田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『ブラックアダム』

2022-10-27 18:10:57 | 新作映画を見てみた

『ブラックアダム』(2022.10.26.新宿ピカデリー・完成披露試写会)

 5千年の眠りから目覚めた破壊神ブラックアダム(ドウェイン・ジョンソン)。彼の強大な力は、息子の命と引き換えに得たものだった。そのことに苦悩と悔恨を抱くブラックアダムは、息子を奪われたことへの復讐のため、その強大な力を使って暴れ回り、破壊の限りを尽くす。

 そんなブラックアダムの前に、彼を人類の脅威とみなしたスーパーヒーローチーム「JSA(ジャスティス・ソサイエティ・オブ・アメリカ)」が立ちはだかるが、圧倒的なパワーを持ち、常識もルールも無視するブラックアダムにはかなわない。そんな中、JSAの前に新たな強敵が現れる。

 DCの新章として、ジョンソンがアンチヒーローに扮したアクションエンタテインメント。プロデューサーも兼ねた彼が、自身の魅力を最大限に引き出し、見せることに腐心した感がある。

 これまでの出演映画でも、筋骨隆々の肉体を駆使したジョンソンのアクションや存在感にはすさまじいものがあったが、ついに超能力まで手にし、空は飛ぶわ、怪光線は出すわと、もはややりたい放題。見ているこちらも口あんぐりで、思わず笑ってしまうほどだった。アダムがテレビで『続・夕陽のガンマン』(66)のクリント・イーストウッドを見て、まねをするシーンまである。

 この映画では、リーアム・ニーソンとのコンビ作で知られるジャウム・コレット・セラ監督が、『ジャングル・クルーズ』(21)に続いてジョンソンとタッグを組んでいる。前半は説明過多でテンポが悪く持たれるが、途中から一気に加速するところはさすがだが、コレット・セラ監督は、大作を手掛けるようになってから、いささか大味になった感はある。

 JSAのメンバーは魔術師ドクター・フェイト/ケント・ネルソン(ピアース・ブロスナン)、チームリーダーの空の王者ホークマン(オルディス・ホッジ)、嵐を操るサイクロン(クインテッサ・スウィンデル)、巨大化する能力を持つアトム・スマッシャー(ノア・センティネオ)という布陣。今後、彼らはブラックアダムとどう絡むのか。DCの新章というよりも、これからはジョンソン=ブラックアダムを中心にして展開していくのでは、と思わされた。

 マーベルもDCも既成の曲の使い方がうまいが、今回は、懐かしの「ベイビー・カム・バック」(プレイヤー)と「ペイント・イット・ブラック=黒くぬれ」(ローリングストーンズ)が印象に残った。

baby come back
https://www.youtube.com/watch?v=puR9dgCQszQ

Paint It, Black
https://www.youtube.com/watch?v=zUlBNeaP8Fw

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『窓辺にて』

2022-10-27 09:57:40 | 新作映画を見てみた

『窓辺にて』(2022.10.26.オンライン試写)

 一冊小説を書いたものの、今はフリーライターをしている市川茂巳(稲垣吾郎)は、編集者である妻の紗衣(中村ゆり)が、担当している人気若手作家の荒川円(佐々木詩音)と浮気していることに気づいていたが、ショックを受けず、怒りの気持ちも湧かないことに戸惑っていた。
 
 そんな中、市川は、『ラ・フランス』という小説で文学賞を受賞した高校生作家の久保留亜(玉城ティナ)から、小説のモデルになった人物と会ってみないかと誘われる。

 今泉力哉監督が、自身の脚本を使って撮った独特なラブストーリー。市川の抱く感情を通して、人が「こうあるべき」と考える“感情の基準”に疑問を投げ掛けるところがユニークだ。稲垣が、ほとんど感情を表に出さない市川を見事に演じている。一番多いせりふは「えっ?」かもしれない。

 加えて、扱っているのが作家やライター、編集者ということもあり、ストーリーの流れやセリフに純文学のような味わいもある。

 また、今泉監督は、登場人物の一人一人がきちんと浮き立つような演出をする。今回も、主人公の市川はもちろん、妻、浮気相手の作家、高校生作家とその彼氏(倉悠貴)、知り合いのスポーツ選手(若葉竜也)とその妻(志田未来)と彼の浮気相手(穂志もえか)、そして、高校生作家の伯父(斉藤陽一郎)や妻の母(松金よね子)、果てはタクシーの運転手まで、市川と関わる一人一人が印象に残る。だから、一見孤独に見える市川も、決してそうではないという救いが感じられるのだ。

 【蛇足】市川といえば、高校生作家の伯父と市川との会話の中に、市川崑監督の『黒い十人の女』(61)が出てきた。今泉監督が好きな映画なのだろう。だから主人公も市川だったのか?

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「名優ポール・ニューマン特集 碧い瞳の反逆児」

2022-10-27 08:35:57 | 雄二旅日記

 新宿ピカデリーの前に「名優ポール・ニューマン特集 碧い瞳の反逆児」の看板があった(横長の写真は『暴力脱獄』(67)だ)。

 

 『明日に向って撃て!』(69)『熱いトタン屋根の猫』(58)『ハスラー』(61)『暴力脱獄』というラインアップ。

 ニューマンについては、昔、担当していた『MOVIE』という映画雑誌で特集をした際に、いろいろと調べて書いたので、思い入れがある。

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「BSシネマ」『ハスラー』

2022-10-27 06:15:11 | ブラウン管の映画館

『ハスラー』(61)(1974.6.14.ゴールデン洋画劇場)

 賭けビリヤードのプロとして生きる若者エディ(ポール・ニューマン)の挫折と苦悩を描く。

 若きプレーヤーとして抜群の才能を持つエディだが、大物ハスラーのミネソタ・ファッツ(ジャッキー・グリーソン)との勝負に敗れ大金を失ってしまう。傷心のエディは、足が不自由な女性サラ(パイパー・ローリー)と出会い、互いに引かれ合うが、金のために冷酷な胴元のバート(ジョージ・C・スコット)と手を組む。

 ロバート・ロッセン監督の繊細かつ緊張感あふれる演出、名手ユージン・シュフタンの繊細なモノクロ映像、ケニヨン・ホプキンスのジャズ音楽も魅力的。アカデミー撮影賞、美術賞受賞。

『ハスラー2』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/ef8cc640e600d6f0d7bad90c9a15e9d2

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『チケット・トゥ・パラダイス』

2022-10-26 09:20:51 | 新作映画を見てみた

『チケット・トゥ・パラダイス』(2022.10.25.東宝東和試写室)

 デビッド(ジョージ・クルーニー)とジョージア(ジュリア・ロバーツ)は、20年前に離婚して以来、必要に迫られて会うことはあっても、いがみ合ってばかりいた。そんな2人の愛娘リリー(ケイトリン・デバー)がロースクールを卒業し、親友(ビリー・ロード)と一緒にバリ島を訪れるが、数日後、両親に「現地の男(マキシム・ブティエ)と結婚する」という連絡が入る。

 弁護士になる夢を捨て、会ったばかりの男と結婚するなどとんでもないと、デビッドとジョージアは、現地へ赴き、娘の結婚を阻止するために、不承不承、共同戦線を張ることになるが…。

 最近は珍しくなった、いわゆる“ラブコメ”で、あり得ない設定でのお気楽な恋愛話が繰り広げられる。ハワード・ホークス監督の『ヒズ・ガール・フライデー』(40)を参考にしたという通り、クルーニーとロバーツが丁丁発止と渡り合うさまが見どころ(久々にロバーツの大口全開)。

 ただ、リリーの結婚観があまりにも能天気で、どうにも納得できない。ロースクールを出たエリート候補が、南の楽園で一目ぼれした男と結婚するという、状況を見れば、両親が「今はいいけど、そのうちに飽きる」と考えるのは至極まっとうな話。だから、笑いの核となるべき、両親と娘の対立構造が生むおかしさが弱くなる。

 その分、心底映画に入り込めず、コロナ禍を経た今、「だからこそ、こうした娯楽映画(ラブコメ)が必要なのだ」という思いと、「本当にこんなにお気楽でいいのか」という、二律背反する思いが交錯するような、隙間が生じるのだ。 

 このあたりの緩さは、監督が、同種の失敗作『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』(18)のオル・パーカーなので、推して知るべしか。


『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/536c0aabb048407da93961dce9db39d5

 

 

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【インタビュー】『シコふんじゃった!』葉山奨之、伊原六花、竹中直人、清水美砂

2022-10-25 08:01:47 | 配信

 映画『シコふんじゃった。』から30年。装いも新たに誕生したドラマ『シコふんじゃった!』が、10月26日(水)から、ディズニープラスで独占配信される。

 卒業と引き換えに廃部寸前の相撲部に渋々入部した大学生の亮太は、たった一人の部員で、相撲一筋の穂香と出会う。2人が、個性豊かな仲間たちと共に、人生大逆転劇の舞台に挑む様子を描く胸アツ青春コメディーだ。亮太役の葉山奨之、穂香役の伊原六花、そして映画と同じ役で出演した青木役の竹中直人と夏子役の清水美砂に話を聞いた。

「相撲もあり、青春もあり、映画を見ていた人も楽しめる」
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/1355095


「シコふんじゃった!」
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/a8c48696f5466b1946f5e83d0808ae29

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「東京国際映画祭2022」開幕

2022-10-24 19:22:08 | 雄二旅日記

「東京国際映画祭2022」が開幕した。ポスターデザインはコシノジュンコ。

 オープニング作品は、瀬々敬久監督の『ラーゲリより愛を込めて』。クロージング作品は、黒澤明の『生きる』をリメークしたオリバー・ハーマナス監督の『生きる LIVING』

 日比谷の地下道で「~キネマ旬報の表紙で振り返る~あの映画の“熱狂”を再び!」というのをやっていた。

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『映画の森』「2022年 10月の映画」

2022-10-24 09:00:19 | 映画の森

共同通信社が発行する週刊誌『Kyoudo Weekly』(共同ウイークリー)10月24日号で、『映画の森』と題したコラムページに「2022年10月の映画」として、5本の映画を紹介。独断と偏見による五つ星満点で評価した。

終末医療の様子を淡々と描く
『愛する人に伝える言葉』☆☆☆

2作同時にアニメーション映画化
『君を愛したひとりの僕へ』『僕が愛したすべての君へ』☆☆

タイムループものの佳作が生まれた
『MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』☆☆☆☆

小津安二郎を感じさせるSF映画
『アフター・ヤン』☆☆☆

生と死の間を描くファンタジー
『天間荘の三姉妹』☆☆

クリックで拡大↓

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【インタビュー】『天間荘の三姉妹』のん、三田佳子

2022-10-24 08:01:28 | インタビュー

 天界と地上の間にある街・三ツ瀬の老舗旅館「天間荘」に小川たまえ(のん)という少女がやって来る。たまえは、旅館を切り盛りするのぞみ(大島優子)とイルカトレーナーのかなえ(門脇麦)の腹違いの妹で、現世へ戻って生きるか、天界へ旅立つか、魂の決断ができるまで天間荘で過ごすというのだが…。

  漫画家・高橋ツトムの代表作『スカイハイ』のスピンオフ作品を北村龍平監督が実写映画化した『天間荘の三姉妹』が10月28日から公開される。本作で、主人公のたまえを演じたのんと、天間荘に滞在する謎の女性・財前玲子を演じた三田佳子に話を聞いた。

のん「三田さんのせりふや立ち居振る舞いが心に食い込んでくる感じがした」三田佳子「この役を演じられるのはのんちゃんしかいないと思った」
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/1350319


『天間荘の三姉妹』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/ef27b7e8c071e56b87c7f5d0d83a82a1

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「BSシネマ」『ウォール街』

2022-10-24 06:23:28 | ブラウン管の映画館

『ウォール街』(87)

「午後のロードショー」
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/e769e146d80638acf927d5d71eb3dc7e

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