50歳のフランス滞在記

早期退職してパリへ。さまざまなフランス、そこに写る日本・・・日々新たな出会い。

ウツ、ウツ、フランス人も悩んでいる。

2007-10-20 01:33:47 | マスコミ報道
社会が変化し、家族の姿が変わり、職場も変貌する。そうした環境の変化に伴い、精神的な悩みを抱える人が多くなっている・・・どうも、日本だけではないようです。



「フランス人五人に一人がウツに悩んでいる」と伝える16日のフィガロ紙です。Credoc(Centre de Recherche pour l'Etude et l'Observation des Conditions de Vie:暮らしに関する調査研究センター)の調査によると、今現在ウツ状態にあるという人が5%、ここ3ヶ月の間にウツ状態を経験した人が13%、過去3年の間に経験した人が17%だそうです。5%と13%を合わせて18%、見出しの五人に一人となるわけですね。

特に多いのは、18-25歳の男女、35-44歳の男性、45-54歳の女性だそうです。若い世代では、進学、就職などのストレス、40歳前後の男性には職場での責任や解雇の恐怖感、50歳前後の女性では更年期や老後への不安・・・これらの理由は私が勝手に推測したものなのですが、こう考えると、国は違えど、同じようなことに悩んでいるんだなと思えてきますね。日本人と対極にあるように感じていたフランス人が、急に身近に思えてしまいます。フィガロ紙の記事は世代ごとの理由は紹介していないのですが、フランス人全体としてウツに悩む人たちの背景には、「不安感」、「孤独感」、「老いへの不安」があると指摘しています。

専門医は、成果主義、個人主義、ストレスの蔓延する今日の社会がさまざまな病気の温床になっている、と警告を発しているそうです。フランスは昔から個人主義の国と思っていたのですが、きっと最近ではちょっと度を越してしまって問題化しているのかもしれないですね。ギスギスした社会・・・先進国共通の問題なのかもしれません。

悩みを抱える人たちの家庭環境では、所得の低い層ほど悩む人の割合が高いそうです。不安定な暮らし、将来への不安、そうしたことが発症の引き金になりやすいとか。また、気力減退、解雇への不安、疎外感・・・こうしたことが多くのケースに見られる原因だそうです。

そして、ウツに悩む人たちを取り巻く周囲の問題として挙げられているのが、「無理解」。色眼鏡で見られる、あるいは一度その烙印を押されてしまうといろいろな場面にそのレッテルがついてまわる・・・従って、自分がウツに悩んでいることを周囲に言えない人が過半数、24歳以下では67%に達しているそうです。このあたりも、多くの国共通なのかもしれないですね。個性を認めるというか、違うことを評価するフランスにおいても、こうした状況です。ましてや、均質な社会では・・・今の時代、生き抜くのは、難しい。

専門医は、少しでもウツだと感じたら、ためらわずに専門医の診断を受けるようにとアドバイスしています。現状は、ウツ症状のある人の半分しか治療を受けておらず、そのまた半分の人しかきちんとした治療を行なっていないそうです。一般医に相談する人が多いそうですが、ウツの診察には45分から1時間必要で、とても一般医がそこまで一人の患者に時間を割けない。やはり、専門医の診断を仰ぐべきだそうです。また、心理療法に頼る人も多いようですが、これはあくまで補助的なもので、やはり専門医の指示の下、抗鬱剤などの投薬を正しく行なうことが必要だといっています(これはあくまでフィガロ紙の記事によると、です。日本では、異なるアドバイスがなされているかもしれません)。


(多くの企業が集まるデファンス地区。ここでも人知れず悩んでいる人が多いのかもしれませんね)

行き過ぎた個人主義やそこから来る孤独感、そして何よりも競争社会から来るストレス、そしてまた社会の周辺部で不安定な暮らしを営む人々が抱く疎外感・・・国境を越えて、多くの国で、そして多くの人が同じ悩みを抱えているようです。しかも、そうした悩みを抱える人たちへ理解を示そうとしないどころか、弱者のレッテルを貼って社会的に葬り去ってしまう周囲の人たち。これまた、同じような状況のようです。「タフでなければ生きていられない」。しかし、本当にタフな人であるならば、弱者への理解、あるいは支援の手を差し伸べることができるのではないでしょうか・・・「やさしくなければ生きている資格がない」(『プレイバック』~レイモンド・チャンドラー)。

↓「励みの一票」をお願いします!
 すぐ下の文字をクリックすると、ランキングにアクセスし、投票になります。

人気blogランキングへ