田中雄二の「映画の王様」

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『夜に生きる』

2017-05-21 08:02:19 | 新作映画を見てみた

ベン・アフレックの誤算



 舞台は1920~30年代、禁酒法時代のボストン。警察幹部の息子ジョーは、戦場からの帰還後、父に抗い一匹狼のギャングとなるが…。ベン・アフレック監督、主演作。

 彼はギャング映画の魅力について「無秩序な感覚の魅力、見る者を異世界へ誘う」と語っている。確かに、ギャング映画の最大の魅力とは、主人公のカッコ良さや人間的な魅力によって、観客に、その悪事を大目に見てしまうというという矛盾した思いを抱かせるところにある。

 という訳で、この映画も、野望、女、金、成り上がり、復讐、抗争…と、道具立ては揃えたのだが、善にも悪にも成り切れないジョーの中途半端なキャラクターには魅力が感じられない。本国では、このキャラクター設定は善と悪の間で揺れるアフレック自身の私生活の反映か? とも言われているらしい。

 ただ、現代の目で禁酒法時代のギャングを描く、あるいは見せることの難しさはあると思う。そこには、人種問題への配慮など、昔のギャング映画とは別のタブーが存在するからだ。

 この映画でも、黒人や移民に肩入れする主人公、その結果、白人同士が殺し合うという妙な図式が展開し、違和感を抱かされた。そうしたところにもアフレックの誤算があったのではないだろうか。

コメント
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