映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

16ブロック

2007年06月30日 | 映画(さ行)

ニューヨーク市警の刑事ジャックが、裁判所へ証人を送り届ける。それだけの任務。ほんの16ブロック先。時間の猶予はは118分。

         * * * * * * * * * *

「ダイ・ハード4.0」は、まあ、そのうち観ることとして、本日は、DVD「16ブロック」で、ブルース・ウィリスを拝見しました。
ダイ・ハード4.0の方も似たような設定だったのでは?
ただ、この作品は、ダイ・ハードよりもう少しシリアスです。

ジャックは、酒びたりで昔の怪我で足を引きずって歩く、くたびれたさえない刑事。
このたびの任務もいやいやながらひきうけて、そして遭遇する最悪の一日。
この護送するエディは、警察内部の不正の証言をすることになっている。
それを阻止するために、なんとジャックの仲間の刑事たちが、エディの命を狙うのです。
まだ、かすかに残っていた正義感が揺り動かされ、ジャックはエディを守って裁判所へ送り届ける覚悟を固める。
とすれば、ジャックもまた彼らの攻撃の対象となり、16ブロックのサバイバル・ゲームが始まります。
エディは、強盗など、悪いことばかり繰り返してきたしょうもないヤツなのですが、どこかひょうきんで、憎めない感じ。
彼もまた、ジャックが命を懸けてまで自分を守ろうととすることで、気持ちが変わっていきます。
もともと、プラス思考の持ち主のようですね。
自分は、変わることが出来る。
悪いことからはきっぱり足を洗って、シアトルでケーキ屋をはじめるのだ、と、語るエディ。
人生を半分捨てていたジャックも、そんなエディの希望を持った考え方に、感化されていくようです。
この二人の気持ちの通い合いがバック・ボーンにあって、なかなか渋い味の出た作品に仕上がっているのでは・・・と。

そしてもう一人、ジャックの命を狙わなくてはならなくなった友人の刑事と、ジャック。この二人の関係もなかなか鬼気迫る感じです。
敵対関係となるときも、決してののしりあったりしない。
あくまでも穏やかな口調で、諦めにも似た静かな殺意・・・。
デビッド・モースはうまい、と思いました。
この方は、絶対、他の作品でも見ているなあ・・・と思ったら、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」とか「グリーン・マイル」、「夢駆ける馬ドリーマー」、結構見ているものに出ています。今度、見れば分かると思う・・・。なかなか、人の名前、覚えられないんです、実は・・・。

2005年/アメリカ/101分
監督:リチャード・ドナー
出演:ブルース・ウィリス、モス・デフ、デビッド・モース
「16ブロック」公式サイト

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「幽霊人命救助隊」 高野和明

2007年06月29日 | 本(ミステリ)

雑踏の中に蛍光オレンジのジャンプスーツの4人組。しかし、誰も振り向くことさえしない。彼らはの正体は!? そして、彼らに課された使命とは!?

「幽霊人命救助隊」 高野和明 文春文庫

浪人生、老ヤクザ、気弱な中年男、アンニュイな若い女。
この4人が奇妙な断崖の上で出会います。
なんと彼らの共通点とは、自殺を図って死んでいるということ・・・。
そのためか、彼らは天国へも行ききれず、そこへ現れたとぼけた「神」に、天国へ行きたければ自殺志願者100人の命を救えといわれるのです。

新宿の街に降り立った4人組。
蛍光オレンジのジャンプスーツの背中にはRESCUEの文字。
しかし、彼らは幽霊ということで、普通の人にはその姿は見えません。
その声さえも、普通の人には聞こえない。
幽霊なのに空も飛べなくて、移動手段はてくてく歩くか、電車に飛び乗る、車にしがみつく・・・。
この世の物体は彼らには、ほんの少しも動かすことが出来ない。
・・・このような悪条件で、いったいどうやって自殺志願者を助けるのか・・・!
意地悪な「神」はそのノウハウも教えてくれず、彼らは試行錯誤を繰り返しつつ、いろいろなことを学んでいきます。
そもそも、まったく気が合いそうもないこの4人ですが、次第次第に気持ちが通じ合い、チームワークが作られていくのは読んでいて楽しい。
おっと、楽しいなんて不謹慎でしょうか。
そもそも、死に瀕するほどに苦しんでいる人が次から次へと登場するストーリーです。

孤独、育児ノイローゼ、いじめ、うつ病、お金の問題・・・なんて悩みに満ちた世の中でしょう。
彼らには現実を変えることは出来ません。
出来るのは、人の心の奥底に語りかけることだけ。
つまりは、気持ちの持ちようだけで、自殺へのシグナルが黄色になったり、赤になったり。
さまざまな人の心を見るうちに、彼ら4人が自殺しなければならなかったのとそっくりな状況にも出会います。
そんな人々の状況、心を見るうちに、実は自分も死ぬことなどなかったのだ、なんて、馬鹿なことをしたのだろう・・・と、後悔に駆られる彼ら。

涙あり、笑いあり、文庫としては結構ボリュームがありますが、一気に読めてしまいます。テーマは深刻ですが、エンタテイメント。
さて、彼らは無事100人を救い、天国へ行くことができるのでしょうか・・・?!
ちょっとうれしい、おまけのラストもあります。

満足度 ★★★★

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「リドル・ロマンス/迷宮浪漫」 西澤保彦

2007年06月26日 | 本(ミステリ)

心の奥のもつれた糸を解きほぐす、長身痩躯、超美形の心理探偵登場。

                * * * * * *

「リドル・ロマンス/迷宮浪漫」 西澤保彦 集英社文庫

異色で、官能的で、どこか妖しい。率直なところ、・・・・「これはどうしたことか・・・」と、戸惑ってしまった。
---というのは、この本の解説、有栖川有栖氏の言葉です。
常に奇想天外、SFチックな展開をする西澤氏のミステリですが、これはまた、格別。
というか、この、探偵役”ハーレクイン”氏の
人の心をのぞき、操る技は、神か、悪魔か、すでに探偵の域を完全に超えております・・・。
あまりにも、それは生身の人間とは遠いので、長身痩躯の超美形と解説されても、まったく親近感もあこがれも期待も沸いてきません。
残念ですが・・・。
クライアントは、どこぞの次元のひずみにあるらしい彼のオフィスに、どこをどう通ったのかもわからないまま、突如やってきます。
「彼のところに来れば、何でも望みがかなう」
そう、人づてに聞いてやってきたらしい。
探偵というよりはむしろ、カウンセラーなのですが、クライアントの「自分は今、不幸だ」という思い込みを、原因を探り、心の奥のもつれた糸を解きほぐすことにより、解決に導く、そのあたりの手腕が、やはりミステリ的といえます。
表に現れた現実は一つなのに、知らなかったこと、知るべきことを明らかにしていくだけで、現状がすっかり違ったものに見えてくる、この不思議。
これは人の思い込みを正す、一種の「憑き物落し」なのかもしれないと思いました。

この本の連作の一つ、「クロッシング・ミストレス」。
一人の老女が訪れて、語る。
自分は、先に亡くなった主人との人生は、それなりに平和ではあったけれども、退屈だった。
もし、若いときに別に意識していた男性と結婚していたら、どんな人生だったのか、それが知りたい、と。
その男性は小説家として名を成していたが、50歳前に自殺しているのです。
”ハーレクイン”は、そのようなことは知らないほうがいい、と説得しますが、彼女はあきらめきれず、禁断の架空の人生を観ることになる。
なんと、彼女と結婚した彼は、作家にもならず、平和で、それなりに幸福な人生を送り長生きをした。
結局彼女はどちらにしても、退屈な人生を歩むということ。
そして結局、彼女が彼の平和な人生を奪っていた、ということが分かり愕然とするのです。
「だから、言ったのにね・・・」、彼女が去ったあと、”ハーレクイン”は一人、皮肉な笑みを浮かべていたのではないでしょうか。
人助けのようでいて、実は人の心のいやな部分を糧にしている吸血鬼のような、そんな感じさえ受ける、妖しい探偵氏でありました。

最後に一つ。何で、西澤氏は、いつもこんな読めない当て字を人の名前に使うのでしょう・・・。始めだけ、かながふってあるけれど、その後読めなくていつもいらいらさせられます。こんなこと思うのは私だけ?

いつも最上のもののご紹介とはかぎらないので、まったく私の独断と偏見ではありますが、多少の満足度を入れてみようと思います。あまりにも、けなす言葉しか思いつかない本の紹介はボツにしたものもあるんですけどね。そのうちボツ特集でもやりますか・・・。

星5つが最高点ということで、
この本の満足度は★★★。

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サン・ジャックへの道

2007年06月24日 | 映画(さ行)

1500km、巡礼の旅。都会生活の無駄なものをどんどん振り捨てて、新しい何かが彼らの心に芽生える。
             * * * * * * * * *

フランスのル・ピュイから、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラまで、世界遺産に指定されているキリスト教の巡礼路を旅するツアーに参加した人たちのお話です。
というと、やけに宗教めいて地味な話かと思えばさにあらず。
1500km、まともに歩けば2ヶ月。
車の通れない大自然の中の巡礼路を歩くことは、フランスでも、ちょっとしたブームになっているのだとか。
日本で言えば、四国のお遍路さんのようなもの。
特に、宗教に思い入れがない人でも、自然の中をゆっくりと歩くこと、いわば自然回帰は、都会生活に疲れた人々に癒しを与えるもの。
それはどこでも、同じ様ですね。

さて、このストーリーのメインとなる3人は兄弟。
会社を営む超多忙の兄、ピエール。
高校教師の手ごわそうなおば様、クララ。
そして下の弟は、無職、一文無しのアル中、クロード。
三人は巡礼の旅など、とんでもない!
自然回帰なんかくそ食らえ!、
そして、互いの兄弟など大嫌い!
という面々でしたが、亡くなった母が、この巡礼を3人で成し遂げなければ、遺産を相続させないと遺言を残したため、仕方なくツアーに参加することになります。

このツアーは、ガイドのギイ、ワケアリの女性マチルド、何か勘違いして参加してしまった若者4人、総勢9名の旅となりました。
ピエールは重装備にたっぷり荷物を詰め込んで、あっという間にフラフラ。
クロードは、何の荷物もない手ぶら。靴も普通の靴だし、着替えも持たない! 
アラブ系の青年ラムジイは、イスラムの聖地メッカへの旅だと勘違いしている。
早速取っ組み合いのけんかを始める兄弟たち。
・・・それでも、毎日毎日旅は続きます。

ケータイも通じない田舎道。
宿泊は、ホテルではなく、他の人たちと同室の宿泊所。
時には険しいのぼり道。
時にはどこまでも平坦なうねうねと続く道。
牛や羊の群れと一緒になったり、
また時には、名所となっている古い教会のある街を通りかかる。
ふう、これらの映像だけでも、癒される感じです。
いいなあ、私も歩いてみたくなってしまいました。

このような旅の中で、彼らは互いに互いを理解し、チームワークも出来てきて、また、いらない荷物は振り捨てて、たくましくなっていきます。
いよいよフランスとスペインの国境。
彼ら3人は、ガイドに、「実はお母さんの遺言では旅はここまででいいことになっている」と告げられます。
そのときに、なんと一番嫌がっていた長男ピエールが、途中でやめるのはいやだと言って、最後までみんなと一緒に旅を続けることになるのです。
他の二人にも異存はありません。
しかし、実はそこからのピレネー山脈越えが、一番大変で、すぐに後悔するピエール。

ユーモアたっぷりのこの巡礼道中、風景とともにたっぷり楽しませてもらいました。
それから、この作品には時々、彼らの夢のシーンが挿入され、これがまた、幻想的で、美しく、そして楽しいものになっています。
そして、ラストには、つい泣かされました。
かなりのお勧め作です!

2005年/フランス/112分
監督:コリーヌ・セロー
出演:ミュリエル・ロバン、アルチュス・ド・パンゲルン、パスカル・レジティミュス

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「一角獣の繭」篠田真由美

2007年06月23日 | 本(ミステリ)

静かな高原で、蒼がであったユニコーン。
蒼は、つらい宿命を負った少女を守りぬけるのか。

           * * * * * * * * *

「一角獣(ユニコーン)の繭」 篠田真由美 講談社ノベルス

この物語はほとんどが、上高地の私的リゾート地内、豊かな自然の中で進められます。建築探偵桜井京介の事件簿、シリーズ13作目。
いよいよ、終盤に近づいた感。

前半はほとんど深春の視点で語られます。
蒼を高原につなぎとめておくことが、彼の使命。
熊のような大男なのに、女性のようなその名前。
バイトでお金を稼いでは放浪の旅に出るというライフスタイル。
世俗にまみれず、しかも、包容力があり、精神はきわめて健全。
そして、料理の腕も超一流!! 
こんな彼が蒼のそばにいるのはある意味、京介といるより安心。
なんと、今回は輪王寺綾乃の婚約者というニセの設定で、タキシードを着てるシーンまであるという、もしかしてこれは???と、ロマンチックな想像までしてしまう。

一方蒼は、晶那(あきな)という不思議な少女と出会う。
二人はつつましく恋に落ちるが、彼女の周りに次々と起こる身内の怪死事件。
事故か、自殺か、または殺人なのか?
この二人はどうなのでしょう。
あまりにも似すぎていて、はかなすぎて、私にはベストカップルのようには思えないのですが。
蒼にはもっと元気のよい女の子がいいんじゃないかなあ・・・。

さて、宿敵ともいうべき松浦窮が、不気味に、事件の背後に見え隠れしており、今回、彼を追い詰めていく京介が最後の鍵を握っています。

まあ、この事件の解決はともかくとして、最大の問題は、この巻、衝撃のラスト!
いったい京介って、なにもの????
以前から、仄暗い過去をほのめかしてはいましたが、とうとう、ここで急展開。
これはなに?!?
次作で、いよいよ、その秘密が明かされるらしい・・・。
待たれる次号!! 乞うご期待!!

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「夜愁 上・下」 サラ・ウォーターズ

2007年06月21日 | 本(ミステリ)

戦時下のロンドン。空襲を受け廃墟と化した街の闇の中で、彼女ら、彼らに何が起こったのか----。

         * * * * * * * * * 

「夜愁 上・下」 サラ・ウォーターズ  創元推理文庫。
 
サラ・ウォーターズは「半身」、「荊の城」で、おなじみとなりましたが、この前二作の劇的な展開に比べると、少し地味なストーリーだと思います。
前二作はビクトリア朝イギリスが舞台ですが、ここでは1941年~1947年。
第二次世界大戦の戦中・戦後にかけてが舞台。
しかしもっとも特徴的なのは、1947年、1944年、1941年という順で、時を逆行してストーリーが語られていくということです。

ここに登場する主な人物たちの謎。

<ケイ・ラングリッシュ>
孤独な男装の女性。
過去に救急隊員として働いていたようだが、何かトラウマを抱えているようだ。
そのトラウマとは・・・・?

<ヘレン・ジニヴァー>
作家のジュリアと同棲中。
つまり、どちらも女性ですが愛人関係にあります。
ヘレンは、ジュリアが少しでも他の女性に興味を示すと不安でたまらなくなり、ヒステリックになってしまう。
そもそも、このような関係になってしまったいきさつとは・・・?

<ヴィヴィアン・ピアス>
レジーという妻子ある男性と不倫中。
独身。付き合いはもう長いが、このような関係には疲れており、別れたいと思っている。
この二人はどのように付き合ってきたのか?
また、過去に、ケイとの接点があったようなのだが、それは何?

<ダンカン・W・ピアス>
ヴィヴィアンの弟。
内気でナイーブな青年なのですが、以前刑務所に入っていたという。
現在は、マンディという血縁ではない老人と暮らしている。
いったい過去に何があったのか、また、その老人との関係は?

このような謎が、時間をさかのぼるにつれて解けてゆきます。
いかにもドラマティックというような展開ではないにしろ、とにかく興味を引かれ、飽きることがありません。
そういえば翻訳文の嫌いな私ですが、ぜんぜん気にならないでするすると読めました。
訳は、中村有希さん・・・ですか。達人ですね。
レスビアン描写は、サラ・ウォーターズの十八番ではありますが、女性でしかかけないと思われるリアルな性描写もあり、これまで以上のパワーアップも、感じました。

ダンカンの友人のロバート・フレイザーも、なかなか魅力的。

戦時下のロンドンなど、知っているはずもないのですが、それでも、セピア色がかった時代色をありありと感じさせるあたりも、すごいです。

最後に語られる1941年には、それぞれの出会いのシーンがあります。
何かが始まるような、わくわくした気持ちにさせられる。
それがラスト、というのは、なかなか、しゃれています。
たどり着く結末はとっくに見えているにも係らず、なんとなく初々しい気分で本を閉じられるのもいい。
そしてまた、一番はじめに戻ってもう一度読みたくもなります。

ということで、総じては、ひそかなお勧め作ということになりましょうか。

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ゾディアック

2007年06月19日 | 映画(さ行)

行けども行けども袋小路の迷宮。そこに自ら進んで入り込み、人生を踏み外す男たち・・・。
                 * * * * * * * * * * * *

この映画は、1969年から始まった実際にあったアメリカの連続殺人事件を描いています。
犯人自らゾディアックと名のり、新聞社に暗号を送りつけて、犯行の声明とする。
この事件を追うトースキー刑事。
新聞記者のエイブリー。
そして新聞社のイラスト担当ロバート・グレイスミス。
映画の原作はこの、ロバート・グレイスミスの著作です。
彼らの必死の捜査と推理にもかかわらず、決め手が見えてこない。
犯人と思しき人物は何人か・・・。
しかし、決定的な証拠が出てこない。
状況証拠では逮捕できない。
手がかりを見つけても、いつも袋小路。
彼らは事件にのめりこむあまり、あるものは家庭をなくし、あるものは健康を損ない、また、あるものはキャリアをも失ってしまう。
この劇場型犯罪そのものよりも、進めども進めども事件は迷宮化、いたずらに時間ばかりが過ぎ、男たちは人生を持ち崩していく、そんなありさまの方にに、よほどリアリティを感じました。

正直、この作品は思っていたほどスリルに満ちたものではなく、やたら長くて、退屈ですらありました。
しかし、この長さこそ、彼らが追った事件のいたずらな長さを表現しているのではないかと、穿ちすぎかもしれませんが、思ったわけです。
結局現実の事件同様、犯人は藪の中。
一番怖いのは、今もゾディアックは一般の社会の中にひそんでいるということでしょうか。
収まりの悪い、不安の中に取り残されたような感じです。

イギリスの切り裂きジャック事件のように、後々まで、さまざまな人が推理を繰り広げる、そんな事件になるのかも知れません。
もし今なら、さまざまな科学捜査で、もっと真相に近づけたかも知れませんね。
すでに、人の記憶もうすれた過去の出来事、証拠といっても今となっては難しいのでしょう。この事件に限らず、結局未解決の事件がどれだけあるのか、と考えるとこれもまた怖いです。

このように興味深い点はありつつも、この映画に猟奇殺人事件、サイコキラー、ホラー、そのようなものを予想した方には、ちょっと期待はずれかも知れません。

2007年/アメリカ/157分
監督:デビッド・フィンチャー
出演:ジェイク・ギレンホール、ロバート・ダウニー・Jr、マーク・ラファロ、アンソニー・エドワーズ
「ゾディアック」公式サイト

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あるスキャンダルの覚え書き

2007年06月18日 | 映画(あ行)

ほんの端役であっても、強烈な存在感を見せるジュディ・デンチ。
そして意志の強い女を演じればダントツのケイト・ブランシェット。
この二人の共演というのは、もう見る前から、怖い感じですが、まさしく・・・です。

ジュディ・デンチは、厳格で周りからもちょっと疎ましがられるオールドミス、初老の女教師バーバラ。
その同じ中学校にやってきたのがケイト・ブランシェット演じる新米教師のシーバ。
バーバラはなぜかシーバに異常な興味を示します。
独身で特に親しい友人もいないバーバラは、その孤独さのあまり、ごく親しく何でも分かり合え、いつも一緒にいられるような同性の友人を渇望している。
それはいつしか、相手の感情も人格も無視し、相手を支配しなければ気がすまないような、狂的なものにまでなってきている。
彼女は毎日毎日、そんな心情を、日記につづり続ける。

バーバラは、父親ほどに年の離れた夫や、ダウン症の息子をもち、妻・母としての役目を果たしてはいるが、どこか満たされず、本当の自分は他にあるというような気がしている。
そんな心の隙のため、いつしか教え子の15歳の少年と体の関係を持ってしまう。
しかしそのスキャンダルは教師としてだけではなく、家庭の主婦としても命取り。
バーバラは、その秘密を手中にし、それを強みとして、まるで女郎蜘蛛のようにシーバを糸で絡めとり、身動きできなくしていくのです。
常に冷静。日記のノートを淡々と読み上げるような、彼女自身のナレーションも効果的で、じわじわと怖いのです。
自身では好意と思い込んでいるけれども、相手にとっては悪意としか思えない。こんな人とは、お近づきになりたくないですね・・・。

シーバが、バーバラのノートを見てしまうことで、破局が訪れます。
そこの感情の爆発のシーンもなかなか見もの。
この二人のためにあるようなストーリーでした・・・・。
もう、二・三十年して、ケイト・ブランシェットがバーバラを演じても面白いのではないかしらん。

2006年/アメリカ/92分
監督:リチャード・エアー
出演:ジュディ・デンチ、ケイト・ブランシェット、ビル・ナイ

「あるスキャンダルの覚え書き」公式サイト

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「コメント力」 齋藤 孝

2007年06月16日 | 本(解説)

「コメント力」 齋藤 孝 ちくま文庫

はっとする一言。いつもそんな言葉がつむぎ出せたら・・・。

齋藤孝氏の「質問力」、「段取り力」に並ぶ一冊です。
日本人は、コメント下手といわれます。
確かに欧米の著名人のインタビューの受け答えなどは実にユニークで楽しい。
著名人だけでなく、一般の人も、つまらない受け答えをするのは恥と心得ているようです。
いつぞやTVでみた、アメリカでハリケーンの只中を警備する警官のインタビュー。
「いやー、ぜんぜんたいしたことない。まったく問題ないね。」
しかし、テレビの画像では、彼の傘は裏返り、立っているだけでも大変そうな様子がしっかり映っている。
空元気とも思えるこの受け答えに、私ははアメリカ人のユーモア精神を見た気がして、感心してしまいました。
日本でこんな受け答えをしたら、不真面目だと、苦情が来るでしょうか。
でも、最近は日本でもトーク番組も多く、気の利いたコメントが、いろいろな場で求められていると思います。
そのためのテキストとなる、この本。
コメントを分析すると、
意味もないし、面白くないもの。
意味はあるが面白くないもの。
意味はないが面白いもの。
そして、意味があって面白いもの。
このようなゾーンに分けることができると、氏は言います。
もちろん、目指すべきは「意味があって、面白いもの。」
そのためには、専門的知識と、優れた感性が必要。

いいブログ記事を作ろうと思ったら、この辺の修行が必要ということですよね。
う~む、前途多難です。が、気長にがんばってみましょうか・・・。精進、精進。

この本では、いろいろないいコメント例が紹介されていますが、
そんななかで、「エースをねらえ!」の宗方コーチのせりふが多様されています。
コーチが、藤堂くんを呼び出していった言葉。
「男なら女の成長をさまたげるような愛し方はするな!それだけだ。」
そういえば、ありましたねえ、そんなセリフ。
いい言葉ですねえ・・・しみじみ。こう言われたら、ほんとに、めったなことは出来ない。
また、藤堂くんだからこそ、このセリフをきちんと受け止められる、そんな信頼すらもうかがわれますよねえ・・・。この他にも「エースをねらえ!」はお宝コメントの山・・・ということですので・・・、なんだか、また読みたくなってしまいました。

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ウィーン少年合唱団のこと

2007年06月12日 | コンサート

2007年6月11日。ウィーン少年合唱団の日本ツアー。札幌のKitaraホールでのコンサートがありました。

彼らの声は「天使の歌声」とよく言われています。10歳から14歳までの少年たち。この声が出せるのはこんな限られた時期だけなのですね。
このウィーン少年合唱団は、なんと、500年以上前の1498年に誕生したのだとか。めちゃくちゃすごい歴史ですね。それで、なんとなく古風な印象がありますが、今は、クラシックはもちろんですが、ポップスや各国で親しまれている曲なども取り入れて、大変聞きやすいプログラムになっています。札幌ではプログラムBが披露されて、日本の曲では浜辺の歌。花。翼をください。が、ありました。合唱曲としてはとてもポピュラーな曲なので、思わず口パクで一緒に歌っていました。私は、無伴奏の聖歌がお気に入りです。一番彼らの声を引き立てるような気がします。

天使のような顔をして歌っている彼らですが、10歳から14歳の少年といえばやんちゃ盛り。さぞかし舞台裏では、ワルガキなどもいて、にぎやかな毎日なのだろうなあと、想像するとちょっと楽しくなってきます。その昔見た映画は「青きドナウ」だったと思うのですが、羽枕の羽を飛び散らかせて、枕投げをしていたシーンがあったような・・・。パンフレットのプロフィールを見ると、趣味がインターネットだったり、サッカーだったり。好きな音楽はロックやヒップホップもあり。やはりいまどきの子供たちなんですね。話題の日本人少年、カイ・シマダ君も、ちゃんといましたよ~。

とても楽しくて、得をした気分のコンサートでした。
札幌は今、さわやかな初夏。この、札幌の一番いい季節に彼らを迎え入れることが出来て、幸いでした。お天気も最上でしたし。(今日だと暑すぎるくらいでしたが。)

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「グイン・サーガ114/紅鶴城の幽霊」 栗本薫

2007年06月11日 | グイン・サーガ

「グイン・サーガ114/紅鶴城の幽霊」 栗本薫 ハヤカワ文庫

早いものですね~。114巻が出ました。
今回の表紙、誰だかわかりました?
いや~、分からなかったですね。ちょっと読めばすぐ分かりますが。この巻は、フロリーがメインだったんですね。やっと日の目を見たというか・・・。
いつも、ひっそりと咲く、マリニアのような・・・。
いえ、地味さ加減もあそこまで行くと才能なんですよ。というか、逆オーラとでもいいましょうか。ここまで、個性の強烈な面々の中で、逆目立ちして、それが彼女の場合、災いしてるんですねえ。
あまりにも、おとなしすぎて、リギアでなくても、もっとちゃんとしなさいよあんた、って言いたくなっちゃうんですよね。
イシュトにしても、このたびのタリクにしても、まあ、常にステーキばかり食べてるとたまにさっぱりとお茶漬けが食べたくなる、そんな感じでしょうか。
まあねえ・・・。
それにしても、このたびの展開はあんまりじゃありませんか。
タリクが勝手に好きだとか何とかかどわかしたくせに、それをうらんだタイス伯のあまりにも理不尽な仕打ち。このままじゃ彼女は生きて帰れないって、そんなアホな~!!!
はい、あまりにもひどいことがまかり通っている国なんですね・・・。
いっそ、このまま、フロリーがタリクに手篭めにされて、また、子供を生んじゃう、というのはどうでしょうねえ。各国子連れで逃げ回って、それぞれの王やら王子の子供を作っちゃう。
世界平和の早道ですよ。近隣の国中の王族がみな兄弟。
わはははは・・・。
それにしても、このタイスの滅亡がだんだん読めてきましたね。
こんなひどい国をグインがただ見過ごして通り抜けるだけのわけがない!
そうですね~。いつになったらこの国を脱出できるのかと思ってたけど、結局けりをつけないとグインは前へ進めないわけだ・・・。
ガンダルも未だ、謎の人物だしね。
それから、今回はマリウスがなんだか頼もしく感じられた・・・。
さすがですね~。口八丁に手八丁、手練手管、顔色も変えずにしゃあしゃあとうそを言う。この才能にどれだけ助けられたことか・・・。敵にまわすと怖いですよー。
どうでもいいから、早くフロリーをここから助けてやってくれ~。気の毒で、見ていられない・・・・。
グインは、いつになったらケイロニアに帰り着くのでしょうか。
いえ、まずパロに着くのはいったい何巻先なのでしょうね・・・。栗本氏にも分からなさそうだ。200巻まで行くと言っているようなんで・・・。

 

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しゃべれども しゃべれども

2007年06月10日 | 映画(さ行)

東京の下町。その下町情緒を背景に落語をテーマとして、ホロリとくる味がよく出ています。
邦画はたまにしか見ないのです。
国分太一君のファンというわけでもない。
でも、テレビで見たCFのほんの一シーンで、彼が見せる一瞬の真剣なまなざしになんだか心引かれて、見てみました。

国分太一演じる今昔亭三つ葉は、うだつの上がらない二つ目の落語家。
その彼が、なぜか「話し方を習いたい」という3人に落語を教えることになります。
無愛想で口下手な十河。
関西弁の少年、村林。
元プロ野球選手で、解説をしてもうまくいかない湯河原。

伝えたいことがあっても、なかなかうまく言葉で伝えられない。
そんなことってよくありますよね。
言葉をうまく使える人をうらやましく思うことがあります。
ここに登場する十河さんなんか代表的に、言葉がうまく使えない。
だからこそ、自分がしゃべったことを聞いてもらえて、きちんと受け止めてもらえたら、とてもうれしいのです。
落語を出来るようになることと、うまく人と話せるようになることは、ちょっと違うんじゃないかな・・・、
と、思いながらも、でも、するすると言葉が出て、それで笑ってもらえたら、それは一つの自信となって、次には自分の言葉が出るのかもしれない。
この人たちにとっては、落語そのものよりも、集まるたびにいいたいこと言い合って、それが自信になったような気もしますが・・・。

さて、この映画では国分君の落語家としての演技がどうのこうのではなくて、本気で、「落語」を楽しんでしまいました。
マジで、国分君の落語を一本通しで聞いてみたいです。
下っ端の落語家というと、ややひょうきんな人物を想像するのですが、さにあらず。
普段からきもの姿、古典落語一筋、図書館通いで勉強も怠らない努力家で、一途な性格です。口が悪くて、喧嘩っ早いというのもいかにも江戸っ子っぽい。
伊東四郎演じる師匠を尊敬していて目標にしている。
けれども、何かいま一つ欠けていて、そこから上にいけないでいる。そんな状態。
第一印象の、「真剣なまなざし」、は、やはりそのままで、なんかいい感じでした。
それと、国分君の立ち居振る舞いがきれい。
踊りの稽古のシーンなんかもありましたが、あんな感じで、動作の一つ一つにも気を配っているのが分かります。座布団を片付けるシーンでさえ、動作がきれい。
まあ、こんなことは映画にも出てきませんが、彼のおばあさんがお茶の先生という設定なので、きっと、彼も茶道をたしなむに違いない。そんな想像さえしてしまいました。

その江戸っ子がプロポーズをするとどうなるのか・・・、
という答えがラストにあります。
あまりにも急で、さりげなくて、え?今のはもしかして、プロポーズ?と考えてしまうほど。まあ、そんなのもありですかね。思ったことはすぐに伝えなければね!

ともあれ、ほおずき市に浴衣姿。浅草界隈の映像、なかなか美しく、ラストのゆずの曲もぴったりで、ほんわか気分で、映画館を出ることが出来ます!!
この公式サイト、すごく映像がきれいなんで、ぜひご覧ください。

2007年/日本
監督:平山秀幸
出演:国分太一、香里奈、森永悠希、松重豊、八千草薫、伊東四郎

「しゃべれども しゃべれども」公式サイト


 

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「わたしたちが孤児だったころ」 カズオ・イシグロ

2007年06月08日 | 本(その他)

「わたしたちが孤児だったころ」 カズオ・イシグロ 入江真佐子訳 ハヤカワepi文庫

これぞ「小説」。
ほとんどミステリっぽいものしか読まないくせに、なぜ突然カズオ・イシグロなのかというと、この前、「日の名残り」という映画(DVD)を見ましてね。
その原作がカズオ・イシグロということで、興味を持ちまして、読んでみました。
カズオ・イシグロ氏は1954年生まれ。(ほぼ同年代だっ)
日本人ですが、5歳の時にイギリスへ渡り、日本とイギリスの二つの文化を背景にして育った、とあります。
「日の名残り」ではブッカー賞受賞など、英米では大変高く評価されている作家です。
・・・、といったものの、私は本当に推理小説専門だし、翻訳ものが苦手ということもあって、この作家については何も知らなかった、というのが正直なところです。
さて、ということで初挑戦のこの小説は、すごくよかったです!!

このストーリーの主人公は、英国の探偵であるクリストファー・バンクス。
1910年代、少年時代の彼は上海で両親と暮らしていました。
ところが、両親が謎の失踪を遂げ、孤児となった彼は、おばに引き取られて、その後イギリスへ渡り成長します。
探偵となった彼は、両親の行方を探すべく、再び彼にとっての故郷である上海へ渡ります。
探偵? 謎の失踪? これはいつも私の見ているミステリなのか?
・・・いえ、これはやはり、ミステリとは別物ですのでご安心を。(何が安心なんだか・・・?)
常に主人公が過去を回想する形で語られており、それもかなり第三者的、冷静な語り口なので、正直はじめのほうは少し退屈に思いました。
けれど、成長した彼が再び上海の地を踏むあたりから、どんどん佳境に入っていきます。
ちょうど日中戦争の只中。
魔都、上海。
中国、イギリス、日本、様々な人種・思想・アヘン等の利害関係が、入り乱れ、混乱のさなかです。
親友のアキラとは再会できるのか。
密かに思い続けた女性との関係は・・・?
両親の失踪の真相は??

このあたり、なんと歯医者の待合室で読んでました。
「予約時間にきちんと行ったはずなのに、何でこんなに待たされるのさっ」と、いつもならイライラするところですが、このときばかりは、たっぷり待たされたおかげで、じっくり物語りに集中できまして、(しかも、手に汗を握る展開!)実に有意義な待ち時間でした。

う~ん、私の文章だと、なんだかドタバタストーリーみたいに思えますね。
そうではなくてとても深い物語なんですよ。本当は。
文庫の解説で古川日出男氏がこういっています。

カズオ・イシグロはこの『わたしたちが孤児だったころ』で、結局のところ、僕たちは永遠に小さな男の子あるいは小さな女の子なのかもしれない、と描く。
それはあまりに哀切で、だから最後のページを読み終えると言葉を失ってしまう。

この解説がまた、お手本にしたいような名解説なんです。
このような文章が書けるようになりたいものです。
クリストファーが最後に知った真相は、大変ショッキングで切ないものでした。
子供から見ると、ゆるぎない大人。
けれどもその大人も、実は必死で孤独に世界と向き合い震えている・・・。
ちょっと怖いですけどね。

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小説「こちら葛飾区亀有公園前派出所」 大沢在昌他

2007年06月07日 | 本(ミステリ)

小説「こちら葛飾区亀有公園前派出所」  原作 秋元治 集英社

「こち亀」連載30周年記念、&「日本推理作家協会」設立60周年記念のコラボレーション企画。
なんと、あの「こちら葛飾区亀有公園派出所」を推理作家の大御所が小説化。
大沢在昌。石田衣良。今野敏。柴田よしき。京極夏彦。逢坂剛。そして、東野圭吾。
という豪華メンバーで、推理小説ファンなら、これを見逃す手はありません。
そしてまたその作中で、おなじみの両さん、中川君、麗子さんらが活躍するのですから・・・。
なんというか、それぞれの作家の個性はそのままで、「こち亀」のめちゃくちゃさ、強烈さ、マニアックさ、そして楽しさがそのまま、というおいしい一冊です。
どれも、大満足の出来ですが、そんな中でも私は京極夏彦さんの「ぬらりひょんの褌(ふんどし)」が、一番気に入りました。

これは、他の作品では出てこない大原部長が主人公。
若き日の大原部長が出会った密室の怪異のお話です。
この不気味な話は後に大原部長のトラウマにもなったという・・・。
そんな話をしているところへ登場するのが一人の老人。
「この世には不思議なことなど何もないのですよ。」と彼はいう。
(やった~!でましたっ!!)
そうしてするすると謎を解いてしまう。
ぬらりひょんの薀蓄。この、きめゼリフ。そして、大原部長のトラウマ落とし・・・。
完璧に、京極堂シリーズですよねえ。
ここまで、自分の世界にひきつけて、そして「こち亀」ワールドをも表現できるなんて、すごい!!。ひたすら、感服します。
大原部長における両さんの人物評がまた、振るっています。

「欲深くてこすっからくて、スケールは大きいが思慮が浅く、がさつで大雑把なのにやたらと細かく、だらしがなくて怠け者のくせにしぶとくてマメで、騒々しくて、乱暴で、凶暴で、非常識で、バカで、マヌケで、うがああああああああッ」
と、なります。

とにかく、楽しい。
このような企画を立てた編集者の方に、感謝。

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「風信子(ヒアシンス)の家」 篠田真由美

2007年06月05日 | 本(ミステリ)

「風信子(ヒアシンス)の家」 篠田真由美 東京創元社

神代教授の事件簿、ということで短編集です。
桜井京介のシリーズの姉妹作、ということになりますが、この作品は、そのシリーズが始まるより少し前1991年6月から1992年2月という設定。
だから、この神代教授の家には蒼と、京介も同居中で、もちろん登場します!
 深晴も、当然出てきます。
桜井京介ファンなら、これは読まないではいられません。
蒼は、まだ少し不安定な少年。かわいいっ!

この中で好きなのは、やはり表題作の「風信子(ヒアシンス)の家」でしょうか。
ある日神代教授に届けられた家屋の立体模型。
「君にこの謎がとけるかな?」というメッセージ。
そこには記名もされているのに、彼には覚えがない。
神代教授は自らの記憶を探り始めます。
どうやら学生時代の知り合いのようだけれども・・・。
ようやく解きほぐした記憶の中には意外な真実が隠されていました。
ちょっぴりくすぐったくて、切ない真実。
人の気持ちは不思議です。

さて、いつもなにやら、質素だけれどもグルメなこの登場人物たち。
おでんの作り方について、こんな一節がありました。
「まかしとけって。
出し昆布は水につけてきたし、こんにゃくは下茹でしてアクを抜いてある。
後は揚げ物を油抜きして、大根は米のとぎ汁で柔らかくして、全部をでかい鍋でゆっくりじっくり煮込むだけさ。
 じゃがいもは溶けないように、しばらく水につけておいたやつを後から入れて、味つけは塩と醤油とみりんを少しばかり。
薄味に仕上げるのがコツだな」
これは神代教授のセリフ。
おいおい、簡単そうに言うけど、家庭でこれだけ出来れば、すごいんじゃないかな。
というか、私が大雑把過ぎるのでしょうか。
ダシこそ、化学調味料は使わないようにしていますが、うちでは全て一緒にぶち込んで煮てしまいます。
こんな丁寧な下ごしらえなんかしません・・・。
世間の皆様は、これが普通なのでしょうか・・・???
我が家の食生活ももう少し考えなくては・・・と、反省してしまうな。
寒い日にコタツに入って、みんなでこんな丁寧に作ったおでんをつつくなんてのは、最高ですね!

 

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