ギヴァーからレシーバーへ、伝承の物語
近未来、人類は理想郷の「コミュニティー」で平和に暮らしていたが、そこは徹底した管理社会であり、人々は薬によって感情を抑制されていた。主席長老(メリル・ストリープ)から「レシーバー(記憶を受け継ぐ者)」に任命されたジョナス(ブレントン・スウェイツ)は、全ての記憶を蓄えた「ギヴァー(記憶を注ぐ者)」(ジェフ・ブリッジス)のもとへ向かう。
やがてジョナスはキヴァーの導きで地球や人間の本来の姿を知り、社会のあり方に疑問を抱くようになる、というお話。つまり、ロイス・ローリーの児童文学を映画化した本作は、ギヴァーからレシーバーへという伝承の物語なのだ。
ところで、聖書、哲学、記憶といったテーマを盛り込みながら、若者が理想郷の真実を知り、そこから脱出する中で成長していく姿を描くという話は、古くは『2300年未来の旅』(76)、最近では『ダイバージェント』シリーズなどがあり、あまり新味はない。 そして序盤はモノクロで始まり、ジョナスが真実を知るとカラーになるという映像処理も類型的なのだが、昔からこういう映画は割と好きなので点数が甘くなる。
監督はオーストラリア出身のフィリップ・ノイス。90年代にハリソン・フォード主演のジャック・ライアンシリーズ『パトリオット・ゲーム』(92)『今そこにある危機』(94)などで名をはせたが、以後はテレビに活躍の場を移しており、久々の再会となった。