『戦国野郎』(1992.1.25.)(63)
甲斐の武田家を離反し、武田家の忍者たちから命を狙われながらも、城持ちになることを望み、さすらいの旅を続ける若き忍者・越智吉丹(加山雄三)の活躍を描く。
『岡本喜八全作品』という本の発売を記念して、一時途絶えていた、「ビデオによる岡本喜八復習週間」を復活させてみた。前回の最後が、ちょっときつかった『血と砂』(65)だったので、今回は、小品ながら、東宝青春路線+時代劇=和製ウエスタンといった感じがするこの映画を選んでみたが、これが大正解の快作だった。
黒澤明が和製ジョン・フォードなら、この岡本喜八は和製ジョン・スタージェスか。いや、この快調なコミカルタッチはバート・ケネディか。
実際、加山雄三のお気楽ぶりは若大将以上だし、今は「水戸黄門」の風車の弥七になった中谷一郎が、かつて持っていた危うい魅力、またもや怪演を披露する佐藤允の木下藤吉郎など、岡本演出は冴えわたっている。
ただ、最近の「全ての作品が素晴らしい」というような、岡本喜八の持ち上げられ方は、何だかサミュエル・フラーやデニス・ホッパーのそれとも似ている感じがして素直にうなずけないものがある。
実際、岡本喜八の魅力は、突拍子もなく面白い映画を作る半面、見事な失敗作も作ってしまう危うさにあると思う。その分、出来がいい方に出会えたときのうれしさが倍増するといったところではないか。そんな気がするのだが。
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