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映画の王様

映画のことなら何でも書く

『絶望からの脱出 荒野の早撃ち拳銃』『怒りの荒野』『ガンマンの伝説』

2022-02-06 07:31:52 | ブックレビュー

『絶望からの脱出 荒野の早撃ち拳銃』(古川ゆう)(KKベストセラーズ)
(2010.5.19.)

 先に行われた「マカロニ・ウェスタン50周年/ディ・モールト映画祭2010」で『怒りの荒野』を見た際に購入。『怒りの荒野』のジュリアーノ・ジェンマ演じる虐げられた若者に、自分と同じ根を見た筆者は、アメリカに早撃ち修行の旅に出る。

 文章は稚拙で表現も回りくどいところが目に付くが、読んでいて不思議に引き付けられるものがある。それは筆者の実体験に基づいて書かれているからなのか。いずれにせよこれはオレには書けない。

 人を引き付ける文章は、必ずしもうまい下手では計れないということ。何よりも、アメリカで筆者の面倒を見てくれたというジーン夫妻の人柄が魅力的に書かれていた。


『怒りの荒野』(67)(2010.4.8.シアターN渋谷)(1974.1.21.月曜ロードショー)

 劇場で見たのは今回が初めて。マカロニウエスタンはテレビの吹き替え版で見た世代なので、当時はあまり違和感を感じなかったのだが、今回、改めてイタリア語で演じられる西部劇として見るとやはり珍妙なものだった。日本語の西部劇も変と言えば十分に変なのだが…。

 そして今さらながら、風景もテンポも妙だと感じたし、雑な作りも目立つ。おまけにジュリアーノ・ジェンマってこんなにカッコ悪かったっけという印象を抱かされる始末。

 やはりマカロニは亜流で本家の西部劇とは別物と考えた方がいい。この映画の見るべきところは、ガンマン10カ条の掟のアイデアとリズ・オルトラーニの音楽。


『ガンマンの伝説』ロバート・B・パーカー(早川文庫)
(2010.7.23.)

 ロバート・B・パーカーによるワイアット・アープ伝だが、登場人物の誰にも感情移入ができない。西部劇小説の翻訳の難しさを痛感する。ローレンス・カスダン監督、ケビン・コスナー主演の『ワイアット・アープ』(94)の屈折や後味の悪さを思い出した。

 

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『西部小説・ベスト10』

2022-02-06 07:10:50 | ブックレビュー

『西部小説・ベスト10』(荒地出版)
(2011.2.15.)

 神保町の古書店で発見。発行年を見ると、1961年とあるから、自分が生まれた頃に出版された本。『サタデー・イブニング・ポスト』誌に掲載された短編から厳選したとある通り、単なる撃ち合いだけでなく、それぞれに当時の生活感や風俗が書き込まれており、どれも読み応えがあった。

『無法者の行く道』:S・オマー・バーカー(訳・清水俊二)ガンマン志願の少年が大活躍。
*『ユマへの駅馬車』:マーヴィン・デヴリーズ(田中小実昌)
『旅がらす』:クリフ・ファレル(中桐雅夫)西部男はいかに結婚するか。
『レッド渓谷からきた女』:マイケル・フェシア(中桐雅夫)無法者は実は紳士だった…。
『事件の真相』:ブレット・ハート(三田村裕)西部の未亡人。
*『死者の追跡』(『死人街道』):アーネスト・ヘイコックス(鮎川信夫)
『はやまった絞死刑』:モーガン・ルイス(橋本福夫)映画『牛泥棒』にも通じる冤罪話。
『トップ・ハンド』:ルーク・ショート(北村太郎)西部の新聞事情。
『早撃ち』:R・パトリック・ウィルモツト(伊藤尚志)ビリー・ザ・キッド外伝
『贈られた馬』:オーウェン・ウィスター(山下論一)抒情的な文体で描かれる西部の理想郷の真実。

*は『駅馬車<西部小説ベスト8>』:ハヤカワ文庫にも収録。
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/a9d2f0885143b4a4d6980ac427305361

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『MOVIE』参考文献

2022-02-05 07:14:15 | ブックレビュー

『MOVIE』マリリン・モンロー
(2007.5.)

『銀幕のいけにえたち ハリウッド不滅のボディ&ソウル』アレグサンダー・ウォーカー(80)フィルムアート社
『監督ハワード・ホークス映画を語る』(86)青土社
『マリリン・モンロー』亀井俊介(87)岩波新書
『マリリン』グロリア・スタイネム/ジョージ・パリス(87)草思社
『ビリー・ワイルダー自作自伝』ヘルムート・カラゼク(96)文藝春秋
『聖林輪舞 セルロイドのアメリカ近代史』島田荘司(00)徳間文庫

『追憶マリリン・モンロー』井上篤夫(01)集英社文庫
『アメリカでいちばん美しい人 マリリン・モンローの文化史』亀井俊介(04)岩波書店
『マリリン・モンロー大研究』まつもとよしお(06)文芸社
『究極のマリリン・モンロー』井上篤夫(06)Soft Bank Creative
『PLAYBOY日本版 2006.7. 総力特集マリリン・モンロー』(06)集英社
『王になろうとした男 ジョン・ヒューストン』(06)清流出版


『MOVIE』ジョン・ウェイン 
(2007.6.)

『世界の映画作家16 西部劇の作家たち』(72)キネマ旬報社
『シネアルバム33 ジョン・ウェイン』増淵健/三谷宏次(74)芳賀書店 
『インタビュー ジョン・フォード 全生涯・全作品』ピーター・ボグダノビッチ/高橋千尋訳(78)九藝出版 
『映画宝庫7 さらば西部劇』(78)芳賀書店
『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』広瀬隆(82)文藝春秋 
『ムービーランドの子守唄 いつか見たジョン・ウェイン』大林宣彦(84)ケイブンシャ文庫

『ジョン・フォードを読む』リンゼー・アンダーソン/高橋千尋訳(84)フィルムアート社
『ジョン・フォード伝』ダン・フォード/高橋千尋訳(87)文藝春秋 
『DUKE ジョン・ウェイン』ドナルド・シェパード/ロバート・スラッツァー、デイヴ・グレイソン/高橋千尋訳(89)近代映画社
『モニュメント・ヴァレーの消灯ラッパ』原川順男(04)かんぽうサービス 
『JOHN WAYNE:THE MAN BEHIND THE MYTH』(85)MICHAEL MUNN
『THE COMPLETE FILM OF JOHN WAYNE』(00)BORIS ZMIJEWSKY, STEVEN zmijewsky, MARK RICCI


『MOVIE』ポール・ニューマン
(2007.9)

『ポールとジョアン-ポール・ニューマン夫妻の仕事と生活』ジョー モレラ、エドワード・Z. エプスタイン/相原 真理子(訳)(90)早川書房
『シネアルバム 20 ポール・ニューマン-孤独な彷徨とロマン』三谷 宏次/梶原和男 (80)芳賀書店
『ポール・ニューマン』エレナ ウーマノ/川口 敦子(訳)(89)近代映画社
『PAUL NEWMAN』DANIEL O'BRIEN(05)


次の本の準備のため、男優たちの自伝など資料を神保町ほかで購入。
(2008.11.28.)

『西部劇読本 映画の友10月臨時増刊号』(60)映画の友社
『続西部劇読本 映画の友5月臨時増刊号』(61)映画の友社
『汚れた顔の天使 ジェームズ・キャグニー自伝』「Cagney by Cagney」ジェームズ・キャグニー (訳)山田宏一、宇田川幸洋(76)出帆社)

『マックイーン-最後のヒーロー』「McQueen」ウィリアム・F・ノーラン(訳)高橋千尋(85)早川書房
『カーク・ダグラス自伝-くず屋の息子』(上下巻)「The Ragman's Son」カーク・ダグラス(訳)金丸美南子(89)早川書房
『ハリウッド・ガイズ』PLAYBOY Interview Special(98)集英社

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参考文献『世界の映画ロケ地事典』『図書館映画と映画文献』『私のハリウッド交遊録 映画スター25人の肖像』

2022-02-05 06:52:46 | ブックレビュー

『世界の映画ロケ地事典』トニー・リーヴス/斎藤敦子(訳)(04)晶文社
(2004.8.24.)

 いかにも晶文社らしい分厚い趣味の本ではあるが、資料的な価値もあるので(装丁は和田誠さんだし)、この際、思い切って購入しようかとも思うのだが…。何しろ約8千円という値段には、さすがに二の足を踏まされる。

 と言いながら結局購入。以下のページを書くときなどで大いに役立った。


『図書館映画と映画文献』飯島朋子(近代文芸社)
(2005.2.21.)

 ありがたくも続けて原稿依頼あり。今度は『映画に出てくる図書館』、頑張りましょう。参考文献は飯島朋子著『図書館映画と映画文献』。いゃあ、世の中には本当にとんでもないことを調べている人がいるものだと感心する。


『私のハリウッド交遊録 映画スター25人の肖像』ピーター・ボグダノヴィッチ(エスクアイアマガジン ジャパン)
(2008.8.20.)

 資料として使うため大枚4500円をはたいて購入。重いしかさばるので持ち歩けずに困る。上下巻にするとか、何かほかに手はなかったのか…。

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『聖林輪舞 セルロイドのアメリカ近代史』(島田荘司)

2022-02-04 15:46:30 | ブックレビュー

『聖林輪舞 セルロイドのアメリカ近代史』(島田荘司)(徳間文庫)
(2006.8.5.)

 「ハリウッド・サインと、ロスコー・アーバックル」「早川雪洲」「チャールズ・チャップリン」「バスター・キートン」「上山草人」「ウィリアム・ランドルフ・ハースト」「フレッド・アステア」「ハワード・ヒューズ」「ジェイムス・ディーン」「エルヴィス・プレスリィ」「マリリン・モンロー」「ケネディ兄弟」「ピーター・ローフォード」「チャールズ・マンソン事件」「ブルース・リー」「O・J・シンプソン」からなる、ハリウッドを媒介にした一種の裏アメリカ史。

 興味深い箇所も多々あったが、個々のスキャンダルがどこまで本当なのかは永遠の謎だ。いずれにせよケネス・アンガーの『ハリウッド・バビロン』からの影響が強いと感じた。


『最後の一球』(文春文庫)
(2010.7.23.)

 奇妙な枕から始まるミステリーが、途中からある投手の告白という形で野球小説に転化する異色作。『巨人の星』の星飛雄馬と花形満をほうふつとさせる、恵まれない投手と天才打者とのライバル関係が面白い。

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アメリカの探偵小説『荒野のホームズ、西へ行く』『鉄道探偵ハッチ』「私立探偵トビー・ピータース」

2022-02-02 20:25:23 | ブックレビュー

『荒野のホームズ、西へ行く/On the Wrong Track』スティーヴ・ホッケンスミス(ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
(2010.2.16.)

 西部劇、ミステリー、鉄道 まさに男が好む三役揃い踏みの快作。映像化したら面白いものになると思わせる快調なテンポと旺盛なサービス精神に酔った。前作の『荒野のホームズ』も読んでみなくては。


『鉄道探偵ハッチ/PLUGGED NICKEL=贋五セント玉』『草原の狙撃-鉄道探偵ハッチ/Red Cent』ロバート・キャンベル(文春文庫)
(2010.2.26.)

 先に読んだ『荒野のホームズ、西へ行く』でも、アメリカの鉄道探偵という存在が面白く描かれていたが、鉄道探偵と言っても、これは犯人の緻密なトリックを暴く時刻表ミステリーではない。アメリカの中西部を走る列車を舞台にしたローカル小説といった趣がある。

 この小説の主人公のハッチも、「もはや鉄道も自分も時代遅れの存在」と嘆くが、小説全体の流れも古風な感じでとても80年代を描いたものとは思えない。けれどもそこがいかにも探偵小説という感じがしていいのだ。


 さて、探偵小説と言えば、1940年代のハリウッドを舞台にした「私立探偵トビー・ピータース(Toby Peters)」シリーズや、崩壊寸前のソ連を舞台にした「ポルフィーリ・ロストニコフ主任捜査官(Porfiry Rostnikov)」シリーズ、「刑事エイヴ・リーバーマン(Abe Lieberman)」シリーズなどで活躍したスチュアート・M・カミンスキーが昨年亡くなっていたことを遅まきながら知った。

 トビー・ピータースものの短編「ルイス・ヴァンスを射った男」(The Man Who Shot Lewis Vance)「枯れ行く花」(Busted Blossoms)を久しぶりに再読してみたが、面白かった。もちろん前者は『リバティ・バランスを射った男』、後者は『散り行く花』をもじったタイトル。というわけで殺人事件に巻き込まれるのはジョン・ウェインとD・W・グリフィスとなる。

 「私立探偵トビー・ピータース」シリーズは、和田誠のイラストと翻訳(2作目まで)で、『ロビン・フッドに鉛の玉を(Bullet for A Star)』、『虹の彼方の殺人(Murder On The Yellow Brick Road)』『我輩はカモじゃない(You Bet Your Life)』『ハワード・ヒューズ事件(The Howard Hughes Affair)』『吸血鬼に手を出すな(Never Cross A Vampire)』の5冊が日本でも出版されている。

 事件に巻き込まれるのは、順にエロール・フリン、ジュディ・ガーランド、マルクス兄弟、ハワード・ヒューズ、ベラ・ルゴシとなる。カミンスキーは全部で24本のシリーズを書き、中には長編化された「ルイス・ヴァンスを射った男」もあるという。誰か翻訳してくれないものだろうか。

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取材関連『レキシントンの幽霊』『陽気なギャングが地球を回す』『映画監督小林政広の日記』

2022-02-01 23:42:26 | ブックレビュー

『レキシントンの幽霊』村上春樹(文春文庫)
(2004.12.12.)

 『トニー滝谷』(04)の市川準監督へのインタビュー取材が決まった。急な話でちょっと戸惑うが、とりあえず、準備のために原作短編が収録されている村上春樹の『レキシントンの幽霊』を読んでみる。元々、村上春樹は苦手なので、どうかな?という思いは読む前からあったのだが…。この短編もいかにも彼独特の曖昧さに満ちたもので、ちょっと受け入れ難い。正直なところ、「これの映画化か、まいったなあ」という感じがした。

【インタビュー】『トニー滝谷』市川準監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/84b13d3bfb9242b59a7c1427ac35da53


 

『陽気なギャングが地球を回す』伊坂幸太郎(祥伝社)
(2006.5.18.)


 伊坂幸太郎の小説を映画化した『陽気なギャングが地球を回す』(06)の前田哲監督にインタビュー取材。ということで、映画を見て、原作を読んでといろいろと予習を。

 結果的には原作の面白さを消化しきれなかった映画という気がするが、誰も死なない犯罪コメディー映画として『ホット・ロック』(72)を想起させるところなどにちょっぴりシンパシーも感じる。それにしてもこの原作は面白い。仕事抜きで続編の『陽気なギャングの日常と襲撃』を読み始めてしまった。

【インタビュー】『陽気なギャングが地球を回す』前田哲監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/51b939c50275e81e74259f8982a9e071


【インタビュー】『春との旅』小林政広監督
(2010.4.8.)

 『春との旅』(10)の小林政広監督にインタビュー取材。映画の内容から、もっと尖った人かと勝手に思っていたのだが、実際に面と向かって話してみると、とてもソフトな感じで、この人も筋金入りの映画ファンなんだなあと感じるところが多々あった。

 今回の『春との旅』は小津安二郎の『東京物語』(53)やジュゼッペ・トルナトーレの『みんな元気』(90)をほうふつとさせる家族の問題を絡めたロードムービーだが、祖父(仲代達矢)と孫娘(徳永えり)の旅という点がユニーク。仲代が絶品の演技を見せるが、ほかにも大滝秀治、菅井きん、淡島千景ら大ベテランが健在ぶりを示したところも魅力のひとつ。脚本家出身の監督らしく含蓄のあるセリフも多かった。

『映画監督小林政広の日記』(キネマ旬報社)
(2010.4.16.)

 
 『春との旅』のインタビュー取材の際に頂いた『映画監督小林政広の日記』を読了。映画を作りながら、あるいは日々の生活の中から湧き上がってくる、ぼやき、怒り、嘆き、悲しみ、喜びが正直につづられていて面白かった。自分も含めて、ものを表現しようとする人間は、どんな状況下でも、それを客観的に眺めているもうひとりの自分がいるということか。小林作品常連の香川照之のあとがきが秀逸だった。

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『淀川長治の遺言』『映画少年・淀川長治』(荒井魏)

2022-02-01 16:26:48 | ブックレビュー

『淀川長治の遺言』荒井魏(岩波書店)
(2006.3.27.)

 旧知の荒井魏氏著の本書を見つけたので熟読。著者の荒井氏やわが師匠で映画ジャーナリストの長谷川正とともに、淀川さんへのインタビューを編集したムック本製作に携わった日々が懐かしくよみがえった。決して金では買えない貴重な体験をさせていただいたと、今になってつくづく思う。


『映画少年・淀川長治』荒井魏(岩波ジュニア新書)
(2006.4.23.)

 交通博物館が閉館するということで、久々に来館したが、あまりの人の多さに入るのをやめた。というわけで、近くのちょっとしたグルメスポットになっている「やぶそば」で天ぷらそばを食べ、「竹むら」で揚げまんじゅうを食べて、神保町で古本屋をひやかして帰ってきた。

 そこで見つけた旧知の荒井魏氏の本書を読む。チャップリンや名作映画については、著者と一緒にたくさんの話を聞くことができたが、この本には「右手のない少年の話」など、自分が聞いていないものも含まれていたので、なかなか興味深かった。ジュニア向けの平易な文章が好ましく一気に読了した。


『淀川長治の証言』


https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/c1b90f2a7d3da72c38d9332f11b50328

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『汽車 映画ノスタルジア』(三木宮彦・畑暉夫・佐々木徹男)

2022-02-01 14:15:28 | ブックレビュー

『汽車 映画ノスタルジア』(展望社)
(2005.2.9.)

 以前、仕事でご一緒した大先輩の畑暉男さんから著書の案内が来た。その名も『汽車 映画ノスタルジア』。映画の中に登場した汽車を網羅したものらしい。

 ただ、畑さんのかつての労作『映画は汽車で始まった』『THE WESTERN』西部劇大全集 <シネアルバム 75>(芳賀書店)も、師匠・長谷川正の著書『映画狂室』(主婦と生活社)、『聖林画報』(人物往来社)も、皆絶版=古書となって安価で売られているのを知って何だか切なくなった。

【今の一言】その畑暉男さんが、昨年亡くなっていたことを先日知らされた。“映画の記録魔”的なところがあり、映画史家を名乗った畑さんには、旧作についての事実確認や、名鑑のリスト作りの際などには、大変お世話になったし、西部劇や鉄道ファンの大先輩として、貴重な話も聞かせていただいた。

 自分と西部劇の同好会「ウエスタン・ユニオン」との橋渡しをしてくださったのも畑さんだった。淀川長治先生、師匠の長谷川正に続いて、遂に畑さんも逝ってしまわれたかと思うと、とても寂しい気分になった。

 

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『有栖川有栖の鉄道ミステリ・ライブラリー』

2022-01-31 22:01:14 | ブックレビュー

『有栖川有栖の鉄道ミステリ・ライブラリー』(角川文庫)
(2004.11.7.)

 自分のような、かつての鉄道少年にとっては、このアンソロジーはたまらないものがある。昔は鮎川哲也の独断場だった鉄道アンソロジーが、自分と同年代の有栖川によって組まれる時代になったのだ。

 フィリップ・K・ディックの「地図にない町」、ウィリアム・アイリッシュの「高架殺人」、そして西岸良平の漫画『鎌倉ものがたり』からの「江ノ電沿線殺人事件」は再読。

 雨宮雨彦の短編「泥棒」と江坂遊のショートショート3編「0号車/臨時列車/魔法」、そして小池滋の「田園を憂鬱にした汽車の音は何か」は新発見だった。

 それぞれの元本『機関車乗り』『あやしい遊園地』『「坊ちゃん」はなぜ市電の技術者になったのか~日本文学の中の鉄道をめぐる8つの謎』が読みたくなった。


『「坊っちゃん」はなぜ市電の技術者になったか』(早川書房)
(2004.11.23.)

 『有栖川有栖の鉄道ミステリ・ライブラリー』の中で、「田園を憂鬱にした汽車の音は何か」を読んで、全編を読んでみようと思ったこの本を読了。

 近代の有名文学の中に登場する鉄道関係の事柄を縦横無尽に推理し、それぞれの作品の側面を浮かび上がらせ、別の楽しみ方を教えてくれる。

さてラインアップは、
「坊っちゃん」はなぜ市電の技術者になったか―夏目漱石「坊っちゃん」
電車は東京市の交通をどのように一変させたか―田山花袋「少女病」
荷風は市電がお嫌いか―永井荷風「日和下駄」
どうして玉ノ井駅が二つもあったのか―永井荷風「墨東綺譚」
田園を憂鬱にした汽車の音は何か―佐藤春夫「田園の憂鬱」
蜜柑はなぜ二等車の窓から投げられたか―芥川龍之介「蜜柑」
銀河鉄道は軽便鉄道であったのか―宮沢賢治「銀河鉄道の夜」
なぜ特急列車が国府津に停ったのか―山本有三「波」

 それぞれ面白かったが、自分は後半の4本が特に好きかな。こういう重箱の隅をつつくみたいな、どうでもいい雑学は結構好きだ。毛色はちょっと違うが、文学と映像を論じた瀬戸川猛資の好著『夢想の研究』を思い出した。確かあれも早川書房だった。ここは時折こういう素敵な本を出してくれる。


『機関車乗り』(鳥影社)
(2004.11.30.)

 『有栖川有栖の鉄道ミステリー・ライブラリー』から派生した、先の小池滋の『「坊ちゃん」はなぜ市電の技術者になったのか』に続いて、雨宮雨彦の『機関車乗り』を読了。普通の書店ではなかなか手に入らないこの手の本が安価でネットで簡単に見つかるのはうれしい限りだ。

 さてこの鉄道や機関車を扱った短編集は、不思議な味わいがあった。ローカル鉄道の廃止を皮肉った「遺産」。これまた廃線になったローカル鉄道を舞台に、少年時代の思い出と封印されたトンネルにスクラップになるべき機関車を見つけるラストシーンが余韻を残す「記憶」。架空の国を舞台にオンボロ機関車を活写した「機関車乗り」。幻の現金輸送車の存在と高校生カップルの交流を絡めた「黒橋」。そして『有栖川有栖の鉄道ミステリー・ライブラリー』に収録されていたホラ話『泥棒』。ラストは湖に沈んだ機関車を幻想的に描いた「みずうみ」

 いずれもなかなか面白かったが、文章のつたなさが惜しい気がした。さてこの作者の経歴がちょっとした謎。ひょっとしたら自分よりずっと若い人なのかも、と感じさせられるところもある。

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