『ウォール街』(87)(1991.1.19.ゴールデン洋画劇場)
父よあなたは強かった
どちらかと言えば、オリバー・ストーンの映画はあまり好きではない。それは、映画を利用して自らの主張を強く押し出し過ぎるので、見ているこちらは辟易させられるからだ。
例えば、同じように社会派や告発映画を撮り続けながら、そうした嫌味を感じさせないシドニー・ルメットらの作品と見比べてみれば一目瞭然である。
だから、この映画も公開当時の大ヒットを知りながら、今まで見ずにいた。お得意のベトナム物ではないにせよ、金融界の裏側を描いたと聞いて、またもやえげつない暴露話や持論を聞かされる気がして敬遠していたのだ。
ところが、実際に見てみたら、これが結構面白かったので困った。映画を見て、面白くて困ったというのも妙だが、オリバー・ストーンという監督を手放しでは認めたくない、褒めたくないという、こちらの変な意地がそう思わせたのだろう。
とはいえ、この映画の畳み掛けるようなテンポの良さは素直に認めなければならないと思うし、この映画でアカデミー賞を取ったマイケル・ダグラスも、映画自体の出来の良さに随分と助けられたところもあったのではないかと思う。
だが、実はこの映画に引かれた理由は、オリバー・ストーンでも、マイケル・ダグラスでも、若手のチャーリー・シーンでもなく、マーティン・シーンの存在にあった。
予告編を見た時には、何だか売れっ子の息子のチャーリーに引っ張られただけの出演のように見えて、情けないなあ、などと勝手に思っていたのだが、何の何の、この映画で一番光っていたのは彼であり、この見事なしっぺ返しに拍手しながら見終わった気がする。まさに「父よあなたは強かった」であった。
さて、先に見た『ワーキング・ガール』(88)にしろ、この映画にしろ、今やアメリカ人も、日本人のように夜も日も明けず、寝る間も惜しんで働かなければビッグにはなれない、ということが描かれている。われわれ日本人がアメリカをうらやむ時代は終わった、ということなのだうか。
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