最もフランス的なアメリカ人芸術家の個展、という触れ込みもある「ルイーズ・ブルジョワ展」がポンピドゥ・センターで行なわれています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/16/50/07059829dda8adeecdc4b62289cdb96d.jpg)
最もフランス的・・・当然なんですね、名前でも分かるようにルイーズ・ブルジョワはもともとフランス人。1911年にその名の通り裕福なブルジョワの家庭に生まれ、1938年にアメリカ人の美術史家と結婚、そしてアメリカへ。それ以来ニューヨークに住み、1955年にはアメリカ国籍を取得しています。
1911年のクリスマス生まれだそうですから、今年末には97歳。そこで今回の個展は「回顧展」といわれ、ロンドン、パリ、ニューヨークで行なわれることになっています。しかし、回顧展などといわれると、もう活動をやめてしまった芸術家というイメージも湧いてしまいますが、どうしてどうして、まだまだ現役。その制作意欲は衰えることがないようです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/53/f7/d7b8c8e68dfa4ef2f28a9d5026e6e384.jpg)
(会場ロビーに展示された若き日の写真、この1点の撮影はブラッサイ)
そう、制作意欲です。彼女は、自分の表現したいことを、表現したいように、制作してきました・・・そのカタチは絵画、彫刻、デッサン、版画、立体とさまざま。その手法もさまざま。用いた材料もさまざま。そのときそのとき、そのテーマによって変幻自在。理論や主義、トレンドには目もくれず、自分の創作意欲の赴くまま。だからこそ、決してグループに属さず、画壇の周辺に居続けました。しかし、そこには、表現したいという強い意欲が現れており、好き嫌いはあるにせよ、見るものを惹きつける強さがあります。純粋であるが故の強さ。そして、同時に、純粋であるが故の脆さ。
タペストリーの修復などを行なっていた両親。しかし、父親はその愛人を子守としてルイ-ズの周囲に置いた。そうした家庭環境の影響でしょうか、彼女の紡ぎだす世界には、驚き、優しさ、自己認識などとともに白日夢、恐れ、苦痛、人生の不思議さなどが息づいています。少女の夢がカタチとなっただけではなく、幼くして知ってしまった大人の醜さへの少女の嫌悪感が残酷なカタチとなって現れています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/68/59/8af6bd512d39e56f73c9307bcb04b125.jpg)
(ルイーズが跪いて、拝まんばかりにしている相手は、ジョアン・ミロ、美術史に独自の地位を占める同士、肝胆相照らす・・・?)
例えば、彼女が多用するピンや釘。これらは何を表現しているのでしょうか。不実、横暴だった父親への怒りなのでしょうか、父親が代表する男への反抗なのでしょうか。あるいは、多くの赤い手は。「赤」に込められた想い、何かを求めるような、あるいは何かを引きずるようなその赤い手が暗示するものは・・・
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/12/40/b73dfe6e925f142f4fa577b555538917.jpg)
(情報誌からの複写)
とっても内向的で、それでいて挑発的だったという少女時代のルイーズ・ブルジョワ。その少女のままで創り出している「ルイーズ・ブルジョワ・ワールド」。その多様性の中には、好きになれるものと、なれないものがあると思います。全てが好き、全てが嫌いというわけにはいかない・・・私が気に入ったのは、インクやクレヨンで描いたデッサン、そしてどことなく有元利夫を髣髴とさせる絵画などでした。
そして、なんといっても代表作というか、目に付くのは、巨大なクモ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/75/af/433bad668926b5a384485daa0a7bbae9.jpg)
ポンピドゥ・センターのロビーにも1点。会場にも、クモに覆われた金網の立体作品が1点。クモの不気味さと、そこはかとない愛嬌。その糸に絡められてしまう恐怖と、心の奥底に隠された自由を奪われてしまうことの心地よさ。彼女の世界では、常に相反するもの同士の間を行ったり来たり、あるいは両極端が共存しています。現実と夢、男と女、秩序と混乱、洋の東西・・・時間も空間も自在に超越して紡ぎだす、独自の世界。少女のかわいらしさの裏に潜む残酷さ・・・子ども、愛、性、遺棄、後悔、思い出・・・人生のさまざまな物語、神話の空間、精神分析の世界へと見るものを誘っていく「ルイーズ・ブルジョワ・ワールド」。永遠の少女には、年齢は関係ないようです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/46/b4/0ad417041d2834c0aff7a8a5a9640138.jpg)
“Louise Bourgeois”展
200点もの作品が展示されています。
ポンピドゥ・センターにて、6月2日まで。
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最もフランス的・・・当然なんですね、名前でも分かるようにルイーズ・ブルジョワはもともとフランス人。1911年にその名の通り裕福なブルジョワの家庭に生まれ、1938年にアメリカ人の美術史家と結婚、そしてアメリカへ。それ以来ニューヨークに住み、1955年にはアメリカ国籍を取得しています。
1911年のクリスマス生まれだそうですから、今年末には97歳。そこで今回の個展は「回顧展」といわれ、ロンドン、パリ、ニューヨークで行なわれることになっています。しかし、回顧展などといわれると、もう活動をやめてしまった芸術家というイメージも湧いてしまいますが、どうしてどうして、まだまだ現役。その制作意欲は衰えることがないようです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/53/f7/d7b8c8e68dfa4ef2f28a9d5026e6e384.jpg)
(会場ロビーに展示された若き日の写真、この1点の撮影はブラッサイ)
そう、制作意欲です。彼女は、自分の表現したいことを、表現したいように、制作してきました・・・そのカタチは絵画、彫刻、デッサン、版画、立体とさまざま。その手法もさまざま。用いた材料もさまざま。そのときそのとき、そのテーマによって変幻自在。理論や主義、トレンドには目もくれず、自分の創作意欲の赴くまま。だからこそ、決してグループに属さず、画壇の周辺に居続けました。しかし、そこには、表現したいという強い意欲が現れており、好き嫌いはあるにせよ、見るものを惹きつける強さがあります。純粋であるが故の強さ。そして、同時に、純粋であるが故の脆さ。
タペストリーの修復などを行なっていた両親。しかし、父親はその愛人を子守としてルイ-ズの周囲に置いた。そうした家庭環境の影響でしょうか、彼女の紡ぎだす世界には、驚き、優しさ、自己認識などとともに白日夢、恐れ、苦痛、人生の不思議さなどが息づいています。少女の夢がカタチとなっただけではなく、幼くして知ってしまった大人の醜さへの少女の嫌悪感が残酷なカタチとなって現れています。
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(ルイーズが跪いて、拝まんばかりにしている相手は、ジョアン・ミロ、美術史に独自の地位を占める同士、肝胆相照らす・・・?)
例えば、彼女が多用するピンや釘。これらは何を表現しているのでしょうか。不実、横暴だった父親への怒りなのでしょうか、父親が代表する男への反抗なのでしょうか。あるいは、多くの赤い手は。「赤」に込められた想い、何かを求めるような、あるいは何かを引きずるようなその赤い手が暗示するものは・・・
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(情報誌からの複写)
とっても内向的で、それでいて挑発的だったという少女時代のルイーズ・ブルジョワ。その少女のままで創り出している「ルイーズ・ブルジョワ・ワールド」。その多様性の中には、好きになれるものと、なれないものがあると思います。全てが好き、全てが嫌いというわけにはいかない・・・私が気に入ったのは、インクやクレヨンで描いたデッサン、そしてどことなく有元利夫を髣髴とさせる絵画などでした。
そして、なんといっても代表作というか、目に付くのは、巨大なクモ。
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ポンピドゥ・センターのロビーにも1点。会場にも、クモに覆われた金網の立体作品が1点。クモの不気味さと、そこはかとない愛嬌。その糸に絡められてしまう恐怖と、心の奥底に隠された自由を奪われてしまうことの心地よさ。彼女の世界では、常に相反するもの同士の間を行ったり来たり、あるいは両極端が共存しています。現実と夢、男と女、秩序と混乱、洋の東西・・・時間も空間も自在に超越して紡ぎだす、独自の世界。少女のかわいらしさの裏に潜む残酷さ・・・子ども、愛、性、遺棄、後悔、思い出・・・人生のさまざまな物語、神話の空間、精神分析の世界へと見るものを誘っていく「ルイーズ・ブルジョワ・ワールド」。永遠の少女には、年齢は関係ないようです。
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“Louise Bourgeois”展
200点もの作品が展示されています。
ポンピドゥ・センターにて、6月2日まで。