田中雄二の「映画の王様」

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『トゥルーライズ』

2020-10-16 09:41:59 | ブラウン管の映画館

『トゥルーライズ』(94)(1994.12.14.渋東シネタワー)

 凄腕のスパイが、その身分を家族に隠しながらテロリストと戦う姿をコメディタッチで描いたアクション映画。タイトルの意味は「本当の嘘」。

 確かに、壮大でド派手で、いかにもハリウッド映画らしい金の掛かったアクション大作ではある。だが、見ている間はその上辺にだまされはするものの、見終わった後には何の感慨も残らず、ひどく空虚な気分になる映画でもあった。

 例えば、百歩譲って、これはあくまでもジェームズ・キャメロン流の、007などのスパイ映画へのパロディであり、コメディ映画なのだ、と自分に言い聞かせてみても、では、なぜここまで派手なドンパチや破壊が必要なのか、という疑問は消えない。これは、一家族の崩壊を食い止めるために、国家的な組織や抗争を利用したミーイズムの映画だと言えないこともない。

 そして、ハリウッド映画の欠点である短絡さが、アラブ人グループへの一方的な悪役のイメージや、あまりにも無知で安易な核爆発の描写(先の原爆記念切手の問題と根っこは同じだ)などに、如実に表れてもいる。

 スパイの仕事とプライベートという、二重構造が生み出すギャップの面白さに目を付けたところは、なかなかよかったのだし(オリジナルは日本未公開のフランス映画とのこと)、妻役のジェイミー・リー・カーティスや相棒役のトム・アーノルドのコメディリリーフぶりも冴えていただけに、もう少し小品として作った方がよかったのでは、という気がしてならない。

 これでは、アイデアはいいのに、シュワルツェネッガーを主役にしたからには、派手にしなければ…というお約束の殻を破れずに失敗した、先の『ラスト・アクション・ヒーロー』(93)と同じである。

【今の一言】われながら、随分酷評しているとは思うが、あの時の心境はこんな感じだったのだろう。


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