むぎわら日記

日記兼用ブログです。
野山や街かどで見つけたもの、読書記録、模型のことなどを載せております。

『耳鼻削ぎの日本史』清水克行(文春文庫)

2022年04月16日 | 読書
残虐な刑罰の話は、歴史の授業でも、気持ちが悪くなるので、左の耳から入って右の耳から出ていくような聞き方しかしていませんでした。
この本のタイトルを見たとき、そう言えば、そんなこともあったと習ったような気がする、どんなことだったのだろうと思って手に取った次第です。
日本各地に耳塚、鼻塚が存在するようですが、そのルーツを辿っていくと、いい加減なものが実に多いとのこと。塚が2つ並んであって耳のような形をしているところへ戦国時代の歴史が混じり込んでしまったり、3つあったから耳塚となったとか、キキミミサマと言って耳の障害を治す神様だったりとか、本物が埋葬されているところが実に少ないのに驚きました。
また、中世以前の耳削ぎ、鼻削ぎは、女性と僧侶がほとんどで、死刑の減刑として用いられていたという当時の風俗からすると優しい刑罰だったのだそうです。
それが変わったのが戦国時代で、首の代わりとして、持ち運びに便利な耳や鼻を削ぐということが行なわれ、さらに死刑では飽き足らない刑罰として死刑の前に耳や鼻を削ぐことが行なわれたようです。
しかし、江戸時代になると、中世感にもどるどころか、鼻を削がれた人が○○藩の人間だとか噂されるのも恥ずかしいので廃れていくようになりました。
時代によって考え方が変わっていくところも興味深く読めました。
巻末の解説には、この著者のテクニックがよく解るよう解説されていて、なぜ、こんなマイナーなネタで最後まで飽きさせず読まされてしまうのか理解できました。文章テクニックのお手本のような歴史書でもあるようです。

コメント
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