映画と本の『たんぽぽ館』

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「ワタシの川原泉 Ⅲ」

2015年01月03日 | コミックス
絶妙な力の抜け加減

川原泉傑作集 ワタシの川原泉III (花とゆめCOMICSスペシャル)
川原泉
白泉社


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読者投票により収録作を決定した前代未聞の傑作集
「ワタシの川原泉」第3弾が登場!
異色のフィギュアスケート長編「銀のロマンティック…わはは」に3つの短編を加え、
著者インタビュー他スペシャル企画を添えて、
読みやすいB6サイズでお届けします。
松たか子さんも激賞!


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先にⅠとⅡが出ていまして、
この度めでたく続きが出ました。
まもなくⅣも出る予定。
これってつまり、傑作選というよりは「全集」になってきましたね。
いずれにしても私はすべて読んでいますが、
これがまた、あらためて見てもやっぱりいいのだなあ・・・。


本巻に収められているのは、
「銀のロマンティック・・・わはは」、
「大地の貴族―9月はなごんでる」、
「カレーの王子さま」、
「Intolerance・・・あるいは暮林教授の逆説」。


何と言っても泣かされるのは
「銀のロマンティック・・・わはは」
ペアフィギュアスケートの頂点を目指す男女のストーリー。
有望視されながら、怪我でスピードスケートの道を断念した影浦忍と、
著名なバレエ・ダンサーであり演出家でもある父親を持つ由良更紗。
この二人、元気で力があってスピーディ。
技術も確かなんだけれど、
やたら無機質で情感というものが全くない。
会えばガミガミ喧嘩してるし、
愛だの恋だのなんか双方全く縁がなさそう・・・。
この二人が互いを思いやり、気持ちをひとつにしていくためには
やはり一つの試練がありまして・・・。
まあ、例によっておとぼけ顔の主人公たちが、
いつしか本気でひたむきにスケート打ち込んでいく姿に、
つい涙させられるのでありました。
全く、川原泉マジック。
なぜこの絵で泣かされる!?
この題名についている「わはは」というのが実にいいですよね。
著者は槇村さとるさんの「愛のアランフェス」や
おおやちきさんの「雪割草」に触発されて
フィギュアスケートの作品を書いてみようと思ったそうです
(どちらも私も愛読しました)。
でも、そもそも著者はそういう根っからの情熱的な作風の方ではありません。
つい自分でも照れてしまって「わはは」と付け足したのだろうな、
というあたりが容易に読み取れるのが楽しい。
こういう力の抜け加減が、私が川原泉さんを好きな第一の理由なのです。
それにしてもこの二人、
それぞれシングルでもかなりのセンを行きそうなのに、もったいないことです。


「大地の貴族」は、「カモメまゆ毛の嫌味なヤツ」がしっかり記憶に残っていました。

「カレーの王子さま」も、もちろん大好き。

暮林教授は川原作品には珍しくシリアス。
うーん、でもやはりおとぼけキャラのほうが好きかな?


「ワタシの川原泉 Ⅲ」花とゆめCOMICSスペシャル
満足度★★★★★