硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

恋物語 36

2021-04-28 18:15:53 | 日記
友達との飲み会では、幾度となく赤裸々な恋バナに耳を傾けた。
内容は、いつも承認欲求が見え隠れし、価値観の共有のみを求められる空虚なものであったが、それでも、唯一、腑に落ちたのは、性行為は大切な決断を鈍らせる危険なものでしかないという事だった。

合コンも、何度か人数合わせで誘いを受けた。しかし、カースト制度で例えるなら、シュードラという上昇志向が許されないポジションが私の定位置だった。それでも、何事も経験を積むことが大切なのだと割り切って出席していた。
男子が可愛い女子や綺麗な女子、女子がイケメンやリッチな男子をターゲットにするのは、人類に根差した生殖本能なのだから、私は対象外である。
それを分かった上での出席であるから、いつも、皆の邪魔にならないよう、空気を読んで、笑顔を絶やさず、末席にたたずんでいるように心がけた。
その頃になると、自身を卑下する感情は薄れていたが、軽薄な交際をしたところで何の益になるのかと、屈折したマウンティングとる事で、私は自身を肯定した。

なにかを強く願っていれば、強く生きていけるものだ。容姿を最大の武器としない女性お笑い芸人さん達のように。安易に自身の身体の特徴を嘲弄し笑いをとる時代はもう終わったのだ。

大学を卒業し、社会の一員になった時、そう確信した。

もう、誰も、私の事を「土偶」とも「地蔵」とも言わない。仮に、からかわれたとしても、未熟で子供で馬鹿なのだと、あしらえばいい。
社会での目に見える階級と目に見えない派閥など、今まで以上に上手く立ち回っていれば、私の身に危険は及ばない。思想的にはフェミニストで左派とカテゴライズされるかもしれないが、それで、平穏な日々を送ってゆけるのであれば、少し面倒くさくても大したことではないと思った。
しかし、未来は不確定なままだった。