硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

恋物語 31

2021-04-14 20:58:52 | 日記
「でも、それって、付き合ってるってことじゃないんですか? 」

「突っ込みが早いなぁ。 」

「ああっ。すいません。」

「大丈夫よ。こういう言い訳されると、イラッてするよね。でもね。そうする事で事実を隠すことが出来ると須藤君は考えたの。私には恋愛感情があったけれど、それを差し引いても人として尊敬していたし、須藤君も私の事を異性としてではなく、一人の人として好きでいてくれてたから、好き同士という意味では間違いなかった。ただ、分かってほしいのは、彼にとっては、高校時代を乗り切るための苦渋の決断だったって事なの。」

「・・・・・・それは分かってます。さっき、圭介先輩から聞いたから。でも、それってしんどくないですか? 」

「そうね。女性として、好きな人に抱かれたいって気持ちが満たされないんだからね。でもね、彼は、ずっと苦しんでいて、その気持ちが痛いほどわかったから、彼を支えていきたいと思ったの。」

「そんなに簡単に割り切れるものですか? 」

「割り切れないよ。普通ならね。でもね。ちょっと、話が外れるけれど、私には兄がいてね、自閉症っていう病気を患ってるの。その自閉症って言うのは、簡単に言うと、社会に出て誰かと関わり合いを持とうとするとき、社会と自分との間にあるズレが分からず、社会になじめなくなってしまうというようなものなのね。それを、自分で何とかしようと思う気持ちはあるんだけれど、精神的な障害だから上手く出来なくて、とても悩んでしまうの。でも、社会は精神障害という病に対して希薄だし、見た目で判断するから、兄みたいな人は疎ましく思われてしまうの。それで、兄は社会との葛藤の末に、鬱にまでなってしまって・・・。」