硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

恋物語

2021-04-12 21:48:20 | 日記
先輩の姿が見えなくなって、車内へ向きを変えると、斜め右の席に座るスーツ姿の女性が私に向けて小さく手を振っていた。

「二宮先輩! 」

「ヒラ。」

突然の再会で、大きな声を出してしまって周りの人を振り向かせちゃった。先輩ちょっと恥ずかしそう。それでも、笑顔で私の名前を呼んでくれてる。

「ヒラ、久しぶりだね。隣開いてるから、こっちに来ない? 」

「いいんですかぁ。じゃあ、お邪魔しますぅ。」

先輩、すごくいい匂い。

「元気にしてた? 」

絶対的な存在感も健在だ。しかも、化粧もしているから、美しさが倍増しで、まぶしすぎるっ。けど、変なタイミングで会っちゃったなぁ。

「はいっ。元気もりもりです。」

「相変らずねぇ。」

「先輩も相変わらず綺麗です。」

「また、お世辞言っちゃって。何もおごらないわよ。」

そう言うと、マスクの上からでも口を手でかくして、フフフって笑った。何て女子力! 同じ女子でもこうも違うと、落ち込んでしまう。

「可愛い服ね。誰かとデートだったの? 」

二宮先輩、鋭い。

「そんなわけないですよぉ。マックで晩御飯ですぅ。」

「さっき見ちゃったんだけど、ひょっとして須藤君と会ってた? 」

「あっ。見ちゃいましたか。」

やっぱり気づいてたかぁ。もうごまかせないな。

「実は、圭介先輩にフラれたばかりで、傷口も深いです。」

「ああっ、ごめんなさい。変なこと聞いちゃって。ヒラも須藤君の事ずっと好きだったものね。」

ああっ、この余裕。この余裕に私は嫉妬していたんだ。