硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

恋物語 23

2021-04-04 21:19:08 | 日記
その後を続くように、のんびり教室に向かうと、教室では、皆がいつものようにはしゃいでいた。
時々思うけど、この光景に出くわす度に、同じ時間がループしているんじゃないかと思ってしまう。

今日も、平川綾乃は、仲のいい、君塚明日香、村主詩音と賑やかにおしゃべりをしていた。そして、僕と目が合うと、いつもように「川島ぁ、おはよう~。」と手を振ってくる。それは、予定調和のように。

「おはよう。」

「川島ぁ~。なんか元気ないぞぉ~。」

「いつもと変わらないよ。」

と、少し元気を出して返事を返すと、

「暗いぞ~川島ぁ~。」

君塚と村主が間髪入れず突っ込んで、三人で笑っている。

昨日の今日だから、心境も変わっているというのに、平川綾乃はいつもと変わらない。ひょっとして、すでに心臓を機械化しているのかとさえ思えてしまう。

ホームルームが始まると、早々に机に寝そべってしまう人、真面目に聞いている人、真面目に聞いているふりをして聞いていない人の三者三様に別れてしまい、先生が熱弁する「コロナ禍の過ごし方」というテーマは教室の中で浮遊していた。
熱く語る先生には悪いけれど、僕らの間では、「意外と大丈夫なんじゃね?」という、共通意識が芽生えていた。それは、国会議員や官僚といった人の不祥事や、感染しても死なないという過信と、コロナ禍の動向より、人気YouTuberの新しい動画やオンラインゲーム、推しのアイドルやヒットチャート、校内でのゴシップといった話題の方が、学校という社会では必要な情報だと皆が感じているから、注意喚起も響いてこないんじゃないかと思う。