50歳のフランス滞在記

早期退職してパリへ。さまざまなフランス、そこに写る日本・・・日々新たな出会い。

トリコロールの国際機関・・・

2007-10-01 00:22:49 | マスコミ報道
28日にフランスの元財務相、ストラス=カーン氏が新しくIMFの専務理事に決まったことは、日本でも報道されていたと思います。このブログでも以前、サルコジ大統領が野党・社会党の重鎮をこのポストへの候補者として担ぎ出したのはご紹介しましたが、ようやく正式に決定されました。ロシアが対抗馬を引っ張り出したため投票となりましたが、EUやアメリカの支持を得ていたので、なるべくしてなったという印象です。

実は、このIMF専務理事のストラス=カーン氏を加え、今、国際機関のトップの座に多くのフランス人がついています。その現状と背景、そして今後の傾向についてル・モンド紙が解説してくれていますので、ご紹介しましょう。


(28日付のル・モンド紙です)

ここに並んだ写真、国際機関、それも経済関係の国際機関のトップに君臨するフランス人たちです。左に立っているのはヨーロッパ復興開発銀行総裁のジャン・ルミエール氏(Jean Lemierre)、真ん中上がWTO(世界貿易機関)事務局長のパスカル・ラミー氏(Pascal Lamy)、その下が11月からIMF(国際通貨基金)の専務理事になるドミニク・ストラス=カーン氏(Dominique Strauss-Kahn)、そして右端がヨーロッパ中央銀行総裁のジャン=クロード・トリシェ氏(Jean-Claude Trichet)。いいところを押さえていますね。

では、どうして、このように、国際機関のトップにフランス人が多いのか。ル・モンド紙曰くは・・・

フランス人、特に官僚たちは多極外交、多国間の調整に長けており、国際機関のトップに相応しい。しかも、ヨーロッパにありながら、アメリカべったりではないため、発展途上国からの支持も得やすく、南北間の調停作業にもってこいの立場にある。また、フランスの高級官僚たちには国立行政学院(ENA)出身者が多く、新しい考えや将来ビジョンを提示できる人材がそろっている。ドイツやスペインでは優秀な人材が政治へ集まりやすく、イギリスではビジネスへ行ってしまう。その点、フランスでは、しっかりした人材が官僚になっているので、人材の宝庫と言ってもいいくらいだ。また、国際機関のトップの座を得るために、政府機関、特に財務省・外務省が全力を傾けることも大きい・・・確かに今回のストラス=カーン氏の当選について、サルコジ大統領はフランス外交の大勝利だと言っていますものね。

こうした背景の下、多くの国際機関のトップを輩出してきたフランスですが、残念ながらその終焉も近づいているとル・モンド紙は言っています。どうしてか・・・まずは、フランスの個性の弱体化。以前ほどフランスの個性的な存在感がなくなってきている。政治的には、G8を中心に主要国のコンセンサスの下に多くのことが取り決められるようになっている。また経済面では、統一通過ユーロの導入により、フランスだけで勝手に動けなくなっている。こうした理由で、フランスの個性発揮の場が狭められてきている・・・。

また、BRICsなどの新興国がその国力に見合ったポストを要求し始めており、今までのように、欧米中心にポストを分け合うのが困難になってきている。特に、1997~98年のアジア経済危機の際、書類にサインをするインドネシアのスハルト大統領を見下していた当時のカムドシュIMF専務理事(フランス人)の横柄さが途上国に反感を植え付けてしまった。世界に配信された当時の写真が、ターニングポイントになったとも言える。すでに、WHO(世界保健機関)のトップは中国人であり、ILO(国際労働機関)はチリ人がトップにいる。こうした動きは今後も強まるだろう・・・確かに、今回のIMF専務理事選出に際しても、世界銀行はアメリカ、IMFはヨーロッパという不文律に反対する声が多かったですものね。

さらに、国際機関側が求める人材にも変化が出てきている。調整能力に長けた官僚タイプから、特定の分野に秀でたプロフェショナルへ、あるいは途上国などの心情にも思いを馳せることのできる政治家タイプへと、要望が変わってきている。

こうした状況から、WTOやヨーロッパ中央銀行の次のトップの座にフランス人が座ることはないだろう、とル・モンド紙は言っています。国際機関のトップに翻る三色旗の終焉・・・

・・・しかし、ストラス=カーン氏は大学教授からスタートした政治家です。そして経済学と公法の専門家。官僚上がりではない人材を国際機関のトップへ送り出したのは、サルコジ大統領の慧眼のなせる業だったのか、それとも、野党・社会党を弱体化させるための人材引き抜きが、たまたまラッキーな結果を生んだだけなのか。もし前者ならその時代を見抜く眼力はたいしたものですし、後者ならその運の強さはたいしたもの。いずれにせよ、サルコジ大統領へ、時代の風は吹いているのかもしれません。

ところで・・・言わずもがなのことですが、国際機関、特に経済関連の国際機関のトップ、そしてそうした国際機関で働く職員・・・日本人の数が少ないようです。言葉や文化の違いがあって大変なのだとは思いますが、ぜひ若い人たちにはそうした壁を乗り越えて、より広い舞台で活躍してほしい―――応援したいと思います。

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