映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ペコロスの母に会いに行く

2015年01月14日 | 映画(は行)
ボケるとも悪いことばかりじゃなかかもしれん



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62歳で漫画家デビューをした岡野雄一氏の介護日記コミックが原作。
ベストセラーなので、このほのぼのしたイラストを目にしたことがある方も多いはず。
かくいう私、本作はまだ見たことがなかったのですが、
先ごろから、我が家で購読している新聞にコミックの定期連載が始まり、
いいなあ・・・と、感じ入った次第。



85歳、認知症の度合いが進行してきた母みつえが、グループホームに入所。
息子ゆういちがホームに通うエピソードが綴られていきます。
時折母は、息子が息子ともわからなくなるのですが、
ゆういちの、はげちゃびんの頭を撫でると、思い出す。



坂の町長崎の風景。
長崎の言葉。
そして長崎の歴史。
この地方色がまた、たまらなく柔らかな雰囲気を醸し出しています。
冬も雪がなくていいなあ・・・と私は思います。
北海道の冬期間の真っ白な風景は、介護生活には寂しすぎる気がします。
実際、外に散歩にも行けず、ひたすら春を待ちわびるのみ。
私自身も、介護施設に入所している父のところへ通う日常で、
本作も大変身にしみます。
だから、あえて原作本も見ていなかったというところもあるのですが、
本作のセリフにもある通り
「ボケるとも悪いことばかりじゃなかかもしれん」
というのも、実感として、そういう面もあるかも知れないと、
このごろ思います。





母みつえの心に断片的に浮かび上がってくるのは、
幼なじみの友人のこと、若き日の夫のこと・・・。
悲しい思い出もあるけれど、多くは楽しかった懐かしい日々。
日々の憂さを忘れて、陽だまりのような懐かしさに包まれて過ごすことは、
ある意味幸せなのかもしれません。
今はすでに亡くなっている人も、まるで今そこにいるかのよう。



本作は認知症の悲惨さとか介護の大変さを訴えているわけではなく、
人として当たり前に来る「老い」に、
当人も周囲の人も、優しく寄り添って過ごそうとする所に、
多くの人が共感を覚えたのだと思います。
ほのぼのした絵にチョッピリ悲哀がにじむ本作、やっぱり読んでみたくなりました。

ペコロスの母に会いに行く 通常版 [DVD]
岩松 了,赤木春恵,原田貴和子,加瀬 亮,竹中直人
TCエンタテインメント


「ペコロスの母に会いに行く」
2013年/日本/113分
監督:森崎東
原作:岡野雄一
出演:岩松了、赤木春恵、原田貴和子、加瀬亮、竹中直人

老いを見つめる度★★★★☆
満足度★★★★☆