保護か、犯罪か
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北國浩二さんの小説「嘘」の映画化です。
絵本作家の千紗子(杏)は、長年絶縁状態だった父(奥田瑛二)が
認知症を発症したため、故郷の父の元を訪れます。
しかし、父はすでに千紗子を娘とも認識できない様子。
まるで他人のような父との同居に辟易する千紗子。
そんなある時、千紗子は事故で記憶を失った少年を助けます。
その体には、虐待らしき痕跡が何カ所も・・・。
千紗子は記憶をなくした少年を元の家庭に戻すことなどできないと思い、
自分が母だと嘘をついて、少年と一緒に暮らし始めます。
認知症の父。
父と疎遠だった娘。
そして、記憶をなくした血のつながらない孫。
千紗子は、父の認知症をいいことに、少年を自分の本当の息子だと言いくるめます。
そして始まった不思議な3人の生活。
けれど世の常で、老人と子供は相性が良いのです。
次第に父と少年は心を開くようになっていって、
そうなると千紗子との関係も良くなってくる。
3人は次第に打ち解けて、「家族」のようになっていきます。
そして、千紗子の友人(佐津川愛美)とその息子、
父の幼馴染みでかかりつけの亀田医師(酒向芳)という、
居心地の良い輪も生まれる。
しかし、元々の根っこは、千紗子が少年の実の両親に何も告げずに、
少年の素性を隠して自分のもとに置いてしまっているということ。
いかに少年を守るためとはいえ、これは犯罪なのです。
こんな平穏な日々が続くわけもなく・・・。
凍り付くような終盤へと物語は進んでいくことに。
現に児童虐待はあるわけで、
どうかいち早くそれを察知して救いの手を差し伸べることができる
有効なシステムが整備されてほしい。
もちろん今でもそれはあるのですが、もっと柔軟に、確実に・・・。
すべての親が満たされた気持ちでいることができれば、
こういうことはなくなるのかなあ・・・?
<WOWOW視聴にて>
「かくしごと」
2024年/日本/128分
監督・脚本:関根光才
原作:北國浩二
出演:杏、中須翔真、佐津川愛美、酒向芳、木竜麻生、安藤政信、奥田瑛二
隠し事度★★★★☆
満足度★★★★☆