『西部の王者』(44)
ワイルド・ウエスト・ショーの創設者バッファロー・ビル・コディ(ジョエル・マックリー)の後半生を描いた西部劇。監督はウィリアム・A・ウェルマン。
騎兵隊のスカウト(偵察)、バファローハンター、ワイルド・ウェスト・ショーの創設という、ビルの変転の中に、シャイアン族のイエローハンド(アンソニー・クイン)との友情と一騎討ち、妻(モーリン・オハラ)との愛、ウォーボネット・クリークでの騎兵隊対インディアンの激しい戦い、ワイルド・ウェスト・ショーといったエポックな出来事を描き込んでいる。
特に、ウォーボネット・クリークの戦いのシーンの壮絶さには、ウェルマンの監督としての力量の大きさが示され、レオン・シャムロイの見事なカメラワーク、スタントマンたちのアクションには目を見張るものがある。何より、『風と共に去りぬ』(39)もそうだが、戦前にこんなにも色鮮やかなカラー映画が製作されていたことに、改めて驚かされた。
この映画は、ビルを、インディアン討伐戦に参加したことを悔い、贖罪の念を抱き、インディアンを擁護するヒューマニストとして、また、妻との愛を貫くロマンチストとして、そして西部の英雄として描いている。これまた、戦前の映画にしては随分進歩的だと言うべきか。
ちなみに、教師をしているイエローハンドの妹(リンダ・ダーネル)=インディアンが、文盲の白人のビルに手紙の書き方を教えるシーンまであったのには驚いた。
ただ、恐らく事実とは大きく異なるのだろうし、今ならインディアン討伐やバファローの乱獲の罪に問われ、決して英雄としては描かれないはずだが、クラシックな劇映画として面白さ、という点から見れば、なかなか良く出来ていると思う。
着こなしが難しいバックスキンの上着が似合い、長髪をなびかせる長身のマックリーがかっこいいが、ラストの老いてショーを引退する姿もいい。そしてオハラが美しい。
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