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『イニシェリン島の精霊』

2022-12-18 09:28:36 | 新作映画を見てみた

『イニシェリン島の精霊』(2022.12.14.ディズニー試写室)

 1923年、アイルランドの小さな孤島イニシェリン島。住民全員が顔見知りのこの島で暮らすパードリック(コリン・ファレル)は、ある日突然、長年の友人コルム(ブレンダン・グリーソン)から、一方的に絶縁を言い渡される。

 理由が分からないパードリックは、妹(ケリー・コンドン)や風変わりな隣人の力を借りて事態を解決しようとするが、コルムはかたくなに彼を拒絶。ついには、これ以上関わろうとするなら自分の指を切り落とすと宣言する。

 『スリー・ビルボード』(17)のマーティン・マクドナー監督が、人の死を予告するというアイルランドの精霊・バンシーをモチーフに描いた人間ドラマ。

 最初は、こんな話で2時間持つのか、一体これはどういう話なのだともやもやするのだが、次第に、ホラーともコメディともつかず、予想外の展開を見せる、不条理で異様な心理劇に引っ張られ始める。

 単に恋人同士や夫婦にも見られる仲違いの様子を描いているようにも見えるが、コルムの行き過ぎた異常な行為に誘発され、ついにパードリックもやり返す様子を見ていると、ある意味、これは“小さな戦争”であり、アイルランドの内戦をミクロ化して描いた寓話なのかもしれないと思えてきた。

 内容的には、舞台劇向きとも思われるが、背景となるアイルランドの孤島の風景は映画でしか表現できないもの。また、ジョン・フォードの映画を参考にしたというドア越しや窓越しのショットも印象に残る。『スリー・ビルボード』もそうだったが、この映画にもどこか西部劇を思わせるところがある。

 エキセントリックな役を演じることが多いファレルが、情けない顔をして徐々に追い詰められていくところが面白かった。

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