50歳のフランス滞在記

早期退職してパリへ。さまざまなフランス、そこに写る日本・・・日々新たな出会い。

秋晴れの、交通スト日和。

2007-10-19 01:19:43 | パリ
18日のパリは、快晴、ただし気温は低めで、最低気温7度、最高気温13度という予報が出ていました。きれいに晴れたので、実際は最高気温がもう少し上がっていたかもしれません。秋の爽やかな一日でした。



そんな穏やかな一日・・・しかし、残念ながら事もなく過ぎたわけではありません。公共交通機関のストライキが行なわれました!

ストライキ・・・日本では、もはや死語のようなコトバですね。でも、フランスでは、れっきとして生きています。


(18日のフィガロ紙、第一面です)

このように、数年に一度、大規模なデモやストライキが行なわれています。記憶に新しいところでは、昨春のCPE(初期雇用契約)を巡るデモで、150万人が参加。その当時、イギリスのメディアからは、「フランスはまだ200年以上前の革命が忘れられず、何か問題があると、すぐ街頭へ繰り出して解決しようとしている。イギリスでは、そうした問題はきちんと国会で話し合って解決するようになっている。そのために議会があり、市民には議員を選ぶ権利がある」、といかにフランスがかつての栄光にこだわっているかを指摘され、揶揄されもしましたが、そんな他国の意見などどこ吹く風、今年もストライキです。

事の発端は、サルコジ大統領の「改革」。特に、財政健全化のために、年金の掛け金支払い期間を延長しようという案に対しての反撥です。今まで、危険な職業、苛酷な労働条件にあると認められた職種では、年金の支払い期間が37年半と一般の40年より若干短くなっていました。それを他と同じ期間、つまり40年にしようと政府が提案。そこで、反対の意思表示としてのストライキとなったわけです。それがどうして交通ストか・・・交通機関での仕事の多くが過酷な労働だと見做され、37年半でよかった。それが40年も支払うことになってしまう。これはけしからん、というわけです。それに対してサルコジ大統領曰くは、20世紀初頭の石炭をくべながら運転した蒸気機関車の運転と、今のTGVなど機械化された電車の運転とを同じく過酷な労働だと認めるのはおかしい。変化した状況に、きちんと対応すべきだ―――。

一方、組合側にもいろいろな思惑がある、とも一部報じられています。現在の労働運動のトップにいる人たちは、1995年の150万人が参加したデモ、そして約1ヶ月も続いたストライキによって政府案を引っ込めさせた際の実質的リーダーたち。多くの国民の支持も得て、一躍、英雄に―――その次に続く世代が、今回は自分たちの番だ! と、スポットライトを浴び、組合のトップに君臨しようと異様に張り切っているとか・・・組織という中に組み込まれると、少しでも上を目指して、本質とはかけ離れたところで頑張ってしまうのは、「人間の性」なのでしょうか。もちろん、はじめからそうした競争に加わらない人、途中で降りる人もいるでしょうから、全員ではないのですが、それでも多くの人は、組織の一員となると、ヒエラルキーの上を目指して駆け始める・・・どこの国でも、同じなのかもしれません。

こうした背景があるからなのか、あるいは、サルコジ大統領への支持がまだ根強いためか、ストライキに対する国民の理解はあまり得られていないようです。


(改革にはウィ、ストにはノン・・・17日付のメトロ紙です)


(大多数のフランス人がストに反対・・・17日付のフィガロ紙)

しかし、予定通り、決行。パリとその郊外のイル・ド・フランス地方、そして他の主要27都市では、交通機関が大混乱。ストライキが決行されると、実際どうなるのか・・・


通常は、3~4分間隔で運行されているメトロは、10分とか15分、あるいはそれ以上の間隔に。そして、路線によっては、完全にストップ。ただし、この日、さすがにメトロは無料開放でした。


RER(郊外高速)はストップした路線が多く、こうして入り口がシャットアウト。

また、長距離列車はほとんどが運休。TGVも多くが運休。

こうした状況に、休みを取ったサラリーマンが多く(日本とは大違いですね。日本なら、オフィスの近くのホテルに前泊するとか、いろいろ工夫して、休まない人が圧倒的に多いですものね)、ビジネスにも影響が出ています。


(この銀行は、終業時間を30分切り上げ)


(このサンドウィッチ店は、出勤した店員が少ないため、テイクアウトだけで、店内での飲食は中止。急ごしらえで店内に入れないようにしています)

しかし、もちろん、休まず出勤したサラリーマンもいるわけで、車で、タクシーで、本数の減ったメトロで・・・そして、快晴の秋の日、自転車で、出勤!

(グループで借りに来て、乗っていきました)
ここで、活躍するのが、パリ市ご自慢のレンタサイクル“Velib’”(ヴェリブ)。サラリーマンの足としてだけではなく、観光客の足としても引っ張りだこ。ヴェリブをイル・ド・フランス全域に広げようという動きもあるようです。このストライキを最も喜んでいるのは、もしかすると再選の準備を始めているドラノエ・パリ市長かもしれないですね。

(ここはノートル・ダム大聖堂前、ヴェリブに限らず自転車で観光・移動の人が多いようです)

さて、今回は一部の職種での年金払い込み期間の延長問題ですが、この後には一般国民の払い込み期間を現状の40年から41年へ、さらには42年へと段階的に延長する案を政府は暖めているようで、それが正式に発表されたときは、またどういう展開になりますやら。一気に反対運動が国民規模で燃え上がるのか、財政の健全化、国際競争力の強化のためには仕方ない、と国民が納得するのか・・・今までの政治・社会との決別を標榜するサルコジ政権と国民との関係、今後に注目していたいと思います。(なお、改革!過去との決別!と言い続けているサルコジ大統領、プライベートでもセシリア夫人と決別してしまったようです・・・)

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