50歳のフランス滞在記

早期退職してパリへ。さまざまなフランス、そこに写る日本・・・日々新たな出会い。

フランス2006、総決算―②

2007-03-31 03:29:59 | マスコミ報道
フランスの2006年をLe Figaro(フィガロ紙)とともに振り返るシリーズ、第2回のテーマは「外交」。外交上手のフランス、その現状と課題をフランス人はどう捉えているのでしょうか。



見出しは、「強大国ではないが、フランスはノンといえる力を駆使している」。そうです、アメリカの一極支配に対し、面と向かって「ノン」を言えるのは今やフランスくらいかもしれません。何しろ、イラク戦争に対し国連の場でもはっきりと反対意見を陳述。その巧みな演説と優雅な容貌で当時のド=ヴィルパン外相(現首相)に日本女性の間で人気が高まりしたね。このイラク戦争以外にも、地球温暖化、文化の多様性など、多くの場面でアメリカとは是々非々で論じ合っています。その分、アメリカとの関係は他の同盟国ほどにはスムーズには行っていませんが。

フランスは常任理事国として国連を中心とした外交を展開していますが、実際、国連が平和維持活動を行っている18の地域のうち13地域での展開に参加。主張するだけでなく、人的貢献もしています。

フランスの外交を支えるネットワークは、158の大使館、95の領事館、144の文化センターからなっており、アメリカに次ぐ充実ぶりだそうです。しかし、ここ5年で15%予算をカットされ、その影響で人員も10年で11%も削減されているそうです。これでは情報戦にしても遅れをとってしまうということで、2007年には予算が増加され、今後増加傾向が続く予定だそうです。

このネットワークにしろ、政府援助にしろ、地域的には偏りがあります。旧植民地という関係からどうしてもアフリカに偏ってしまうようで、
・フランスの援助先
サハラ以南のアフリカ:54.0%
中近東       :10.8%
北アフリカ     : 9.9%
極東        : 4.5%
ヨーロッパ     : 3.8%
という割合になっており、2005年の総額では81億ユーロ(約1兆2,150億円)だったそうです。しかし、ブラジル、中国、南アフリカといった新興国との関係を重視していくためには、援助先のバランスも変えていく必要がありそうです。

また、フランスの外交と言えば、「フランス語の普及」も重要な要素。フランス語を話す人の数は増えてきているようです。
・フランコフォン(フランス語を話す人)の数
1985年:1億 600万人
1989年:1億5,900万人
1998年:1億7,300万人
2005年:1億7,500万人
・フランコフォンの地域別割合
アフリカ :46.3%
ヨーロッパ:44.0%
アメリカ : 7.6%
アジア  : 1.8%
・フランコフォンの多い国(フランス以外)
アルジェリア  :1,600万人
コートジボワール:1,200万人
カナダ     : 920万人
ベルギー    : 430万人
モロッコ    : 400万人
フランス語の普及により、フランスに好感を持ってくれる人を増やすことも重要な戦略。今130の国に400のフランスの学校を設置しているそうですが、これを拡充する計画だそうです。そういえば、インターナショナル・スクールに対抗して、地元の生徒向けにフランス語で授業を行う高校を各国につくろうということになり、その第一陣のひとつに東京が選ばれましたが、順調に進んでいるのでしょうか。

さて、フランス外交、問題がないわけではありません。その際たるものが、EU内での発言力の弱体化。EU憲法批准に向けた国民投票で、ノン。ヨーロッパの統合に背を向けてしまいました。この結果を危惧する声は当初からありましたが、実際影響が出ているそうです。フランスの影響力・発言力は今やイタリア並みで、ドイツからは遙か後方に置き去りにされてしまった、という声もあります。EUの各機関での人材登用に関しても、金融・司法のトップの座はフランス人が握っていますが、それ以外のポストではフランス人が登用されず、ドイツ・イギリス・アイルランドから採用されている。こうした事情を知ってか知らずか、ブリュッセルのEU本部へ行くフランスの政治家・官僚たちは以前と同じように横柄な態度を取り続けていて、顰蹙をかっているそうです。EU本部で出された書類に占めるフランス語の文書の割合も、こうした動きに比例するかのように、1997年の40%から2006年には14%に激減しています。英語の文書がいまや72%を占めているそうです。グローバリゼーションとEUの統合に背を向けるフランス。そのカウンターパートとしてどのような未来図を提示するのか。あるいは他の国々に歩調を合わせるのか、大統領選挙の結果にいっそうの注目が集まっているそうです。

アフリカ数カ国での危機、パレスチナ、核拡散・・・多くの解決すべき外交上の問題があります。アメリカとの関係もどうするのか。中国の積極的なアフリカ外交に見られるように、いわゆる南・南の協力関係も始まっている中で、どうやってフランスのプレゼンスを保っていくのか。フランス外交、そして、新しい大統領とその内閣の腕の見せ所です。

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狩猟民族。

2007-03-30 01:12:31 | 美術・音楽
フランス人がいかに狩猟好きかを物語る博物館があります。“Musee de la Chasse et de la Nature”(狩猟自然博物館)。おしゃれなマレ地区にあります。



名前に「自然」と付いていますが、自然保護の意味ではなく、征服すべき対象としての自然のことなのでしょう。征服した自然を示す多くの剥製が並んでいます。


獲物を仕留めるための銃もきれいに並べて展示してあります。殆ど19世紀のものですが、きちんと手入れされており、新品のようです。銃を磨き、手入れをしながら次の猟のことを思い描いていたのかもしれないですね。

大きな動物の剥製は単独で展示されています。



同時に展示されているタピスリーなども、図柄は動物のものです。


また、絵皿なども展示してあるのですが、それもモチーフは動物。仕留めた動物の肉を料理し、こうしたデザインの皿の上に盛って食事をしたのでしょうか。自然は征服すべき対象、動物は食べるためのもの、そう思っていないとちょっと出来ないことですね。共生という観念ではないようです。

この博物館の創設者は、フランソワ(1904-1973)・ジャクリーヌ(1913-1993)のソメール夫妻。仕留めた動物の剥製の収集家であるとともに、ビジネスで成功した資産を自然に関するメセナ活動に寄付したそうです。しかし、どんなメセナなのでしょうか・・・。

ソメール夫妻の狩猟小屋を再現しています。アフリカで大きな動物を、そしてフランス国内では野の動物(ジビエ)を撃っていたそうです。

また、1階では写真の展示も行われていました。もちろん、テーマは狩猟です。

きれいではありますが、こうした作品には賛成しかねます。

いってみれば、剥製博物館。入場料6ユーロ。それなのに来場者が多い。しかも家族連れが多い。親から子へ、子から孫へ・・・やはり狩猟好き、あるいは自然を征服した成果を見るのが大好きな人が多いのでしょう。狩猟民族の血は脈々と受け継がれているようです。

Musee de la Chasse et de la Nature
62 rue des Archives (Hotel de Mongelas:モンジュラス館)

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通勤地獄、始まる?

2007-03-29 03:16:34 | マスコミ報道
フランスでも、住まいが職場から次第に遠くなり、通勤にかかる時間が増え、しかも渋滞がひどくなってきているようです。


27日付のmatin plus(マタン・プリュス紙)とmetro(メトロ紙)です。同じ話題は、TF1の夜8時のニュースでも紹介していました。

INSEE(l’Institut national de la statistique et des etudes economiques:国立統計経済研究所)の発表によると、より良い住環境を求めて、あるいは価格が少しでも安い物件を求めて、都心部を離れて郊外や周辺の中小都市に住まいを求めるサラリーマンが増えている。しかし、企業はオフィスを都心に置いたまま。従って、職・住の距離が離れ、サラリーマンの通勤距離・時間が増えているそうです。

発表になったのは2004年のデータなのですが(さすがフランス、実にゆっくりとした集計と分析です)、通勤時間の全国平均は片道25.9kmで、要する時間は32分。しかし10%のサラリーマンは1時間以上かかっているそうです。77%の企業がオフィスを都市部に置いているのに反し、サラリーマンで都市部に住んでいるのは63%。それだけ郊外や他の中小都市から通っているサラリーマンが多くなってきているそうです。

パリの通勤事情は、交通渋滞がひどいため他の都市以上に大変で、四分の一のサラリーマンが45分以上かかってオフィスまで通勤しているそうです。通勤が最も大変なのは、せっかく都市部に住みながら、オフィスが他の都市の中心部にある人の場合で、平均の通勤距離は51.7kmで、それに要する時間は63分となっています。

郊外や周辺の街に住んで、都心のオフィスに通う。そういう人が増えると、当然、道路の渋滞がひどくなり、マイカー通勤にかかる時間がさらに長くなる。その結果、睡眠時間が短くなり、昼間眠気に襲われたりする事もある。こうテレビのニュースでは伝えていましたが、50年前より1時間以上減ったという睡眠時間、それでも7時間10分が平均。フランス人は良く寝るのですね。感心してしまいます。それに通勤が大変になったとはいえ、日本の比ではまったくありません。まだまだ通勤地獄だなんて言えないですね。

もし、日本のサラリーマンの通勤事情や、仕事の後の飲みニケーション、その結果の短い睡眠時間を知ったら、フランス人は何というでしょうか。昔は日本人を「働きアリ」と呼んだフランスの政治家がいましたが、今なら「働きロボット」あるいは「労働サイボーグ」でしょうか―――。

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器でも魅せる、パリの映画館。

2007-03-28 01:16:11 | 映画・演劇・文学
最近、パリでは、UGCやMK2、パテ、ゴーモンといった大手配給会社の運営するシネマコンプレックスが増え、ホールの数が10あるいは20もあるシネコンがあちこちにできています。1ヶ所でいろいろな映画が観れますし、年会員になると非常に安く観れたりで、とても便利です。

しかし、こうした風潮に背を向けて、単独館としてがんばっている映画館もあります。シネコンがどこも同じような無機質な印象の造りなのに対し、単独館は建物自体が、それぞれに個性的です。

パリで個性的な映画館と言えば、まずは、ここ。La Pagode(ラ・パゴドゥ)。パゴダ(卒塔婆)の意味ですね。ヨーロッパでは東洋の仏塔を意味する言葉になっています。7区、rue de Babylone(バビロン通り)にあります。

見るからに、アジア的な建物です。それもそのはず、1895年にデパート、ボン・マルシェの社長が夫人へのプレゼントとして当時フランスにおける東洋建築の権威、Alexandre Marcel(アレクサンドル・マルセル)に依頼して建てたものだそうです。もちろん最初から映画館ではなく、住まい。しかし、プレゼントにこんな建物とは、驚いてしまいます。さすが、社長。なお、材料などは日本から運んだという説もあるようですが、どうでしょう。20世紀初頭には中国公使のレセプション会場としても活用されたようです。

1931年に映画館として使われ始め、90年代に大改修が行われました。

写真でもお分かりのように、現在また外壁の修復が行われています。外見はアジア的ですが、アジア映画専門というわけではなく、話題作を上映しています。場所柄か、観客には中高年の知識層が多いようです。

もう一館は、Studio 28(スタジオ28)。現存するパリ最古の映画館と言われています。場所は、18区、モンマルトルの丘のふもとです。メトロの最寄り駅は2号線のBlanche。駅から北へ500mほどのところにあります。

石畳の細い道に面しており、坂の上を見上げるとムーラン・ド・ラ・ギャレット。風車が見えます(写真では見えにくいですね、申し訳ない!)。

パリらしい雰囲気のカルティエで、内装はかのジャン・コクトーが行ったともいわれています。上映は毎日午後3時からで、最終が9時から。早く行き過ぎると、シャッターが下りたままです。封切りではなく名画やちょっと前の話題作を、毎回異なる作品のラインアップで上映しています。

何しろ、毎回上映作品が異なるので、このような上映スケジュールが貼り出されていますし、A4サイズのリーフレットも用意されています。

これら以外にも、実験的な作品をよく上映する映画館やかつての名作を見せる映画館など、個性派ぞろいのパリの映画館。とても全部見て回れないほどの多さです。それだけ、映画がパリッ子たちの生活にしっかり根づいているという事なのでしょう。

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歴史的事件と写真~ジュ・ド・ポム

2007-03-27 02:10:12 | 美術・音楽
写真専門のギャラリー、「JEU DE PAUME」(ジュー・ド・ポム)で“L’Evenement~les images comme acteurs de l’histoire”(事件~歴史の証人としてのイメージ)という展覧会を見てきました。



写真が捉えた歴史的瞬間の数々・・・歴史に残る出来事をフレームにしっかりと捉えています。そのイメージが、人々の脳裏に焼きつき、やがて事実として認識されていく。それだけに写真のもつ力は大きく、また責任も大きいわけです。



名作といわれる写真を見ていると、歴史的瞬間に立ち会いながらもカメラマンがしっかりと構図、フレームワークを考えてシャッターを切っていることに感心してしまいます。また、対象となる「人間」への優しいまなざし、そして同時に人間の行った愚行に対する悲しみ・悲憤が強くその作品から感じられます。写真の魅力のひとつがここに息づいています。

今回紹介されている「事件」は、4つ。

クリミア戦争(1853-56)、

戦場で見せる兵士たちの人間らしい表情。また、手前の塹壕とその先にある破壊されつつある街、地平線、そして空・・・悲劇を捉えつつも美しくさえある写真が多く展示されています。

空の時代の幕開けとなった20世紀初頭(1909-11)、

飛行船で、飛行機で、初めて空を飛ぶことへの熱狂、空からの写真に感動する様子がよく伝わってきます。

人民戦線内閣による初の有給休暇による夏休み(1936)、

簡単なテントが立ち並ぶ浜辺や湖沿い。初めての有給休暇に戸惑いながらも楽しくてしようがない人々の表情が印象的です。

ベルリンの壁の崩壊(1985.11.9)、

自由への希求がついに現実となった瞬間のうれし泣き・・・忘れられない表情です。

そして、9.11(2001)、

その瞬間、そして、救助にあたった人たち、助かった人たちと家族との抱擁、犠牲となった人々への追悼・・・言葉を超えた写真の数々です。

ベルリンの壁からはカラー写真も混じりますが、事件のもつ劇的性格、その背後に潜む政治的意図やそれに振り回される庶民の悲喜劇といったものは、やはりモノクロのほうが表現しやすいのではないかと思います。カラーになると「現実」が前面に出すぎるのではないでしょうか。それとも、単に私が年なだけかもしれませんが、どうもモノクロの方に「事件性」を強く感じてしまいます。

こうした歴史的事件を追い、広く世界に伝えるカメラジャーナリストたち。その中にはロバート・キャパのようにカメラを手に命を落とした人たちもいます。生命の危険をも顧みず、写真の力を信じ、事件を追い求めているカメラマンたち。私にはまねが出来ないだけに、いっそう大きな拍手を送りたいと思います。


JEU DE PAUME
1 Place de Concorde
チュイルリー公園内で、
モネの睡蓮で有名なオランジュリー美術館と対をなす形で建っています。
www.jeudepaume.org

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サロン・デュ・リーヴル~本の展覧会

2007-03-26 01:18:26 | 映画・演劇・文学
23日から27日まで、“Salon du livre”が開催されています。今年で第27回のこの「本の展覧会」、事前からしっかりとPRが行われていました。

本好き、読書好きにとっては、年1回お待ちかねのイベントです。


会場は、パリのエキスポ・センター。広い会場に出版社による450のブースが並び、まさに書籍の一大見本市・即売会。フランス国内はもちろん、カナダ・ケベック地方、ベルギー、北アフリカ、中近東などのフランス語圏、そしてブラジルやドイツからの出展もあります。


今年は、「インド文学」がひとつのテーマ。“le magazine litteraire”(『文学雑誌』)という雑誌も特集を組んでいました。

28州からなるインドは、人種と宗教のモザイク。それだけに、そうした社会で生まれる文学も巨大なパズル。文学の新たな宝庫ともいえるそうです。そういえば、『マハーバーラタ』とか『ラーマーヤナ』なんていう名前を習ったような気もします。経済が成長すると、文学にも目が向けられるのでしょうか。

インドの作家を紹介する特別なスペースも用意されています。

我らが日本も出展していました。

ジュンク堂がブースを出していますが、主役はもちろんマンガ。

Mangaはフランスの出版界でもしっかりとした地位を占めているようです。

討論会のスケジュールですが、マンガをテーマにしたものがいくつもあります。また、フランスのBD(マンガ)や風刺漫画の作家を招いてのインタビュー・討論会も行われています。ちょうど、昨年ご紹介したCabu氏がインタビューに答えていました。実物ははじめて見ましたが、氏の描くキャラクターそっくりです。


期間中に2,000人の作家が会場を訪れ、インタビューを受けたり、サイン会を行ったりします。

人気作家は、この通り、すぐ多くのファンに取り囲まれてしまいます。
そうでない作家は、ちょっと手持ち無沙汰・・・


フランス文学は、日本ではかつて程の脚光を浴びていないような気がしますが、フランス人の文学好きは今も連綿と続いているようです。会場へ向かうメトロ、週末の午前中でしたが超満員でした。午後も、イベント会場で買った本を袋に入れて持ち歩く人をあちこちで見かけました。フランスでは、活字離れ、文学離れ、日本のようには深刻でないようです。

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フランス2006、総決算―①

2007-03-25 02:05:28 | マスコミ報道

20日付のLe Figaro(フィガロ紙)別刷りです。タイトルは“Le grand audit de la France”(フランスの会計監査)。2006年のフランスを、政治・外交・経済・生活のさまざまな分野で総括しています。論説だけでなく、多くのデータも活用していますので、へ~そうなんだ、といったちょっと面白い話題も見つけることが出来ます。いい資料ですので、いくつかご紹介しましょう。ただし、毎日では面白くないかもしれませんので、時々シリーズでご紹介していこうと思います。

第1回目は・・・

フランスといえば、観光大国。「観光」に関する話題をご紹介しましょう。

都市郊外での移民の若者による騒動や、大規模なデモやストなどにも関わらず、フランスの観光大国としての地位にはまったく揺るぎがなかったそうです。外国人観光客の受け入れ数は、2位=スペイン、3位=アメリカ、4位=中国、5位=イタリアといった他の観光大国を押さえて、2006年もトップだったそうです。
・フランスを訪れた外国人観光客数
2006年:7,800万人
2005年:7,600万人
2004年:7,500万人
ロシア、インド、中国といった新たな国々からの観光客が増えており、またイラク戦争に協力しなかったフランスへの不満から一時減っていたアメリカ人観光客も戻ってきているそうです。
・フランスを訪れた出身国別観光客数
アメリカ:160万人
イギリス:140万人
イタリア: 69万人
日本  : 66万人
ドイツ : 65万人
確かに、街のいたるところでアメリカ英語を聞きます。カフェで、メトロで、信号待ちで・・・。観光名所で目立つのは中国からの団体客。ショッピングエリアといえば、日本人。観光客のすみわけも自然と出来ているようです。フランスの魅力は、文化、グルメ、風土の豊かさ、そして、ショッピング、イベント、歴史的建造物などの充実。多くの観光客を惹きつける要素にこと欠かないようです。

結果として340億ユーロの観光収入があり、フランス人が外国で費やす観光支出251億ユーロを差し引いても89億ユーロの観光黒字になっています。羨ましいですね。因みに、パリで観光客一人が一日に使う金額の多いのは日本人と中国人。ブランド好き、お土産好きなのでしょうか、それとも一世一代のお買い物?
・観光費用(一人・一日あたり)
日本人  :276ユーロ
中国人  :248ユーロ
イギリス人:245ユーロ
アメリカ人:209ユーロ
スペイン人:204ユーロ

ところで、観光客はフランスに何泊するのでしょうか。
・フランス観光の宿泊数
1泊   :18.1%
2泊   :18.0%
3泊   :12.7%
4-6泊 :19.4%
7-13泊 :18.2%
14-27泊:10.6%
3泊まででほぼ半数。駆け足の観光が多いようですね。

では、多くの観光客が訪れるパリの観光スポットは?
・観光客の多い場所
ノートル・ダム大聖堂 :1,300万人
サクレ・クール寺院  : 800万人
ルーブル美術館    : 760万人
エッフェル塔     : 640万人
ポンピドゥー・センター: 530万人
日本でもお馴染みのところが上位に来ています。

一方、フランス人のヴァカンスに関してデータをひとつ。
・最も多くのフランス人が休暇を取った日=8月15日
この日、およそ6,000万人のフランス人のうち1,400万人がヴァカンス休暇で、そのうち200万人が外国に滞在していたそうです。日本人が増える夏休み、パリジャンよりも観光客のほうが多くなってしまっているのかもしれないですね。

過去から引き継がれてきた文化と豊かな自然、そしてそこに加えられる新たな文化の息吹・・・フランスの観光大国として地位はまったく揺るぎなく、これからも憧れの地として多くの観光客を惹きつけていくようです。

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異形の作家、デヴィッド・リンチ展。

2007-03-24 04:35:34 | 美術・音楽
映画監督として有名なデヴィッド・リンチ。代表作には『エレファント・マン』や『砂の惑星』『イレイザーヘッド』、そしてテレビドラマの『ツイン・ピークス』などがありますが、映画以外にも幅広い創作活動を行っています。それらの作品を一堂に集めて紹介する企画展“David Lynch – The air is on fire”がカルチエ財団現代美術館で行われています。



ジーンズやナイフ、ベルトなどの実物を使った大作アートから、ノート、メモ、ナプキンなどに描いかれたスケッチ、ドローイングなどの小品、そして短編映像まで、実に幅広い展示内容です。


館内は残念ながら撮影禁止。しかし、そこはさすが映画の巨匠、映画雑誌“Cahiers du Cinema”(カイエ・デュ・シネマ)が今回の企画展を特集していますので、その誌面から何点か紹介しましょう。


大きな作品には、リンチ独特の世界が表現されています。その中の一作に、“The eye sees, the ear hears, what ?”と書き込まれた作品があります。視聴覚を越えた、つまり現実を超越したイマジネーションの世界にこそ真実がある、そんなことを表現しているような気がします。そしてリンチのイマジネーションは、決まって異形の世界へと向かいます。首は跳び、腕はもぎ取られ、頭は腐敗し、性器には木が生える・・・独特な色彩もあいまって、『エレファント・マン』でも見られたようなリンチ・ワールドを表現しています。

(美術館は一部外から見えるようになっています)

しかし、一方のデッサンなど小品には他の作家の影響も見て取れます。リキテンシュタインの影響を受けたものも多く、またピカソの影響の見られる作品や墨絵そっくりのシリーズもあります。いろいろな影響をデッサンなどを描きながら昇華し、大作でリンチ・ワールドを創り上げているのかもしれません。


館内では、1960年代~70年代に作られた実験的短編(ルイス・ブニュエルの『アンダルシアの犬』を想起させます)や2002年作のシリーズ・アニメが上映されていますが、そこもリンチ・ワールド。リンチのイマジネーションがくっきりと描き出されています。

なお、『カイエ・デュ・シネマ』以外にもLe Figaro(フィガロ紙)やmetro(メトロ紙)が特集で紹介していました。


こうしたPRも効いたのか、大盛況。デヴィッド・リンチの世界、フランスのアート好きを惹きつけているようです。

ところで、館内で気になったことがあります。狭いせいもあるのでしょうが、作品を見ている人の前に平気で立ってしまう人が結構いることです。しかも、決まって女性。フランスでは女性は何をやっても許される。男は文句を言わず見える場所に移動すること! でも、他人に迷惑をかけるような自分勝手でも許されるのでしょうか。フランス国内で、フランス人だけでやっているならそれでいいのでしょうが、他の地域や人々と共存するとき、フランス女性の身勝手さはフランス人全般に対する「傲慢」というイメージをさらに上塗りしてしまうのではないでしょうか。しかし、ここまで女性に寛大でいられるのは、実はフランス男の深謀遠慮なのではないか、と思える節もあります。フランスの国会議員に占める女性の比率は10%ちょっとで北欧諸国の40%前後に比べると非常に少ない。また、女性に参政権を与えたのも第二次大戦後と遅い。女性に徹底的に優しいようでいて、国や企業の重要事項は男たちで決めてしまう。そういえば家計を握っているのも男性。それらに対する不満が爆発しないよう普段は花よ蝶よとおだてておく・・・戦略に長けたフランス男性なら、これくらいの事はやりかねません(今年の大統領選挙でロワイヤル女史が当選すれば、ずいぶん変わるのでしょうが)。それでも、男女平等はタブーになっているとまで評される国、日本の女性よりは遥かに幸せかもしれませんが。


(敷地内ではソメイヨシノそっくりの花がちょうど満開でした)

話はデヴィッド・リンチから男女平等になってしまいましたが、独特のリンチ・ワールド、日本でも見れるといいですね。

Fondation Cartier pour l’art contemporain
261 boulevard Raspail
fondation.cartier.com
『デヴィッド・リンチ』展は、5月27日まで。

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率直な、日本観。

2007-03-23 02:36:26 | 学校
ソルボンヌはすでに4学期目。テキストやノートの詰まった重いバッグを持ってあちこちの校舎へ移動し、文法中心に2時間、発音1時間、講義2時間・・・こうした毎日はさすがに老体には応えるので、今学期は少し楽なコースに替えました。文法は最上級を2学期やったので、これからは問題集より実際に使いこなすことが大切!と勝手な、そして至って楽観的な思い込みから、今は文章表現のコースを取っています。週2回、各3時間。

そこで、少し空いた時間をどうするか。フランス語を話す機会を増やしたい! ちょうどいいタイミングで、素晴らしい場所を紹介してもらいました。キリスト教系のボランティア団体が外国人にフランス語を話す機会を提供してくれる場所です。毎日午後2時から7時まで。部屋に用意された5つほどのテーブルにそれぞれ一人、フランス人が座ります。その周りを数人から7~8人の外国人が取り囲み、一緒にフランス語を話す、という仕組みです。5時間は長いので、半分の2時間半経ったところでフランス人は交代します。しかし、外国人のほうは何時間居てもOK、逆に30分程度で帰っても問題なし。また月~金毎日来てもOK。学校ではないのでクラス分け試験もなく、たまたま居合わせた人たちの中で話すので、レベルはまちまちです。でも、しゃべったが勝ち。積極的に話す練習にもなります。なお、ボランティア組織なので、寄付を年間10ユーロするだけで誰でも参加できます。


(入り口から見た教室の一部です)

さて、ここでボランティアをしてくれているフランス人たちは、平日の午後来れる人たちですから、皆さん高齢者。若くて50代後半、上は80前後まで。外国に住んでいたことがある、子どもが外国に住んでいるのでそこへ何度も行っている、外国旅行が好きですでに多くの国へ行ったことがある・・・理由はさまざまですが、外国あるいは外国人に関心のある、ある程度教養のある人たちが相手をしてくれています。

そこへは週2回、通っています。決まったテーマがあるわけではないので、そこにいる人たちの国の話題だったり、フランスの文化(映画・美術・文学など)の話になったり・・・話題は外国人から出されることも、フランス人から提供されることもあります。そうして話していて面白いと感じることは、フランス人の率直な意見が聞けることです。退職後ですから、もう何も怖いことはない、というところでしょうか、本音が態度や言葉の端はしに率直に表れます。フランス人の高齢者が外国に関してどんな認識をしているのかがよく分かります。

先日は地下鉄の話になりました。質問:日本に地下鉄はありますか、答え:もちろんありますよ、質問:どこの国が作ってくれたのですか?・・・!

美術館の話題。質問:日本に美術館はありますか、答え:もちろんあります、質問:絹織物などを展示しているのですか?・・・!!!

外国に興味があるといっても、ヨーロッパ内だったり、アメリカ、あるいは中近東どまりであると、日本といえどもこんな認識なんですね。アジアやアフリカは、欧米の援助がないと何も作れない、欧米にあるような文化は何もない・・・こんなふうに思っているのかもしれませんね。でも、こうした質問をくれる人たちを非難する気は毛頭ありません。一般的日本人だって、アフリカに関してどんな印象を持っているでしょうか。今でもライオンを追いかけていると思っている人が、実は多かったりするのではないでしょうか。もちろんフランスの高齢者でも日本に行ったことがあるとか関心のある人の認識はまったく違います。例えば、日本では、北のほうでは雪が降るのでスキーができる、昔札幌でオリンピックが行われた、とか詳しく知っている人もいます。

国や地域のイメージというのは、なかなか変えられないものだと思います。インターネットのお陰で、かなりの情報は取れるといっても、それは自分の興味の範疇のみ。興味のないことに関しては、今も昔の誤解だらけ、ではないでしょうか。

実に率直な意見や質問をくれるこの場所は、フランス語を話す場であるとともに、フランス人(高齢者)の外国認識について教えてもらえる場でもあります。素顔のフランス人を知る機会ですので、楽しみながら、継続していこうと思っています。

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大統領選、候補者出揃う。

2007-03-22 04:15:55 | マスコミ報道
19日、大統領候補者が憲法評議会によって最終確認されました。出馬するには、地方自治体の首長や議員、国会議員などの署名500人分を添えて申請することが必要になっています。大きな政党の支持を得ていれば簡単なことなのでしょうが、小政党所属や無所属の候補者にとってはこの500人の署名集めが第一次の関門になっています。

今回、この関門を突破し、まずは大統領候補として認められたのが12人。前回(5年前)よりは4人減っています。その顔ぶれは・・・

19日付のmetro(メトロ紙)です。左上の角から時計回りに、簡単にご紹介しましょう。

・Segolene Royal(セゴレーヌ・ロワイヤル)
PS(社会党)。元環境相。女性で、しかも若々しいところから、清新なイメージで人気。政策に弱いところと、ストレートな物言いが時として物議をかもすのが弱点。支持率は25%前後。事実婚のパートナー、オランド氏は社会党の第一書記。53歳。

・Olivier Besancenot(オリヴィエ・ブザンスノ)
LCR(革命的共産主義者同盟)。自由で、反グローバル化を推進する共産主義を標榜。左派の中の左派。労働者や庶民層に近い立場で、その親近感が強み。支持率は2~3%程度。32歳。

・Arlette Laguiller(アルレット・ラギィエ)
LO(労働者の闘争)。労働者の利益代弁者を任じ、6度目の立候補。過去2回は5%の票を獲得。アンチ・リベラル、そしてアンチ資本主義を提唱。67歳。

・Nicolas Sarkozy(ニコラ・サルコジ)
UMP(国民運動連合)。内相兼党総裁。治安と自由経済を優先。ノンといえるフランスを継続とは言うものの、親米の共和主義者。選択的移民受け入れなど、積極的差別政策を提唱。ハンガリー系移民2世。30%前後の支持率で有利に展開。52歳。

・Dominique Voynet(ドミニク・ヴォイネ)
Les Verts(緑の党)。環境問題に長年携わる。2度目の立候補。環境問題の人気者ニコラ・ユロ氏が立候補を見送ったが、それでも2%以下の支持率で伸び悩んでいる。48歳。

・Marie-George Buffet(マリ=ジョルジュ・ビュッフェ)
PCF(フランス共産党)。元青年スポーツ相。共産党の中では改革派だが、マルクス主義を堅持。支持率が常に3%以下で共産党候補としては過去最低。党の地盤沈下の反映とも言われる。57歳。

・Jean-Marie Le Pen(ジャン=マリ・ルペン)
FN(国民戦線)。外国人排斥を訴える民族右翼。極右の国民戦線を結党し、党首を長年務める。その雄弁術には定評がある。前回は社会党候補を上回り、シラク大統領との決選投票へ進出し、世界をアッといわせた。支持率12%前後。78歳。

・Gerard Schivardi(ジェラール・シヴァルディ)
PT(労働者党)。元社会党員。地方における公共サービスの擁護者で、真の社会主義者、市長の代表を標榜。支持率は0.5%程度で低迷。56歳。

・Jose Bove(ジョゼ・ボヴェ)
無所属。Altermondialiste(反グローバリゼーション主義者)。かつて、マクドナルドの店舗を破壊し、世界的に名を馳せる。農民の利益擁護、反新自由主義。期限ぎりぎりに500人の署名を集め、正式出馬(写真ではまだ?の状態)。53歳。

・Francois Bayrou(フランソワ・バイルー)
UDF(フランス民主連合)。中道のキリスト教民主主義。ただし、政教分離に基づく共和主義者。現保守政権には閣外協力。誠意ある政治家としてのイメージが浸透し始め、支持率急伸。20%を越え、サルコジ、ロワイヤル両候補と三つ巴の接戦になっている。55歳。

・Frederic Nihous(フレデリック・ニウス)
CPNT(狩猟漁業自然伝統)。法曹界出身で、地方における公共サービス廃止の延期、反EU、バランスの取れた環境への取組みなどを提唱。支持率は0.5%程度。39歳。

・Philippe de Villiers(フィリップ・ド=ヴィリエ)
MPF(フランスのための運動)。Le Mouvement Pour la France党首。愛国的右派政権の誕生を熱望しており、サルコジ、ルペン両氏の中間に位置する政治的信念。支持率は1~2%。58歳。

どうですか、参考になりましたでしょうか。結構な小党分立ですね。さすが個性を大切にするお国柄。小異を捨てて大同につく、というわけには行かないようです。第1回投票が4月22日、上位2名による決選投票が5月6日。事前調査では、サルコジ氏優位ながら三つ巴の接戦。しかし、態度未定の有権者が40%もおり、最終的に誰が選ばれるか、まだ予断を許さない状況です。残すところ1ヵ月半、どのような進展、変化があるでしょうか。外野からしっかり見届けて行きたいと思います。

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