映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ランジェ公爵夫人

2010年11月30日 | 映画(ら行)
かなわぬ想いこそが至福



             * * * * * * * *

先日、「ベルサイユの子」をみて、ギョーム・ドパルデューを知り、
遅まきながら、この作品を見てみました。
遅まきながらといえば、彼は2008年10月に病没しており、まさに手遅れなのですが・・・・。
原作は、文豪オノレ・ド・バルザック。
むろん読んだことなどありませんが、
なるほど、文豪とはこういうことを言うのかと、
恥ずかしながら今さら認識を改めてしまった、この作品であります。

19世紀初頭。
パリの社交界の華、ランジェ公爵夫人は、モンリヴォー将軍に出会います。
恋のゲームのように思わせぶりな言葉やしぐさでモンリヴォーを翻弄する夫人。
モンリヴォーはこれまでに感じたことのない強烈な恋心を彼女に抱くのですが、
夫人は決して一線を越えようとしない。
業を煮やしたモンリヴォーは、その権力にまかせて夫人を拉致。
なんと彼女の額に焼き印を押そうと迫る。
結局それは未然に終わり解放されるのですが、
そこから夫人の情熱が燃えたぎり始めます。
今度は逆に彼女からモンリヴォーに接近をはかるのですが、完全に無視されてしまう・・・。


これは何なのでしょう。
ラブストーリーといってしまうのはあまりにも陳腐。
悲恋・・・?いえ、それも違います。
ともかくこの二人の間には肉体関係はないし、当然そんなシーンもない。
にもかかわらず、この強烈に甘美な官能かげんときたら・・・
情愛の大きなうねりの中で、私たちこそが翻弄されてしまいます。
お互いに求めてやまない二人は、
しかしすれ違い、
ついに彼女は海を経た外国の修道院へ入ってしまうのです。
彼女を捜し求め、やっとそこへたどり着いたモンリヴォー。
戒律の厳しい修道院は面会もまかりならないながら、
ついに鉄格子ごしの対面を果たします。
尼僧姿のランジェ公爵夫人・・・、
これがまたいよいよ手が届かなさそうという感じで、燃えますね。
かなわないとなると余計に心はかき立てられるもの・・・
これはほとんど“M”の物語なのかも知れません。
求めれば求めるほどかなわず、
隔てられ、そして自分からもまた隔てることで思いを強めていく・・・。
そのかなわぬ強い思いこそが至福であるかのような・・・。

蝋燭の仄暗い明かりに照らし出されるなまめかしく白い夫人の肌。
ドレスの艶。
幻想的な彩りで、この不可思議な人の心を浮かび上がらせてくれました。


ほとんど嘆息・・・。
すごい物語があるものです。

ランジェ公爵夫人 [DVD]
ジャック・リヴェット
アルバトロス



2007年/フランス・イタリア/137分
監督:ジャック・リベット
原作:オノレ・ド・バルザック
出演:ジャンヌ・バリバール、ギョーム・ドパルデュー、ミシェル・ピコリ、ビュル・オジエ

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ホワイトアウト

2010年11月29日 | 映画(は行)
究極の閉ざされた地で起こる謎の殺人事件



          * * * * * * * *

2009年、アメリカ作品です。織田裕二出演作とは別物。

冒頭、50年前、ソ連の軍用機が南極に墜落のシーン。
積み荷の中に何か重要なものがあったらしいのですが・・・。
そして、現代。
南極のアメリカによるアムンゼン・スコット基地。
キャリー・ステッコは、連邦保安官として派遣されてきています。
もう2・3日でこの地を引き上げようとするところ。
そんな時に起きた事件。



氷上に死体を発見。
しかし、付近にはトラックもなく、地図も装備も何もない。
そもそもこの男はどうやってここまで来たのだろう。
半身崩れたようなその死体の意味は・・・?
マイナス50℃とか60℃の世界の話です。
ちょっと想像つきませんね。
ほんのちょっと素手で外にいただけでも、
たちまち凍傷になってしまうというような過酷な世界。
また、南極というのは究極の閉ざされた世界であるわけです。
嵐の山荘とか絶海の孤島、そういうシチュエーションの究極版。
限られた場所の限られた人々。
そう、犯人はこの中にいるのです。
この作品、スパイアクションかと思ったら、
そうではなく猟奇殺人的事件の真相を探るミステリなんですね。
ラストには意外な真犯人が・・・という、あの。



このキャリーは過去に同僚に裏切られた経験がある。
裏切りを見抜けなかった自分を悔いて、こんな地の勤務を志願した・・・という曰く付き。
だから、人の見極めには慎重になる。
・・・といっても、最後に基地に残るのはほんの数人。
とすれば怪しいのは・・・と、何となく読めてはしまいますけどね。
外のものすごい地吹雪、すなわちホワイトアウトの状況は、なかなか迫力がありました。
見ただけで寒そうだし・・・、絶対あんな場所には行きたくないですね。



50年前のソ連機を発見し、中に入るシーンなどは、ドキドキさせられます。
究極の冷凍庫に保存されたそれは、50年前と何一つ変わらずに死体もそのままある。
残念ながら先に発見者がいて、積み荷は持ち去られた後でしたが。
舞台も事件の状況も、とにかく冷え込む。
夏の暑いときに見るべきでした。

2009年/アメリカ/101分
監督:ドミニク・セナ
出演:ケイト・ベッキンセール、ガブリエル・マクト、ドム・スケリット、コロンバス・ショート

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約束の葡萄畑/あるワイン醸造家の物語

2010年11月27日 | 映画(や行)
至高のワインをつくるもの・・・環境、汗、涙、そしてインスピレーション



               * * * * * * * *

う~ん、この作品の解釈に若干戸惑っています。
フランス、ブルゴーニュ地方。
ワイン作りにとりつかれた男、ソブラン・ジョドーの物語。
時は19世紀。
彼は元々は葡萄作りの農夫です。
その彼が至高のワイン作りに一生を捧げる。
彼は資金作りのためにナポレオンのモスクワ遠征に参加したりしますが、
これがもうロシアに負けたのではなく、寒さに負けたという、悲惨な戦争だったのですが・・・。
まあ、そんなあたりが時代を感じさせて、興味深いです。


さてさて、こういうリアル話だけなら、非常に納得できますよね。
ところが実はこの作品、ちょっとファンタジーめいている。
なんと天使が登場します。
真っ白い大きな羽を持つ天使ザス(ギャスパー・ウリエル)。
ソブランはこの天使に天啓を受けて、自分の葡萄、自分のワインを作り始めるのです。
この天使とは毎年同じ夜に同じ場所で出会うことを約束する。
自分は天使に見込まれたラッキーな男。これで成功間違いなし。
・・・ついそう思ってしまいますよね。
けれどこの天使、始めに葡萄の苗を授け、若干葡萄造りのアドバイスをくれる以外は
何の助けもしてくれません。
厳寒のロシアで死にかけたときも、幼い娘が病気で命を失ったときも、
何の力にもなってはくれなかった。
しかし、神というのは得てしてそういうものですね。
見守るだけ。
ヒトの喜びも苦しみも、それがあなたたちの営みの証なのだから・・・といわんばかりだ。

・・・ところが、この作品では、ザスは実は堕天使だった、というのです。
堕天使??? 
さあ、もうここで行き詰まってしまいます。
キリスト教的知識がほとんどない私、「堕天使」と、言葉は聞いたことはあるものの、
その正しい意味が解っていない。
こういうときは、Wikipediaといきますか・・・。

堕天使(だてんし)とは、もともとは旧約聖書、偽典にある天使の身でありながら高慢、嫉妬、自由意志などの理由でヤハウェ・エロヒム(主なる神)に反逆し、結果天界を追放、つまり堕天された者のことを指す。
堕天使は悪魔と同一視される。堕落した天使が悪魔になったのである。これがキリスト教の教理としての立場である。
比較宗教学では意味は違ってくる。堕天使は前述したように天使の身でありながら、ヤハウェに反逆し天界を追放された存在という直接的な意味を持っており、一方の悪魔はヤハウェに反逆したもの、人を悪の道へ導く者、地獄に存在する者というヤハウェへのアンチテーゼ自体を示したような意味を持つ。


ふむふむ、それで、彼が堕天使だと聞いたときに、
ソブランは「悪魔」といって、だまされたと怒るわけですね。
けれど、堕天使=悪魔と決まったものでもないらしい。
つまりは神に逆らうという意味ではなく、自由意志で天界から離れたものもいる、
ということで、まさにザスはこういうパターンだと理解できるわけです。
・・・が、彼はワイン通なだけではなくて実は怪しい趣味も持っているので・・・、
それが天界を追われた理由とも思えます。

けれど彼は結局自分が無力で、ソブランのために何もしてあげられないことに
実は忸怩たる思いがあったというわけなのか。
それで、最後の決断をするということなんですね。
何となく解ってきました。
(すみません、勝手に自問自答しております・・・)


とにもかくにも、ワインの出来というのは
その土壌、気候、天候、作り手の思い・・・様々な要素が重なり合い、
時に奇跡の様なものが出来上がる。
まるで神のインスピレーションのような・・・。
そういう意味で、この天使の登場が生きてくるということなのでしょう。

天使に見守られつつ、しかし苦労はすべて自分が背負い、
ソブランはこのワイナリーを叔父から引き継いだオーロラと手を組み、
上質なワインを作り上げていく。
ワインの味とはつまり作り手の味そのもの。
喜び、悲しみ、恐れ、野望、成功、喪失・・・
至高のワインとは、これらがすべて詰まっているもの・・・。
いつまでも若い姿のままの天使ザスと
次第に年齢を重ねてゆくソブランの対比もいいですね。

私的には、結局その天使ザスは
ソブランの心の中にだけ現れ、一生を添い遂げた幻だった
・・・と言う結論に持って行きたいところなのですが、
しかし、ザスは他の人にも姿を見られているんですねえ・・・。
ホントにいるんですよねえ。
このあたりのスジが納得できるようなできないような・・・、
ということで、やっぱり結局うまく消化できないでいるわけです。
地に足をつけ、ヒトと共に生身の限りある命を生きようとする、
そういう天使の物語。
そう理解すればいいのかな。


さて、この作品、ザスが登場したところですぐに、あるコミック作品を思い出しました。
川原泉さんの「美貌の果実」という作品です。
甲州、親子で小さなワイナリーを営んでいる一家のお話。
ここではその葡萄の樹の精が登場します。
羽はついていませんが、やはり美形。
慎ましくもお気楽(ここがいかにも川原さん)に葡萄とワイン作りに励むここの母子に、
これまでお世話になったお礼として、農園のお手伝いをするんですね。
けれどその樹齢100年の葡萄の精は、もう命が尽きかけている・・・。
こんなおとぼけた絵にもかかわらず、ほろりとさせられまして、私の大好きな一作であります。

ワイン作りとそのスピリチュアルな物語・・・とすれば、
やっぱりこちらのコミックの方がいいなあ・・・と思った次第。

美貌の果実 (花とゆめCOMICS)
川原 泉
白泉社



2009年/ニュージーランド・フランス/126分
監督:ニキ・カーロ
原作:エリザベス・ノックス
出演:ジェレミー・レニエ、ギャスパー・ウリエル、ベラ・ファーミガ、ケイシャ・キャッスル=ヒューズ
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「真田太平記(八)紀州九度山」 池波正太郎

2010年11月26日 | 真田太平記
無為の日々

真田太平記 (八) 紀州九度山(新潮文庫)
池波 正太郎
新潮社


            * * * * * * * *
 
さて、関ヶ原の戦いで敗れた西軍に組みした真田父子の運命やいかに・・・、というところでしたね。
石田三成や小西行長に対する残忍な扱いをみれば、
真田昌幸・幸村も死罪は免れ得ないところが・・・と思えたのですが。
でも兄、信幸とその岳父(妻、小松殿の実父)本田忠勝の必死の助命嘆願のおかげで、
死罪は免れ、紀州の九度山と言うところに蟄居ということになった。
蟄居というのは?
武士に科した刑罰のひとつで、自宅や一定の場所に閉じ込めて謹慎させたもの・・ということだね。
牢に押し込められているわけではなく、家来も何人か就いてはいるけれども、
監視されていて自由に出歩くことは出来ない、と、そんな感じ。
真田父子としては2年か3年・・・5年後くらいには、
家康の怒りも解けて許されるだろうと思ったんだ。
それとこの時に、信幸さんは「信之」と名前の漢字を変えるんだね。
謀反人の昌幸と同じ字を使うのはまずい・・・ということなんだろうね。
とにかく、昌幸・幸村は上田城を出て、紀州九度山で失意の日々を迎えることになる。
ここで向井佐平次は信之の沼田城に残り、
息子佐助が九度山にお供をすることになったんだね。
そう、佐助は草の者だから、連絡要員でもあったんだね。


関ヶ原の戦い後の状況は・・・?
家康は、徳川将軍の地位を秀忠に譲ったけれど、依然実権は握っている。
本拠地は江戸にあるけれど、秀忠を将軍につけたときに、京都に来ているね。
行列の先頭が京都へ到着したとき、最後尾の将兵は江戸を発したばかり・・・
とかいう、ものすごい大行列だったそうな・・・。
今や、大阪城にいる豊臣秀頼は、他の武将と並ぶ一大名にしか過ぎない
・・・というような家康の認識なんだ。
それで、京都伏見城から大阪の秀頼に「挨拶に来い」と催促をする。
秀頼の母、淀の方は
「豊臣家の臣下であるはずの徳川家へ、なんで頭を下げねばならぬ」と、断固拒否。
結局この時は、拒み通したわけだ。
回りはみんなハラハラだね・・・。


京都には真田家の屋敷もあって、
時折佐助や、なんと大胆にも幸村が様子を探りに姿を現していたという・・・。
まあ、監視されていたといっても、かなり緩んでは来ていたんだね。
家康と秀頼の緊張関係・・・、まだ何かありそうだという感じ。
世間は固唾を呑んで見守っているし、
それぞれがそれぞれの思惑で、動向を見定めようと情報活動に余念がない。
真田家の草の者たちも、このままでは終わるまいと信じて様子を探り続けている。
・・・そうこうするうちに、真田父子の九度山生活も10年以上になってしまうんだね。
頼みの綱の本田忠勝も亡くなってしまい・・・、
許されるのはかなり望み薄になってきた。
そんなこともあるのだろうけれど正幸は、病の床に就いてしまう。
65歳ですからねえ・・・。無理もないですね。
そして幸村は45ですよ。
無為の日々はさすがにつらかったでしょうね。
さてこの年、また家康が上洛するわけです。1611年。
この期に乗じて、家康の暗殺を計画する真田家の草の者、お江と奥村弥五兵衛。
そして今度こそ秀頼は、家康のご機嫌伺いに行くのか???
というところで「つづく」です・・・。
この巻はちょっと幕間的なんだけど・・・、しかし、その間10年以上か。
平和といえば平和。
でもその平和を良しとしない、戦国武将の性を感じますねえ。真田父子。
では、次巻を待ちましょう。
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「平成大家族」 中島京子

2010年11月25日 | 本(その他)
問題山積みでも、実は幸せはそこにある

平成大家族 (集英社文庫)
中島 京子
集英社


             * * * * * * * *

大家族がテーマの作品と言えば、最近では小路幸也さんの「東京バンドワゴン」があります。
それは昔ながらの、ワイワイガヤガヤ、
何だか懐かしく温かい「正統」大家族の様子が描かれています。
もちろんそれも好きで大変面白く読みました。

さて、こちらの大家族ですが、
さすが「平成」というだけあって、まことに今様の大家族なのです。

緋田家の当主は72歳龍太郎。元歯科医師。
今は悠々自適の隠居生活。
妻春子も健在。
まあ、この夫婦関係はうまくいっています。
問題はここの長男30歳克郎。
中学生以来15年間引きこもり中・・・。
昔気質の龍太郎はそんな長男が理解不能でいまいましい。
しかし、根が事なかれ主義の彼は、本人に向かって何も言うことが出来ない。
それともう一人、春子の母タケが同居。
とりあえず元気ではありますが、いささか惚けが始まっていてときどき妙なことを言う。
これらのメンバーで、まあ、納得いかないながらも慣れ親しんで暮らしていたわけですね。

ところがそこに、まず長女の一家がやってくる。
長女逸子とその夫聡介、中学生のさとる。
実は聡介が事業に失敗して自己破産。
やむなく転がり込んできた。
ただでさえさとるは難しい年頃、
転校先の学校でいかにいじめに遭わないようにするか研究中。

そしてそこへまた、次女友恵までが戻ってきてしまう。
彼女は夫と離婚して戻ってきたのですが、なんと妊娠中。
龍太郎は当然別れた夫との子供だと信じて疑わないのですが
(その他の可能性に思い当たっていない!)
実はひどく年下のお笑い芸人との間の子。
本人結婚する気はない。

てなことで、惚け老人、引きこもり、自己破産、いじめ、離婚、シングルマザー。
これでもかと言うほどの今日的話題てんこ盛りの大家族になってしまったのでした。
しかし、この人たちすべて一つ屋根の下にいるというのではなく、
母屋と離れ、そして物置、同じ敷地内に分散して住んでいます。
大家族でお馴染みの全員集合のお食事シーンはなんと一回しかありません。
別に仲が悪いわけではないのですが、それぞれの生活がやはり中心なんですね。
この本では、各章語り手が交代し、この家族の様子を語っているのです。
時には惚けたおばあちゃんまでもが語り手なのが、なんだか楽しいですよ。


さて、このように問題を山積みに抱えた家なのですが、
春子は同窓会で「あんたのところは幸せよ」などと言われてしまいます。
せっかくみんなに愚痴ろうと思っていたのに・・・。
でも実際考えてみれば、引きこもりでも、家庭内暴力だのネット犯罪をするわけではない。
破産でも一家心中にはならなかったし、
ひどい離婚の話は聞くけれどそういうわけでもなく、
新しい命が生まれるのは悪いことではない・・・。
まあ、そう言われても本人の鬱屈は晴れないようなのですが、
確かにどんな家にも悩み事の一つや二つあるのかも知れませんね。
端からは幸せそうに見えても。
問題を抱えながらも毎日を生きていて、やがて変化していく。
その変化のための力を蓄える場が、家・家族というものなのかも知れません。


この本の最大のオドロキは、引きこもりの長男がなんと結婚してしまうところなんですよ。
引きこもりっきりの生活で、どうして女性と知り合えたのか、
そして、どうやって結婚までこぎ着けることが出来たのか。
是非読んでみてくださいね。
読後感も良し。

「小さいおうち」で中島京子さんを知った方、
次に読むべきなのは絶対にこの本です。
オススメです。

満足度★★★★★
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ベルサイユの子

2010年11月24日 | 映画(は行)
守るべきものができたとき



             * * * * * * * *

パリ郊外、世界遺産ベルサイユ宮殿の外れの森。
かつてマリーアントワネットが贅沢の限りを尽くしたベルサイユの地に、
今はホームレスが多く住み着いているのだそうです・・・。
このストーリーでは、その森に住み着いている一人の男、ダミアンが
ひょんなことから5歳の男の子エンゾと暮らすようになります。
やはり住むところのないエンゾとその母親は、
道に迷ってダミアンのところに来たのですが、
翌朝、エンゾを残して母親がいなくなってしまった。
彼女は彼女できちんと生活を立て直して、
いつかエンゾを迎えに来ようと思ったわけなのですが。
捨て子を押しつけられたと思ったダミアンは始め怒り狂いますが、
しかし、この小さな子を放り出すわけにも行かない。
やむなく一緒に暮らすようになるのですが、
飢えや寒さをやっとしのぐような生活のなかで、
次第に二人の絆は本当の父子のように強まっていくのです。


社会になじめず、束縛を嫌うダミアン。
だからこそ、こんな所で気ままに暮らしていたわけですが、
守るべきものが出来たことで彼は変わって行く。
疎遠になっていた父を頼り、仕事を得、
戸籍もないエンゾの親権を得る手続きを経て、エンゾを学校へ入れる。

やれば出来るんじゃん。
考えてみるとエンゾの母親もそうなんですね。
一人ではたぶん立ち直ろうという気にもならなかったかも知れない。
けれど、守るべきものが出来たときに、人は優しく強くなれるのです。

ただし、ダミアンの自由への希求は
家庭の安穏よりもやはり強いのです・・・。
そういう生まれ持った性質なんでしょうね。
義務感にかられて縛り付けられない、
風のようにさらりとしたその風合いは
嫌いじゃないなあ・・・
まあ、彼が一人で背負わなくてもなんとかなるという状況もあったわけですが。


エンゾ役の子がまた、本当にかわいいんですもんね。
無垢であり、けなげ。
子犬を見ると誰もがほおずりしたくなっちゃいますが、まさにそういう雰囲気があります。


さて、このダミアンを演じたギョーム・ドパルデュー。
2008年10月に37歳の若さで亡くなっています。
ステキな方なのに・・・。
惜しいです。
他の出演作品も見てみたくなりました。

ベルサイユの子 [DVD]
ギョーム・ドパルデュー,マックス・ベセット・ド・マルグレーヴ,ジュディット・シュムラ,オーレ・アッティカ,パトリック・デカン
アミューズソフトエンタテインメント


2008年/フランス/113分
監督・脚本:ピエール・ショレール
出演:ギョーム・ドパルデュー、マックス・ベセット・ド・マルグレ-ヴ、ジュディット・シュムラ、オーレ・アッティカ
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エクリプス/トワイライト・サーガ3

2010年11月22日 | 映画(あ行)
考え直すなら、今!?



             * * * * * * * *

前作、ベラがヴァンパイアの一族に加わるという話しになったのですが、
ここではまだ人間のままです。
エドワードにはベラをヴァンパイアにしてしまうことに大きなためらいがある。


さて、待ってました第3弾、といいたいところですが、
実のところもうどうでもよくなっていたかも・・・。
2まで見たからには、3を見ないというのも片手落ちの感じだし・・・といったところです。

この物語はラブストーリーがメインなんですよね。
どうも、オバサンはあまりときめかないなあ・・・。
ラブストーリーというには設定が特殊すぎて感情移入しにくい。
まあしかし、この映画の冒頭、ちゃんとこれまでのストーリーの説明もついていまして、
ほとんど忘れていた私にとってはありがたかったのです。


草食系ヴァンパイアのエドワードと人間のベラが恋に落ちて・・・。
しかし、ヴァンパイアの自分はベラにふさわしくないと、彼は姿を消す。
失意の底にあるベラに接近してきたのは人狼のジェイコブ。
彼の優しさに甘える内にベラの心は揺れ動き・・・。
う~ん、こうして字にしてしまうとなんて陳腐なんでしょう。
ヴァンパイアに狼男!!
(狼男というと余計イメージが悪いので、ここでは人狼と呼びます!)
結局この三角関係のドラマでしかないんですよね・・・。
若いお嬢様方はこれでご満足??
オバサンはどうも入り込みきれませんでした・・・。



そもそもこのヴァンパイア一族の白塗りがどうも・・・。
エドワードの白い顔、赤い唇に太い眉毛・・・。
何だか「バカ殿様」みたいだし。

リーダーはデーブ・スペクターだし。
私は次第にジェイコブのほうがいいなあ・・・と思えてきてしまいました。
肌がすべすべで気持ちよさそう。胸毛もないし。
しかし、狼に変身すればふかふかで、これまた気持ちよさそう。
デカいけど、犬好きにはこれでもかわいい気がしちゃう。
しかも自分がヴァンパイアになるなどというリスクもナシ。
ベラちゃん、考え直すなら今だよ~。



エドワードは「オールドスクール」だと、ベラは言っていました。
つまりお堅い、と。
それは彼がそういう時代に生まれ育ったせいでもあります。
うーん、しかし素朴な疑問が。
ベラが人間のままで、生殖活動は営めたのだろうか?
・・・行為は出来るけど、子供は出来ない?
その可能性が大きいかな。
でもヴァンパイア同士では子供は絶対出来ないですよね・・・。
やはり、もう少し冷静に考えてみるべきでは・・・。


すみません。今回はまともにストーリーの話をしていません。
このように三角関係がメインなのですが、
敵対関係にあったエドワードたちと人狼一族が手を結び、
危険なヴァンパイア集団ニュー・ボーンと対戦します。
まあ、そのアクションシーンもちょっぴり楽しめます。
私はやはり狼たちの動きが好きですね。
何だかずっしりと重量感が感じられ、これはいい。
ヴァンパイアたちの渇望を呼び覚ましてしまう、ベラの血って一体どういうの?
とは思います。
この娘は案外ヴァンパイヤ一族に加わってみれば、
次なるリーダーの位置につくかも・・・。
気が強そうですし。
絶対エドワードは尻に敷かれます。


またまた、どんどん妄想が膨らむばかりなので、今日はこの辺で・・・。

2010年/アメリカ/124分
監督:デビッド・スレイド
原作:ステファニー・メイヤー
出演:クリステン・スチュワート、ロバート・パティンソン、テイラー・ロートナー、ダコタ・ファニング、マイケル・シーン
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「いのちのパレード」 恩田陸

2010年11月21日 | 本(SF・ファンタジー)
めくるめくイマジネーション

いのちのパレード (実業之日本社文庫)
恩田 陸
実業之日本社


             * * * * * * * *

恩田陸さんの短編集ですが、とにかく一つ一つに全く別個の発想、それぞれの世界観があって、
このめくるめくイマジネーションに圧倒されてしまいます。
いつも私たちを独特の不可思議な世界に引き込んでくれる著者の真骨頂といえましょう。

私のお気に入りをいくつかご紹介しましょう。

「夕飯は7時」
仲の良い3兄弟が登場します。
兄と僕と妹。
この三人、不思議な力を持っています。
自分たちの良く知らない言葉を聞くと、
その言葉のイメージが実体になって目の前に現れてしまう。
たとえば僕がニュースで「けんせつにゅうさつ」という言葉を聞くと・・・
テーブルの真ん中から白い頭がするっと飛び出してきた。
頭はサッカーボールくらい。
牛乳のような白さで、のっぺりとしていて、ひんやりしている。・・・
同じ言葉でもお兄さんはまた違うイメージを招くし、
妹のはもっととんでもなくて危険でさえある。
出現してしまったイメージを消す方法は、それをイメージした本人がくしゃみをすること。
いやはや・・・、毎日が楽しくて、そして大変そうだ・・・。

「隙間」
これはホラー系ですね。
隙間が怖くてたまらない男の物語。
彼は何故か幼い頃から、ものの隙間が恐ろしく感じられてしょうがない。
誰かがそこから覗いているような・・・。
また、その隙間に白い指がかかっていて、
今にも何者かがそこから飛び出して来そうな気配を感じてしまい・・・。
一体彼の恐怖はどこから来るのでしょう・・・?


「かたつむり注意報」
まるで夢の中の風景のように幻想的シーンが登場します。
巨大なかたつむりが、夜、群れをなして街を通り過ぎる。
夜が明けると、彼らの通った跡は虹のように光り輝いていて、雨上がりの匂いがする。
ある空襲の夜にも彼らはやって来て・・・。


「エンドマークまでご一緒に」
ある朝、フレッド君が目をさますなり、オーケストラの大音響が流れ出します。
彼はベッドから起きて歌い出す。
♪なぜなんだろう どうしてなんだろう 
いつもと同じ太陽なのに 今日は何だかいつもとちがう・・・♪
歌いながら身支度を調え、バスに乗って仕事へ。
・・・そうです、何故か突然この日、彼はミュージカルの主役になっている。
この世界では、周囲の人はミュージカルにつきあうのがお約束らしい。
バスの乗客は見てみないふり。
職場の同僚は、迷惑そうにしながらも、
バックコーラスをつとめたり、ダンスをしてみたり・・。
まさに、あの、不思議なミュージカル世界が展開していきます。
実生活にミュージカルが出現したら確かに変! 
でも、その皮肉さが実に楽しく面白い。
何だか曲やダンスのしぐさが目に浮かぶようです。
私はこの本の中ではこれが一番のお気に入り。


「走り続けよ、ひとすじの煙となるまで」
これは時の流れを俯瞰する壮大な年代記。
地上の鉄路を巨大な王国が疾走します。
ヒトが巨大な箱を発見し、住み着き、
突如それが走り始め、止まることを知らず、
王国が築かれ、そして衰退し誰もいなくなってしまう。
それでも疾走し続ける王国。
これは何かの象徴なのか・・・と、思います。
けれどどこにもその答えはありません。
そのままのイメージを楽しむもよし。
深読みして答えを探るもよし。
・・この「王国」は止めどなく自転し公転し続ける「地球」なのではないか・・・などと。
重厚で、圧倒される雰囲気漂う一作。


他にもいろいろ興味が尽きない作品が目白押し。
きっとこの中で皆さんのお気に入りが探せると思います。

満足度★★★★☆
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ジャガーノート

2010年11月20日 | 映画(さ行)
赤か、青か・・・

ジャガーノート [DVD]
リチャード・ハリス
20世紀フォックスホームエンターテイメントジャパン


             * * * * * * * *

1200名の乗客を乗せた豪華客船ブリタニック号に
メガトン級の爆弾が7個仕掛けられた。
犯人は乗客の命と引き替えに現金を要求。
残された時間は20数時間。
折しも悪天候で波が高く、乗客の避難もままならない。
船に乗り込んだ爆弾処理班の必死の解除と地上における犯人捜査が行われるが、
果たして間に合うのか・・・!


非常にスリルに富んだ作品です。
北大西洋を行く豪華客船。
ちょっぴりタイタニック号の悲劇も思い出されて、ドキドキしますね。
何カ所にも仕掛けられた爆弾処理は、
それぞれの場所で、工程を少しづつずらしながら行われます。
始めに、どこそこのねじをはずす。
それがOKなら、他の箇所の爆弾でも同じねじを外す。
次に、どこかの線を切断。
それがOKなら、他のところでも同じ線を切断。
でも始めのところで誤った処置をすれば、爆発。
そうしたら今度はその誤った処置を避けて、次の処置から一つずつまた始める・・・
だからリスクは、始めの一人だけなのですけれど・・・。
とにかく命がけ、なんとも恐ろしい仕事ですねえ・・・。


さてそれで、最後の決断をするシーン。
赤と青の二つの配線があって、どちらかを切れば爆発を防ぐことができるけれども、
間違った方を切断すれば爆発。
完璧な二者択一。
これと同様のシーンは、今でも時々TVドラマなどでも出てきます。
赤か。
青か。
なるほど、この映画が原点であったわけなんですね。


さてそれで、この作品ではこの時犯人は既につきとめられ、つかまっているのです。
なんと、犯人はこの爆弾処理班チーフの元上司。
その犯人は言う。
「青だ。青の線を切れ。」
昔命を救われた上司の言葉。
その言葉を信じるか、信じないか。
究極の決断を迫られる。
タイムリミット直前。


まあ、映画ですから、結局助かることは想像できますけれど・・・、
ここの判断には、単にイチかバチかではない、かけ引きもあって、
より興奮させられます。
納得の一作。

1974年/イギリス/111分
監督:リチャード・レスター
出演:リチャード・ハリス、オナー・シャリフ、デビッド・ヘミングス、アンソニー・ホプキンス
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ミリオンダラー・ベイビー

2010年11月19日 | クリント・イーストウッド
神の意志よりも人の意志・・・



             * * * * * * * *

これは、アカデミー賞最優秀作品賞、監督賞、主演女優賞に助演男優賞とすばらしく評価の高い作品ですね。

ミスティックリバーに続いて、またがーんと重い作品かと思ったら、
結構わくわく・どきどき。
しかし、かと思えば、終盤またものすごく重いテーマにぶち当たるという・・・。
そうなんです、イーストウッド監督の進化形なんじゃないでしょうかね。
重いテーマもエンタテイメントにくるんで、
さも“重い”という印象をあえて持たせないようにしている。
そういう傾向はあるような気がするね。


マギーは田舎から出てきて、ひたすらボクサーの夢を持ち続けている。
ウェイトレスをしながら切り詰めた生活。でももう31歳。
何とかいいコーチに就きたいと、
フランキーがオーナー兼トレーナーをしている寂れたボクシングジムにやってくるのだけれど、
フランキーは女には教えない、とつれない。
けれども、彼女のひたむきな情熱は、このうらぶれたおっさんたちにも伝わっていくんだね。
いよいよ試合に出るようになってからは、ほとんどKO勝ちで勝ち進んでいくマギー。
かっこいい。あの筋肉質の締まった体、いいよねえ・・・。
ヒラリー・スワンク、この作品のために、相当トレーニングを積んだことがうかがわれますね。

でも、これは単なるサクセスストーリーではなかったんだ。
試合中の事故なんだけど、首から下が不随、
人口呼吸器が無ければ呼吸も出来ないという体になってしまった彼女。
あんなに輝いていたのに。
彼女とともに死んだようになってしまったフランキー。
マギーは言う。「死なせて」と。


これは快進撃を続け、輝いていたマギーと、
その後のベッドに縛り付けられたマギーの対比がすごく痛々しい。
生きていくためには、何か心のより所が必要だよね。
たとえば、希望。
でも、体を動かすことが出来るようになるのぞみはたたれている。
呼吸すら自分で出来ないというなら、ただ生かされていると感じるだろうね。
では、周りの人の愛?。
ところが、彼女の家族と来たら・・・。
いやひどいよね。
彼女はファイトマネーを自分では使わずに、田舎のお母さんに家を買ってプレゼントしたんだ。
ところが、家なんか持ったら生活保護が打ち切られると、文句を言うんだよ。
いやはや・・・こんな家で、よくこんなしっかり者の娘が出来たもんだ。
それというのも、亡くなったお父さんがいい人だったみたいなので・・・。
うん、そうか。彼女はフランキーに父親像を重ね合わせてる。
フランキーの方も、今はもう音信不通で行方も知れない自分の娘と、マギーを
重ね合わせてもいるんだね。
だから、彼女の今の支えはフランキーなのだけれど、彼とてもう年だし・・・、
負担をかけられないと思うよね、そりゃ。

今回再見なんで、フランキーの最後の決断は解っていたのですが・・・。
やはりこうするのが良かったんだと、私は思いますけど・・・。
「海を飛ぶ夢」も、同じテーマだったよね。
ウ~ン、でも本当にそれでいいのだろうか・・・と、ヒューマニズムぶって言うのはやさしいけれどね。
もし自分だったら、やはりそのまま生き永らえようなんて思わないと思う。
まして彼女はほとんどやりたいことをなしとげたあとだった。
同じに輝けないで、ベッドに横たわっているだけ、息をしているというだけで、
それが生きているということだろうか・・・。
でもね、自分が本当にその立場にならなきゃ解らないよ。
案外、それでも生きたいって思うかも知れない。
意識がしっかりしているんだからさ、本を読んだり、映画を見たりは出来るよね。
瞬きだけで自分の意志を表現して生き続けた人だっているよ。
まだ若いのだし、何が生き甲斐になるか先のことは解らない。
やっぱり、誰にも答はだせないんだ・・・。
うん。でも最終的には本人の意志、ということなんじゃないかな。
「空を飛ぶ夢」も本人の強い意志が認められる・・・ということだったと思う。


フランキーはいつも教会のミサに通っているのに、神については懐疑的で、
いつも牧師さん(神父さん?)を困らせていたね。
で、最後にも結局、神はなんの答えも与えてくれない。
このへん、日本人なら「あ、そう」と流してしまうところだと思うけれど、
本当はもっと重いのじゃないかな。
フランキーは本当は神にすがりたかったけれど、結局自分で答えを出すしかなかった。
いろいろ考えてしまう作品なんだなあ・・・。
配役も実に決まってましたね。
こういうときのモーガン・フリーマンはホントにいいね。
穴の開いた靴下をはいてさ。
そこの二人のやりとりがすごくよかったなあ。

ミリオンダラー・ベイビー [DVD]
F・X・トゥール,ポール・ハギス
ポニーキャニオン


2004年/アメリカ/133分
監督:クリント・イーストウッド
脚本:ポール・ハギス
出演:クリント・イーストウッド、ヒラリー・スワンク、モーガン・フリーマン
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パートナーズ

2010年11月17日 | 映画(は行)
様々な人の手と愛情を受けて犬は成長する



            * * * * * * * *

似たような作品を見たような気がしながらも、犬好きなので、つい見てしまいます。
盲導犬チエに関わるパピーウォーカーや訓練士、そしてユーザーの物語。


剛は盲導犬訓練士を目指す青年。
彼が訓練士になろうとした動機は、一生食いっぱぐれのない資格を持ちたいと思ったから。
それまで彼は冷凍倉庫の荷物運びをしていたのです。
しかし働いても働いても給料は安く、未来が見えない。
同僚は事故で障害者となったあげく自殺してしまった。
剛はワーキングプア脱出のため、一大決心をして訓練生になったのです。
ところが他の訓練生たちは、犬が好きだからとか、障害者の役に立ちたいからなど、
明確に夢を持ってやって来ている。
そんな中で、浮いてしまった剛。

ここのところがなかなか今日的で、いいと思いました。
こういう動機の職業選択もアリですよね。
要は、動機ではなくてその後の成果だ。
実際に前職でむなしさを感じ、捨て身で前進してきた剛は強いですよ。
真摯に学んで、力をつけてゆく。
しかし、教官は言います。
「技術だけでは、いつか行き詰まる・・・」

・・・やがて、剛は実際に行き詰まってしまうことになります。
剛の受け持ったチエという名の犬は、
2ヶ月から1歳になるまで、パピーウォーカーの家で育てられました。
そこの美羽(みう)という女の子が、とてもチエをかわいがっていたのです。
剛は美羽を訪ねて、「どうしたら犬に好かれるのだろうか?」と聞くのですが・・・。
その答えは、実際にご覧になってくださいね。
これは犬に限らず、ヒトにもいえることなのかも知れません。


盲導犬の試験にパスしたチエは、
ライブ中に事故で失明した真琴というロックシンガーのパートナーになります。
二人(一人と一匹?)の訓練の様子も見物ですよ・・・。

子犬のチエが盲導犬として成長していくまでに、
様々な人の手と愛情をいっぱいに受けて行く様子が、温かく描かれています。

しかし、美羽の両親の複雑そうな事情とか、
飼い主がいなくて処分される犬たちの事情、
ワーキングプアについて、
そして、剛と真琴の想い・・・。
いろいろと欲張って詰め込みすぎたきらいがあります。
もう少し盲導犬としての訓練に焦点を当てて、
その苦労がメインの作品に仕立てても良かったのかなあと思います。


まあいずれにしても、この手の作品は、
犬のかわいさ・けなげさでほとんど合格点になってしまうんですけどね・・・。

小学生の女の子がつけた名前にしては「チエ」とは古風な・・・と思ったのですが、
ネタ晴らしをすれば、これは「チェ・ゲバラ」の「チエ」なんです。
美羽ちゃんのお父さんの尊敬する人物で、家にその写真が飾ってある。
「チェ」は「君よ」と呼びかける時の言葉。
そう聞けばなるほど、しゃれた名前なんですね。
この美羽役の近藤里沙ちゃんは名子役です。
彼女の熱い演技に、ずいぶん泣かされました。
ラブラドール・レトリーバー。
飼ってみたいです・・・。

2010年/日本/119分
監督:下村優
出演:浅利陽介、大塚ちひろ、村田雄浩、川上麻衣子、近藤里沙
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「真田太平記(七)関ヶ原」 池波正太郎 

2010年11月16日 | 真田太平記
関ヶ原の戦い、西軍に影ながらの助力もむなしく・・・

真田太平記(七)関ケ原 (新潮文庫)
池波 正太郎
新潮社


              * * * * * * * *

さて、ついに関ヶ原の戦いですかー。
徳川家康率いる東軍と石田三成率いる西軍の激突ということなんですが・・・
これがなかなか・・・、各地の大名たちはどちらにつこうかと悩みに悩むわけですね。
日和見したり裏切ったり・・・いろいろと葛藤の後が見られてこれも興味深いところですよね。
とにかく何でもいいから勝ちそうな方につこうと考える。
どっちが正しいかなんて二の次だもんね。
確かに、どっちが正しいも何も、よくわかんないというのがホントのところでしょう。いやいやながら巻き込まれちゃった、みたいな。
そんな中、真田家は・・・。
昌幸、幸村は上田城にいて、守りを固めます。
そこを家康の息子秀忠率いる東軍の第2軍が攻めかかる。
こんな所はちゃちゃっと片付けて通り抜け、家康の1軍と合流するつもりだったわけですね。
ところがですよ、以前も徳川の大軍勢を撃退した上田城ですよ。
そう簡単にいくわけがない。
いろいろと敵を翻弄させる策略を巡らせてある。
戦いは頭でするもの。そして度胸。
こういうところが、真田家の人気の理由なんでしょうね。
とにかく、意外にも苦戦を強いられ、足止めを食った秀忠は、
ついに関ヶ原の戦闘開始には間に合わないというわけです。
結果、真田家は西軍の大きな援護をしたことになりますが・・・。
しかし、それにもかかわらず西軍は敗れてしまいました・・・。

著者は真田父子にこのように語らせていますよ。

「勝てる戦に何故、勝たなかったのであろう?」
「不思議きわまること・・・・」
「何故、勝とうとしなかったのか・・・・?」
あのような作戦、あのような戦将たちの決戦場における離反は、真田父子にとってとうてい信じかねるものだったといってよい。


そんなとき、真田の草の者たちが彼ら自身の手で家康暗殺を謀り暗躍します。
お江や、壺谷又五郎たち・・・。
あわや・・・というところまで行くのですが。
これは家康の悪運の強さ・・・ですよね。
まあ、そういうことになりましょう。
お江は、瀕死の重傷を負い、又五郎はついに命を落としてしまいます。
この巻でついに明かされるのですが、向井佐平次は又五郎の息子で、
つまり、佐助は又五郎の孫ということなんだね。
ははあ・・、そうか納得しました。


家康はその後、逃亡した石田三成や小西行長を捜し出し、処刑。
なかなかむごい措置でしたね・・・。
手かせ、首かせをはめられて、市中引き回しの後処刑されるという・・・。
かつて誰もがひれ伏した人物・・・と思えばいかにもむごいです。
戦国時代・・・と、今脚光を浴びてはいるけれど、結局そういう時代なんだよね。

そういうことだから、西軍の味方をした真田昌幸・幸村のことが心配なんだなあ。
家康が許すわけがない・・・。
ですね。どうなっちゃうのか。
・・・それは次巻につづく、ということで。
いやはや、さすがに、激烈な一冊でした。
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「ガラスの仮面46」 美内すずえ

2010年11月15日 | コミックス
面白すぎです、紫織さん

ガラスの仮面 46 (花とゆめCOMICS)
美内 すずえ
白泉社


            * * * * * * * *

あれ?・・・「ガラスの仮面」、『たんぽぽ館』では初めてだよね。
そう、ず~っと読んでたんだけどね、
この大長編のなかで、一冊の断片では、あまり書きようがなくて・・・。
それにここのところずっと「紅天女」だから、あんまり面白くない・・・。
これ、なんと一ヶ月ほど前に45巻が出たばっかりだったでしょう。
そうなんだ。
それがね、本当にあんまり話の進展もなくて、
ああ・・もうどうでもいいから早く話を進ませて欲しいと、密かに思っちゃったんだな。
でも、先日この本を書店で見てびっくりしちゃった。
えっ、もう次のが出たの?って。
だってほとんど一年に1冊出るか出ないかくらいだったよね、ここのところ。
そうだよ。月刊『ガラスの仮面』だなんて、びっくり!!
それで、もちろん買ってすぐ読んだらね、これがツボに入りまくりで面白いの!!

おもしろいって、あなた、面白い場面じゃないでしょ。
いやー、この本の紫織さんは、めちゃめちゃ面白いよ。
助演女優賞あげたいくらい。
つまり、速水氏がマヤに思いを寄せていることに気づいた彼女は嫉妬に燃えるんだね。
それで、いろいろと画策するわけです。
それがもう、あれですよ、一昔前の少女漫画にある懐かしのパターン。
お金持ちのワガママなお嬢サマが、貧乏だけれどけなげなヒロインに嫉妬して、
靴に画鋲を入れたり、財布を盗まれたと騒いでみたり・・・。
それと同じなんだもん。
レトロな手だよねえ・・・。
おとなしそうな顔してなかなかやりますね。
いやこの人、きっと子供の頃にもこの手を使ってるよ絶対。
こんな小学生の発想みたいなこと、いい年した今になって思いつくわけないよ。
いやしかし、この本の面白いのは、その話があったすぐ後で
また傑作な出来事があるからさ。
少しでも自分と速水氏の距離を縮めたい紫織さんは、
豪華客船に速水氏を誘い込み、ダブルの部屋で一晩を過ごしてしまおうと考えた。
ところが、予期せぬ交通渋滞で出航時間に間に合わない。
一方船に乗り込んだ速水氏は、なんとマヤと遭遇することになる。
マヤはいわれのない手切れ金(?!)を、紫織さんに返そうと思ってやって来たのだけれど、
うろうろしている内に船が出航してしまったんだね。
ふっふっふ、墓穴をほりましたな、紫織さん。
何というか、必死になればなるほど、とんだ道化の紫織さん。
でもこういうどんでん返しがなかったら、全国の速水ファンから総スカンを食うところだったでしょ。
この本がこのラストで幸いだと言うべきです!
・・・おや、思い切りネタばらしだね・・・。
いや、問題はこの船でマヤと速水氏がどうなっちゃうのか、ということだから大丈夫。
ほんと、どうなっちゃうんでしょ。
そもそも、この続きは来月出たりはしないんだよね・・・?
たぶん・・・。
あれだよ、紫織さんが漁船を雇って客船を追って、追突!
その映像が撮れたら、すぐYouTubeに投稿するけどね!
まあ、国家機密ではないからね・・・。
と、馬鹿なこと言わないの。
紫織さんはマヤが船に乗ってるのを知らないんだから、何もぶつける必要はないでしょ。
じゃ、ヘリコプターでやってくるかもね。お金はあるし。
う~ん、ありそうな気がしてきた・・・。
しかしねえ、どうせ政略結婚と割り切っているんだから、速水氏も据え膳くらいは食って差し上げるべきなんじゃないかなあ・・・。
いやいや、いやしくもこれは正統な「少女漫画」なんだから、それはナシなんだよ。

さて、一方それこそ誇り高い正統派お嬢様の亜弓さんは・・・
著者はまたずいぶんな試練を彼女に与えましたねえ。
ここまでやる亜弓さんは、相当てごわいなあ。
マヤちゃん、速水氏とイチャイチャしている場合じゃないぞ!!


それから、なんと「速水真澄公式ツイッター」なんていうのがあるんだね。
そうなんだよね。一体この話はいつの話だったんだ???
ともかくそれによるとね、この本、
キャンドルAYUMIと速水氏のシャワーシーンで人気があるといわれている。
いやあ、やっぱりなんといっても、この紫織さんですよ。ワタシの一押しは。
いや、一押しされても困るんだけど・・・
ファンの方、是非ご覧あれ・・・

満足度★★★★☆
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「白銀ジャック」 東野圭吾

2010年11月14日 | 本(ミステリ)
雪山を疾走するミステリ

白銀ジャック (実業之日本社文庫)
東野 圭吾
実業之日本社


            * * * * * * * *

また新しい文庫シリーズが出ましたね。
本屋さん泣かせだと思います。
書棚に各社の文庫新刊を並べきれなくなっているのではないでしょうか。
文庫ファンとしてはうれしいのですが、
あれもこれもと買ってしまって、読み切れないのが積み上がってきている・・・。
ちょっと厳しく選択しなくては・・・。
でも結局読んでみないと解らないですからね。
ベストセラーが必ずしも自分にしっくり来るとは限らない。
そんなわけで、まあこの本については
東野圭吾作品なので、そこそこ楽しめそうと思い手に取りました。


とあるスキー場に爆破を予告した脅迫状が届きます。
言ってみれば、スキー客や従業員が人質。
犯人は現金を要求し、支払わなければ、ゲレンデのどこかに埋めてある爆弾を爆破すると迫る。
余計な騒ぎや評判の低下をおそれた経営陣は、
警察にも知らせず、現金を支払うことで片をつけようとする。
とりあえず、取引は成功と思われたのだが、
犯人の要求は一度では留まらず、2度3度・・・。
果たしてこれは本当に現金奪取が目的なのか。
それとも何かの復讐なのか。
現場のスタッフたちが犯人と経営陣の狭間で翻弄されながら、
その真相を探っていきます。


疾走するスノーボードのイメージにも似て、
スピーディな展開で楽しめる作品です。
ただ、ここのところ東野作品はあまりにも出来がいいので、
ハードルが高くなっているのかも知れません。
確かに「そこそこ」楽しめるものではありますが、それ以上ではありません。
結局、真犯人へのミスリードがありまして、
読んでいても真相はつかめなかったですけれど・・・。
そしてまた、いい方向で解決するので、読後感は悪くありません。
ではどこが不満なのかと言えば・・・
やはり、期待が大きくなりすぎている、
ということでしょうか・・・?

この作品、スノーボードシーンをたっぷり織り込めば、映画向きかも知れません。

満足度★★★☆☆
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ミレニアム3/眠れる女と狂卓の騎士

2010年11月12日 | 映画(ま行)
自分を害する者への武装



             * * * * * * * *

いよいよミレニアムの第3部。
前回瀕死の重傷を負ったリスベットは、
ひとまず病院へ収容され、傷を癒します。
しかし、傷が癒えた後、リスベットはザラチェンコの殺人未遂ということで逮捕され、
取り調べを受けることになるのですね。

そもそもはこのザラチェンコ、元ソ連のスパイで、
スウェーデンへ亡命。
その亡命を機密扱いにし、彼を利用したグループ“班”が、
この度の最終の巨大な敵となるのであります。
“班”は、ザラチェンコのことを表沙汰にしたくないばかりに、
リスベットを精神病院に送り込んだわけです。
そして今回もまた、彼女を精神病扱いにし、社会から永遠に切り離してしまおうと画策する。
息詰まる法廷の場へと進んでいきます。



許し難し!! 精神外科医のテレボリアン。
なんだかんだといっても私たちは権威に弱い。
医学者として地位も名誉もある人物の言う言葉と、
怪しげなファッションをした粗暴な小娘の言葉と、
どちらを信じるかと言われたら・・・。
真実を見極める自信はないですね・・・。
しかし、彼女には捨て身の証拠映像がある。
紳士面した後見人ビュルマンや、医師テレボリアンの化けの皮が剥がれていく。
いや~、胸がすきますね。こうこなくっちゃ。


私、この3部になってようやく気がついたのですが、
リスベットのパンクファッションやメイクは、
別に反体制とか反秩序ではなく、
実際に自分を害する者に対しての武装なんですね。
戦闘態勢に入るための。
誰も自分を守ってくれない・・・そういう中で育ってきた彼女は、
こうして社会全体を敵とみなし、武装するしかなかった。
でも、彼女は独りぼっちと思っているかも知れないけれど、
この度どれだけの人が彼女のために尽くしたことか。
ミカエルはもちろんですが、
彼女の主治医や、ミレニアムの編集者たち、ハッカー仲間。
・・・もう、武装しなくてもいいんですよね。

さて、難関の法廷シーンも終えてホッとしたところでもう終わりかと思いかけたのですが、
あ、まてよ、
そういえばあの金髪の巨人がまだいるんじゃありませんか!!
思い出したらさっそく、そのシーンが来た!
リスベットに迫る危機!!


実際このように私たちを楽しませてくれるツボがたっぷりの作品でした。
著者がご存命なら、リスベットとミカエルの新たな事件への挑戦がみられたかもしれません。
返す返すも残念です・・・。



          →ミレニアム1          
→ミレニアム2

2009年/スウェーデン
監督:ダニエル・アルフレッドソン
原作:スティーグ・ラーソン
出演:ノオミ・ラパス、マイケル・ニクビスト

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