さて、バッファロー・ビルは、さまざまな映画に登場するが、『西部の王者』(44)とは対照的な描き方で、対で見ると面白そうなのが、ロバート・アルトマン監督の『ビッグ・アメリカン』だ。
『ビッグ・アメリカン』(76)(1981.4.5.)
西部開拓時代の伝説の人物は、実際とはかなり違う姿で、英雄として今に語り継がれている者が多い。そうした人物たちの神話を、ひっくり返し始めたのは、『明日に向って撃て!』(69)の多少ズッコケたブッチ・キャシディ(ポール・ニューマン)とサンダンス・キッド(ロバート・レッドフォード)や、『ドク・ホリディ』(71)の冴えないドク(ハリス・ユーリン)などが作られたニューシネマの頃だろう。それらを見ながら、英雄伝を崩してほしくないと思う半面、彼らのカッコ悪さを見て、親近感を抱いたところもある。
この映画も、皮肉屋のロバート・アルトマンが、西部の英雄の一人であるバファロー・ビル・コディ(ポール・ニューマン)を、興行師、タレントや芸人の類として描いている。このアルトマン流のビルは、ひたすら富と名声をほしがる、ヒーローとしてはちょっと首をひねりたくなるような男で、対照的に登場するインディアンの酋長シッティング・ブル(フランク・カックィッツ)のような威厳もないが、とても人間的ではある。
それは、ブルの幻影とビルが語り合うシーンに象徴される。バファロー・ビルは、作家のネッド・バントライン(バート・ランカスター)や、民衆、引いてはアメリカが作り上げた虚像に過ぎないのだから、結局は孤独なのである。そう考えさせられるところが、アルトマン流の皮肉がぴりっと効いている証拠なのだ。
『ロバート・アルトマン ハリウッドで最も嫌われ、そして愛された男』https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/f76299b5f2e2a780b177963da2a89000
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