映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

フルートベール駅で

2015年01月06日 | 映画(は行)
一見の価値あり



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2009年元旦。
米サンフランシスコのフルートベール駅で、実際に起こったことの映画化です。
3才の娘を持つ22才の黒人青年、オスカー・グラントが、
警官に銃殺された事件。
今またアメリカで同様の事件が波紋を呼んでいるところでもあります。
アメリカの黒人差別や銃社会、問題が大きすぎです。



ここで描かれるオスカー・グラントは、
前科はあるものの、麻薬の売人はやめて、まともな生活をしようと努めています。
母の誕生日にカニを買い、娘と遊ぶ良きパパでもある。
仕事はクビになって、まだ先は見えないけれど、
大晦日の夜、仲間とともにサンフランシスコに花火を見に行って年が明ける。
何かいいことがある年になればいいな・・・
そんな気持ちの時でした。
電車の中で喧嘩をふっかけられて
ちょっとした騒ぎになってしまいます。
たちまち警察が駆けつけて、彼らは無理やり連行されそうになる。
特に誰が怪我をしたというのでもないのに。

状況を説明しようとしたオスカーを何人もの警官が組み伏せ、
そのうちの一人が背中から彼を撃ってしまうのです。
もちろんオスカーは銃など持っていませんでしたし、
仮に持っていても、こんなに何人にも抑えこまれた状況で
銃など発射できるわけがありません。
病院では「殺人事件だ」と言っていましたが、
結局裁判では、撃った警官は「業務上過失致死」にしかならなかったとか。
大勢で賑わっていた駅なので、
その時の生の映像が多く残っていてさえも、この結果。



この事件を例えば新聞で読んだとして、
「へ~、黒人への差別かな。ひどいな。」
と思うくらいなのだと思いますが、
本作で、その名も無き黒人青年の生活を丁寧に描くことにより、
まるで家族が亡くなったような痛みを私達に与えます。

白人の警官から見れば、単なる街のチンピラの一人かもしれないけれど、
家族があって、友人がいて、人生がある。
どんな人だって、まるでゴミのように見捨てられていいわけではないということを
強く訴えています。
この時節柄、一見の価値がある作品です。



フルートベール駅で [DVD]
マイケル・B・ジョーダン,メロニー・ディアス,オクダヴィア・スペンサー,ケヴィン・デュラント,チャド・マイケル・マーレイ
東宝


「フルートベール駅で」
2013年/アメリカ/85分
監督:ライアン・クーグラー
出演:マイケル・B・ジョーダン、オクタビア・スペンサー、メロニー・ディアス、ケビン・デュランド、チャド・マイケル・マーレイ
テーマ性★★★★★
満足度★★★★☆