フランスの2006年をLe Figaro(フィガロ紙)とともに振り返るシリーズ、第2回のテーマは「外交」。外交上手のフランス、その現状と課題をフランス人はどう捉えているのでしょうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/18/60e3149c605a686e74b4154fbc4511aa.jpg)
見出しは、「強大国ではないが、フランスはノンといえる力を駆使している」。そうです、アメリカの一極支配に対し、面と向かって「ノン」を言えるのは今やフランスくらいかもしれません。何しろ、イラク戦争に対し国連の場でもはっきりと反対意見を陳述。その巧みな演説と優雅な容貌で当時のド=ヴィルパン外相(現首相)に日本女性の間で人気が高まりしたね。このイラク戦争以外にも、地球温暖化、文化の多様性など、多くの場面でアメリカとは是々非々で論じ合っています。その分、アメリカとの関係は他の同盟国ほどにはスムーズには行っていませんが。
フランスは常任理事国として国連を中心とした外交を展開していますが、実際、国連が平和維持活動を行っている18の地域のうち13地域での展開に参加。主張するだけでなく、人的貢献もしています。
フランスの外交を支えるネットワークは、158の大使館、95の領事館、144の文化センターからなっており、アメリカに次ぐ充実ぶりだそうです。しかし、ここ5年で15%予算をカットされ、その影響で人員も10年で11%も削減されているそうです。これでは情報戦にしても遅れをとってしまうということで、2007年には予算が増加され、今後増加傾向が続く予定だそうです。
このネットワークにしろ、政府援助にしろ、地域的には偏りがあります。旧植民地という関係からどうしてもアフリカに偏ってしまうようで、
・フランスの援助先
サハラ以南のアフリカ:54.0%
中近東 :10.8%
北アフリカ : 9.9%
極東 : 4.5%
ヨーロッパ : 3.8%
という割合になっており、2005年の総額では81億ユーロ(約1兆2,150億円)だったそうです。しかし、ブラジル、中国、南アフリカといった新興国との関係を重視していくためには、援助先のバランスも変えていく必要がありそうです。
また、フランスの外交と言えば、「フランス語の普及」も重要な要素。フランス語を話す人の数は増えてきているようです。
・フランコフォン(フランス語を話す人)の数
1985年:1億 600万人
1989年:1億5,900万人
1998年:1億7,300万人
2005年:1億7,500万人
・フランコフォンの地域別割合
アフリカ :46.3%
ヨーロッパ:44.0%
アメリカ : 7.6%
アジア : 1.8%
・フランコフォンの多い国(フランス以外)
アルジェリア :1,600万人
コートジボワール:1,200万人
カナダ : 920万人
ベルギー : 430万人
モロッコ : 400万人
フランス語の普及により、フランスに好感を持ってくれる人を増やすことも重要な戦略。今130の国に400のフランスの学校を設置しているそうですが、これを拡充する計画だそうです。そういえば、インターナショナル・スクールに対抗して、地元の生徒向けにフランス語で授業を行う高校を各国につくろうということになり、その第一陣のひとつに東京が選ばれましたが、順調に進んでいるのでしょうか。
さて、フランス外交、問題がないわけではありません。その際たるものが、EU内での発言力の弱体化。EU憲法批准に向けた国民投票で、ノン。ヨーロッパの統合に背を向けてしまいました。この結果を危惧する声は当初からありましたが、実際影響が出ているそうです。フランスの影響力・発言力は今やイタリア並みで、ドイツからは遙か後方に置き去りにされてしまった、という声もあります。EUの各機関での人材登用に関しても、金融・司法のトップの座はフランス人が握っていますが、それ以外のポストではフランス人が登用されず、ドイツ・イギリス・アイルランドから採用されている。こうした事情を知ってか知らずか、ブリュッセルのEU本部へ行くフランスの政治家・官僚たちは以前と同じように横柄な態度を取り続けていて、顰蹙をかっているそうです。EU本部で出された書類に占めるフランス語の文書の割合も、こうした動きに比例するかのように、1997年の40%から2006年には14%に激減しています。英語の文書がいまや72%を占めているそうです。グローバリゼーションとEUの統合に背を向けるフランス。そのカウンターパートとしてどのような未来図を提示するのか。あるいは他の国々に歩調を合わせるのか、大統領選挙の結果にいっそうの注目が集まっているそうです。
アフリカ数カ国での危機、パレスチナ、核拡散・・・多くの解決すべき外交上の問題があります。アメリカとの関係もどうするのか。中国の積極的なアフリカ外交に見られるように、いわゆる南・南の協力関係も始まっている中で、どうやってフランスのプレゼンスを保っていくのか。フランス外交、そして、新しい大統領とその内閣の腕の見せ所です。
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見出しは、「強大国ではないが、フランスはノンといえる力を駆使している」。そうです、アメリカの一極支配に対し、面と向かって「ノン」を言えるのは今やフランスくらいかもしれません。何しろ、イラク戦争に対し国連の場でもはっきりと反対意見を陳述。その巧みな演説と優雅な容貌で当時のド=ヴィルパン外相(現首相)に日本女性の間で人気が高まりしたね。このイラク戦争以外にも、地球温暖化、文化の多様性など、多くの場面でアメリカとは是々非々で論じ合っています。その分、アメリカとの関係は他の同盟国ほどにはスムーズには行っていませんが。
フランスは常任理事国として国連を中心とした外交を展開していますが、実際、国連が平和維持活動を行っている18の地域のうち13地域での展開に参加。主張するだけでなく、人的貢献もしています。
フランスの外交を支えるネットワークは、158の大使館、95の領事館、144の文化センターからなっており、アメリカに次ぐ充実ぶりだそうです。しかし、ここ5年で15%予算をカットされ、その影響で人員も10年で11%も削減されているそうです。これでは情報戦にしても遅れをとってしまうということで、2007年には予算が増加され、今後増加傾向が続く予定だそうです。
このネットワークにしろ、政府援助にしろ、地域的には偏りがあります。旧植民地という関係からどうしてもアフリカに偏ってしまうようで、
・フランスの援助先
サハラ以南のアフリカ:54.0%
中近東 :10.8%
北アフリカ : 9.9%
極東 : 4.5%
ヨーロッパ : 3.8%
という割合になっており、2005年の総額では81億ユーロ(約1兆2,150億円)だったそうです。しかし、ブラジル、中国、南アフリカといった新興国との関係を重視していくためには、援助先のバランスも変えていく必要がありそうです。
また、フランスの外交と言えば、「フランス語の普及」も重要な要素。フランス語を話す人の数は増えてきているようです。
・フランコフォン(フランス語を話す人)の数
1985年:1億 600万人
1989年:1億5,900万人
1998年:1億7,300万人
2005年:1億7,500万人
・フランコフォンの地域別割合
アフリカ :46.3%
ヨーロッパ:44.0%
アメリカ : 7.6%
アジア : 1.8%
・フランコフォンの多い国(フランス以外)
アルジェリア :1,600万人
コートジボワール:1,200万人
カナダ : 920万人
ベルギー : 430万人
モロッコ : 400万人
フランス語の普及により、フランスに好感を持ってくれる人を増やすことも重要な戦略。今130の国に400のフランスの学校を設置しているそうですが、これを拡充する計画だそうです。そういえば、インターナショナル・スクールに対抗して、地元の生徒向けにフランス語で授業を行う高校を各国につくろうということになり、その第一陣のひとつに東京が選ばれましたが、順調に進んでいるのでしょうか。
さて、フランス外交、問題がないわけではありません。その際たるものが、EU内での発言力の弱体化。EU憲法批准に向けた国民投票で、ノン。ヨーロッパの統合に背を向けてしまいました。この結果を危惧する声は当初からありましたが、実際影響が出ているそうです。フランスの影響力・発言力は今やイタリア並みで、ドイツからは遙か後方に置き去りにされてしまった、という声もあります。EUの各機関での人材登用に関しても、金融・司法のトップの座はフランス人が握っていますが、それ以外のポストではフランス人が登用されず、ドイツ・イギリス・アイルランドから採用されている。こうした事情を知ってか知らずか、ブリュッセルのEU本部へ行くフランスの政治家・官僚たちは以前と同じように横柄な態度を取り続けていて、顰蹙をかっているそうです。EU本部で出された書類に占めるフランス語の文書の割合も、こうした動きに比例するかのように、1997年の40%から2006年には14%に激減しています。英語の文書がいまや72%を占めているそうです。グローバリゼーションとEUの統合に背を向けるフランス。そのカウンターパートとしてどのような未来図を提示するのか。あるいは他の国々に歩調を合わせるのか、大統領選挙の結果にいっそうの注目が集まっているそうです。
アフリカ数カ国での危機、パレスチナ、核拡散・・・多くの解決すべき外交上の問題があります。アメリカとの関係もどうするのか。中国の積極的なアフリカ外交に見られるように、いわゆる南・南の協力関係も始まっている中で、どうやってフランスのプレゼンスを保っていくのか。フランス外交、そして、新しい大統領とその内閣の腕の見せ所です。
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