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蛸林 Daily Work

お気楽な絵とグライダーのBlog
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●鈍った身体をひざ小僧が笑う【3】

2004年09月04日 | その他
○景色を見ながら一杯のつもりだったが。
登りきるとそこは開けた草原だった。
本来なら、ビールを飲みながらスケッチでもというところなのだが、笑い続ける膝小僧くんは、谷を昇ってくる風に吹かれていると、一眠りしたらと囁きかける。
ザックに忍ばせた水彩絵の具も、取り出す気にならなかった。
南斜面の向こうに山裾のむこうに町並み。東には、登るつもりだった主尾根。振り返ると、山岳信仰の山が雲の屏風を従えてそびえていた。
ビールをザックの中から腹の中に移して背中を軽くしたいところなのだが、ここはこの先の下りのことを考えてお預けにする事にした。

○撤退だぁ。
吹き抜けて行く風を感じながら、動きたくない体を起こし「そろそろいくか」と自分に声をかけて、肩に食い込むザックを担ぎ上げる。
荷を詰めた時には、そんなに重くしたつもりは無かったが、いや、山へ通い続けていた頃のザックに比べれば、充分すぎるほど軽いはずだった。しかし、膝小僧が笑い続ける今の身体には、その場所に留まりたい気持ちをおこさせるには充分な重さだった。
そんな気持ちを押さえて下りにかかる。
急な坂道に歩幅よりも大きめに置かれた丸太の階段を下るにしたがって、膝小僧は、ケタケタと大声をあげて笑う。
若い頃、須走(富士山)を山岳マラソンよろしくかけ降りたのが、まるで夢の中の出来事だったのではという疑いさえ感じる。
それだけに、登山道の先に峠を越える林道が見えた時はホッとしてしまった。
そんな気分が、ザックの中の重りを減らしてもいいんじゃないかという思わせた。
今の身体の状態で、計画通り主尾根に取り付く気もなくなったし、あとは林道を下るだけと。
「水分補給とザックの軽量化をするるんだぁ。」と悪魔の囁きがした。
誘惑に負けた。
しかし、喉を流れ落ちるビールは生温く苦かった。
飲み干す気がしない。
空のペットボトルに移すとのこりは、コップ一杯くらいだった。

写真は、草原の向こうに見える大山

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