復習のため、本作を見た次第。
・・・というか、あれからすでに24年も経っているというのが信じがたいですが・・・。

古代ローマ皇帝アウレリウス(リチャード・ハリス)は、
信頼を寄せる将軍マキシマス(ラッセル・クロウ)に
次期皇帝の座を譲ろうと考えていました。
それを知った皇帝の息子・コモドゥス(ホアキン・フェニックス)は、
父を殺して王座を奪い、マキシマスを反逆者として死刑を宣告します。

マキシマスは辛くも逃れて故郷へ向かいますが、
妻と幼い息子はコモドゥスの手下に殺されていました。

絶望の中、奴隷に身を落としたマキシマス。
やがて、剣闘士(グラディエイター)として名を上げ、
闘技場で死闘を繰り返しながら、コモドゥスへの復讐の機会を狙います。

 

マキシマスは故郷の麦畑で、麦の穂先を手のひらに感じながら歩くのが好きだったのでしょう。
そのシーンが、24年前に見たときからずっと心に残っていました。

妻と息子のいる故郷。
麦畑がつづく豊かな地。
マキシマスは本来そのような平穏な暮らしが好きなのでした。
しかし、たぐいまれなる戦闘能力と多くの兵を率いる指揮官としての能力にも長けていて、
多くの者からの信頼も得ている。
アウレリウスが実の息子よりも彼を次期皇帝にしようとしたのにも肯けます。

しかるに、コモドゥスというのがどうしようもなく野心家であり、嫉妬深く、残虐・・・。
とにかく、ものすごーく嫌なヤツ。
それをガッツリ演じるホアキン・フェニックスはさすがであります。

 

コロシアムでの戦闘シーンの迫力。
繰り広げられる死闘。

とにかく圧倒されてしまう作品でした。

さてさて、たいていこういう場合の続編は、期待外れになることが多いのですが、
どうなりますやら。
少なくとも24年も経ってから続編を作る意義はあってほしいものです。

 

<Amazon prime videoにて>

「グラディエーター」

2000年/アメリカ/155分

監督:リドリー・スコット

出演:ラッセル・クロウ、ホアキン・フェニックス、コニー・ニールセン、
   オリバー・リード、ジャイモン・フンスー、リチャード・ハリス

強さ★★★★★

迫力度★★★★☆

満足度★★★★☆


悲しみの皮

2024年11月02日 | 映画(か行)

人の欲望に際限はない

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夢かうつつか、ちょっと不思議な雰囲気のあるストーリー。

 

1832年、22歳のラファエル。
ギャンブルですべてを失い、自殺寸前。
そんな時に、骨董屋の店主から奇妙なものを勧められます。

それは「悲しみの皮」といって、願ったことは何でもかなえられるけれど、
その都度皮は縮んでいって、それと同時に、
その者の人生も縮んでいく、つまり寿命が短くなるということ・・・。

ラファエルは半信半疑ながらもそれを受け取り、願いを口にします。
すると、瞬く間に富と名誉を手に入れたラファエル。
「悲しみの皮」は確かに縮んでいるけれど、まだまだ余力はありそうです。
そして、ラファエルが次に願ったのは・・・。

 

人の欲望はどこまでも果てしがない、という話ではありますが、
ラストは勧善懲悪的な感じではなくてちょっと美しいものでした・・・。
お約束通り、ラファエルは短命に終わってしまうわけではありますが。

 

私が疑問に思ったのは、とある女性に自分を愛してほしいと願い、
実際に女性に愛されるようになったとして、
それは自然なことではなくて、魔法の力でねじ曲げられたものだと、
悩むことはないのだろうか?ということ。
幾分かでもそのような疑惑を抱くことがあっても良さそうな気がしますが、
本作中のラファエルはまったくそんなことは思わず、浮かれていました。
ま、脳天気である方が幸せではありますね。

 

とりあえず莫大な財産と名声を手に入れたら、
もう思い残すことなどなさそうにも思えますが、
まことに、人の欲望に際限はない。

 

<Amazon prime videoにて>

「悲しみの皮」

2010年/フランス/96分

監督:アラン・ベルリネール

原作:オノレ・ド・バルザック

出演:トーマス・クーマン、アナベル・エトマン、ジュリアン・オノレ、ミレーヌ・ジャンパノイ

欲望度★★★★★

教訓度★★★★☆

満足度★★★☆☆


ゴールデンカムイ

2024年10月30日 | 映画(か行)

北海道に眠る金塊を求めて

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私、本作はアニメで見ていて、原作コミックは読んだことがありません。

それでこの実写版、興味はあったのですが、
どうせストーリーの途中で終わっているので慌ててみなくても良いかな?
と思い、スルーしていました。
するとこの度、この実写版映画の続きが、
WOWOWの連続ドラマで放送されることになりまして・・・。
それなら、やはり始めから見てみましょう、ということで・・・。

 

時は明治末期。
日露戦争の戦いぶりから「不死身の杉本」と呼ばれる杉本佐一(山崎賢人)。
戦争から帰還の後は、一攫千金を夢見て北海道の山奥で砂金掘りをしています。
そんな時に、アイヌ民族から強奪された莫大な金塊の存在を知ります。

 

金塊を奪った「のっぺらぼう」と呼ばれる男は、捕まる直前に金塊を隠し、
その在処を暗号にした入墨を24人の囚人の体に彫り、脱獄させたといいます。
杉本はその金塊を見つけようと、動き始めます。

しかしそんな時、ヒグマが杉本に襲いかかる・・・!
それを救ったたのが、アイヌの少女アシリパ。
彼女は金塊を奪った男に父親を殺されていて、
その仇を討つため、杉本と行動を共にすることに。

莫大な金塊を探し出そうとする者は他にもいて、
大日本帝国陸軍第七師団、鶴見中尉率いる兵団。

そして、もと新選組副長、土方歳三とその一派。

彼らは金塊を手に入れ、どうしても成し遂げたい野望があるのです。

 

当時のアイヌコタンの様子、アイヌの人々の生活の様子なども詳しく描かれていて、
そういうところで人気を得た作品でもありますね。
当時の小樽の街並みなども興味深い。

杉本は戦争でどれだけ敵兵を殺したか分らない。
けれど、根は優しいのです。
アイヌの人たちの生活も尊重していて、
アシリパのこともずっと「アシリパさん」と呼び続けます。
アシリパは「杉本」と呼び捨てなのですが。
無垢な人々を守ろうとする「大人」な杉本の魅力。
いいですよねー。

壮大で、冒険に満ちていて、ちょっぴり残酷、ちょっぴりクレイジー・・・、
本作はそんなストーリーの導入部といっていいでしょう。
巨大なヒグマが襲いかかってくるシーンなどは、
やはりアニメよりも迫力があって、コワイコワイ・・・。

次はじっくりテレビドラマの方を楽しもうと思います。
(Amazon prime videoでも視聴できます。)

 

<WOWOW視聴にて>

「ゴールデンカムイ」

2024年/日本/128分

監督:久保茂昭

原作:野田サトル

出演:山崎賢人、山田杏奈、眞栄田郷敦、矢本悠馬、玉木宏、舘ひろし

冒険ストーリー度★★★★★

満足度★★★★☆