『スタントマン 武替道』(2025.7.7.オンライン試写)
1980年代、売れっ子アクション監督として活躍していたサム(トン・ワイ)は、撮影中に危険なアクションシーンを強行したことでスタントマンを半身不随にしてしまい、映画界から引退した。
現在、整骨院を営み静かに暮らしていたサムのもとに、かつての仲間から「もう一度アクション映画の監督をやってほしい」という依頼が舞い込み、数十年ぶりに映画製作の現場に復帰する。
ところが、今のアクション映画の製作現場は、コンプライアンスも厳しく、リアリティーを追求するサムのやり方に人気俳優のワイ(フィリップ・ン)やスタッフが反発し、現場はぎくしゃくする。若手スタントマンのロン(テレンス・ラウ)が、助監督としてサムを献身的にフォローし何とか撮影を円滑に進めようとするが…。
香港アクション映画を支えたスタントマンたちに焦点を当て、彼らの葛藤と苦悩に加えて映画製作の裏側を描く。監督は双子のアクション俳優として活躍し、本作が初監督となるアルバート・レオンとハーバート・レオン。タイトルの「武替道(ぶたいどう)」は中国語で「スタントの道」の意味。
この映画の見どころは、サム役をジャッキー・チェンの『ツイン・ドラゴン』(92)など、数々の作品でアクション指導を務め、『燃えよドラゴン』(73)などに出演もした香港アクション映画界のレジェンド、トン・ワイが演じ、今年の初めに公開されて評判となった『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』(24)のテレンス・ラウとフィリップ・ンが共演しているところ。
この新旧スターの顔合わせによって、『カンフースタントマン 龍虎武師』(21)というドキュメンタリーでも描かれていた香港アクション映画界の衰退や変化があらわになるのだが、「火がある限り希望はある」というセリフに象徴されるように、対立からの和解や希望を描いているところがこの映画の真骨頂。
スタントのことになると狂気をはらんだ性格破綻者となるサムを、実際にアクション監督として有名なトン・ワイが演じているのが面白い。これが地では困るが、どの程度実像が反映されているのかと考えると興味深いものがある。
ちなみに、『燃えよドラゴン』でブルース・リーから「考えるな、感じろ」と言われて頭をはたかれるのは若き日のトン・ワイとのこと。まさに人に歴史ありだ。
『カンフースタントマン 龍虎武師』
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