映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

東京タワー(2004)

2018年12月31日 | 映画(た行)

大学生と人妻と・・・

* * * * * * * * * *

21歳大学生の徹(岡田准一)は、
青山の一等地でセレクトショップを経営する41歳詩史(黒木瞳)と不倫関係を結んでいます。
また一方、徹の高校時代の同級生耕二(松本潤)は、
同世代の恋人がいながら、人妻・喜美子(寺島しのぶ)と関係を持っています。
この二組の年上・人妻と青年との恋模様を描きます。

2004年、およそ15年前の作品なのですが、なんと言っても岡田准一さん、松本潤さんが若い!! 
どちらも今も大活躍中で変わらずに素敵ですが、
20代前半くらいの若さというのは特別なような気がします。
なんだかまだ無防備かつ硬質。
若さのオーラが立ち込めるよう・・・。
はあ~。
ストーリーはともかく(?)この二人を見られただけでラッキー♡という感じでした。
そこへ行くと、黒木瞳さん、寺島しのぶさんは
ほとんど今と変わらないようなのが逆に怖くもあります・・・。
何にしても、時の流れは誰の上にも等しく流れ、
一時一時が、過去へ過去へと消えてゆくものなんですねえ
・・・と、一人しみじみしてしまいました。


さて本作、原作は江國香織さん。
恋模様はお手の物。


詩史の方はセレブ。
今の地位も資産家の夫なくしては成り立ってはいないという立場です。
徹はとにかく一途で、夕方頃には彼女からの電話がかかってきそうなので
極力外出しないようにして待っている。
(うわー、この辺がやはり時代を感じる!)
岡田准一さんといえばこの頃は武士だの刑事だの渋い役が多いですから、
こういうふうにまだ幼いとも言えるほどのピュアさというのがすごく新鮮な感じがします。


そして喜美子の方は、割と普通の主婦。
しかし、若い愛人を持つに至って彼女はどんどん変わっていきます。
耕二は徹と違ってチャランポランなので、
次第にそういう男に対してキレていくんですね。


ストーリー的には、こちらのコンビのほうが喜美子の変化が表れていて好きです。
詩史の方はいかにも綺麗事めいていて、ちょっと出来過ぎ。
東京タワーのはずがラストはエッフェル塔になってしまっているし・・・。

エンディング曲が山下達郎さん。
これもまた、得した感じ。

東京タワー プレミアム・エディション [DVD]
源孝志,江國香織,中園ミホ
バップ


<WOWOW視聴にて>
「東京タワー (2004)」

2004年/日本/125分
監督:源孝志
脚本:中園ミホ、源孝志
原作:江國香織
出演:黒木瞳、岡田准一、松本潤、寺島しのぶ、余貴美子、岸谷五朗
眼福度★★★★★
不倫度★★★★★
満足度★★★.5

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マイ・サンシャイン

2018年12月29日 | 映画(ま行)

起こるべくして起こった暴動

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1992年ロサンゼルス暴動の影で、あったかもしれない物語。

1992年、ロサンゼルス、サウス・セントラル。
ミリー(ハル・ベリー)は、
家族と一緒に暮らすことができない子どもたちを預かり、育てています。
隣人のオビー(ダニエル・クレイグ)は、
子どもたちの騒々しさに文句をつけていましたが、実は、そっとミリーたちを見守っていたのです。
その頃、人々の関心を引く2つの事件があります。

15歳の黒人少女が万引きしたとの疑いを持った女店主が
彼女を射殺したラターシャ・ハーリンズ射殺事件。

黒人男性が4名の白人警官に過剰な暴力を受けたロドニー・キング事件。

女店主は執行猶予付き判決、4人の警官は無罪、という判決が出たところで、
アフリカ系アメリカ人の不満が爆発。
ロスで大きな暴動が発生してしまったのです。
ミリーやその子どもたちも不本意ながらその暴動に巻き込まれてしまい・・・。

ここに描かれている2つの事件とその判決、そしてその後の大暴動、
皆実際にあったことです。
人はみな「平等」と言われてはいても、実際には貧富の差や人々の差別感情が歴然と存在しています。
こんな事件や裁判が実際にあったとしたら、
暴動が起こるのは無理もないか・・・と、思えてしまいます。

何気ない日々の中にも差別は大きな壁となってそびえているから、
何か事が起これば一気に不満が爆発してしまう。
日本人はこういう認識に少し疎いですけれど・・・。

本作のミリーの家には子どもたち(主に黒人)が大勢いて、
はじめ、なんでこの人こんなに子沢山なの?と思ってしまいましたが、
実子ではありませんでした。
(実子の長男は、いたんですよね。)
そして隣人のオビーは、ちょっとクレイジーがかった野蛮で変な人・・・と思えたのですが、
意外にも優しく思いやりのあるヤツだったのです。
ダニエル・クレイグといえばやはり007、冷静沈着なイメージが強いですが、
本作ではどこにでもいそうな、ちょっと怖そうだけど実は愛嬌のあるオッサン。
これ、いいですよね。
気に入りました。

暴動の悲惨なシーンが多い中で、ミリーとオビーの必死だけれどもなんだかおかしな様子が、
陰惨な作品にならずに良い味を出しています。
ミリーがつい見てしまったあからさまな夢が、楽しい。

<ディノスシネマズにて>
「マイ・サンシャイン」
2017年/フランス・ベルギー/87分
監督:デニズ・ガムゼ・エルギュベン
出演:ハル・ベリー、ダニエル・クライグ、ラマー・ジョンソン、カーラン・ウォーカー、レイチェル・ヒルソン

歴史発掘度★★★★☆
肝っ玉母さん奮闘度★★★★★
満足度★★★★☆

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「ザ・カルテル 下」ドン・ウィンズロウ

2018年12月28日 | 本(ミステリ)

圧倒され、戦慄させられる、麻薬戦争の姿

ザ・カルテル (下) (角川文庫)
峯村 利哉
KADOKAWA/角川書店

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捜査陣の中に、裏切り者がいる。
選び抜かれたメンバーの誰が?
密かに調査を進めたケラーは、驚愕の事実に対峙する。
そんな中、バレーラが次なる狙いと定めたシウダドフアレスでは、
対立する勢力が衝突し、狂気と混沌が街を支配していた。
家族が引き裂かれ、命と尊厳が蹂躙される。
この戦争は、誰のためのものなのか。
圧倒的な怒りの熱量で、読む者を容赦なく打ちのめす。
21世紀クライム・サーガの最高傑作。

* * * * * * * * * *

「ザ・カルテル」怒涛の下巻。
前作「犬の力」も相当強烈なストーリーだと思っていましたが、
本作を読むとそんなのはまだほんの前哨戦に過ぎなかったのだということがわかります。

ケラーが信頼を寄せていた捜査陣の中に裏切り者がいたことが発覚します。
どこまでも政治や警察等の中枢部に入り込んでいる麻薬カルテルの触手。
ケラーは思うのです。
以前は麻薬撲滅のために戦っていた。
麻薬で苦しむ人を無くしたいという純粋な思い。
しかし今はただひたすらアダン・バレーラを"狩る"ためだけに生きている・・・。
そのためには手段も選ばない覚悟で・・・。


ところが作中で混迷を深めてくるのは、そのアダンの思惑ではありません。
様々なカルテルの抗争が続く中、アダンと同盟関係にあるセータ隊が暴走し始める。
これはもう完全な軍隊なのですが、やりたい放題、狂気の殺戮軍団。
例えば自分たちのことを批判する記事を書くジャーナリストを惨殺。
あらゆる目立つ人物には無理やり金をにぎらせて味方につける。
拒めば即、死あるのみ。
また例えばバスに標的の人物が乗っていたとすれば、他の乗客も巻き込んで皆殺し。
女も子供も、実際に内通者であるのか、ないのかもお構いなし・・・。
悲惨な出来事の日常化に、打ちのめされてしまいます。


そんななか、ケラーとアダンの関係性に予想外の変化が・・・!
いよいよ佳境、セータ隊の本拠地に乗り込むシーンは本当にこちらまで緊張してしまいます。
前回にも書いたとおり、この物語は全くのフィクションというわけではなく、
メキシコで起こった事実を元にしているということに戦慄を禁じえません。
作中で私達が愛着を覚えた幾人かもやはり犠牲者になってしまうというところで、
より出来事を自分の身近に感じることもできました。
アダンも嫌いじゃなかったんだけどな・・・。


巻末の解説で村上貴史氏が、この麻薬戦争の概要を次のようにまとめています。

アメリカが麻薬を非合法とし、それとの戦争に大金を注ぎ込みながらも、
一方でアメリカは大金を支払って非合法な麻薬を購入し、
それを楽しんでいる姿が語られている。
麻薬との戦争に注ぎ込んだアメリカの金が、
メキシコの腐敗を増進させ、メキシコ国内の争いを加速させ、
麻薬商人だけでなく一般市民の命をも奪い、
麻薬の価格を高水準で安定させ、アメリカの武器商人を潤わせる。

様々な人物をリアルに描きつつ、このような構図をくっきりと浮かび上がらせる。
バイオレンス描写は決してダテではない。
なんとも圧倒される力を持った作品なのでした・・・。

「ザ・カルテル 下」ドン・ウィンズロウ 峯村利哉訳
満足度★★★★★

 

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レッド・スパロー

2018年12月27日 | 映画(ら行)

自身の知恵で生き延びろ!

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アメリカ作品でありながらロシアが舞台のスパイサスペンス。

事故でバレリーナの道を絶たれたドミニカ(ジェニファー・ローレンス)。
ロシア政府の諜報機関の一員となり、
自らの肉体を使った誘惑や心理操作などを駆使し、
情報を盗み出す「スパロー」となるための訓練を受けます。

やがて頭角を表したドミニカは、
ロシアの機密情報を探っていたCIA捜査官ナッシュ(ジョエル・エドガートン)に近づくミッションを与えられます。
ドミニカとナッシュは互いに惹かれ合いながらも、
それぞれの任務を果たそうとしますが・・・。

スパローとはつまりハニートラップ要員で、
スパイ養成所というよりも娼婦の養成所だとドミニカは理解します。
それでなかなか際どいシーンや残酷なシーンも多いのです。
ジェニファー・ローレンスがなかなか妖艶にそんな役をこなしていたと思います。



実は、ドミニカがバレリーナ生命を絶たれたのは、
ライバルのバレリーナとその彼氏(ドミニカのバレエのパートナー)の陰謀だったのです。
そのことを知ったドミニカが二人をぶちのめしに行くシーンが初めの方にあって、
驚かされます。
つまりはそのような大胆な決意や行動力があるというところで、
スパイの素質ありと目をつけられたわけなのです。



ドミニカ自身は、ロシア政府のために働きたいなどとは少しも思っていないのですが、
彼女の母が体を病んでおり、この仕事を引き受けなければ援助も打ち切られ、
劣悪な環境の施設に放り込まれてしまうとわかっていたため、協力せざるを得なかったのです。
その後も、ドミニカの母がいわば人質のようになってしまい、
そうでなければアメリカに亡命することができたかもしれない、というところでも、それができない。
こんな苦境をどう乗り越えて行くのか。
自らの知恵と力を駆使する、強い女性は好きです!!


レッド・スパロー 2枚組ブルーレイ&DVD [Blu-ray]
ジェニファー・ローレンス,ジョエル・エドガートン,マティアス・スーナールツ,ジェレミー・アイアンズ,シャーロット・ランプリング
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

<WOWOW視聴にて>
「レッド・スパロー」
2017年/アメリカ/140分
監督:フランシス・ローレンス
出演:ジェニファー・ローレンス、ジョエル・エドガートン、マティアス・スーナールツ、シャーロット・ランプリング、メアリー=ルイーズ・パーカー
絶体絶命からの逆転度★★★★☆
残虐度★★★★☆
満足度★★★.5

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アリー スター誕生

2018年12月26日 | 映画(あ行)

歌の力

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音楽業界でスターになることを夢見ながら、
小さなバーで細々と歌いながら過ごしていたアリー(レディ・ガガ)。
彼女は周囲から容姿を否定されたりしたことで、自分に自信をなくしていたのです。
ある日、世界的ロックスター、ジャクソン(ブラッドリー・クーパー)が
ふらりと店を訪れてアリーの歌を聞きます。
アリーはジャクソンの後押しを受けて、スターダムの階段を駆け登って行きます。
しかし一方、ジャクソンは難聴に苦しんでおり、アルコール依存症となり・・・。

先日みた「ボヘミアン・ラプソディ」もそうでしたが、
音楽が人の心に訴える力はすごく大きいですね。
しかもトップスター、レディ・ガガその人が演じているので、
当たり前といえば当たり前ですが、そのパワフルな歌声に魅了されてしまいます。



そしてまたブラッドリー・クーパーの渋い歌声もいいなあ~。
本作はじめはクリント・イーストウッドが監督を務める予定だったのが、
ブラッドリー・クーパーに変更になったといいます。
映画「ジャージー・ボーイズ」の監督をするなど
音楽にも大変造詣の深いクリント・イーストウッド監督のものも見たかった気がしますが、
こちらの監督兼出演のブラッドリー・クーパーもすごい! 
しかもこんなに歌えるなんて。
一体どれだけの才能を持っているのだか・・・、
ズルいといいたくなってしまいます。

まさに魂の叫び、聴くだけで涙が溢れてしまうような歌というものは、
確かにあるものですね・・・。

さて本作、アリーを応援するパパ軍団や、
ジャクソンと複雑な心理関係にある兄の存在が物語に深みを添えていました。

才能があればそれだけでいいと言うわけでもない。
環境とか、運とか・・・実はいろいろなものがチャンスを作ったり失わせたりするショービジネスの世界。
夢を叶えられるのはほんの一握りの人で、
しかもそれはいつまで持つかもわからない危うい場所。
儚さもまた、美しさの一つ。


<ディノスシネマズにて>
「アリー スター誕生」
2018年/アメリカ/136分
監督:ブラッドリー・クーパー
出演:レディ・ガガ、ブラッドリー・クーパー、アンドリュー・ダイス・クレイ、デイブ・チャペル、サム・エリオット
音楽の力度★★★★★
満足度★★★★☆

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「ザ・カルテル 上」ドン・ウィンズロウ

2018年12月25日 | 本(ミステリ)

再びの抗争劇

ザ・カルテル (上) (角川文庫)
峯村 利哉
KADOKAWA/角川書店

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麻薬王アダン・バレーラが脱獄した。
30年にわたる血と暴力の果てにもぎとった静寂も束の間、
身を潜めるDEA捜査官アート・ケラーの首には法外な賞金が賭けられた。
玉座に返り咲いた麻薬王は、血なまぐさい抗争を続けるカルテルをまとめあげるべく動きはじめる。
一方、アメリカもバレーラを徹底撲滅すべく精鋭部隊を送り込み、壮絶な闘いの幕が上がる―
数奇な運命に導かれた2人の宿命の対決、再び。
『犬の力』、待望の続篇。

* * * * * * * * * *


「犬の力」続編。
はじめから読んでいた方は、ずいぶん間をあけて待望の続編だったと思うのですが
私は先日「犬の力」を読んだばかりなので、
すぐ続きが読めるというのは、なんだかお得な感じがします。

前作ラストで、麻薬王アダン・バレーラはついに逮捕されてしまったわけですが、
なんと本巻では早速脱獄。
そもそも、メキシコの獄中では看守もみな麻薬カルテル組織に抱き込まれており、
アダンは特別室で暮らし、クリスマスには親族一同を招き入れてパーティーを行う等、
驚きの豊かな暮らしぶり。
それでもアダンの不在中に麻薬密売組織の勢力図は大きく書き換えられてしまっています。
獄中の内乱騒ぎ(実は自作)に乗じて、脱走に成功するアダン。
そして、自らの麻薬王の地位を取り戻すために様々な画策を巡らすわけですが・・・。


この頃、大きな勢力を持つところは軍隊のような組織を作り上げているのです。
敵対する者同士では単にマフィア同士のいざこざというふうではなく、
すっかり「戦争」の様相を呈している・・・。


一方、捜査官アート・ケラー。
実は本作の冒頭で、修道院の片隅で養蜂を始めた「男」のことが描かれているのですが、
なんとこれがアートでした。
もう自分の役目は終わったと思った彼は、まるで世捨て人のようにそんな生活を始めていたのですが・・・。
しかしつかの間、獄中のアダンからアートに200万ドルの賞金が賭けられる。
これでは修道院に迷惑をかける事になると思った彼は、その地を立ち去り、
更にはアダンが脱獄したと知って再び捜査側に身をおくことになるのです。
しかし、あくまでもメキシコ側の捜査協力という立場で、
もちろん表立った動きをすれば自身の身に危険が及ぶという、なかなか不自由です。
そんなわけで、本巻についてはアートは事態の傍観役がほとんど。
きっと大きな動きは下巻で出てくるでしょう。


しかしなんとここにはアートの恋(!?)らしきものも描かれていて、ウフフです。
また、アダンの方は獄中で知り合ったマグダという女性といい仲になりますが、
その後、盟友であるナチョの娘・エバと結婚します。
マグダは当然心穏やかではないものの、アダンの情婦という立場だけでは将来が不安なため、
自らが手腕を発揮し、経営者としても道を歩み始めます。
私は独立心旺盛の彼女が好き。
また、一介の少年が様々な難局・生死の境をくぐり抜けながら、
この麻薬カルテル組織の中でのし上がっていく様子を描いた部分もあります。
様々な人物の人生と麻薬カルテル・・・。
本当にいくつものドラマが複雑に絡み合っているのですね。

そうそう、本巻の冒頭に「本書を次の人々に捧げる」とあり、
その後延々と3ページ半に渡って人の名前が書き連ねてあるのです。
コレは一体何?と思えば最後に
「彼らは本書の物語が展開する時代に、
メキシコで殺されたり"消え"たりしたジャーナリストの一部である」
とある。
驚きました。
実のところ本書は「物語」に過ぎないと思っていたのですが、
かなり事実に近いということのようです・・・。
恐ろしいことです・・・。

「ザ・カルテル 上」ドン・ウィンズロウ 峯村利哉訳 
満足度★★★.5

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ドーベルマン

2018年12月23日 | 映画(た行)

ひたすらバイオレンス

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バイオレンス作品ながら、バンサン・カッセルにモニカ・ベルッチという出演者で、
多少のドラマ性を期待して見たのですが・・・、失敗。
これは私が見るべき作品ではありませんでした。


パリ。
ドーベルマンことヤン(バンサン・カッセル)は強盗団を率いて、
神出鬼没な銀行強盗を繰り返し、成功させています。
そして、彼らを追う警官たちの中にクリスティーニという刑事がいて、
彼は手段を選ばない冷酷無比の狂気じみた刑事。
互いの、バイオレンスの応酬が始まります・・・。

ストーリーを説明したくてもこんなもので、ひたすら暴力シーンがあるだけです。
コミックが原作らしいのですが・・・。
いやはや、こんな作品をかっこいい!と思う人とはあまりお友達になりたくはない。
ギャングが主人公で、仲間内の結束は確かにあるけれど、それだけ。
警官側にも正義なんてありはしない。
いややはり、はじめから私が見てはいけない作品でした。

ドーベルマン [Blu-ray]
ヴァンサン・カッセル,モニカ・ベルッチ,チェッキー・カリョ
ファインフィルムズ



<WOWOW視聴にて>
「ドーベルマン」
1997年/フランス/105分
監督:ヤン・クーネン
原作:ジョエル・ウザン
出演:バンサン・カッセル、モニカ・ベルッチ、チェッキー・カリョ、アントワーヌ・バスラー、ドミニク・ベテンフェルド

暴力性★★★★★
満足度★☆☆☆☆

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ガンジスに還る

2018年12月22日 | 映画(か行)

親子3代の自分らしさ

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インド作品ですが、ダンスシーンはなし!

不思議な夢を見て自らの死期を悟った父・ダヤは、
ガンジス川の畔の聖地バラナシに行くと家族に宣言します。
家族の反対にも聞く耳を持ちません。
やむなく息子ラジーヴが付き添うことになり、二人はバラナシの「解脱の家」にやってきました。

「解脱の家」というのは安らかな死を求める人々が集う施設。
ここでは解脱=死で、おめでたいこととされるのです。
滞在は解脱しようとしまいと15日間まで、と施設からは言われてしまいますが、
ラジーヴから見た父はそんなに早く死ぬようには思えない。
仕事を投げ出して来ているラジーヴは、
いつまでいなければならないかもわからない状況に苛立ちを隠せません。
・・・それでもしばらく滞在し、お互いに正面から向き合うことで
次第に二人の心は打ち解けていきますが・・・。

この間に、ダヤの孫(ラジーヴの娘)が、決まっていた結婚をやめて、
大学に行くと言い出します。
ラジーヴは激怒しますが、ダヤは思うようにすればいいというだけです。
ここに登場する3代の人物たちは
それぞれにインドのある時代を代表するマインドの持ち主なのだろうと思い当たりました。



これまでのインドの伝統を引き継いできたダヤは、
せめて死ぬ時は自分の生まれ育った文化の中で死にたいと思ったのかもしれません。
大切なインドが育んできた宗教・思想・伝統の中で。
それこそが自分らしさだと、彼は知っていた。


一方、孫娘は生まれたときから近代化されたインドにいます。
祖父が自分なりの在り方を貫こうとしているのを見て、
彼女も気持ちが変わったのではないでしょうか。
今を生きている自分は、風習に則って早く結婚するよりも、自立する道を歩みたい、と。


そこで厄介なのは、過渡期、どっちつかずのラジーヴなんですね。
伝統を重んじようとする父、近代化の波に従おうとする娘、
どちらにも納得ができない。
けれども結局は、それが父らしさであり、娘らしさなのだと納得していく
という物語なのではないかと思いました。

まさに今のインドを知ることができる、素敵な作品です。
日本が歩んできた道も、同じですけれど。

<ディノスシネマズにて>
「ガンジスに還る」
2016年/インド/99分
監督:シュバシシュ・ブティヤニ
出演:アディル・フセイン、ラリット・ベヘル、ギータンジャリ・クルカル、パロミ・ゴーシュ、ナブニンドラ・ベヘル

インドの今を見る度★★★★★
家族愛度★★★★☆
満足度★★★★☆

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「海街diary9 行ってくる」吉田秋生

2018年12月21日 | コミックス

おなごり惜しい、完結編

海街diary 9 行ってくる (フラワーコミックス)
吉田 秋生
小学館

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大ヒット☆鎌倉での四姉妹物語…ついに完結

春夏秋冬、いつもこの街にいた。いつも一緒だった。
そして―――すず、旅立ちの時…

浜田は千佳(ちか)と入籍し、エベレスト登山のために旅立った。
幸(さち)と佳乃(よしの)もそれぞれの恋が進展。
すずは中学生最後の夏が終わろうとしていることを実感する…。

すずが中学1年の夏、蝉時雨のやむ頃から始まった家族の物語、ついに完結!
すず、そして弟・和樹の"その後"を描いた番外編「通り雨のあとに」も収録。

* * * * * * * * * *

2006年から12年にわたって連載されていた本作がついに完結。
もう12年になるんですか・・・。
あの、涙が溢れて仕方なかった第1巻の感動は今も心にあります。
物語の中では、すずが中学1年のとき、鎌倉の異母妹である3姉妹と共に暮らし始めるようになってから
中学卒業まで、2年半程度の出来事なのですが。
すずだけでなく他の3人の恋模様と生き方が丁寧に描かれていて、
これまでの9巻、どれをとっても見どころ満載、
私にとっては最も大切なシリーズの一つとなりました。
この度も結局、全巻また読み直してしまった・・・!


本巻は最後の山場、チカちゃんの出産などもあって、実に納得の最終巻です。
そしておまけに、更にこの約10年後のことが描かれる番外編「通り雨のあとに」があるのも嬉しい!! 
ここでなんとチカちゃんの子供の名前が分かる仕掛けです。
本編ではチカちゃんが「チョモランマ」のチョモ?なんて言っていたのですが、
いやいや、いくらなんでもそれはない。
チョモではなく「ランマ」でした。
走馬と書いてランマ。
なるほど~。
大人になったすずも登場します。
間もなく結婚するということで、もちろん相手は、派手な傘が苦手のあの彼ですよね。
10年後とすればすずは25歳ということで、それでも早すぎるくらいですが。
私の心残りはサチ姉の後輩ナース「アライさん」が最後まで顔を表さなかったこと。
せめて最後の最後に、出てきてほしかった・・・。


もう続きはないのかと思うと、淋しくてたまらないのですが、
すずも新たな道を歩み始めたところですし・・・。
祝福してあげなければ・・・。
でもきっとまた、番外編で4姉妹のその後を垣間見る機会もあるのでは・・・?と期待しています。


「海街diary9 行ってくる」吉田秋生 小学館フラワーズコミックス
満足度★★★★★

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ザ・マウンテン 決死のサバイバル21日間

2018年12月20日 | 映画(さ行)

サバイバル&ラブロマンス

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嵐の影響で欠航便続出の飛行場。
そこに、どうしても急いで移動したい二人の男女がいました。
NYで結婚式を挙げる予定のアレックス(ケイト・ウィンスレット)と、
ボルティモアで手術の執刀予定がある医師・ベン(イドリス・エルバ)。
アレックスはやむなくセスナ機をチャーターし、困っているベンを誘い、同乗します。
嵐をうまく迂回できる腕利きのパイロット。
しかし突如脳卒中を起こし意識不明になってしまいます。
飛行機は雪の山中に墜落。
パイロットは死亡。
ベンはなんとか軽傷でしたが、アレックスは足を負傷。
そして、パイロットの飼い犬が一匹生き残ったのでした。
壊れた機内でなんとか暖を取ることはできたのですが、残された食料はわずか。
このまま救助を待つか、それともなんとか下山を試みるか・・・、
二人の意見は食い違います。

このまま様子を見ようというのがベンで、積極的に動こうとするのがアレックス。
男女逆なような気もしますが、こんなこともアリかもしれませんね。
北海道人でありながら寒いのが嫌いな私は、
こんな雪山の中を歩こうとするのはクレイジーに思えて仕方ないのですが、
ただ待っていても餓死が先か凍死が先かというだけですし・・・。
ベンは飛行機の場所を知らせる発信機が作動しているはずだと言うのですが、
二人が歩き始めて間もなく、発信機がバラバラに壊れているのを発見します。
アレックスが足を痛めているので、一日に進める道のりはわずか。
そんなこんなで二人と一匹は3週間も雪山をさまようことになる・・・。

本作、このようにサバイバルの物語ではありますが、
終盤から、しっかりラブロマンスになっていくのです。
実は私はここのところが気に入ってしまった・・・!
非常事態を乗り越えた二人は必ず恋に落ちるもの・・・これはもう鉄則ですよね。
だからその非常事態が終えたあと、どうなるのか、そこが問題なのです。
ましてや、アレックスは結婚式を挙げる寸前の相手がいたわけですし・・・。
まあ、アメリカ映画ですし、ラストは完全に想像がついてしまうわけですが、
それでも十分に楽しませてもらいました。


雪山のサバイバル、でも本作は明らかに女性向きです!!
最後まで名前がわからず、「ドッグ」と呼ばれていたワンちゃんも可愛いです!!

ザ・マウンテン 決死のサバイバル21日間 2枚組ブルーレイ&DVD [Blu-ray]
ケイト・ウィンスレット,イドリス・エルバ,ダーモット・マローニー,ボー・ブリッジス
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン



<J-COMオンデマンドにて>
「ザ・マウンテン 決死のサバイバル21日間」
2017年/アメリカ/103分
監督:ハニ・アブ=アサド
原作:チャールズ・マーティン
出演:ケイト・ウィンスレット、イドリス・エルバ、ボー・ブリッジス、ダーモット・マローニー
サバイバル度★★★★☆
ロマンス度★★★.5
満足度★★★.5

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A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー

2018年12月19日 | 映画(あ行)

人の“思い”はどこへ行くのだろう・・・

* * * * * * * * * *

題名だけ見るとホラー作品のようで怖そうなのですが、
これはホラーではなくて・・・ファンタジーともいうべき作品。



田舎の一軒家で暮らす若い夫婦がいました。
ある日、夫が交通事故で亡くなってしまいます。
病院のストレッチャーに横たわった遺体には白いシーツが被せられています。
・・・やがて、白いシーツの下の“何者か”がムクリと起き上がり、自宅の方へ歩み始めます。
どうやら夫は幽霊になってしまったようです。
夫は自宅へ戻り、悲しみに暮れる妻を見守り続けます。
夫の姿は妻にも見えないのです。
やがて、妻は新しい生活を求めて引っ越していってしまいますが、
夫はこの家に残り続けます。
月日が流れ、家には他の家族が入居したりしながらも古びて廃屋となり、
やがて取り壊されてしまいます。
それでも夫はその場をさまよい続け・・・。

長い長い時の果てに、驚く展開があります。
幽霊は何もせずただあたりをさまよう存在となり、
ほとんどストーリーなどないに等しいのでは・・・?と思ったのですが、
意外にもこれは壮大なストーリーであったようです。



画面が専門的には何というのか分かりませんが、
ちょうど昔のテレビ画面のような縦横比で、四隅が丸みを帯びています。
そして、アメリカ映画には珍しくカメラの長回し。
同じシーンがず~っと長く映し出されます。
その中で、シーツを被せられた遺体が起き上がるシーンにはちょっとビビってしまいました。
はじめ妻が傍らにいて、立ち去ったあともずーっとその場面が続くのですよ。
とりあえずゴーストが登場することはわかっているわけですから、
きっとここで何かが動き出すのだろう・・・と思っていながらも、ドキドキ・・・! 
長回しの効果ここにありって感じです。


妻は小さい頃から引っ越しを繰り返していて、
その都度何か詩のようなものを書いた紙片をどこかの隙間に隠しておいた、
というエピソードを夫に話していました。
そして、夫を亡くしてこの家を出ていくときにも、
妻は何かを書き付けて壁の隙間に差し込んで行ったのです。
幽霊の夫はその紙片が気になって仕方がありません。
幾度も取ろうと試みますが取れないのです。
いつしか、幽霊の夫の妄執は、
妻のことではなくその紙片のことになってしまっている・・・。



幽霊はもしかすると4次元の存在で、
3次元にはないもう一つの要素は「時間」なのかもしれません。
あるとき、幽霊のいる家でパーティーが行われ、そこである人が宇宙の未来のことを話し始めます。
私たちの住む地球を含む銀河系宇宙の未来。
この膨大な宇宙が最後の最後にはたった一点に収束してしまうのだ・・・と。
そんなとき、この地球に生きた人々の想い・意識は一体どこへ行ってしまうのだろう・・・。
幸福だったり悲惨だったりした、人の思念・豊かな文化や芸術の残滓は一体どこへ・・・?
そんなことを考えさせられる一瞬でした。
地味な作品なのですが、私は気に入りました!

<ディノスシネマズにて>
「A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー」
2017年/アメリカ/92分
監督:デビッド・ロウリー
出演:ケイシー・アフレック、ルーニー・マーラ

人の想いの不思議度★★★★★
意外な展開度★★★★☆
満足度★★★★.5

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「絵本のなかを旅するようなかわいい世界の村」

2018年12月17日 | 本(その他)

こんなところの小道を歩いてみたい・・・

絵本のなかを旅するような かわいい世界の村
MdN編集部
エムディエヌコーポレーション

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まるで絵本の中に迷い込んだ様な可愛らしい風景を美麗な写真でお楽しみいただけます。
大自然と調和した村での静かな暮らしに想いを馳せたり、
お菓子のようなカラフルで可愛らしい街並みや、歴史の重みを感じる荘厳な建物など、
見ているだけで心がワクワクするかわいい風景満載です。
ご自身で楽しまれたり、プレゼントにも最適です。

◆カラフルで鮮やかなかわいい村
リクヴィール/キンセール/プローチダ/イア/アルターフレッケン
◆自然と調和したかわいい村
ヒートホールン/ハルシュタット/グリンデルワルト/サン・シル・ラポピー/コリッポ/レーヌ
◆ユニークな建物が建ち並ぶかわいい村
アルベロベッロ/チッピング・カムデン/ローテンブルク・オプ・デア・タウパー/ザーンセ・スカンス
◆歴史のロマンを感じるかわいい村
ロカマドゥール/コルマール/ブリエンツ/カッスルクーム/イニシア

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自然と調和した、可愛らしい村の家々・・・。
実際絵本の中を旅するような感覚で、ゆったりとページを捲っていきました。

私のお気に入りは、よく猫の写真集などでも登場する
エーゲ海に浮かぶ島、サントリーニ島の斜面に立ち並ぶ白い家々。
憧れますね・・・。


ドイツ、アルターフレッケンの白壁に格子の入った三角屋根の家並。
特に樹々が黄色く色づいた風景とのコントラストがたまりません。


オーストリア、ハルシュタット。
湖と山の間、教会の尖塔がアクセント。
素敵です。


イタリアのアルベロベッロ。
白壁に円錐形の屋根というのがなんとも独特で、不思議な光景を織りなしています。
おとぎ話の村のよう。

こんな場所でも、人々があたりまえに毎日を生活しているのでしょうね。
家の中もちょっと見てみたいです。


図書館蔵書にて
「絵本のなかを旅するようなかわいい世界の村」エムディーエヌコーポレーション

 

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海辺の生と死

2018年12月16日 | 映画(あ行)

ゆったりとした時が流れる島に持ち込まれる非日常

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島尾ミホ、島尾敏雄、実夫婦の実話に基づくストーリー。



第二次世界大戦末期。
奄美群島加計呂麻島。
朔(さく)隊長(永山絢斗)率いる海軍特攻艇の部隊が島に駐屯します。
国民学校教師トエ(満島ひかり)は、文学青年で物静かな朔に好意を覚えます。
ある日トエは、「今夜浜辺に来てください」という朔からの手紙を受け取り・・・。

作品はひたすらこの二人の愛を描いていきます。
どこにでもありそうなストーリーながら、
この戦時中という特異な背景が二人の絆をより悩ましいものに変えていく。
普段ならごくのどかで平和な島。
そこへやってきた海軍の部隊。
なんと彼らは特攻艇で出撃するためにやってきた・・・。
つまりは、敵船に体当たりで突っ込むのです。
こんなベニヤ板でできた小さな船で本当に敵の船を撃沈できるのか・・・と、
朔は独りごちてしまうのですが・・・。



いつか命を捨て敵船に突っ込まなければならない身の上の朔。
そして、島の女トエはいかにもおとなしげに見えながらも、
実は燃え立つような情念を秘めていて、
朔と会うためには真っ暗な夜の海に身を浸しながらも必死の思いでやって来る。
いつか死にゆく男。
万が一生き残ったとしても、島から出ていってしまう男と逢うために・・・。
このような立場で、男女の愛が燃え上がらないはずがありません。
そしてついに、出撃の前夜・・・。

ゆったりと流れる島の時間の中に持ち込まれる非日常。
これもまた戦争の物語なのでしょう。
その非日常が終わったとき、二人の愛もまた形を変えてしまうのか・・・。
それでも海は変わらず美しいですね・・・。


海辺の生と死 [DVD]
満島ひかり,永山絢斗
バップ

<WOWOW視聴にて>
「海辺の生と死」
2017年/日本/155分
監督:越川道夫
原作:島尾ミホ、島尾敏雄
出演:満島ひかり、永山絢斗、井之脇海
戦争の一面度★★★★☆
満足度★★★☆☆

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来る

2018年12月15日 | 映画(か行)

不気味さに圧倒される

 

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ホラー作品。
一人で見るにはちょっと勇気が必要でしたが、意外とそれほどコワイという感じではない。
むしろザワザワするというか、不気味さに圧倒されます。

秀樹(妻夫木聡)と香菜(黒木華)は、結婚式を終え、幸せな新婚生活を迎えます。
やがて女の子が生まれ、秀樹はイクメンパパとして、子育ての様子をブログで発信。
しかし次第に香菜が沈んだ様子を見せ始めます。
そして、秀樹の周囲で不可解な出来事が次々と起こり始めます。
不安を感じた秀樹は知人からオカルトライター野崎(岡田准一)と
霊感の強い真琴(小松菜奈)を紹介してもらいます。
得体の知れない強大な力を感じた真琴は
更に国内随一の霊媒師の姉・琴子(松たか子)に連絡を取りますが・・・。

常の物語ならば主要人物、特に女性は死なないものなのですが、
本作、そんなお約束はあっさりと裏切られます。
何か得体の知れない強大で邪悪なものが「来る」。
それは作中で最後まで明確な姿を表しませんし、
一体それが何者で、どんな由来でどこからやって来るのかも明かされないままです。
でも私は、本作はそれで成功していると思います。
よくあるホラー物では、終盤で不気味な何かがその姿を表してしまった途端、
滑稽味を感じたり白けたりしてしまうものです。
例えば、突然起こる災害や事故。
神の思惑か悪魔の仕業か、とにかく理不尽にもある日突然私達のもとにやってきます。
そうした強大な邪悪な力には、本来姿形などないのかもしれません。


本作においては「子供」を虐げるものに何かが襲いかかってくる、
大まかにはそういうテーマになっているように思います。


はたから見れば、子煩悩で、子供大好き、素晴らしく幸せな家庭を築きあげているよう見える秀樹。
でも彼にとってはそこにいる妻子よりもブログのほうが大事のようです。
そんな空気を感じ取り、また自らの母親から放置されて育った身の上故か、
子供に愛情を感じられない香菜。
一方、野崎もかつての恋人との間の出来事がトラウマになっており・・・。



それぞれが抱いている仄暗い思い。
だけれども、こんなこと世間にはいくらでもあり溢れているような気がします。
どう考えても彼らがこんな恐ろしい目に逢ういわれはないように思える。
つまり「あれ」が彼らに目をつけたのは、ほんのたまたまか偶然か・・・
そんなふうでもありますね。
そういう理不尽さがまた、コワイということか。

終盤の祈祷のシーンが凄かった。
松たか子さんの異様なオーラ。
仰々しい祈祷シーンは下手をすれば笑ってしまうようなものにもなりかねないと思うのですが、
ここではその迫力に息を呑むばかり。
神にでも仏にでも私も一緒にお祈りしたくなりましたよ・・・。
皮膚感覚でザワザワとしてしまう・・・
そういう意味で面白い作品です。

<シネマフロンティアにて>
「来る」
2018年/日本/134分
監督:中島哲也
原作:澤村伊智
出演:岡田准一、黒木華、妻夫木聡、小松菜奈、松たか子、青木崇高、柴田理恵

不気味さ★★★★★
理不尽さ★★★★☆
満足度★★★★☆

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「九十九藤」西條奈加

2018年12月14日 | 本(その他)

江戸の人材派遣業とは・・・?

九十九藤 (つづらふじ) (集英社文庫)
西條 奈加
集英社

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江戸の人材派遣業、口入屋。
縁あってその女主人となったお藤だったが、武家相手の商売は行き詰まっていた。
店を立て直すため、お藤が打って出た一世一代の大勝負は、
周囲の反発を呼び、江戸を揺るがす事態に発展。
さらに、かつての命の恩人によく似た男と出会い、心は揺れ…。
商いは人で決まる―
揺るぎない信条を掲げ、己と仲間を信じて人生を切り開くお藤の姿が胸を打つ、長編時代小説。

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久しぶりに西條奈加さんの時代小説。
江戸が舞台ではあるけれど、現代の女性の生き方を歌っているように思います。
というのも本作に登場するお藤は、
いろいろな紆余曲折と、なんとも心強い後ろ盾のおかげで、口入屋の差配となります。
口入屋というのは今で言う人材派遣会社のようなもの。
ただし、なんとなく私が最初に抱いたイメージとは違って、
武家に中間を派遣するというのが主な業務。
武家と言っても内情は厳しく、警護役やら参勤交代要員など、常に多くの人員を確保するだけの余裕がない。
そのため本当に必要なときにだけアルバイト要員を雇うと、そんなことらしいです。
なるほどねえ・・・、言われてみれば納得。
で、中間というと、私がこれまでテレビドラマや映画で見てきたのは
いかにも腰の低い下働きのおじさん・・・というイメージだったのですが、
主には警護役ということで、体が大きく無骨な者たち、時にはならず者っぽいところも・・・
というあらっぽい姿が、本作に登場する中間たちです。


お藤はもうそのような荒くれ者を相手にするのは止めにして、
商家を対象とした下働き要員の派遣を始めようと思います。
しかも、人材養成のところから始める。
つまりは研修ですね。
アイデアは良くて好評。
しかし、出る杭は打たれる。
周囲の反感を呼んで、やがて大変な事態に・・・。


このような、江戸で繰り広げられる起業の物語というのがずいぶん面白かったのですが、
なんと本作、ラブストーリーまでもが絡めてあって、一冊で二度美味しい本なのでした。
リアリティ的にはやや疑問もあるところながら、言ってみれば女性の自立の物語。
そう割り切れば悪くはありません。

「九十九藤」西條奈加 集英社文庫
満足度★★★.5

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