映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

王妃の館

2015年04月30日 | 映画(あ行)
ビクトル・ユゴーには見えないが、レオナール・フジタには見えるかも



* * * * * * * * * *

水谷豊が奇天烈なスーツを身にまとう、小説家?
そんな予告編を見て、怖いもの見たさで拝見しましたが・・・。



北白川右京(水谷豊)は、新作の執筆のため、
パリの「シャトー・ドゥ・ラ・レーヌ」(王妃の館の意)に宿泊する豪華ツアーに参加。
時折「小説の神」が降りてきて執筆が進み、
その小説の内容が劇中劇としてミュージカル形式で繰り広げられます。

しかし、このツアーは、倒産寸前の旅行会社が
ホテルの1つの部屋を2組に提供という二重売りで窮地を脱しようとする怪しげな企画であった・・・。
本作はまた、豪華ツアーと格安ツアーに参加した人々の
人間模様をコメディタッチで描くストーリーでもあります。

そう、コメディなんですよね。
だから実際、水谷豊の服装並みに全体が陳腐ではあっても、
そう目くじら立てることはないのかもしれない・・・。



でもこれ原作は浅田次郎氏なので・・・、
実はもう少し期待していたのですが。
そもそもこのツアー自体に無理がありすぎです。
始めから、豪華ホテル(ただし屋根裏部屋宿泊)の格安ツアーです、と
うたえばいいだけのこと。
ホテル側の大変過ぎる作業を考えると、
返って高くつくのではと思ったりする。
これで倒産寸前の会社が立ち直るとはとても思えない。
しかもミュージカルはあまりにも唐突でした。
曲と歌自体は良かったのですが。
むしろ本作は劇中劇シーンはなしにして、
人間模様をもっと複雑に描いていったほうが面白かったのではないかと思います。
結局、このように本筋とは関係ないことを想像してしまうというところで、
すでに失敗作。



でもまあ、パリの風景は素敵で、
やはり一度はルーブル美術館には行ってみたいとは思いました。

王妃の館 [DVD]
水谷豊
TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)


「王妃の館」
2015年/日本/123分
監督:橋本一
原作:浅田次郎
出演:水谷豊、田中麗奈、吹石一恵、尾上寛之、青木崇高、安達祐実、安田成美、石丸幹二

コメディ度★★★☆☆
満足度★★☆☆☆
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素粒子

2015年04月27日 | 映画(さ行)
性欲が、男性をいっそう孤独にする



* * * * * * * * * *

母親に捨てられた異父兄弟の、
それぞれの愛と性を描いています。


セックス依存症気味の文学教師ブルーノ(モーリッツ・ブライブトロイ)。
そして、遺伝子の研究をしている天才的な科学者だけれど、
女性関係にはひどく消極的なミヒャエル(クリスティアン・ウルメン)。
二人の母親は自由奔放で、この二人をそれぞれ父方の祖父母に預けてヒッピー生活をしていたのです。
両親からの愛をしっかり受けて育たなかったためか、
双方、愛や性についての認識がどこかゆがんでいながらも、
人並み以上の渇望があるように見受けられます。
初めのほうでブルーノのクラスの生徒がいみじくも言っていました。
「性欲が、男性をいっそう孤独にする」と。


やがて、双方真に愛すべき人と出会うのですが・・・。



やや精神に変調をきたしているブルーノ役の
モーリッツ・ブライブトロイが素晴らしかった。
最近のドイツ映画には欠かせない俳優さんですね。
そもそも本作は、先に見た「コーヒーをめぐる冒険」のトム・シリングが見たくて視聴した作品なのですが、
残念ながらそのトム・シリングの出番は少なく(ミヒャエルの少年時代なので)、
しかし素晴らしいモーリッツ・ブライブトロイを見ることができたので、
思わぬ拾いものをした感じです。


最後に、ある重要な決断の必要性に迫られるブルーノは、
情けなくも迷いに迷い逡巡するのですが、
そのことから大きな悲劇が・・・。
現実問題として、それは無理もないことだし、恋愛は綺麗事では語れない。
ブルーノ自身も私達もわかってはいるのだけれど・・・、
でもそこで迷ってしまうのはやっぱりナシだよと、
どこかで夢見る自分が語りかける。
自分でも受け入れることができない「後悔」がブルーノを変える・・・。
もしかするとこれが永遠に実体験としての『性』を手放し、
精神のみの愛へと昇華していくことなのかもしれない・・・などと思いながら。


「素粒子」
2006年/ドイツ/113分
監督:オスカー・レーラー
原作:ミシェル・ウェルベック
出演:モーリッツ・ブライブトロイ、フランカ・ポテンテ、マルティナ・ゲデック、クリスティアン・ウルメン、ニーナ・ホス、トム・シリング
愛と性を考える度★★★★☆
満足度★★★☆☆
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「オジいサン」 京極夏彦

2015年04月26日 | 本(その他)
正しい「オジいサン」の暮らし

オジいサン (中公文庫)
京極 夏彦
中央公論新社


* * * * * * * * * *

何者かに「オジいサン」と呼ばれたことを寝床で思い出した、とある朝。
推理したり慌てたり、調子に乗って反省したり。
若ぶらず、気弱にもならず
―寄る年波をきっちり受け止め粛々と暮らす、
益子徳一(72)の一週間。


* * * * * * * * * *

久しぶりに読む京極夏彦作品。
しかしなんと、怪異もなく不思議もなく謎もありません。


益子徳一72歳6ヶ月と1日。
結婚経験なしの独り身。
その朝早く、寝床で何日か前に誰かに「オジいサン」と呼ばれたことを思い出します。
「おじいさん」でなく「オジイサン」でもなく、
「オジイさん」でもない。
何故か「い」のところだけがひらがななのが
実に微妙なイントネーションを表しているわけなのですが、
正直言ってそこは私にはピンときません。
けれどこの徳一にとっては、何故か気になる言い方。
さてまず、いつ、どこで、誰がこの言葉を発したのだったか・・・。
つらつらといろいろな場面を行きつ戻りつする徳一の思考が、
そのまま表現されていきます。
老人のことなので、いや、それ、思い出すのは無理なのでは・・・
と思いつつ読み進むと、
しかし連想ゲームのようにいろいろなことの連なりの中から、
徳一は答えにたどり着くのですが・・・。
この「七十二年6箇月と1日」という章は、
ほとんどが寝床に横になったままの徳一の物思いに終始します。
う~ん、こんな調子でこのまま続くのならあまりにも退屈なのでは?
と一瞬不安になったのですが、いえ大丈夫。
確かに暇なご老人ではありますが、
ちゃんと外へ買い物にも出るし、お店の人と話もする、
電気屋さんやご近所のオバサンが訪ねてきたりもします。
読み進むうちに退屈なはずのご老人の生活が、
結構物思いすべきことで彩られているのがわかります。
そしてたしかにこれは、72歳老人の思いそのままだろう、
と納得してしまうのです。
少なくとも絶対に若者の思考ではない。
でも、特に偏屈でもなく、じじむさくもなく(というのも変ですが)
単に年齢を重ねた男性で、ちょっとやっぱり新しいことは苦手。
まさに歳相応の感じなんですね。


さて、著者は何歳であったのだったか、と
文庫のカバーを確かめてみれば1963年生まれ。
50をちょっと超えたくらいですね。
決して「老人」ではない。
いやはや、さすがです。
なかなかこんなことができるものではありません。
だってね、大抵の人は60くらいになっても自分を老人とは思っていないでしょうから・・・、
老人の物思いを表現するなどとは、至難の業と思えるのです。


さらに本作、ラストがとてもいい。
実際地味な話ではあるのですが、
こういう思いがけないちょっと心弾むようなことが起こるとは。


認知症とか介護とか何とか、そういうくらーい話の出てこない、
ステキな老人ライフの物語でした。
こんな方がご近所にいたら、お近づきになりたい気がします。
徳一さんの料理のシーンが好きです!

「オジいサン」京極夏彦 中公文庫
満足度★★★★★
コメント

セッション

2015年04月24日 | 映画(さ行)
血みどろドラマー



* * * * * * * * * *

名門音楽学校で世界的ドラマーを目指すアンドリュー・ニーマン(マイルズ・テラー)。
伝説の教師と言われる、フレッチャー(J・K・シモンズ)の指導を受けることになります。
しかし、常に完璧を求めるフレッチャーは、
奏者に容赦無い罵声を浴びせた狂気のレッスンを繰り広げます。
必至に食いついていこうとするアンドリューにも
ただならぬ悪意(としか思えない)をむき出しにし、しごき続ける・・・。



この師ありて、この弟子ありとでもいいましょうか、
フレッチャーも狂気じみてはいますが、
アンドリューもせっかく親しくなり始めた彼女と別れてまでドラム一筋にのめり込む。
普通ならあれだけ罵声を浴びせ続けられたらとっくにやめているのかも。
しかし、フレッチャーに降りろと言われてもなお、
ここは俺の場所だと粘り続ける彼こそもまた、鬼なのであります・・・。



しかし、ある事件を経た後、再開するふたり。
一時分かり合えたように見えて、
そのあとで私達はまた戦慄のシーンを見ることになります。
ステージ上で繰り広げられる死闘。
この師弟の愛憎に戦慄しクラクラしてきますが、
ラストはそれすらも吹き飛ぶ、音・リズムの真髄に
私達はまた忘我の境地に誘われるでしょう。
いやあ・・・、なんともすさまじい。
ただただ、唖然。



J・K・シモンズは、いろいろな作品で、バイプレーヤーとしてお目にかかってはいましたが、
ここまで主役級に全面に出てきた作品は初めてですね。
本作でアカデミー賞助演男優賞を獲得していますが、
それには誰も文句はないと思います。
こんな先生に怒鳴られたら、おしっこちびりそうです。
すくんでしまって、その後まともに演奏なんかできなさそう・・・。



本作中にはアンドリューがチームの人達と談笑したり慰め合ったりするシーンが全くありませんでした。
彼にとっては周りはみなライバル・・・。
特に同じドラマー同士のひりひり感も、並大抵ではありませんでした。
アンドリューは一見気弱で、人と目を合わせて話すことができず、
気になる女の子に声をかけるのにも躊躇します。
その彼が、ことドラムについてだけは強烈な執着心と上昇志向を見せる。
・・・まあ、ほかのことは何もできないという自覚があるからなのかもしれませんが。
全く、この師弟に関しては、どちらも常軌を逸している。
が、だからこそ常人には達することのできない
音楽の高みにまで行くことができるのかもしれません。



セッション コレクターズ・エディション[2枚組] [DVD]
マイルズ・テラー,J・K・シモンズ
ギャガ


「セッション」
2014年/アメリカ/107分
監督・脚本:デイミアン・チャゼル
出演:マイルズ・テラー、J・K・シモンズ、メリッサ・ブノワ、ポール・ライザー、オースティン・ストウェル

ドラムにしびれた度★★★★☆
戦慄の師弟関係度★★★★★
満足度★★★★☆
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悪童日記

2015年04月23日 | 映画(あ行)
森の獣たちが成長し、自立のときを迎えるかのように・・・



* * * * * * * * * *

舞台はドイツ統治下のハンガリー。
第二次世界大戦下、
田舎町の祖母のもとへ双子の男の子が疎開してきます。
しかし初めて会った祖母は、村人たちからは「魔女」と呼ばれる意地悪な老女。

双子は否応なく彼女に働かせられ、暴力を受けるのですが、
他の村の人々からもやはり同じような扱いを受けてしまいます。
理不尽に繰り返される暴力や飢え。
これまで両親のもと、不自由なく暮らしてきた彼らですが、
いつまでたっても母は迎えにも来ず、
ここでは生き抜くために強くならなくては、と決心するのです。



この二人、最後まで名前が出てきません。
兄とか弟の区別もなく、いつもただの「双子」。
イヤ、ただの双子じゃないですよね。
見てください、美少年なのにこのふてぶてしい眼差し。
(彼らは全くの俳優未経験者だそうです!!)

痛みに耐えられるように互いに殴り合いをしたり、
何日も絶食をして空腹に耐えられる訓練をしたり・・・。
残虐さを身につけるために虫などを殺し続けたりも・・・。
こうなると子供は可愛いものだなどという観念は消え失せていきます。
「悪童日記」といえば単に『いたずらっこ』のようなイメージを持つかもしれませんが、
とんでもない!!
自分が生きるためには、善悪など関係ない、
そうした図太さを身につけていく。
そんな彼らはすでにもう「子供」ではありません。


そんな毎日の中で、何故かあの意地悪な祖母に
彼らが親しみを持つようになっていくというところがまた、深いのです。
人からどう思われようと構わない、
利用できるものは利用する。
暴力だってお構いなし。
つまりは双子の生き方の見本がその祖母自身になっていたのです。
子供の人権など毛ほどもなかった時代の事・・・
だからこそ子供は否応なく強く逞しくならねばならなかった。



本作が一人の少年では成り立たない作品であるということが最後にわかってきます。
二人だからこそあの辛い訓練を耐えられたし、
しかし、互いを牽制し合う意味もあって
途中でやめることもできなかった。
そんな二人が最後に決めた行動というのがまた衝撃的なのです。
大人になるための試練。
それが何であるかを彼らが一番良く知っていた・・・。
まるで狐や熊のような森の獣の子供が
親や兄弟たちと別れて自立して生きていくような・・・


なんというか、ひたすら衝撃作でした。
薄っぺらなヒューマニズムなんか吹っ飛んでしまうような。
けれども、やはり人間の生きていこうとする「強さ」を言っているようでもある。
反戦の映画かと思えば、全くそうではなく。
世界は戦争に限らず、自分の命を脅かそうとするものに満ちている。
そんな中で生きていくためには・・・。
ガツンとやられた感じです。

悪童日記 [DVD]
ヤーノシュ・サース,アゴタ・クリストフ,アンドラーシュ・セーケル
アルバトロス


「悪童日記」
2013年/ドイツ・ハンガリー/111分
監督:ヤーノシュ・サース
原作:アゴタ・クリストフ
出演:アンドラーシュ・ジェーマント、ラースロー・ジェーマント、ピロシュカ・モルナール、ウルリッヒ・トムセン、ウルリッヒ・マテス

生きる力度★★★★★
満足度★★★★★

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「信長協奏曲 12」 石井あゆみ 

2015年04月22日 | コミックス
信長を置き去りに、勝手に動き出す登場人物たち

信長協奏曲 12 (ゲッサン少年サンデーコミックス)
石井 あゆみ
小学館


* * * * * * * * * *

この、11巻と12巻の合間にテレビドラマがありました。
小栗旬さんと柴咲コウさんの繰り広げる協奏曲は
それなりに面白くはありましたが、
ここまで原作と変えてしまってよいのか・・・と、
原作ファンとしては戸惑いもありました・・・。
まあ、ほとんど別物と考えたほうがいいのかも。


さて、ということでこの12巻、元に戻って地味~な歴史物語となります。
手取川の戦い
・・・かなりの歴史オタクでなければよくわからないと思うのですが、
秀吉が柴田勝家と決裂して、勝手に上杉との闘いから戦線離脱して帰ってきてしまったという、
ああ、それなら聞いたことがある、というあの場面です。
このあたり、秀吉のかなり特異な本作上の設定が生きる場面ですね。
なぜそんなことが起こってしまったのかという。
そして、またもや謀反を起こす松永久秀。
サブロー信長は同時代の人物として彼となんとかうまく付き合って行きたいと思うのに、
松永はもともとがヤクザなので、一筋縄ではいかない。
この辺りも、元々の設定が生きる所。
次第に著者の張り巡らせた人物関係の構想が物をいい始めます。
現代人信長サブローの意図を置き去りに、
それぞれの人物たちが勝手に動き出した感のあるこの辺り、
「歴史物語」として、また興味が深まってきます。


冒頭にある「小休止」の章では、
おいっちゃんがまたまた強烈なブラコンぶりをみせますが、
その彼女を見つめる家康くんの眼差しが優しい。
茶々、初、江の無邪気で可愛らしい三姉妹には
やはりどうしても思い入れがあって、つい注目してしまいます。


相変わらずおゆきちゃんの気持ちには、全く気がつかないサブローは、
罪作りなことであります。
しかし、彼女が選んだ道。
応援したくなりますね。

「信長協奏曲 12」 石井あゆみ ゲッサン少年サンデーコミックス
満足度★★★★☆
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おみおくりの作法

2015年04月20日 | 映画(あ行)
悼む人、ジョン・メイ



* * * * * * * * * *

舞台はロンドン。
ジョン・メイ(エディ・マーサン)は、孤独死した人を弔う民生係。

つまりは、孤独死した人の簡易的な葬儀を行い、埋葬する。
多分、仕事としてはそれだけをすれば事足りるのでしょうね。
ところがジョン・メイは、その人の家族や友人を探し出し、
葬儀に来るように案内をする。
その人のために弔辞を書き、
葬儀のBGMを選び(当人の好きそうな曲!!)、
そしてもちろん自らも葬儀に参列。
ジョン・メイは超が付くくらい真面目で几帳面。
死者に敬意を払い、これくらいのことをして当然と考えているのです。
ところが、彼の上司はそのやり方が時間がかかりすぎると言って、
あっさり人員整理で彼をクビにしてしまうのです。
そんな彼の最後の案件は、なんと彼の家の真向かいに住む老人。
こんな仕事をしているにもかかわらず、
そこにどんな人が住んでいるかも知らず、ましてや孤独死させてしまうとは・・・、
そんな後悔の念もあって、
彼はこの最後の案件をいつも以上に丁寧にやり遂げようとするのです。



あまりパッとしない独身男のジョン・メイ。
とにかく真面目なんですね。
そして真摯だ。
私ははじめ本作を「おくりびと」のような感じかな?と思っていたのですが
これはむしろ「悼む人」ですね。
(映画は未見ですが、本を読んでいます。)
亡くなった人が誰を愛し、誰に愛されたのか・・・、
そういうことをたどっていって、死者の人生を理解し、悼む。
ほとんどは葬儀に参列するのは彼一人なんですよ。
でも、知らせを聞いても出向いて来さえしない家族なんかより、
ジョン・メイの心ある参列のほうがよほどマシ、と思えてきます。



最後の案件のビリー・ストークの知り合いを訪ねて、
彼はイギリス中のあちこちを旅することになります。
そうして浮かび上がってくる破天荒なビリー・ストークの生涯。
結婚生活あり。
服役あり、ホームレス経験あり・・・。
好きなように生きて、孤独も自分で引き受けて、亡くなった彼。
ジョン・メイとは対局にある生き方なのですが、
次第にジョン・メイはビリー・ストークに共感を覚え感化されていくわけです。


本作を見ているうちに心配になるのは、
このジョン・メイこそがいつか孤独死することになりそうだなあ・・・ということ。
それだからこそ、彼は孤独死をした方に通常以上に思い入れがあるのかな、
とも思えます。


ところが!! 
思いがけないラストに私達は驚き呆然とさせられ、
そしてさらには、涙することになります。
本当はこんなことであってはいけないのだろう。
ジョン・メイの行動こそはもっときちんと評価されるべきなのだけれど・・・。
あくまでも密やかに人知れず、というところが
なんともいえない余韻を残すわけですねえ・・・。
悲しいけれど幸福。
感動のラストシーンなのでした。
ジョン・メイのあまりにも几帳面な生活をじっくり描き出した上で、
最後の方では決してその彼がやらなさそうなことをする、という、
そんなところがユーモラスに語られています。



おみおくりの作法 [DVD]
エディ・マーサン,ジョアンヌ・フロガット,アンドリュー・バカン
ポニーキャニオン


「おみおくりの作法」
2013年/イギリス・イタリア/91分
監督・脚本:ウベルト・パゾリーニ
出演:エディ・マーサン、ジョアンヌ・フロガット、カレン・ドルーリー、アンドリュー・バカン
死者を悼む度★★★★★
満足度★★★★★
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ミリオンダラー・アーム

2015年04月19日 | 映画(ま行)
インドに眠る才能の原石を発掘せよ



* * * * * * * * * *

スポーツ・エージェントのJB・バーンスタイン(ジョン・ハム)は、
ここのところ仕事がうまく行かず、行き詰っています。
何か新しい策はないものか・・・。
そんな時TVでスーザン・ボイルを見て思いつくのです。
こんな全くのド素人が、TVの番組に出てその才能にみなが舌を巻く。
スポーツでも同じことができないかと・・・。
そこで目を付けたのがインド。
インドでは野球に少し似たクリケットが人気で、
でも野球は全く知られていません。
10億の人口の中から未知の優れた人材を発掘しよう! 
彼はインドに乗り込んで、コンテスト形式で豪腕投手の原石を見つけようとするのです。



そうして最初に勝ち残ったのが
リンク(スラージ・シャルマ)とディネシュ(マドゥル・ミッタル)。
野球どころかクリケットさえもしたことがないという二人を
アメリカに連れ帰ったJBは
二人を自宅に住まわせ、野球を教え、メジャーリーガーに仕立てようとしますが・・・。
貧しい農村で育った二人が、普通ならありえないアメリカ行きを果たし、
「アメリカンドリーム」をつかもうとする。
特に二人が故郷の村を離れるシーンが印象的です。
かつて日本もこのように貧しくて、でも明日を信じて強くたくましかった・・・。
今「昭和」を懐かしむ私達は、
インドにそういう郷愁を見出すのかもしれません。





サイドストーリーとして、JBと、JBの家の離れの居住人・ブレンダ(レイク・ベル)の
ラブストーリーも楽しめます。
もともと気が合うとか合わない以前に無関心だった二人なのですが、
JBがインド滞在中、ネット通信で話をすることがたびたびあったのです。
国を離れ、仕事も順調とは言えないJBが、
彼女と話すことでチョッピリ気持ちが癒やされていくのを感じる。
でも帰国してみると彼女にはちゃんと恋人がいたりするわけですが・・・。
ブレンダはインドから来た二人の青年にも何かと気遣い、
JBにも「彼らにもっと気を配ってあげて」と話したりします。
こんなところがさすが、ディズニーのハートウォーミングストーリー。
文句なく楽しめます。




ミリオンダラー・アーム [DVD]
ジョン・ハム,アーシフ・マンドヴィ,ビル・パクストン,スラージ・シャルマ,レイク・ベル
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社


「ミリオンダラー・アーム」
2014年/アメリカ/124分
監督:クレイグ・ギレスピー
出演:ジョン・ハム、アーシフ・マンドビ、ビル・パクストン、スラージ・シャルマ、マドゥル・ミッタル、レイク・ベル
アメリカンドリーム度★★★★☆
満足度★★★★☆
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「まひるの散歩」 角田光代

2015年04月18日 | 本(エッセイ)
納得したり、意外だったり。だからエッセイって面白い。

まひるの散歩 (新潮文庫)
角田 光代
新潮社


* * * * * * * * * *

ある日には他人のごはんブログに夢中になり、
ハイレベルなお呼ばれ料理に驚いたりへこんだり。
またある日には、果物大好きと言えない理由にはたと気付き、
妻の料理自慢をする夫の心のうちに思いをはせる。
つくって、食べて、考える。
『よなかの散歩』に続き、小説家カクタさんが、
毎日きちんとごはんの時間がやってくるうれしさをつづる、
食の味わいエッセイ第2弾。
写メも満載!


* * * * * * * * * *

角田光代さんの食べ物にまつわるエッセイ集。
オレンジページに連載で掲載されたものをまとめたものなのですね。
だから非常にコンパクトで、読みやすくなっています。
そもそも小説家はもともと文を書くのが得意なので、
エッセイもステキですよね。
本作は食べ物エッセイと言っても、グルメとはちょっと違う。
本当に私達の生活の中で身近な『食べる』ことにまつわる、
いろいろな思いが描かれています。


角田光代さんはお料理するのが好きなのだそうですが、
意外に思ったのが、
果物の皮を向いたり切ったりタネをとったりするのが面倒だから
果物はあまり食べない、というところ。
そもそもいろいろな調理の手間を考えたら、
果物の皮を向くことくらいなんということもないと思うのですが・・・。
私は果物が大好きなので、そういう手間は全然手間とも感じませんけれど・・・。
いろいろなことを思う人がいるのだなあ・・・。


ラスト近くに「加齢とイケメン」という項がありまして、
そこでは「自分の母親の世代は潔かった」というのです。
40を過ぎたらみな、デパートではおばさんフロアに直行し、
自分の子供が小学生になれば、ちゃんと「おばさん」を引き受けた。
でも今は自分も周りも、40代になってもみなオバサンを引き受けていないと、著者は言う。
・・・確かに、そうかもしれません。
40代どころか50代の私でもそういうところはあるかも。
でも著者が言うには、今の若い人の「イケメン」の基準が分からないという。
男性の俳優やタレントをときめきを持って見なくなった、と。
うーん、小説家角田光代氏にしては意外なお言葉。
私はまだそこまで達観できません。
せめて、映画やドラマの中くらい
若くても多少渋みをました中年でも、すてきだなあ・・と、胸をときめかせたい。
って、もしかしてこの年でその方が異常???

「まひるの散歩」角田光代 新潮文庫
満足度★★★☆☆
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ケープタウン

2015年04月16日 | 映画(か行)
南アフリカの抱える過去



* * * * * * * * * *

題名そのままの南アフリカ、ケープタウンが舞台です。
元ラグビー選手の娘が殺害されました。
捜査に乗り出したのは刑事ブライアン(オーランド・ブルーム)と、アリ(フォレスト・ウィテカー)。
その少女はその日、麻薬の売人と会っていたことを知りますが、
その薬物は、街で頻発している子供の失踪事件の現場で発見されたものと同一であった。
この事件の裏に潜む、組織的陰謀とは・・・


ありがちなサスペンスではありますが、
本作は南アフリカが舞台というところに意義があるのです。
かつてのアパルトヘイト時代。
黒人は差別に耐え、残酷な白人支配に耐えていました。
そんな中で、子供の頃のアリは過酷な体験をしているのです。
しかしそのような憎しみの連鎖を断つべく、
マンデラ大統領が「和解と赦し」を提唱しました。
アリも大統領の考えに賛同し、自らの悲惨な過去の傷を忘れようと努めていたのです。
が、しかし。
終盤、ついにアリがその意志を捨て去る出来事が起こる・・・



「第9地区」を思い出すような
ケープタウンのバラック小屋の立ち並ぶスラムの町並み。
この街が舞台だからこそできるストーリーなのだと思います。


やや、過激な残酷シーンあり。
ご注意を。



オーランド・ブルームは、
「ロード・オブ・ザ・リング」のツルリンとしたレゴラスよりも、
こちらの無精髭の陰りのある刑事役のほうがステキだと、私は思う・・・。

ケープタウン [DVD]
オーランド・ブルーム,フォレスト・ウィテカー,コンラッド・ケンプ,ジョエル・カエンべ
TCエンタテインメント


「ケープタウン」
2013年/フランス/107分
監督:ジェローム・サル
原作:キャリル・フェリー
出演:オーランド・ブルーム、フォレスト・ウィテカー、コンラッド・ケンプ、ジョエル・カエンベ
薬物の危険を訴える度★★★★★
オーランド・ブルームの魅力度★★★★☆
満足度★★★.5

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バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

2015年04月15日 | 映画(は行)
私の無知がもたらす、「面白くなさ」なのだろう。多分。



* * * * * * * * * *

第87回アカデミー賞作品賞受賞作、ということで期待してみましたが・・・。


かつて「バードマン」というヒーロー映画で
一世を風靡した俳優リーガン・トムソン(マイケル・キートン)。
しかしその後は鳴かず飛ばず・・・。
その彼が、ブロードウェイの舞台で脚色・演出・主演を務める作品を上演し、
再起を図ろうとします。
しかし、出演俳優の一人が大怪我をして降板。
代役に実力派の俳優マイク・シャイナー(エドワード・ノートン)を迎えることに。
しかしこのマイクの才能に、リーガンは次第に脅かされていく・・・。



つまりこれは自己の“承認”をめぐる物語なんですね。
誰もが過去の自分を賞賛するけれども、今の自分を認めようとしない。
自分はここにいるのに、いないのと同じ。
周りの人々ばかりでなく、娘からも、信頼を得られない自分を何とかしたいと、
ジタバタもがく男の物語です。



リーガンの心の奥底の本音を「バードマン」の姿の彼が自身に語りかける。
彼の心は時に物を破壊する衝動を持ったり、
自身を上空に浮遊させたりもする。
こういう演出はなかなかはっとさせられ、ステキでした。
バードマン姿の彼が空を飛ぶのはあたり前。
でもコート姿の普通の男が浮遊する像といのは、めったにないですものね。

まあ、そういうところはさすがにアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督なのであります。
また、全シーンワンカットに近い長回しも見どころ。
けれど、先に私は三谷幸喜さんの「大空港2013」を見てますので・・・
さほどの驚きはありませんでした。


このシルエットは、「バードマン」というよりむしろ
「ガッチャマン」そのものなんですけど・・・。


十分面白かったという方ももちろんいらっしゃいましょう。
でも私はイマイチ、のめり込めないで終わった感じです。
本作、技巧に凝りすぎていて
「どうだ、すごいだろう」って、聞こえる気がする・・・。
アカデミー作品賞の映画って、正直あまり「面白く」はないと、私は思っております。
普通に楽しめる感動作をあえて外してますよね・・・。
だから私はやはり「評論家」にはなれないし、
ただのミーハーな映画ファンなのでしょう。
でもいいや。
私にとって面白くないものは面白くないのだからしょうがない。
そもそも昔の「バットマン」は見ていないので、マイケル・キートンも知らないし。



現代は、ほんの数秒で80万もの“いいね”やフォロワーを得られてしまう。
かつてのヒーローとしての人気と、今の社会での人気って
そもそも質がまるで違うのかもしれません。
こんな軽薄短小の世の中で、
人気を保ち続けなければならない俳優さんって、ホントに大変そう。
かつて「バットマン」で名を馳せたマイケル・キートン氏が本作で再起したわけですが、
果たして今後これをきっかけにスクリーンで多く見かけるようになるのか、
はたまた、また忘れ去られていくのか・・・、
今後に注目であります。

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) [DVD]
マイケル・キートン,ザック・ガリフィアナキス,エドワード・ノートン,エマ・ストーン,ナオミ・ワッツ
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン


「バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」
2014年/アメリカ/120分
監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
出演:マイケル・キートン、ザック・ガリフィアナキス、エドワード・ノートン、アンドレア・ライズボロー、エイミー・ライアン、エマ・ストーン
斬新さ★★★★☆
満足度★★★☆☆

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ウルフ・オブ・ウォールストリート

2015年04月14日 | 映画(あ行)
ケチな悪運など吹き飛ばしてしまうが、しかし幸運の女神も寄り付かない



* * * * * * * * * *

実在の株式ブローカー、ジョーダン・ベルフォートのセンセーショナルな半生を描きます。
22歳でウォール街の投資銀行へ飛び込んだジョーダン(レオナルド・ディカプリオ)。
学歴もコネもないけれど、斬新な発想と巧みな話術で瞬く間に成り上がっていきます。
26歳で証券会社を設立。
年収4900万ドル。
常識ハズレな金遣いの荒さで世間を驚かせ、
「ウォール街のウルフ」と呼ばれるようになる。
しかしお定まりのように、やがて破滅の時がやってきます・・・。



麻薬とセックスに溺れながら、次々と成功を収めていく・・・。
モラルなど関係なし。
全ては金。
金で買えないものはない!!
決して好きにはなれない人物ではありますが、
この信念とエネルギーには圧倒されっぱなしでした。
過剰なドラッグの摂取に耐え、
嵐の航海や墜落する旅客機に乗り遅れるなど、
体力ばかりではなく運までもが強靭なこの男、
何かがついている、というよりもケチな悪運など吹き飛ばしてしまうというべきか。



ジョーダンの初めての勤め先のボス(マシュー・マコノヒー)が印象的でした。
その後のジョーダンのやり方は、この人に学んだと言っていいのですが、
それでもこの人のやり方はもっとスマートでカッコ良かったですよね・・・。
それから、ジョーダンの元の奥さん。
ブラックマンデーで職を失ったジョーダンに、
それでも株屋を続けるよう薦めたのも彼女だし、
クズ株を売っていたジョーダンに、
「お金を失っても困らない富裕層を標的にするように」
とアドバイスしたのも彼女です。
彼にとって彼女が実は幸運の女神だったように思えるのですけれど・・・。
あまりにもクレージーな酒池肉林の生活に溺れて、
その彼女を手放してしまったのが失敗のもと。



私は、政治経済ネタが苦手で、
しかも最近のレオナルド・ディカプリオのギラギラした感じも好きではないので、
本作、公開時に見ないで終わっていました。
でも、経済など分からなくても、
ジョーダンの生き方を描く作品なので特に問題はありませんでした。
そして、この男のギラギラ感こそはディカプリオにピッタリ。
アカデミー賞ノミネートというのにも納得です。
残念ながら、逃しましたけれど・・・。

ウルフ・オブ・ウォールストリート [DVD]
レオナルド・ディカプリオ,ジョナ・ヒル,マーゴット・ロビー,マシュー・マコノヒー,ジャン・デュジャルダン
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン


「ウルフ・オブ・ウォールストリート」
2013年/アメリカ/179分
監督:マーティン・スコセッシ
出演:レオナルド・ディカプリオ、ジョナ・ヒル、マーゴット・ロビー、マシュー・マコノヒー、ジョン・ファブロー
タフな男のタフな生き方度★★★★☆
満足度★★★★☆
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陽だまりハウスでマラソンを

2015年04月12日 | 映画(は行)
二人は風と海



* * * * * * * * * *

本作はこの題名から、
もう少しほのぼのしたハートウォーミングストーリーを予想していたのですが、
意外とシリアスで切実です。


妻・マーゴ(ターチャ・サイブト)の病気がきっかけで、
夫婦二人で老人ホームに入居したパウル(ディーター・ハラーフォルデン)。
彼は若かりし頃、メルボルンオリンピックのマラソンで
金メダルを獲得した伝説のランナーなのであります。
その根っからの体育会系男に、
ホームでは賛美歌を歌わせ、クリ人形を作らせる・・・。
70を超えてなお健康なパウルには、ホームのレクリエーションや規則は息苦しいばかり。
そんな中、彼は、ベルリンマラソンに挑戦することを決意。
さっそく庭をランニングし、トレーニングを始めたパウルを、
ホームの職員も入居者たちも、呆れて見ていました。
しかし、ある一人が気づいたのです。
彼は、あの、パウル・アヴァホフじゃないか!!
老人たちはみな色めき立ちます。



本作はドイツ作品。
ここのご老人たちは、みなあの二次大戦の敗戦後の苦しい生活を経験しているのです。
そんな時代に、アヴァホフのマラソン優勝は、
ドイツ庶民に夢と希望を取り戻させたのですね。
だから誰もが“アヴァホフ”には思い入れがあるのです。
この感覚、同じ敗戦国の日本人として、
なんだかすごくよくわかる気がするんですよね・・・。
それで、老人たちはパウルの応援をはじめるのですが、
ただ退屈な毎日に、急に目的ができて、イキイキとし始めます。



しかしホームの職員たちはパウルの年でマラソンということのリスクばかりが気にかかる。
そもそもみな若いので“伝説”をよく知らない・・・。
また、急にホームの中の規律が乱れたようで面白く無いのです。
急に彼が「マラソン」などと言い始めたのは
認知症のためか、あるいは老年性の鬱の始まりなのではないか
・・・と勘ぐり、検査までする。


それにしても老人ホームというのは、どこでも同じ風なのですね。
お遊戯みたいな歌を歌わせ、工作やら手芸をさせて・・・。
これで本当に満足なのかな?と思ってしまう。
先に見たアニメの「しわ」の時にも思ったのですが、
いくら老人だって、何か生きる目標とか夢がなければダメなのです。
私ならさしずめ、死ぬまで映画見て、ブログ続けるぞ!!
・・・なんてね。



このご夫婦、「二人は風と海。いつも一緒。」と言っていました。
その片割れが先に逝ってしまうのは、実に切なく涙を誘います。
私は、先日見た老いらくの恋の物語「トレヴィの泉で二度目の恋を」よりも、
この長く共に暮らした男女の愛情のほうが、
やはりしっくり来て、美しいと思う・・・。


パウル役のディーター・ハラーフォルデンは、
ドイツの国民的喜劇俳優で、本作のために9キロの減量を行ったそうです。
そして実際のベルリンマラソンでロケ。
なるほど、なかなかチャーミングなおじさまでした。
奥様役の方もステキでしたよね。
さぞ若かりし頃は美しかっただろうなあと思わせ、
また、知的な雰囲気も保っていて、
こういうふうに年をとりたいなあ・・・と憧れます。
こんな風に夫と寄り添いながら年を取るのもいい。



陽だまりハウスでマラソンを [DVD]
ディーター・ハラーフォルデン,ターチャ・ザイプト,ハイケ・マカッシュ,フレデリック・ラウ,カトリーン・ザース
Happinet(SB)(D)


「陽だまりハウスでマラソンを」
2013年/ドイツ/105分
監督・脚本:キリアン・リートホーフ
出演:ディーター・ハラーフォルデン、ターチャ・サイブト、ハイケ・マカッシュ、フレデリック・ラウ、カトリーン・ザース

老後の生活を考える度★★★★★
満足度★★★★☆
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「夏の災厄」 篠田節子

2015年04月11日 | 本(その他)
負のメカニズムのリアルさ

夏の災厄 (角川文庫)
篠田 節子
KADOKAWA/角川書店


* * * * * * * * * *

平凡な郊外の町に、災いは舞い降りた。
熱に浮かされ、痙攣を起こしながら倒れる住民が続出、
日本脳炎と診断された。
撲滅されたはずの伝染病がなぜ今頃蔓延するのか?
保健センターの職員による感染防止と原因究明は、
後手にまわる行政の対応や大学病院の圧力に難航。
その間にもウイルスは住人の肉体と精神を蝕み続け―。
20年も前から現代生活の脆さに警鐘を鳴らしていた
戦慄のパンデミック・ミステリ!


* * * * * * * * * *

昨年夏、蚊が媒介するデング熱が日本で発生し、騒ぎになりました。
これまでに聞いたことがないような、日本の夏の災厄。
ところがです、本作1998年の作品なのですが、
同じく蚊が媒介する伝染病のストーリー。
もうすっかり撲滅されたと思っていた伝染病が、
現代社会であるがゆえの巻き返しをして、またおそろしい猛威をふるう。
著者の先見の明に、今さらながら驚かされます。


本作で登場するのは、「日本脳炎」ではあるのですが、
それよりもウイルスがパワーアップした「新型日本脳炎」とでも言うべきもの。
何しろ致死率が異常なほど高く、
かろうじて生命を取り留めても、
厄介な障害が後遺症として残るという超危険な伝染病なのです。


埼玉県の昭川市で発生したこの病に、
市の保健センター職員、小市民的で事なかれ主義の小西
腹の据わった肝っ玉母さん的年配看護師、堂元
窓口業務の、いい加減で女にだらしのない青柳
学生運動の闘士でもある診療所の鵜川医師
等々の登場人物が、悪戦苦闘していきます。
それぞれが個性的なので、面白くて、どんどん読み進んでしまいます。
いえ、実際は面白いというよりも怖いですね。
その怖さというのはもちろんこの病の怖さではありますが、
でもそれは架空のモノ。
もっと怖いのは、どのようにして事実が覆い隠されていくのか、
現場の人たちの本当の思いがどうしてもっと直接的に必要な部署まで届かないのか、
そのような負のメカニズムのリアルさなのであります。
・・・確かに、そうなるかもしれない、と、
ものすごく説得力があります。
現実にそうならばマズいのですが・・・。
だからこそ、怖い。


最近、ワクチンの摂取については、
副作用の危険性があるので極力行わないという考え方が広まっているのですが、
でも一度このような流行があれば、ひとたまりもないわけで、
実際、難しい問題だと思います。


さてさて、またまもなく夏がやって来るのですが、
デング熱は昨年で終了したのでしょうか。
蚊の発生とともに、また新たな災厄の夏とならなければいいのですが・・・。


「夏の災厄」 篠田節子 角川文庫
満足度★★★★☆
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ダイバージェント

2015年04月10日 | 映画(た行)
どう見ても争いが起きないわけがない世界に思えるけれど・・・



* * * * * * * * * *

16歳になると強制的に5つの共同体のいずれかに振り分けられ、
その中で生涯を過ごす・・・という秩序の中で
平和を築き上げた近未来のストーリー。


公開時、多少そそられはしたものの見ないで終わっていましたが、
「きっと、星のせいじゃない。」のシャイリーン・ウッドリー主演ということで、
興味を持ち、後追いでみました。



本作の5つのファンクションとは、
勇敢、
無欲、
平和、
高潔、
博学。



ベアトリス(シャイリーン・ウッドリー)は、
この5つのどれにも該当しない異端者(ダイバージェント)と判定されたのですが、
それはこの世界では大変に危険なことなのです。
何処にも所属しない異端者は、
どの世界からも敵視され、抹殺される運命にあるという。
ベアトリスは結果を偽り、「勇敢」のファンクションに所属することにし、
名前も「トリス」に変えます。
そこは軍事や警察の役割を担うところで、
つまりは典型的体育会系組織。
非常に過酷な訓練の中で、トリスはなんとか落ちこぼれないよう
徐々に強さを身についていくのですが・・・。
「無欲」が担っている政治を、「博学」が奪おうとしている背景があり、
その争いに巻き込まれていくトリス・・・。



この世界観、どことなく「ハンガーゲーム」にも似ています。
おそらく“戦争”で一度滅びかけた人類が、
なんとか「平和」を保つように新しい秩序を構築し社会を築いていくのですが、
それはやはり人々を抑圧するものでしかなく、
若いヒロインが反旗を翻し、社会を変えようとする・・・。
本作は人気のヤングアダルト小説の映画化ということで、
自分の居場所、自分の将来を見定めようとするティーンの心に沿い、好まれたようです。


しかしこの近未来の社会設定には、ちょっと疑問があります。
確かこの世界では「平和」が農業を営んでいたようなのですが、
工業はどうなのでしょう?
あれだけの建築物や情報のテクノロジーがあって、電車だって走っていたわけだから、
工業がないわけがありませんが、
それを営んでいたのはどのファンクション?



「勇敢」の社会から落ちこぼれた者は「無所属」として排除され、
ホームレスのような生活を余儀なくされる。
そしてまた、ほとんど行き来不能なこのそれぞれのファンクション。
こんなふうに社会を分断してしまっては、
差別が生じ、争いが起こるのは必至。
これで平和を保とうとするなどとは、笑止。


そこで私は思うのです。
この世界には実は、表沙汰にされない裏の支配ファンクションがある。
それが「工業」で
本来の目的は「武器」を作り売りさばくこと。
武器商人たちが、実はこの5つのファンクションを操り、
確実に争いが起こるように画策している・・・というのが私の読みであります。


だから、もし本作に続編があるとすれば、話はそちらの方へ向かっていく。
・・・あはは。大嘘ですが。
すでにアメリカでは続編の「インサージェント」を公開中なのですね・・・
少なくとも私の想像とは違いそう・・・。

「ダイバージェント」
2014年/アメリカ/139分
監督:ニール・バーガー
出演:シャイリーン・ウッドリー、テオ・ジェームズ、ケイト・ウィンスレット、マギー・Q、ジェイ・コートニー
主人公の魅力度★★★★☆
未知の世界度★★★☆☆
満足度★★★☆☆

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