50歳のフランス滞在記

早期退職してパリへ。さまざまなフランス、そこに写る日本・・・日々新たな出会い。

休暇のレコード・ホルダー。

2008-04-21 23:27:25 | マスコミ報道
和製英語とかジャパングリッシュとか言われる、日本で作られた英語がありますね。例えば、ナイター。同じような状況が、フランスにもあるようです。仏製英語、あるいはフレンチグリッシュとでも言えばいいのでしょうか。そのひとつが、“recordman”。レコードマンつまり記録保持者。英語なら“record holder”と言うべきなのでしょうが、フランスでは「ルコルドマン」と言うんだそうです。その複数形“les recordmen”で始まる記事が17日のフィガロ紙に出ていました。

第一面の見出しは、“Les Français champion du monde des vacances.”・・・フランス人は、ヴァカンスの世界チャンピオン。今更言うまでもなく、フランス人にとって休暇は大切なもの。フランス人はその取得日数の記録保持者なんだそうです。では、実際どのくらいの有給休暇があり、その取得率は。そして、その過ごし方は・・・



中面で詳しく紹介されています。サラリーマンの平均有給休暇日数は、フランスが年間37日で8年連続世界一だそうです。次いでイタリアの33日、スペインの31日と続いており、やはりラテン系の人々が有給休暇を多く獲得しています。働くより、ヴァカンス。人生は、楽しむためにある! フランスでは、休暇のスケジュールに合わせて仕事を入れている人も多いそうで、まず休暇ありき、になっているのですね。他のヨーロッパ諸国では、25~28日になっているようですが、大西洋を渡ったアメリカではわずか14日の有給休暇! 勤労観、あるいは勤労実態に大きな差があるようです。フランス人はアメリカ人より2.5倍以上の有給取得を権利として有していることになりますね。因みに、アングロ・サクソンのイギリスでは、26日の休暇になっています。

でも、これらの数字はあくまで権利としての有給休暇日数。実際の取得率は・・・これまた、フランスは世界の上位にいるそうです。有給休暇を完全に消化しなかったフランスのサラリーマンは20%。ということは、年間37日の有給休暇をしっかり取りきった人が80%にもなっています。有給休暇日数が多い上に、しっかり消化しているフランスのサラリーマン・・・日本の現状と比べてどうでしょうか。フランス人以上に消化率がいいのは、ドイツ。年間27日の有給休暇を完全取得したのが81%だそうです。さすが規則を守るお国柄ですね(?)。一方、日数の多いイタリアは53%しか完全消化者がいないそうです。アメリカでは、69%の人たちが14日の休暇を完全に消化しきったそうです。

さて、フランス。年間37日ある有給休暇を80%の人が完全に使いきっている。どのように使っているかというと、もちろん多いのはヴァカンス。旅行が多いのですが、その行き先にもフランスらしさが顔を覗かせています。外国に出かけるのはわずか17%。83%のフランス人は、ヴァカンスを国内で過ごしているそうです。それだけ国内に行きたい場所が多いということなのか、あるいは国内にヴァカンス施設が整っているということなのか。はたまた、フランス語やフランスの価値観が通用しない国には行きたくないという内弁慶気質があるのか・・・いずれにせよ、国内で休暇を楽しむ人が多いので、国内の観光産業にとっては大きな恵みになっているそうです。しかも、外国からは多くの観光客が。フランスの観光業、順調なはずですね。

その少ない外国旅行組みですが、行き先はスペイン、イタリア、ポルトガル・・・短い日数でも行ける近くて太陽の光に恵まれた3カ国に人気が集まっているようです。また、金銭的に余裕のある層ではモロッコ、チュニジア、ポルトガル、トルコ、ニューヨークといった所が人気の滞在先だそうです。

もちろん、ヴァカンス以外に有給休暇を使う人だっています。買い物(ソルドへ急げ?)、各種手続き、子どもの送り迎えなど。ヨーロッパの他の国々ではこうした事柄は女性がになう場合が多いので、結果として女性労働にパートタイマーが多くなっているそうですが、フランスはこの点、男女平等が進んでいるので、家事・育児絡みで休みを取る男性サラリーマンも多くなっているとか。フランス女性は強いと取るべきか、フランス人男性は優しいと取るべきか。あるいは、フランス人男性にとっては仕事より家庭が大事なのでしょうか。しかし、再婚、再々婚も多く・・・単に休みが好き(仕事が嫌い)なのでしょうか。でも、階級社会。猛烈に働く層もいますし、一概には片付けられないようです。

ヴァカンス取得が多いのは、もちろん夏ですが、それ以外では5月上旬も多い季節になっています。それは祝日が多く、橋をかけやすいため。祝日にはさまれた日を休みにすることを“faire le pont”と言うのをご存知の方も多いと思います。5月には、メーデー(1日)、第2次大戦休戦記念日(8日)、聖霊降臨祭(移動祝祭日で今年は11日)という祝日があり、今年ははじめの2日が木曜日。金曜日を休めば4連休が二度。しかも、今年は12日の「聖霊降臨祭(Pentecôte)の翌月曜日」が休みになるようで、5連休。パリでは、学校は8~13日までの6連休になるそうです。ついでに、5~7日も休んでしまえば、12連休、あるいは13連休に。日本のゴールデン・ウィークと同じようなタイミングでの連休になりそうですね。もちろん、ヴァカンス大国、フランスのほうが期間が少し長いようですが。

というフランスに暮らして、2年9ヶ月。遅ればせながら、ブログもときどき更新にして、ヴァカンスを。というわけで、先週は、1週間、プロヴァンスに行ってきました。その模様を明日以降、ご紹介できればと思っています。


スター誕生!

2008-03-29 04:31:28 | マスコミ報道
サルコジ大統領が26・27の両日、国賓としてイギリスを訪問したことは日本でも報道されていたと思います。では、フランスでの報道振りは・・・

仏英両国の友好に新たなページを! というサルコジ大統領のメッセージはきちんと紹介されていますし、例によって原子力発電とエアバスの売り込み交渉も報じられていますが、今回、完全に大統領のお株を奪ってマスコミのフラッシュを一身に浴びたのは、カルラ夫人。


27日のフィガロ紙です。「仏英両国の蜜月時代」という見出しですが、サルコジ大統領とエジンバラ公に挟まれて中央で微笑んでいるのがカルラ夫人。結婚により、姓はブルーニ=サルコジになっています。2月末の南アフリカ訪問に同行したとはいえ、大きな注目を集めるひのき舞台としては、今回が大統領夫人(la première dame:ファースト・レディ)としての実質的外交デビュー。しかも、相手は格式のある英国王室。事前の準備には細心の配慮がなされていたようですし、かなり緊張もしたようですが、モデルとして、あるいはその後の歌手として、世界の名だたる有名人とも浮名を流した経験が生きているのか、あるいは新聞報道が言うようにイタリア貴族の流れを汲むという出自によるものか、全くおどおどしたところがなく、自由に振る舞っているように見えたようです。笑顔も自然。そこが、イギリスの人たちを惹きつけたようですし、ロー・ヒールを履き、なおかつ少し背を丸めてエリザベス女王が小さく見えないようにした配慮なども好感を持って受け止められたようです。


27日のメトロ紙です。その見出しに「チャーミング」とあるように、気遣いだけでなく、そのファッションセンスでも魅了したそうです。何しろ元々トップ・モデル。スタイル、着こなしは、今でも現役モデル並み。その容姿をグレーで統一したファッションで包んでヒースロー空港に降り立つ姿はまるでジャクリーヌ元ケネディ大統領夫人の再来のようだとまで言われているとか。このコート風ワンピース(un robe-manteau)はディオールだそうです。エレガント、シック、モダン、魅力的・・・賞賛の嵐だそうです。


同じメトロ紙ですが、他の女性たちのファッションはといえば・・・エリザベス女王もカミラ夫人も、羽根飾りのある帽子。一方、カルラ夫人をはじめ、彼女の母親、ダチ法相など、フランス女性は羽根飾りのないシンプルで、小さめの帽子。英仏の差なのか、英王室独特なものなのかは知らないのですが、いずれにせよ帽子には大きな差があったようです。

ところで、カルラ夫人の母親も同行、今まで中国などへ同行していたサルコジ大統領の母親はプライベートな事情で今回は同行せず、だったそうですが、こうした公式訪問の際は、どこまでの家族が同行するものなのでしょう。日本の首相がどこかの国を公式訪問する際、その親とか夫人の親とかも同行するものなのでしょうか。あまり日本の報道では目にしないのですが、日本では同行しないのか、あるいは同行しているもののマスコミが伝えないだけなのか、どうなのでしょうね。


夜は、公式晩餐会(写真は27日のフィガロ紙)。ここでのカルラ夫人の出で立ちは、黒とも濃紺とも見えるシースドレス。絹のモスリン織だそうです。アクセサリーはショーメ(Chaumet)のもの。ここでも、そのエレガントさが際立っていたそうです。55メートルのマホガニーのテーブルを囲んだのは146人の招待客たち。供されたワインは、当然、フランス製。シャトー・マルゴー(chateau-margaux)の1961年ものと2000年のシャサーニュ・モンラシェ(chassagne-montrachet)だったそうです。

なお、フランス大統領の国賓としてのイギリス公式訪問は5回目だそうで、一方のエリザベス女王が国賓を迎えるのは1952年に王位について以来96回目だそうです。1年に二人弱の割合で迎えているのですね。晩餐会もウィンザー城で行なわれたのですが、この城の礎石を置いたのはフランスのノルマンディ公ギヨーム2世(英語名:ウィリアム征服王)だったそうで、仏英両国の縁を見出しているフランスの報道陣もいるようです。

さて、翌27日、サルコジ大統領とブラウン首相は、サッカーの名門チーム・アーセナルがホームグランドとするエミレーツ・スタジアムでトップ会談。合間にはグランドに降りて、アーセナルのベンゲル監督(ご存知のとおりフランス人)を交えて談笑したそうですが、もしかしてベンゲル監督が通訳だったのかもしれないですね。


その合間に、カルラ夫人はブラウン首相夫人とともに、女性の健康問題の改善に取り組むNGOとの会合に出席(写真は28日のフィガロ紙)。2日間の滞在で6回衣装換えをしたといわれるカルラ夫人、ここではグレーのパンツスーツに、鮮やかな紫のコート。さっそうと歩く姿は、やはりモデル。肝心の会合では、スピーチを英語で行なったそうです。エリザベス女王やエジンバラ公まで魅了した人柄や、夫やその他の閣僚にないとフランス・メディアがいうセンスのよさ、そして英語を話すことで、カルラ夫人は完全にイギリス・メディアを味方につけてしまったようです。

訪問前には、モデル時代のヌード写真を掲載して笑いものにしようとてぐすねひいて待っていた英国の報道陣が逆に圧倒されてしまい、彼女への賛辞を惜しまない記事に変わっているそうです。いわく、ジャクリーヌ夫人の再来だ、いやいや、レディ・D(ダイアナ元妃)に匹敵する・・・26日夜に行なわれたサッカーの親善試合、フランス対イングランドの結果に引っ掛けて、今回の公式訪問も1対0でフランスの勝ちだと、白旗を挙げている新聞まであるそうで、カルラマニア(Carlamania)でいっぱい、とまで言われているとか。

こうした評判に、サルコジ大統領、気分が悪いわけありません。今まで多くのメディアが彼女のことを散々悪しざまに書いてきたが、これで彼女のことがよく分かっただろう。その外見だけでなく、意思の強さ、人間性への感受性などその人格でもフランスに貢献できる女性なのだ、とブラウン首相の眼前でのろけて、首相をビックリさせたそうです。そして、最後はテムズ川での舟遊びに際しても、船上でキスを交わし熱いところをカメラマンたちに見せつけたとか。

ということで、カルラ夫人の外交デビューは大成功。めでたし、めでたしなのですが、意外とフランス庶民は醒めていて、というか、モデル、歌手としての今までの経歴を実際に目にしているせいか、そう簡単にはファースト・レディとして認めていないようです。27日のメトロ紙によると(イギリスでの評判が伝わる前の声のようですが)、彼女はまだ歌手であり、政治とは何ら関わりがない。そのうち、歌手を取るか、政治家の妻を取りか、選択を迫られるだろう・サルコジ大統領にとっては好都合だろう、何しろカメラマンの注目が大統領自身以外にも向いてくれるのだから・今までの大統領夫人たちとはイメージがまったく違う。カルラ夫人のイメージは各国の物笑いの種になるのでは・ファースト・レディは大統領の就任からともに歩み、ともに学ぶことが必要だが、彼女は途中から加わったので、この条件を満たしていない・・・こうした声が次第にイギリスでの報道のように変わっていくのかどうか。どう変わっていくのか、変わらないのか、フランス人気質も見えそうで、楽しみです。

ということで、26日の夜から28日まで、サルコジ大統領夫妻の話題で持ちきりのフランスでした。


“internautes”、そして“mobinautes”へ。

2008-03-26 00:26:11 | マスコミ報道
インターネット・ユーザーのことをフランス語で“internautes”(アンテルノート)というのは、ご存知の方も多いと思います。もともとは宇宙飛行士を意味する“astronautes”(アストロノート)からの転用なのでしょうが、最近では“mobinautes”(モビノート)という単語が登場するようになっています。携帯でネット接続をする人のことを「移動体の(mobile)」という意味からこう呼び始めているようです。こうした新しい単語が登場するほどに、フランスもますますネット社会へ移行しつつあるようです。


そうした社会的トレンドを紹介している21日のフィガロ紙です。インターネット利用者が3,000万人を超えたという見出しです。インターネット接続は、もはや特別なことではなく、日常のありふれたひとコマである。インターネット利用者の8割がほぼ毎日接続している・・・しかし、それにしても、フランスらしい写真ですね。どこでも座り込むのが好きな人が多いのですが、書棚の上にも。絵になるシチュエーションですが、日本ではこんな場所ではけしからん、あるいは、子どもが真似して落ちたらどうするんだ、危ないじゃないかという声も聞こえてくるかもしれませんね。彼我の差。良い悪いではなく、違いがあります。


さて、中面で、少し詳しく紹介しています。2007年にはネット利用者が対前年で6%増えて、3,030万人に(フランスの人口は6,300万人ですから、まだ半分以上の人がネットとは関係ない生活を送っているようです)。しかも、高速接続が可能なエリアが93.4%に広がったそうです(しかし、契約料がわずかに安い低速を選んでいる人も、中高年を中心に結構います・・・お金には非常にしっかりしていますから)。ネット利用者の77.2%がほぼ毎日接続しているそうで、接続時間も伸びている。1ヶ月間での接続時間が平均26時間と前年より2時間増え、ほぼ毎日1時間接続していることになります。皆さんは、いかがですか。1時間ですんでいますか。私は、ブログの更新と、メール、日本のニュース閲覧などで、どうでしょう、毎日4~5時間は接続していると思いますが。しかも、ネット接続していなくても、写真の整理やブログの原稿制作などで、PCに向かい合っている時間は毎日7時間を超えていると思います。目が疲れるはずですね。

さて、話題はフランス。プロバイダーの提供するモデム(“box”)では、ネット・電話・テレビが利用できるようになっていますが、その3種とも契約している世帯が30%程度、ネットと電話だけが55%ほど、ネットだけが15%だそうです。日本では、ネットだけ、あるいはネットと電話だけの利用者が多いのでしょうか。

携帯からネットにアクセスする人も増え、携帯利用者の4人に1人の割合で、特に25歳以下の男性に多いそうです。閲覧しているのは、天気予報(!?)、スポーツ、ニュースなどだそうです。でも、そんなに天気が気になるのでしょうか。予報はよく外れますし、雨が降っても平気で、傘も差さず濡れて歩いている人が多いのですが・・・スポーツというのは、分かりやすいですね。

フィガロ紙の記者が驚いたというのが、eコマースの浸透。ネット利用者の3人に2人がネット上での購入・支払いを利用したことがあるそうです。過去1ヶ月という限られた期間内でも35.1%が利用したそうで、前年より3.3%増えているそうです。確かに、旅行の際にSNCF(フランス国鉄)や航空会社のチケット予約・支払いをネット上で行なうことも多くなっていますし、ホテルの予約、文化イベントのチケット、そしてファッション・グッズの購入などネットを利用することが増えています。3年程前には、店頭での支払いもカードですると引き落としの間違いがよくあるから現金払いの方がいいというアドバイスを貰ったりしたものですが、隔世の感ですね。ネット上での支払いすら増えているようで、店頭でのカードでの支払いは全くの日常茶飯事。

もうひとつの新しい動きは、ビデオや音楽のコンテンツをネット上で入手する人がふえていること。1,300万人が利用しているそうで、前年比40%という急増ぶりです。“You Tube”と“Daily Motion”が人気で、過去1ヶ月に少なくともいずれかひとつを利用したことのある人は、1,090万人に上るそうです。また、“Facebook”利用者も昨年12月一月のみで190万人になっているそうですが、これは、イギリスの890万人よりはかなり少ないようです。

通信関係では、そのインフラも利用状況も、いわゆる先進国の中では遅れているほうのフランスですが、最近は一気に改善されてきているようです。しかし、用語的には先行する英語が一般的になっているため、フランス語としての新語を工夫はしていますが、それでも英語そのままのものがにさらに増えてようですね。もちろん、カタカタのある日本語は、今更言うまでもないことですが・・・


世間をお騒がせし・・・

2008-03-20 04:55:05 | マスコミ報道
・・・申し訳ありません。このように、よく罪を犯した人や関係者、あるいは企業のトップが謝っていますね。特に、ここ数年、決まり文句になっているような気さえします。でも、お騒がせするって、どういうことで、どうしていけないことなのでしょうか。日本社会では、取り敢えず謝らないと、社会的バッシングを受けてしまうので、何はさておき謝ることが大切なのですが、それにしても謝罪の言葉が、犯罪の種類に関係なく、一様に「世間をお騒がせして申し訳ありません」・・・実際、世間は、騒がされたと不愉快に思っているのでしょうか。そう思って立腹の人もいるのでしょうが、マスコミをはじめ多くの人は、かっこうの話題ができて、表面上は怒っていても、心のどこかでは楽しんでいるのではないでしょうか。正直なところ、そう思いませんか。騒ぐだけ騒いで、飽きると、もはや話題にもしなくなる。ギョウザ事件も、もうニュースバリューがなくなってきたのか、ネット上のニュース欄ではあまり見かけなくなりました。最終的に、うやむやでおしまいでしょうか。今は、日銀総裁選び・・・

・・・こんなことを勝手に考えてしまったのは、あのジェローム・ケルヴィエル被告が、18日に保釈されたからです。覚えていますが、ジェローム・ケルヴィエル。あのソシエテ・ジェネラルの50億ユーロ損失事件(こちらでは“l'affaire Kerviel”ケルヴィエル事件と呼ばれています)。


弁護士とともに、かつての悪名高きサンテ刑務所を後にするケルヴィエル氏です。19日付のフィガロ紙のトップ記事。事件発覚直後は、自殺したのではなどという噂も流れましたが、どうして、どうして、そんな柔じゃなさそうです。門の外で待ち構えるマスコミに、笑顔で手を振って・・・でも、はじめからこうだったのではなく、門を出たときはうつむき加減だったそうです。しかし、弁護士のアドヴァイスで顔を上げ、手を振って挨拶をしたそうです。でも、この写真や、18日夜に流されたニュース映像では、全く悪びれたところがないように見えてしまいます。日本だったら、世間様はどう反応するでしょうか。ワイドショーではどんなコメントが聞けるでしょうか。

あくまで仕事を遂行した結果の損失である、という主張なのでしょうね。実際、個人的利益にはなっていないようですし。そしてこうした意見は、弁護士と本人だけではなく、家族・親戚や地元の人々の間にも広まっているようです。塀の外に出たという連絡を受けて、母親はさすがに気恥ずかしそうに、保釈されてほっとした、と言っているようですが、叔母さんは、仕事をしただけで何も悪いことはしていない、それが証拠に自由の身になったじゃないか。周囲の人たちも、多くが無実だと言っているそうです。

凶悪犯とかではなく、金融犯罪。それでも、日本では、取り敢えず、世間をお騒がせして・・・と謝るところですが、こちらでは堂々と無実だと言い切っているようです。ま~、個性を大切にする個人主義のお国柄、そもそも世間様がいないのかもしれないですね。でも、何事につけ自己主張をしないといけないというのは、それはそれで大変なのでしょうが、世間様に後ろ指を指されないようにと生きていくのも楽じゃないですよね。どちらにしろ、人生楽じゃない。


楽じゃない人生で、騒ぎを利用してひと儲け、という人たちも、確かにいるようです。同じフィガロ紙ですが、まずはTシャツ。ジェローム・ケルヴィエルは天才だ! 『煙と消えた50億ユーロ』というタイトルの本がフランスでは出版されたようですし、これ以外にも数冊、関連本が準備中だそうです。もちろん、一番盛り上がっているのはネット上で、ケルヴィエル氏をヒーロー扱いしたシリーズ物が作られたり、地球上の50億人がひとり1ユーロずつ提供すれば、ケルヴィエル氏のキャリアが救われる、とユーモアでカンパを募るサイトも現れたり・・・そして、忘れてはいけないのが、パパラッチたち。この日も記者とカメラマン合わせて50人ほどが寒さの中、見逃せない瞬間を長時間待っていたそうです。微笑みながら手を振ったケルヴィエル氏は、弁護士とともにクルマの中へ。もちろん、パパラッチはバイクで追いかける。しかし、きちんと警察が間に入って、ケルヴィエル氏は何処へともなく消えていったそうです。

司法当局(パリ控訴院:日本の高裁にあたるようです)が保釈を認めたのは、今後証拠隠滅を図られる恐れがまずない、というほどコンピューターや携帯の通信記録も含め、十分な証拠が集まったからだそうです。しかし、保釈されたからといって、ケルヴィエル氏、全く自由の身になったわけではなく、イル・ド・フランス地方(パリとその近郊)から出る場合は、司法当局の書面による許可を得ないといけないそうですし、週に1回は警察に出頭し所在確認をしなくてはいけない。また、事件の関係者に会ってはいけない(リストができているそうです)。株の売買など事件に関連することは行なってはいけない・・・いろいろ条件が付けられているようです。それでも、やはり自由は嬉しい。ゆっくり休みながら、今後の対応などを考えていくそうです。

そして、当然のことながら、紙面のどこにも、世間をお騒がせして、という表現はありませんでした。「世間をお騒がせして申し訳ありません」・・・この表現、外国の人にはいったいどう説明すればいいものやら。


巨大なバゲットを、見上げよう!

2008-03-15 01:52:39 | マスコミ報道
フランスパンの代名詞のような、バゲット。その巨大なものを、もしかすると、見ることが出来るかもしれません! どれほど巨大かというと、297m・・・297メートルです! ミリメートルやセンチメートルではありません。297メートル! そんなバゲットをどうやって作るのでしょう。


(12日のメトロ紙です)

ラ・デファンス地区のさらなる開発のシンボルとして、新たな高層タワーを建設しようという計画があるそうです。そのデザインコンペの最終選考に残った5案が発表になりました。トロフィーのようなもの、一皮剥くと素敵なビルが見えるといったアイディアがありますが、その中でもやはり目を引くのが、右から二番目、バゲット形のデザインです。どう見てもバゲットにしか見えませんよね。カタチも、色も。良くぞ最終選考に残ったという気がしますが、そのコンセプトなどが13日のフィガロ紙に、紹介されていました。


建築家の名は、ノーマン・フォスター(Norman Foster)。1935年生まれのイギリス人で、世界的な仕事を数多く手がけているそうで、最近では北京の新国際空港を手がけたそうです。インタビューに答えながら、いろいろ語っています。

まずは、バゲット、いや失礼、このラ・デファンス新タワーのコンセプトは・・・立地が歴史のある街と新しい街の交差するところだけに、伝統的な意匠とダイナミズムを両立させ、また、らせん状に伸びる段差部分のお陰で全フロアに自然の陽光を取り入れることが可能になっている。つまり、自然も大切にした設計思想になっているそうです。

このタワーが完成すると、8万平方メートルのオフィスと16階のホテルになるそうです。オフィスだけでは、昼だけの街になってしまう。ホテルと共存することによって、昼夜を分かず、人のぬくもりのある街になるそうです。でも、こうしたオフィスとホテルの共存した建物って、多くの国にすでにありますよね。フォスター氏自身、他の国でも建設済みだそうですが、わざわざ記事の中で紹介しているということは、フランス人記者には珍しかったのかもしれないですね。

ラ・デファンス地区に関しては、ここは先端的のビジネス街として開発され、世界的に有名で、ここをモデルにした街が世界でたくさん出来ている。しかし、それがゆえに、後から出来た開発地区は、より先進的になり、結果的にラ・デファンス地区はもはや後塵を拝するカタチになってしまっている。かつてフランスは多くの国々にとって、憧れ、羨望の的だった。それをもう一度取り戻すチャンスとしたい、つまりルネッサンス、その起爆剤にラ・デファンス地区の再開発がなってほしいと述べています。ということは、意地悪な見方かもしれませんが、フランスの栄光、今いずこ、とこのイギリス人建築家は言っているのかもしれません。何しろ、イギリスの再開発の成功例をしっかり紹介していますから。

そして、ビジネスだけの街から、商業施設もあれば娯楽施設もあり、住居施設もある、そうしたミックスされた街になるべきではないだろうかと言っています。もしかして、その人間の街の象徴が、バゲット?

そして何よりも、公共交通機関の整備が欠かせないとアドヴァイスしています。パリは素晴らしい街だが、郊外には問題を抱えた街が多い。それは、各エリアが孤立しているから。連携を取った開発にはなっていず、それぞれが勝手に作り出された街で、しかも公共交通機関さえ満足には整備されていない。フランスには世界に冠するTGVがあるのだから、パリ郊外の公共交通事情を香港レベルまで改善すべきだ・・・パリ郊外の公共交通機関の整備、この建築家氏にはかなり遅れていると見えているようです。建築家は、ビルひとつ建てれば良いというのではなく、都市開発、街づくりに関する視点もしっかり持っているようですね。

そして、個人的には、何よりも、この大きなバゲットをラ・デファンス地区で見てみたい! 設計案の最終決定は4月末に発表になるそうです。どの案になるか、楽しみ・・・ぜひ、バゲット案に!

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引っ張りだこ。しかして、宴の後は・・・

2008-03-13 02:36:56 | マスコミ報道
あちこちから引く手あまた。まるで自分を中心に地球が回っているような、そんな感覚に襲われる・・・スターと呼ばれ、スポットライトを急に浴びるようになると、そんな感じにとらわれるという話を、どこかで読んだか聞いた記憶があります。スターでなくても、仕事上でも、仲間内でも、人気者は引っ張りだこ。でも、それが一生続くという人は少ないのではないでしょうか。だからこそ、人生は糾える縄の如しとか、勝って兜の緒を締めよとか、人間万事塞翁が馬とか、いろいろ言われるわけですよね。大変なときもありますが、いつかは待てば海路の日和あり。そしてその逆も・・・

今、フランス政界で引っ張りだこなのは、中道政党のMoDem(民主現代党)。先の統一地方選挙第1回投票の結果は、すでにご存知のとおり、社会党が伸張したものの、政権与党のUMP(国民運動連合)も事前に言われていたほどには退潮しなかった。その結果、社会党とUMPの得票率が拮抗したままで16日の第2回投票へ、という選挙区が多くなっています。そこで、キャスティング・ボードを握るのが、左右両党に挟まれながら、それなりの健闘を見せた中道のMoDem。社会党はさっそく緑の党も含めて左派陣営と選挙協力を締結し、あとはMoDem。そこで左右両党からの選挙協力依頼が殺到。さまに、引っ張りだこの状態だそうです。党首は去年の大統領選挙で大健闘したバイルー氏。そこで・・・


11日のフィガロ紙ですが、右を見れば(向かっては左ですが)UMPのフィヨン首相、左を見れば社会党のオランド第一書記。いかに独自のポジションを保ちながら、党にとって有利な選択をするか・・・思案のしどころですね。


同じく11日のメトロ紙です。「みんなが言う、I love Bayrou」・・・左右陣営がともに秋波を送っているわけですね。どのような条件提示があるのでしょうか。


そして、11日のディレクト・マタン・プリュス紙。「MoDemが勝敗の中心に」・・・バイルー党首、思案顔ですが、にんまり。思わず笑みがこぼれてしまいます。

こうして、今や引っ張りだこのMoDem。しかし、この人気、いつまで続くでしょうか。そんな心配も人事ながらしてしまいますが、やはり政治の世界は魑魅魍魎(難しい漢字ですね、とても書けません)。日本でも、政治の世界は、一寸先は闇、と言いますよね。左右どちらの党と提携するか、選挙区ごとに対応が異なっているそうです。そこで・・・


12日のフィガロ紙です。左派と選挙協力した選挙区(一覧表のこれは向かって左)、右派と協力することにした選挙区(中央)、どことも提携せず最後まで独自の候補で戦うことにした選挙区(右)。見事に三つに分かれてしまいました。いくら個性を大切にする、あるいは個人主義の国とはいえ、ひとつの党の対応がこうも分かれてしまうと、党としての体裁をなさないのではないか・・・素人にもこう見えてしまいます。

そこで、この記事も、特に社会党と組んだマルセイユに見られるように、内部崩壊する可能性があるのではないかと言っています。マルセイユでは、MoDem支持者の三分の二は右派陣営を支持しており、左派陣営支持は三分の一に過ぎないと長年中道陣営を引っ張って来た重鎮も言っており、分裂の危機さえ指摘されています。

第2回投票を経て、中道政党のMoDemはどこへ行くのでしょうか。中道といっても、完全に中央ライン上に立っている人は少ないのではないでしょうか。左右どちらかに軸足を少し移している人もいるでしょう。それをひとつに束ねるのは至難の業のようにも思えます。完全に右なら右、左なら左と、はっきりしている方がまとめやすいのでしょうね。それに、日本の自民党にあるように、「権力」という明確な共通価値観があれば、何か問題があっても一つにまとまりやすいのでしょうが、日本の民主党を例に出すまでもなく、共通の価値が脆弱な場合、ひとたび何かあると内部崩壊しかねない、ということになるのかもしれないですね。

さて、宴の後のMoDem。民主党の明日を見るような気分で動向を見ていたいと思っています。

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終の棲家はどこで、そして誰と・・・

2008-03-12 02:48:59 | マスコミ報道
高齢化社会、増え続ける高齢者・・・長寿大国・日本では、高齢者をめぐる話題がよく登場します。高齢者の生きがい、高齢者へのサポート、そして高齢者をターゲットとしたビジネス、時には高齢者を狙った犯罪・・・

ベビー・ブーマー世代は日本だけでなく、多くの国共通の世代構成ですので、ここフランスでも当然増える高齢者への対策が話題になります。


9-10日付のル・モンド紙です。「老後を自宅で、2030年」・・・新しい技術開発のお陰で、さまざまなサポート体制ができつつあります。目覚めると、それを感知したセンサーがコーヒーを沸かし、カーテンを開け、インターネットに新聞情報をダウンロードしておく。そして、テレビ電話で離れて暮らす家族とあいさつを。また、手首にはめたブレスレットのようなセンサーが、脈拍数や血圧などの健康情報を、適宜医療センターに自動送信する。薬は決められたものが自動的にテーブルに並び、散歩するにもロボットが同伴し、事故などを防いでくれる。そして、万一体調が悪いとか、倒れたなどという場合には、すぐサポートが駆けつけてくれる・・・

夢物語のようですが、徐々に実現されつつあるそうです。もちろん、こうした技術は日本が進んでいますから、先行しているかもしれないですね。こうした技術革新とサポートで、安心の老後を・・・しかし残念ながらそうはいかないのが、人間の複雑なところ、あるいは、面倒なところ。

何が問題になるかというと、孤独感。自動化、ロボットの手助けなどにより、お年寄りがひとりでも生活できるようになる。でも、ひとりは、寂しい。これが、大きな問題なんだそうです。そこで、今フランスで考えられているのは・・・

お年寄りの集合住宅を作る。集会場や医療センターを設け、お年寄りたちが触れ合えるようにする。また、同じような価値観、趣味を持つ人同士が隣り合わせで住めるようにする。これならば、孤独感も癒せるのではないか。アメリカでは、お年寄りの街、一戸建てを整然と並べた街を造ったが、一戸建てに住む孤独感からうまくいっていない!

ということで、この記事はアメリカの例としてアリゾナ州フェニックス郊外にできているサン・シティを挙げています。実はここを訪問したことがあります。確かに、庭付きの一戸建てが碁盤の目のような街区に並び、そこをお年寄りたちがゴルフ場で見かけるカートで移動しています。一年中ほとんど快晴で、気温も高め。北部の人たちにとっては、老後住むには格好の場所。でも、確かに問題がある。それは、一戸建てだからというわけではない。フランスの都市部に住んで、一生集合住宅(アパルトマンというとカッコいいですが)に暮らす人にとっては一戸建てはよけい寂しいかもしれませんが、一戸建てに慣れている人にはそれ自体が問題ではない。何が問題かというと・・・年寄りばかりが住人だと、話題は当然、何丁目の誰さんが先週亡くなった、今度は何丁目の誰さんが危ないらしい・・・こうした話題ばかりになってしまうそうです。これは、一戸建てだろうが、集合住宅だろうが同じなのではないでしょうか。何階の誰さんが亡くなった、次は何階の誰さんらしい・・・

そこで、アメリカではこうした街に若い人にも住んでもらえるよう、企業誘致をしたりしているそうです。一方、フランスの場合、集合住宅が街の中心にできれば、外に出ればいろいろな刺激もあり、話題も広がるでしょうから、問題は多少解決されるのかもしれないですね。こうしたお年寄りの集合住宅、すでに建設が始まっていて、その第1号がこの5月にAigues-Vivesという街に誕生するそうです。住人の反応やいかに。

また外出時の不便さを解消する事も大切ですね。何しろ足腰も弱るでしょうし、階段ばかりの街では、出歩くのも億劫になってしまう。今のパリは、何かと不便ですよね。しかしフランスでは、幸いなことに、2005年2月に成立した条例で、2015年までに身障者にとって住みよい街づくりを各自治体が行なうことになっているそうで、その施策はお年寄りにとっても嬉しいサポートになりそうです。

集合住宅に住み、同じ世代の人々と暮らす。医療を中心にサポート体制も整う。そして、できれば周囲には世代を超えて人々が暮らす活気ある街並みがある・・・キーワードは、「連帯」(Solidarite)だそうです。

2040年にはフランス国内の75歳以上のお年寄りが1,000万人になり、その内200万人がアルツハイマーを患っているだろうと予測されているそうです。人生の最終章をどこでどのように書くのか。また、今後は男性の寿命が延びると予想されていて、カップルでいる期間が良かれ悪しかれ長くなる。終焉は、誰とどこで・・・その社会的サポートは・・・そして、日本ではどういう社会が待っているのでしょうか・・・

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両雄、並び立つかどうか・・・

2008-03-07 02:12:42 | マスコミ報道
またまた、今日も、『広辞苑』からのスタートです。しつこくて、申し訳ありません。「両雄並び立たず」・・・英雄は二人両立することはできず、必ず争って、どちらかが倒れる。昔からこう言われているわけで、真実なのかもしれないですね。複数の権力者が協力し合って、上手な舵取りをする、というのは、難しいのでしょうか。


今、フランスでその関係が微妙になってきていると報道されているのが、サルコジ大統領とフィヨン首相。写真は3日付のフィガロ紙です。

大統領選挙をともに戦い、勝利して、大統領と首相に。報道陣を前に一緒にジョギングをし、かつてなかったようなチームワークで改革を成し遂げると言っていたのですが・・・当初は、サルコジ大統領の人気がものすごく、その八面六臂の活躍が毎日のニュースで踊っていました。一方、フィヨン首相は、地味で、全く目立たず、消えてしまった首相などと言われたものです。マスコミにとっては、サルコジ大統領のほうが絵になったのでしょうね。扱いに大きな差がありました。


(当時はル・モンド紙にもこのような風刺漫画が)

国民の支持率も、ご祝儀相場とはいえ、サルコジ大統領の支持率はかつてないほど高く、それに比べるとフィヨン首相の支持率は可もなく不可もなく。

しかし、分からないものですね、離婚騒動、結婚騒動をサルコジ大統領が演じている内に、支持率は低下。今でも下がり続けています。『パリ・マッチ』のデータでは、また5ポイント下がって、41%に。別のデータでは、30%台というものも。専門家の中には、こうした支持率低下は、サルコジ大統領のプライベート過剰露出などへの反感が出ているので、その政策自体が問題になっているわけではない、その証拠に政策遂行者のフィヨン首相の支持率は上がっている、という人もいます。

確かに、就任後漸減していたフィヨン首相の支持率は、サルコジ大統領の支持率が急落するのと入れ替わるように上昇へ。『パリ・マッチ』のデータでは、また9ポイント上昇して66%の支持率だそうです。両者の間には、ついに25%もの開きが。

こうした支持率、つまり人気の逆転が両者の間に微妙な感情を生み出しているのか、しっくり行っていないようだという声が随所から漏れてきているようです。最近二人だけ会ったのはいつだっただろうか、思い出せない、などという人もいたり。実際は、閣議の直前に二人きりで会ってはいるそうなのですが、ごく短い時間だそうです。

1月下旬、初めてフィヨン首相の支持率がサルコジ大統領のそれを上回った直後のフィガロ紙(1月21日付)ですが、大統領の影からはっきり現れてきた首相といった写真ですね。そして今では、3日付の記事の写真のように自信をもった首相といった雰囲気に変わってきています。

大統領と首相・・・首相の任命権は大統領にあるわけですから、気に入らない、あるいは自分にとって危険な存在になれば首を挿げ替えることもできるわけですね。実際、第5共和制でも、ポンピドゥ大統領とシャバン=デルマス首相、ミッテラン大統領とロカール首相という、協力関係というよりライバル関係だった組合せもありました。しかし、フィヨン首相はまだサルコジ大統領のライバルまではいっていないようです。サルコジ大統領へのガッカリ感がフィヨン首相の支持率アップになっているのかもしれません。でも、鉄は熱いうちに打てというか、危険の芽は早いうちに摘めというか、今月の統一地方選挙の後で内閣改造を行いその際首相交代も、という憶測も流れているとか。その首相候補としてすでに数人の名前が取り沙汰されているようです。しかし、6日付のフィガロ紙に出ていたインタビューで、サルコジ大統領は首相交代は考えていないし内閣改造も小幅だと言っています。さて、与党のUMP(国民運動連合)不利といわれる統一地方選挙後、フランスの政局は、どう動くでしょうか。

そして、もうひと組の両雄は・・・

同じく4日付のフィガロ紙です。ロシア大統領になったメドベージェフ氏。しかし、首相になるプーチン現大統領の傀儡、あるいは操り人形とも言われていますが、いざ大統領の座について、権力基盤が固まるとどうでしょうか。憲法が大統領に保障する権限はしっかり維持し、完全な大統領として職務を遂行すると言っているようですが、世評に対して、心配するな、しっかりやるからというニュアンスで言っているだけなのでしょうか。それとも、心のどこかに期するものがあるのでしょうか。自分を指名してくれた前任者を否定する、あるいは裏切るという伝統を持っていると言わる体制だけに、どうなるでしょうか。半年後には両者の力関係がはっきりする、という専門家もいるようですが・・・

権力の座にすわると、その座を守るために、対抗馬になりそうな人物は切ってしまうのでしょうか。権力の座が目の前に見えてくると、どんなことをしてでも掴みたくなるのでしょうか。権力の魔力・・・やはり、両雄並び立たず。また二人が上下で権力の座にいることも難しいようですね。お互いが疑心暗鬼になってしまうのでしょうか。権力、そこにはいつも人間ドラマがあるようです。

そして、われらが日本。すでに長期に亘って、首相を支持する理由が、ほかに相応しい人がいないから・・・両雄どころか、一人の傑出した人物もいない。平和な証拠なのかもしれないですが、これはこれで寂しいものがありますね。

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大学ランキング・・・良くするには基準を変える!?

2008-03-01 02:09:41 | マスコミ報道
“Academic Ranking of World Universities”って、ご存知ですか。私ははじめて知ったのですが、世界の大学を専門分野ごとにランキングしたもので、外国の大学や大学院を目指す人にとっては、いい判断材料になっているそうです。その2008年版が、2月27日のフィガロ紙に紹介されていました。


このランキング、調査して発表しているのは上海の交通大学。交通といっても運輸といった意味ではなく、コミュニケーションという意味なのですが、この大学が5分野(情報工学、数学科学、社会科学、医学、生命地球科学)ごとに世界の大学トップ100を発表しているそうです。その基準は、現在、あるいは過去に勤務した教員の中にノーベル賞やそれに匹敵するフィールズ賞などの受賞者が何人いるか、教員や研究者の研究成果がどうなっているかなどだそうで、学会誌などに発表された論文の数や内容も判断基準に入っているそうです。

さて、2008年版の結果を紹介する記事の見出しは・・・「大学、その世界的なランク付けはフランスの遅れを示している」、つまり、フランスの大学は良い評価を得られなかった。しかも、これは何も2008年だけに限ったことではなく、以前から同じ傾向にあるそうです。

5分野それぞれ100位までですから延べ500の大学がランクインしているのですが、その中にフランスの大学はわずか9校。生命地球科学でパリ第6大学が76位、情報工学でボルドー第1大学とパリ第6大学がともに51位、数学科学でパリ第11大学が25位、パリ第6大学が31位、グランゼコールの高等師範学校が39位、ストラスブール第1大学が52位、パリ第7大学が77位、医学ではパリ第5大学が76位、社会科学ではトップ100に一校も入っていない。

多くの分野で上位に顔を出している大学は、ハーバード、UCバークレー、マサチューセッツ工科大学、スタンフォード、コロンビアといったアメリカの有名校、そしてヨーロッパの大学では、オックスフォードとケンブリッジ。アングロ・サクソンは強し、ですね。

国別のランキングでは、従って、アメリカが308校でダントツ、全体の60%ほどを占めていて、続いてイギリス。その後にカナダ、ドイツ、日本。日本は19校がランクインしているそうで5位。そして9校のフランスは11位。ちなみに9位が中国とイスラエルの10校。

では、こうした状況をフランスの高等教育担当者たちはどう見ているのでしょうか・・・理由を外的なものと内的なものに分けて説明しています。外的なものは・・・交通大学が評価の際に採用している基準がおかしい。新しい理論の萌芽を見出した研究などを含んでいない、つまり詳細な調査に欠けている。また、発表論文も英語のものしか調べていないので、フランス人研究者には不利だ。一方、内的理由としては、フランスの高等教育機関は、数多くの大学と大学校に分けられているので、一校ごとでは評価の数字が上がらない。グループ化して、再構築する必要がある。また研究者たちも大学への帰属意識が薄いのか(自己主張が強すぎるのでは・・・)論文に自分の名前は書くが勤務先の大学名を書かない人が結構いる。この点も不利だ。

では、フランスとしては、どう対応すべきか・・・もちろん、大学・大学校の再編はここ数年いわれていることで、その実行を急ぐこと、そしてもうひとつは、ヨーロッパの大学を対象とした新たなランキングを作成すること。いくらフランスがその基準がおかしいとかいったところで、この交通大学の発表するランキングはすでに世界的に認知されてしまってようなので、負け犬の遠吠えにしか聞こえない。そこで、フランスにとって好都合な基準で新たなランキングを、ヨーロッパの大学だけを対象に始める。今年7月からフランスがEUの議長国になるのはかっこうのタイミングで、その間にぜひ実現したいと、ぺクレス高等教育・研究大臣は言っているようです。

自助努力、自己改善・・・そうしたこと以上に評価基準を自分に都合の良いように変えてしまう! 同じようなこと、他の分野で思い当たることはないですか。例えば、スポーツ・・・柔道、水泳、フィギュアスケート、スキー・ジャンプ、バイアスロン・・・他にもきっとあったと思います。日本、あるいは欧米以外の国の選手が強くなるとルール改正を行い、蹴落としてしまう。そのために、各種スポーツ団体の役員の座を射止めておいて、自国の都合の良いように運営する。これもひとつのやり方。立派な処世術です。何も額に汗してがむしゃらに頑張るだけが良いわけじゃない。政治力の行使も立派な生き方。陸続きで、さまざまな民族との競争、交渉を長年にわたって行なってきたヨーロッパ諸国には、こうした経験・ノウハウが蓄積されているのでしょうね。言葉のせいもありますが、こうしたキャリアが国際機関での欧米人の強さになっているのかもしれません。一方の日本は、交渉事とかは、言ってみればずるいこと。自らの技術を切磋琢磨し、実力で勝負する! しかし、やり方、ルールが変わってしまうとまた鍛錬のやり直し・・・百戦錬磨の欧米人からすれば、日本人など赤子の手をひねるようなのかもしれないですね。

それでも、日本のまっすぐなひたむきさ、一芸に、ひとつの技術に、ひとつの種目にかける情熱は素晴らしい。舞台裏の駆け引きよりも、たとえ負けたにせよ、その額の汗は美しい・・・そう思う私は島国の人間であって、ヨーロッパに生きるべき人間ではないようです。ヨーロッパに生きるなら、もっと、狡猾に!

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経済成長は鈍化、物価は上昇、さて、どうする?

2008-02-28 02:58:40 | マスコミ報道
物価、今、日本はどのような状況ですか。原油高、そして一次産品の価格上昇・・・世界的に消費者物価が上昇しているようですね。そこへもってきて、経済成長率の鈍化。多くの国々の今年の経済成長率が下方修正されています。こうした世界的な逆風からフランスも逃れるわけには行かないようで、経済成長の鈍化と物価上昇が同時進行しているようです。


22日のフィガロ紙です。先ごろ欧州委員会はユーロ圏の今年の経済成長率を昨年秋に出した2.2%から1.8%に引き下げましたが、フランスも1.7%へ。


このグラフが2000年からの成長率の推移を紹介しています(黒く見えるのがフランス、濃い青がユーロ圏平均、若干薄い青がドイツ、最も薄い青がイタリア)。ユーロ圏平均を上回ってきたフランスの成長率も、2006年から下回るようになっています。一方、ドイツは2006年だけ平均を上回っただけですし、イタリアは常に大きく下回っている。このグラフだけを見ると、フランスはドイツやイタリアよりはまし、満更でもないと思えてしまうのですが、それでも最近は平均以下。どこが成長しているのでしょうか。詳細は紹介されていないのですが、少なくとも2008年、フランス以上の成長が見込まれているのはイギリスだそうです。どうしてイギリスの成長率推移を出さないのか不思議ですね。自分の国より良いところは出したくないのでしょうか。客観的でないような気もしますが、資料不足なんて言うこともあるのでしょう、きっと。


一方の物価上昇(写真のグラフは、対前年での物価の推移、1992年から2007年、目盛りは0から3%までです)。特に石油関連と食品の価格上昇が家庭を直撃しているようです。フランスの物価は1年前と比べて2.8%上昇したそうで、この上昇率は、最近15年間で最も高い率だとか。食品は4.2%、石油関連商品にいたっては19.1%の値上がりだそうです。また、22日のメトロ紙によると、エネルギー関連費が12.3%、家賃やそこに含まれる水道・ごみ収集費が3.1%、衣類が0.5%、輸送通信費が0.2%値上がりしているとか。政府は企業、特に大手スーパーなどの流通に慎重な対応を呼びかけていますが、確かに物価上昇は日々の暮らしでも実感せざるを得ません。


例えば、こうした4個パックのヨーグルト、昨年までは1.98ユーロでしたが、今年から2.20ユーロへ。野菜も、乳製品も、10%程度の値上げ。こうした値上げに、CROUSの運営する学食でも、サラダの種類を減らしたり、盛り付けるフリット(フレンチ・フライ)の量を減らしたりといった自衛手段を講じているようですが、それでも追いつけないのか、基本料金はさすがにいじらず、余分に料理を取った際の追加料金を0.5ユーロから0.55ユーロにいつの間にか値上げしているようです。また、ガソリンの値上げ。走行距離を減らしているというドライバーもいますし、クルマの買い替えの際には今まで以上の小型車を、という人も増えているそうです。

政府にとって経済の難しい舵取りが要求される状態。一方、物価高に不満を高める国民。政府の掲げる購買力向上も、なかなか実現が難しくなっているようです。アメリカ発の逆風もあり、運が悪かったという面もありますが、フランスはこの難局をどう切り抜けますか。経済省は2.0%前後の成長率が見込めると、まだ強気を崩していないようですが・・・国や企業のトップには優秀な人材をそろえるフランス。どう対応するのか、今まで以上に目が離せないようです・・・ところで、日本政府は、どう対応しているのでしょうか。まさか、他人事のような言い方に終始しているなんていう事はないですよね―――。

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