昨日「ザ・シネマ」で『駅馬車』(39)をやっていた。実はこの映画には原作となったアーネスト・ヘイコックスの短編小説(訳・井上一夫)がある。ハヤカワ文庫の『駅馬車<西部小説ベスト8>』に、他の7編とともに所収されているが、以前読んだ時に、ジョン・フォード、あるいは脚色のダドリー・ニコルズは、この短編をよくぞあそこまで広げたものだと驚いた覚えがある。
他の7編は
「埃まみれの伝説(レジェンド)」:ハル・G・ロバーツ(訳・三田村裕)
町を去る決意をした保安官。最後の仕事は、殺人を犯した、彼が思いを寄せる未亡人の息子の始末だった。ちょっと『真昼の決闘』を思い出させる展開を見せる。
町を去る決意をした保安官。最後の仕事は、殺人を犯した、彼が思いを寄せる未亡人の息子の始末だった。ちょっと『真昼の決闘』を思い出させる展開を見せる。
「あの世から来た男」:マッキンレー・カンター(訳・田中小実昌)
襲われて死んだと思われていた元保安官が町に戻ると、恋人は去り、街は荒れ果てていた。田中小実昌の翻訳にいま一つ乗れないものがあった。
襲われて死んだと思われていた元保安官が町に戻ると、恋人は去り、街は荒れ果てていた。田中小実昌の翻訳にいま一つ乗れないものがあった。
「硝煙の街」:フランク・グルーバー(訳・三田村裕)
南北戦争を引きずる男たち。三角関係、友情、やるせない暴力の連鎖が描かれる。
南北戦争を引きずる男たち。三角関係、友情、やるせない暴力の連鎖が描かれる。
「ビリイ・ザ・キッドの幽霊」:エドウィン・コール(訳・三田村裕)
ほら話(トール・テール)、英雄伝説として面白い。
ほら話(トール・テール)、英雄伝説として面白い。
「死人街道」:アーネスト・ヘイコックス(訳・三田村裕)
一人のガンマンの誕生。砂金を巡る追跡劇。
一人のガンマンの誕生。砂金を巡る追跡劇。
「無法者志願」:ER・バクリー(訳・三田村裕)
O・ヘンリー的な善意と皮肉に満ちたどんでん返し。
O・ヘンリー的な善意と皮肉に満ちたどんでん返し。
「ユマへの駅馬車」:マーヴィン・デヴリーズ(訳・田中小実昌)
ヘイコックスの「駅馬車」に勝るとも劣らない映像的な描写が秀逸。こちらは田中小実昌の翻訳がいい。
ヘイコックスの「駅馬車」に勝るとも劣らない映像的な描写が秀逸。こちらは田中小実昌の翻訳がいい。
いずれも、映画では表現しきれない心理描写がなかなか良かったが、「駅馬車」の他は映画化されていないのではないか。
ちなみに、原題の「Stagecoach」を「駅馬車」という邦題にしたのは、かの淀川長治先生とのこと。 『淀川長治の証言 20世紀映画のすべて』(97)という本でご一緒した際に、そのいきさつを熱く語ってくださった。「日曜洋画劇場」で淀川先生の解説付きでこの映画を見たのは1975年の12月28日のことだった。
ジョン・フォード生誕120年『駅馬車』
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