50歳のフランス滞在記

早期退職してパリへ。さまざまなフランス、そこに写る日本・・・日々新たな出会い。

マリア・カラス賛歌。

2007-10-18 01:23:22 | 美術・音楽
20世紀最高のソプラノ歌手といわれたマリア・カラスが亡くなって、今年で30年。ギリシア系移民の子としてニューヨークに生まれた彼女は、1977年にパリでその生涯を終えています。30年ということで、記念のCDとかも出ているようですが、彼女へ捧げるオマージュと題したコンサートが教会で行なわれているので、聴きに行ってみました。


(コンサート情報は、多くの場所に貼られたA4サイズほどのポスターでも入手可能です)

場所は、ノートル・ダム大聖堂の南、左岸へ渡ってすぐのところに建つサン・ジュリアン・ル・ポーヴル教会(Eglise Saint-Julien le Pauvre)。

パリで最も古い教会のひとつで、建立は6世紀以前にまで遡るとか。確かな資料としては、580年にここを訪れた司教の記録に出てくるそうです。とにかく長い歴史のある場所。しかも、別の利用目的(病院や何と塩の倉庫!)に転用されたり、ギリシア正教会が使ったり・・・いろいろな、言ってみれば波乱万丈の歴史を刻んできた教会のようです。



さて、コンサート。“Hommage a Maria Callas”と銘打ったコンサートで、演奏者はソプラノのLina Castellanzaと夫でピアニストのHerbert du Plessis。

この二人によるマリア・カラス賛歌は、以前からこの教会で時々行なわれていたようです。でも、没後30周年ということで、それなりの思い入れもあって、普段以上にいい演奏と歌を聴かせてくれるのでは、と期待して出かけて行ったわけです。



この夜の演奏曲目は、モーツァルトの“Le Nozze de Figaro”(『フィガロの結婚』)、ロッシーニの“La cenerentola”(『チェネレントラ』)、ヴェルディの“Aida”(『アイーダ』)など。途中にピアノのソロで、ショパンの『ワルツ(作品42:大円舞曲)』とリストの『愛の夢』を挟むという構成でした。



リナ・カステッランツァはミラノ・スカラ座のオペラ学校で学び、テノールのFranco Corelliなどに師事したそうです。スペインにも滞在しており、スペイン語で謳うこともあり、そのせいかラテンアメリカで特に人気があるようです。ヨーロッパでも、もちろんコンサートやCD、ラジオなどで活躍しているとか。ご主人のエルベール・デュ・プレシスはモーリシャス生まれで、イギリスで音楽教育を受けたそうです。特にショパンの作品をよく演奏するようで、その全作品を演奏した数少ないピアニストの一人だそうです。


(ピアノはSteinwayです)

教会が小さく、若干声が籠る感じはしましたが、その声の美しさ、テクニック、イントネーションの確かさ、そして存在感・・・以前から「マリア・カラスへ捧げるオマージュ」というコンサートを行なってきただけのことはあり、リナ・カステッランツァのソプラノには、マリア・カラスを髣髴とさせるものがありました(と、彼女のCDは1枚しかもっていない人間が言うのはおこがましいのですが・・・)。150人くらいの観客でしたが、熱烈な拍手、最後はスタンディング・オベーションでした。



しかし、その聴衆、日本のコンサート会場とはずいぶん異なります。遅れて入ってきて、ビニール袋を5分くらいゴソゴソやっていた女性、咳を繰り返していた男性、A席とB席に分かれているのですが、最初の曲が始まった時、高い席のほうが空いていると、ぞろぞろとそちらへ移動する人たち・・・通というよりは、教会のコンサートをちょっと聴きに来てみたという、私も含めて観光気分の人が多いのかもしれないですね。そうしたカジュアルな雰囲気のコンサートだからでしょうか、ちょっとした雑音があっても眉を顰める人や音のするほうを睨みつける人はいないんですね。肩の力が抜けていて良かったです。


(23ユーロと書かれた紙が貼られています。柱の両サイド後ろの方が18ユーロです)

また、違いといえば、チケットの料金。前売りをFNAC(AV書籍流通大手)などで買うと25ユーロ席と20ユーロ席。当日、会場で買うと23ユーロと18ユーロ。単純に手数料が乗ってしまいます。


(コンサートが終わり、家路ならぬ、食事へ向かう聴衆たち)

・・・ご存知の方も多いと思いますが、マリア・カラス最後の公式な舞台はジュゼッペ・ディ・ステファノと一緒に行った札幌でのリサイタルだったそうです。日本と縁のあるマリア・カラス。没後30周年に聴いたという、いい思い出になるコンサートでした。

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