田中雄二の「映画の王様」

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『カンフースタントマン 龍虎武師』

2022-12-25 10:29:44 | 新作映画を見てみた

『カンフースタントマン 龍虎武師』(2022.12.24.オンライン試写)

 香港映画界が生み出した数々のアクション作品を支えたスタントマンと、彼らが活躍した年代を振り返るドキュメンタリー映画。

 1970年代から90年代にかけて、数多くのアクション映画を生み出し、世界中に大きな影響を与えた香港映画。膨大な数の作品群を支えたのは、危険も顧みず、すさまじいアクションシーンで代役を務めた武師(スタントマン)たちの存在だった。

 証言するのは、武師たちのほか、サモ・ハン、ドニー・イェン、そして『帰って来たドラゴン』(74)で倉田保昭と死闘を繰り広げた懐かしのブルース・リャン、また、監督のユエン・ウーピン、ツイ・ハーク、アンドリュー・ラウら。

 映画の本編シーンや、メイキングなどのアーカイブ映像を交えながら、彼らの仕事ぶりや、「ブルース・リーが香港映画のアクションに革命を起こしたこと」「ジャッキー・チェンのアクションコメディーがトレンドになったこと」などが語られていく。

 「サモハンが『やれ』と言うんだからやるしかない」「あいつは8階から落ちたから、俺は9階から落ちてやる」といった、武師たちの心意気はあっぱれだが、「金はかなりもうかったが、全て酒と賭けに消えた」というような、「宵越しの銭は持たない」的な生き方が、香港返還後、カンフー映画が衰退した今となっては寂しさを感じさせる。

 彼らは高齢化と後継者不足にも悩まされているし、製作会社のゴールデン・ハーベストやショウ・ブラザーズも、今は様変わりしているのだ。

 この映画がユニークなのは、「昔はよかった」と、過去の栄光を懐かしむばかりではなく、現在と未来をきちんと見つめている点だろう。そこから、香港映画の光と影が浮かび上がってくる。


 


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