硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

恋物語 25

2021-04-06 20:55:58 | 日記
明日で2学期が終わるというのに、今年は2限目と3限目に通常の授業があるという特別な年になった。いつまで、こんな変則的な事が続くのか、それとも、これが普通になってゆくのかは知るすべがないけれど、僕らに待ち構えているのは、これ以上無邪気に高校生でいる事が許されない未来だ。
それを悲しむ人もいるけれど、もう少し歳を重ねたら、大半のクラスメートは、その時が一番楽しいと実感しているだろうし、大切に思っているクラスメートさえも過去の人としてしまうんじゃないかと思う。
それだけに、高校生である月日は、誰かにとっては、かけがえのない時間でもあり、誰かにとっては、忘れ去るための時間でもあるのだろう。

授業が終わると掃除を残すのみとなった。皆はそれぞれの担当に別れたが、手際よく掃除する人と、遊びながらする人と、サボってしまう人という差は、最後まで変わりなさそうだ。
それでも、これまた同じように、根気よく学級委員長の徳重さんや副委員長の安藤さんが「まじめにやんなさいよぉ。」と、注意しながら掃除をしていた。
注意された人も、悪びれる事もなく「うっさい、うっさい、うっさいわ~」と、お決まりのように、ふざけながら言い返していた。
そんな、代わり映えのない日常に、時々くたびれたりしてしまうけれど、誰かにとっては楽しい日々かもしれないし、誰かにとっては辛い日々かも知れない。でも、真の平和な日々とは、色んな思いが交差していても、けっして争いの起こらない、こういう平凡な日常な事を言うんだろうなとしみじみ思った。

僕がいつも集中して掃除に取り組んでいるのは、掃除した後が綺麗になると、何となく心がすっとするからだ。この達成感を共有してくれる人は、なかなかいないが、唯一共感してくれたのが、松嶋だった。だから、何でも話せる友達になれたのだろう。
箒で床の埃を集め、塵取りで取っていると、滅多に助けを求めない真島さんが「川島君。今日ゴミが多いから、捨てに行くのを手伝ってくれないかな? 」と、声をかけてきた。