50歳のフランス滞在記

早期退職してパリへ。さまざまなフランス、そこに写る日本・・・日々新たな出会い。

夏期講座、始まる。

2007-08-02 00:31:56 | 学校
ソルボンヌ文明講座の8月講座が始まりました。初日の朝8時半に集合。そこでクラス分けの結果が発表になり、そのままいきなり授業開始。08:30~10:30、10:30~12:30、12:30~14:30と3つの時間帯があるのですが、今回はラッキーにも10時半からのクラス。さすがに朝8時半は、毎日が日曜日の人にとっては早すぎるようで、まずは、めでたし、めでたし。

と、ここで今日のブログが終わってしまうわけではありません。まだまだ、例によって、続きます。


(19・20世紀文学の抜粋を集めた文学教材。通常学期でも同じものを使うので、もう5冊目です。なお、表紙には11-18世紀となっていますが、これは本来、黄色い表紙のもう一冊。この緑の教材、表紙はともかく中身はきちんと19・20世紀の文学作品です。細かいところは気にしないのがこちら流)

早速、最初の授業。28人もいます。大人数ですね。さすが、ヴァカンス・シーズン。教師の数が少ないせいでしょうか、一クラス、目いっぱいの学生を入れているようです。その中で目立ったのが、ポーランド人。5人以上います。去年の夏はハンガリー人が多かったのですが、今年は、ポーランド。EUに加入した東ヨーロッパから、語学の勉強、あるいは留学に来る人が増えているのでしょうね。たぶん、同じ状況がイギリスでも見られるのではないでしょうか。学生の出身地に、世界の情勢を垣間見ることができるようです。

しかも、イギリスは、フランスよりも外国人労働力の受け入れに寛大なようですし、なんといっても、英語。きっと、労働力としても、大勢の東欧出身者が住み始めているのでしょうね。

そして、授業の後は、レストU(学食)へ。すると、これはどうしたの!!!とビックリするくらいの長い行列。年度初めの秋と同じくらいの長い行列。


(階段2フロア分ほどの、なが~い行列)

食事を取るまでになんと40分。夏休み中は非常に空いているのが普通なのに・・・どうしたことでしょうか。どうも、ある一団がひとつの原因のようです。中国人学生たちのグループ、なんと30人以上いるようです。ちょうどその後ろについてしまったのですね。運が悪い。それにしても30人以上もがグループでフランス語の勉強に来ている。今までにも増して、中国からの留学組が増えているようです。世界に広がる、中国パワー。つまらないところで、実感してしまいました。

ただ、語学学校の上級のほうには、中国人が少ない。語学学校にいるよりは、少々無理をしてでも、大学に入ってしまうようです。大学のほうが授業料が安いですし、何しろ将来に必要な大学卒の資格をどうしても取りたいようです。このあたり、意気込みが違いますね。借金までして、留学。人生をかけて来ているのかもしれません。

そして、40分も列に並んでありついた昼食。

(メイン(2種類から選択)、前菜1品(サラダ数種から選択)、デザート1品(フルーツ、ヨーグルト、チーズなどから選択)、そして顎がしっかり発達しそうなパン)

今日8月1日から値上げだそうです。2.75ユーロから2.80ユーロ(約460円)へ、50サンチームの値上げ。一年前にもやはり50サンチームの値上げがありました。50サンチームといえば、8円ちょっとですから、たいした額ではないのですが、率でいえば18%。公共交通機関の1ヶ月定期も7月に52.5ユーロから53.5ユーロ(約8,800円)へ値上げ。通信関係にも一部値上げが。円安に、物価上昇では、日本からの留学生も大変です。留学期間を短縮した人もいるほど―――。

ようやく、快晴、最高気温26度と夏らしくなった、8月最初のパリです。

↓「励みの一票」をお願いします!
 下記をクリックすると、ランキングにアクセスし、投票になります。

人気blogランキングへ


肩をすくめて、ウイ・ムッシュー。

2007-07-26 00:28:19 | 学校
「今何時だと思ってるんだ。12時まで15分しかないじゃないか、今頃来て、なんだ!」・・・また、例によって叱られてしまいました。

今日は、ソルボンヌ文明講座・夏期講習の申し込みに行ってきました。春学期と冬学期の間、6月から9月まで、通常の授業に替わり、1ヶ月でも受講できる夏期講習が行なわれています。去年は7月に受講したのですが、今年は8月。去年の申し込み会場になっていたエストラパード通りの校舎へ行ったのですが、今回はそこではなく、ソルボンヌの本部なんだそうです。単に受講申し込みなのですが、毎回のように会場やプロセスが変わります。いかにも、フランス。担当が変われば、いろいろ変わってしまう。絶対に前例主義ではない。ないどころか、反前例主義、と言ってもいいくらいです。担当が同一人物の場合でも、気分次第で大きな変更が。


(ソルボンヌの本部校舎)

窓口が12時までだからとせっかく11時半過ぎに着いたのに、本部へ行かなくては。でも歩いて5分程度。楽勝、楽勝・・・と、思っていたら、本部校舎のいつもの入り口が閉まっているではないですか。夏休み。別の入り口の守衛さんに聞いたら、裏側の通りの入り口から入るように、ということなので、細長い校舎の長いほうの辺をぐるっと半周。そこから校舎内に入りなおし、いつも以上の距離の廊下を歩いてようやく到着。その時刻が11時45分。

そこで、冒頭のお叱りが。でも、この叱った受付のおじさん、誰にでも、どんな小さなことにでもすぐ怒るおじさんなので、こちらは慣れっこ。あ、まただ、と肩をすくめて、ごめん、ごめんと言っておけば、申し込み用紙はくれるので、問題なし。

12時まで窓口は開いているわけで、しかも時間を過ぎたわけではない。時間前に入ればOK。日本ならそう考えますよね。でも、フランスでは12時に作業を終えて昼休みにする、という意味。15分前なんかに来てはいけない、ということのようです。

でも、何も怒り飛ばさなくても、と思いますよね。いきなりここで怒られて、ソルボンヌが嫌になってしまう人も実際いるようです。でも、このおじさん誰に対しても同じように怒っていますので、差別ではない。それでも、第一印象というものがありますよね。ソルボンヌに対してだけでなく、フランスに対しても嫌なイメージを持ってしまう人だっているかもしれません。

そんなお叱りを受けたこの日、いいこともありました。天は我を見捨ててはいない(オーバーな)! 最初に行ったエストラパード通りの校舎入り口で、文明講座のディレクターとばったり。ソルボンヌ大学の教授でもある人なのですが、以前この方のコンフェランスを取り、試験も受けていました。また、別の校舎でたまたま2~3分ほど話したことがあったのですが、顔を覚えていてくれて、にっこり。また受講しますと言ったら、それはよかった、また一緒に勉強できてうれしい、というご挨拶を頂いてしまいました。苦あれば楽あり、嫌なことがあれば良いこともある。セ・ラ・ヴィですね。


(ソルボンヌ広場から見たところ)

と、いつものように、フランスの良いところだけでなく、嫌なところも書いてしまいました。フランスが好きな方にとっては、どうして私のフランスの嫌なところなんか書くのよ、とそれこそ叱られてしまいそうですが、フランスだって、天国ではない。他の国と同じように、良いところもあれば、嫌なところもある。好きだからといって片目で見るよりは、両目をしっかり見開いていたほうが、本当の姿が見えるかもしれないと思っています。

「読者の『知りたいこと』を伝えるのはまさに新聞の仕事だが、読者のそれほど『知りたくないこと』も時に書かなければならない。それがジャーナリズムであると私は思っている。」と、新しく朝日新聞・主筆になった船橋氏が書いています。私の場合は、単にブログ、一浅学の徒が趣味でやっているブログでしかないので、ジャーナリズムに比肩できるはずもないのですが、それでもおしゃれなフランスだけでなく、その反対のフランスも時には紹介したいと思っています。お嫌でなければ、これからもお付き合いの程を!

↓「励みの一票」をお願いします!
 下記をクリックすると、ランキングにアクセスし、投票になります。

人気blogランキングへ


外国人記者が見たフランスの新聞。

2007-05-18 00:23:03 | 学校
ソルボンヌ文明講座は、今学期、“L'expression ecrite”(文章表現)というクラスを取っています。先日の授業で、いくつかの文章を一つにまとめるSynthese(まとめ)をやったのですが、その課題の一つが「三人の外国人記者の目を通して見たフランスのプレス」というものでした。フランスの新聞は、日本などの新聞とかなり違うと思ってはいたのですが、プロの記者の目にはどう映るのでしょうか、syntheseを書くよりも三つの文章を読むことに夢中になってしまいました。



日本、イギリス、イタリアの三人の記者がそれぞれフランスの新聞メディアについて端的に語っています。

・M. Suzuki(鈴木氏:NHK)
フランスの新聞記者の仕事ぶりは、日本の記者とはまったく異なる。フランス人記者は、出来事・事件の紹介ではなく、それらを分析し、それらについて自分の意見を述べることに精力を傾けている。しかも、しっかり論戦も張っていて、新聞というより雑誌のようだ。また、それぞれの新聞には特徴があり、個性的。ただし、発行部数は少ない。日本の新聞は部数が多いので、どうしても一般的な報道になってしまう。

・M. Bremmer(The Times:イギリス)
あまりに多くのスペースがフランスの国内政治に振り分けられているのが最も特徴的だ。記者や新聞にはっきりとした個性があり、そのコメントに差があるので、事実を知るには数紙を読まなくてはならない。もう一つの特徴は、非常に文学的だということ。18世紀の哲学者の文章を引きながら反論したりしている。そして、記者たちは、事実を追及するより、自分の意見を述べることに熱心だ。

・M. Guatelli(Corriere della sera:イタリア)
政治・経済および大事件以外については殆ど報道されないので、新聞を読んでいるだけでは今フランスで何が起きているのか分からない。また記事では多くの意見が開陳されており、ジャーナリズムというよりは、フランス文化の重要な一部となっている。その分、社会面的報道が少ない。もう一つの特徴は、記者たちが自分たちを特別な存在だと思っていること。アングロ・サクソンの国では新聞記者も普通の市民の視点で活動しているが、フランスではまだ自らを特別視している。



三人とも異口同音に言っているのは、フランスの新聞は事実の報道より、記者の意見の発表の場になっている。その結果、新聞だけではフランス社会の出来事がよく分からない。また各紙個性的なので、一紙だけでは事件・出来事の本質を知ることが容易ではない。どうも、記者の個人的意見は分かるが世の中全体の動きが見えにくい、というのがフランス新聞の特徴のようです。

こうした特徴には、誰もが何事にも一家言を持つ社会、というフランス社会の特徴が色濃く反映されているのかもしれませんね。そして、読者が記者の意見を読みたがっている、あるいはそうした役割を新聞に求めているのであれば、フランスの新聞はこれからも変わらないのでしょう。フランスは、どこまでもフランスであるようです。とは言うものの、変化を標榜し、アメリカ流の競争社会を目指しそうなサルコジ新大統領の下、フランス社会がどう変わっていくのか・・・いっそう目が離せませんね。

↓アクセスランキングへ「励みの一票」をお願いします!

人気blogランキングへ


フランスにがっかりの日本人。

2007-04-04 01:03:12 | 学校
先日ご紹介した、ボランティアのフランス語会話サークル。初めて会ったフランス人の高齢者から、突然こんな質問を受けました。

「あなた、日本人? そう、それじゃフランスに来てガッカリしているでしょう!?」

そんなことないですよ、どこの国にも良いところと嫌なところはありますから、と正直に答えたところ、

「ここで会う日本人、若い女性が多いのだけれど、みんなフランスにきて失望したって言うのよ。こんな筈じゃなかったって。どうも、みんなフランスは理想郷だという幻想を抱いて来るようで、現実との差にショックを受けてしまうみたいよ。」

なるほど、そういう事はあるのかもしれないですね。フランスで何かをやるために来たのではなく、フランスにいることが目的、フランスに暮らす自分に満足するために来たとすれば、ガッカリしてしまうのかもしれないですね。何しろ、この国で暮らすのも楽ではない。住まいを探すのも一苦労、見つかったと思っても不満がいっぱい、ビザの取得も大変、人種差別される側であることを思い知らされることもある。これが私の憧れたフランスなのかしら・・・ギャップが大きいのでしょうね。


日本では、フランスのいいところだけを取り上げた情報が氾濫(写真はあくまでイメージ、特に内容とは関係ありません)。いつの間にか理想の国として思い描くようになってしまうのでしょうね。パリへ行けばシンデレラになれる。王子様も現れるかもしれない。今までとはまったく違った人生が待っている。夢の国、フランス・・・ところが、現実は・・・。

そういえば、このボランティア団体に登録した外国人、最も多いのはなぜかブラジル人で、次いで中国人。そして3番目に多いのが日本人なのですが、日本人と同じテーブルを囲んだことは今までの2ヶ月半で1回しかない。どうしてか。登録したものの、1~2回で来なくなってしまう日本人が多いそうです。なぜか。まず、自分から積極的に話さないと、話すチャンスが少ない。黙っていると、そのままで終わってしまう。手取り足取り、話すチャンスを与えてはくれない。だから話すチャンスが少ない。行っても仕方がない。また、話題が、映画や美術、文学あるいは国際情勢になったりする事がよくあるのですが、それらに詳しくない、あるいは興味がない。だからつまらない。

もちろん全員が全員こうだという訳ではないのですが、こうした理由で来なくなってしまう日本人が多いそうです。

フランスへお客さん気分で来ると、厳しい現実の前にがっかりすることが多いのではないでしょうか。ひどい場合は、「パリ症候群」になってしまう。気の毒としかいいようがありません。フランスで何をやりたいのか、目的をはっきりさせることが、まずは大切なようです。これは、フランスに限らず、どこででも言えることだとは思いますが・・・ただ、マスコミを通してのイメージがフランスはあまりに美しすぎるため、大きな誤解が生じやすいのだと思います。フランスへの留学や長期滞在をお考えの方、お気をつけください、老婆心ながら・・・。

↓「励みの一票」をお願いします!

人気blogランキングへ

率直な、日本観。

2007-03-23 02:36:26 | 学校
ソルボンヌはすでに4学期目。テキストやノートの詰まった重いバッグを持ってあちこちの校舎へ移動し、文法中心に2時間、発音1時間、講義2時間・・・こうした毎日はさすがに老体には応えるので、今学期は少し楽なコースに替えました。文法は最上級を2学期やったので、これからは問題集より実際に使いこなすことが大切!と勝手な、そして至って楽観的な思い込みから、今は文章表現のコースを取っています。週2回、各3時間。

そこで、少し空いた時間をどうするか。フランス語を話す機会を増やしたい! ちょうどいいタイミングで、素晴らしい場所を紹介してもらいました。キリスト教系のボランティア団体が外国人にフランス語を話す機会を提供してくれる場所です。毎日午後2時から7時まで。部屋に用意された5つほどのテーブルにそれぞれ一人、フランス人が座ります。その周りを数人から7~8人の外国人が取り囲み、一緒にフランス語を話す、という仕組みです。5時間は長いので、半分の2時間半経ったところでフランス人は交代します。しかし、外国人のほうは何時間居てもOK、逆に30分程度で帰っても問題なし。また月~金毎日来てもOK。学校ではないのでクラス分け試験もなく、たまたま居合わせた人たちの中で話すので、レベルはまちまちです。でも、しゃべったが勝ち。積極的に話す練習にもなります。なお、ボランティア組織なので、寄付を年間10ユーロするだけで誰でも参加できます。


(入り口から見た教室の一部です)

さて、ここでボランティアをしてくれているフランス人たちは、平日の午後来れる人たちですから、皆さん高齢者。若くて50代後半、上は80前後まで。外国に住んでいたことがある、子どもが外国に住んでいるのでそこへ何度も行っている、外国旅行が好きですでに多くの国へ行ったことがある・・・理由はさまざまですが、外国あるいは外国人に関心のある、ある程度教養のある人たちが相手をしてくれています。

そこへは週2回、通っています。決まったテーマがあるわけではないので、そこにいる人たちの国の話題だったり、フランスの文化(映画・美術・文学など)の話になったり・・・話題は外国人から出されることも、フランス人から提供されることもあります。そうして話していて面白いと感じることは、フランス人の率直な意見が聞けることです。退職後ですから、もう何も怖いことはない、というところでしょうか、本音が態度や言葉の端はしに率直に表れます。フランス人の高齢者が外国に関してどんな認識をしているのかがよく分かります。

先日は地下鉄の話になりました。質問:日本に地下鉄はありますか、答え:もちろんありますよ、質問:どこの国が作ってくれたのですか?・・・!

美術館の話題。質問:日本に美術館はありますか、答え:もちろんあります、質問:絹織物などを展示しているのですか?・・・!!!

外国に興味があるといっても、ヨーロッパ内だったり、アメリカ、あるいは中近東どまりであると、日本といえどもこんな認識なんですね。アジアやアフリカは、欧米の援助がないと何も作れない、欧米にあるような文化は何もない・・・こんなふうに思っているのかもしれませんね。でも、こうした質問をくれる人たちを非難する気は毛頭ありません。一般的日本人だって、アフリカに関してどんな印象を持っているでしょうか。今でもライオンを追いかけていると思っている人が、実は多かったりするのではないでしょうか。もちろんフランスの高齢者でも日本に行ったことがあるとか関心のある人の認識はまったく違います。例えば、日本では、北のほうでは雪が降るのでスキーができる、昔札幌でオリンピックが行われた、とか詳しく知っている人もいます。

国や地域のイメージというのは、なかなか変えられないものだと思います。インターネットのお陰で、かなりの情報は取れるといっても、それは自分の興味の範疇のみ。興味のないことに関しては、今も昔の誤解だらけ、ではないでしょうか。

実に率直な意見や質問をくれるこの場所は、フランス語を話す場であるとともに、フランス人(高齢者)の外国認識について教えてもらえる場でもあります。素顔のフランス人を知る機会ですので、楽しみながら、継続していこうと思っています。

↓「励みの一票」をお願いします!
人気blogランキングへ

日記アクセスランキング

試験結果と窓口業務。

2007-03-06 01:20:32 | 学校
1月下旬に受けたパリ商工会議所のフランス語試験の結果をもらってきました。本来なら2月23日にもらえたはずなのですが、ソルボンヌの事務室に行ったら担当者の窓口に行く前に、受付で、まだ届いていない、と言われてしまいました。試験当日、商工会議所の試験官は23日にソルボンヌでもらうようにとしっかり言っていたのですが・・・。でも、こうしたことは、フランスではよく起こることです。とくに2つ以上の部署が関連すると、それはひどいものです。商工会議所が結果を送るのが遅くなったのか、ソルボンヌの中で書類がどこかに行ってしまっていたのか・・・ただ、23日はソルボンヌの担当者の窓口が休みで閉まっているのが入り口から見えてしまいました。ということは、この日学生が結果を聞きに来ることが分かっていながら休んでしまった(病気なら仕方ないですが、何しろ金曜日ですから・・・)。もちろん、他の職員が自分の担当以外のことをやることは一切ない。といことで、翌週以降出直しになった学生も多かったのではないでしょうか(この辺わきまえて、はじめから26日の週に行った賢い学生もいたことでしょう)。こうしたことは、よく起こることで、驚きも、怒りもありません。これがフランス、ここではこれもセ・ラ・ヴィ(これが人生)です。


結果は100点満点で75点以上取れたようで、トレ・ビアン付きの合格(avec mention tres bien)でした。55点以上で合格、65点以上ですとビアン付きの合格(avec mention bien)です。日本のサイトで見ると、今回受けたDFA-1というのはフランス語学習500時間以上のレベルということですので、仏験では準1級程度、ソルボンヌではアヴァンセ(上級)レベルです。上級・最上級ひとくくりで行われたDFA-1の試験ですが、ソルボンヌの学期終了直後に特別に行ってくれた試験ですので、内容はともかく、感謝です。

ところで、ソルボンヌのレベル名が先学期(つまり2006-07年度)から変わっていますので、ついでにご紹介しておきます。

以前は入門の方からElementaire-1、Elementaire-2、Intermediaire、Superieur-1、Superieur-2という5段階で、Superieur-2が最上級でした。しかし、1と2どちらが上なのか分かりにくいという声が、特に1の方が2より上だという感覚の強いアジアの学生から多くなったようで、はっきりさせようと変更したようです。今は、Debutant、Elementaire、Intermediaire、Avance、Suprieurとなっています。名前が変わっただけでやっていることは同じです。やはりナンバー2よりナンバー1。日本、中国などの学生には、この意識が強いようです。成長のバックボーンなのかもしれませんが。

↓「励みの一票」をお願いします!
日記アクセスランキング

合格証書授与式。

2007-02-11 03:31:56 | 学校
ソルボンヌ文明講座・冬学期の合格証書授与式が、10日に行われました。以前は毎学期行われていたそうなのですが、今回、突然何年ぶりかで復活しました(去年は講義室でもらうだけでした)。



前日の9日に結果発表があり、合格者のうち式に出席を希望する人はガウンと帽子をもらうことになります。合格者が全生徒の約三分の二にあたる1,100人ほどおり、欠席者もそれなりに多いとはいえ大人数での式になるので、午前・午後の2回に分けて行われました。こうした「儀式」、晴れの場はどうも苦手で普通なら欠席するのですが、ブログにはいい話題かと思い、意を決して出席してきました。


会場は、ソルボンヌ大学の階段教室。Rue des Ecoles(デ・ゼコール通り)に面した入り口から入るのですが、ここから入るのは初めてでした。

入ってすぐ、上を見上げるとこのようなステンドグラスが。歴史と伝統を感じさせる校舎です。


早速、濃紺のガウンを羽織り、帽子を被る。家族・友人の出席もできるので、写真係として家族連れで来た人たちも多くいました。

壇上には教師たちの中から20人ほども、同じく前日にもらった黒いガウン姿で並んでいます。式は、学長、文明講座のディレクター、教師代表のユーモアのある祝辞があり、

後は一人ひとり壇上で合格証書を学長、ディレクターなどから受け取ります。


ある程度まとまったところで、最初の写真のように集合写真の記念撮影。学校側の用意したカメラマンと、自分たちでも撮りたい多くの学生・・・あちこちでシャッターの音がしていました。若い人が多いだけに、青春のいい思い出になったことでしょう。

式の間に、学生を代表して、最上級で最も試験の点数のよかったベトナム人の女性がお礼の言葉を述べましたが、実に立派な挨拶でした。感心してしまいました。

式は約2時間。全員が証書を受け取り、再び学長の挨拶で終了。あくまで外国人のための語学講座。それでも、合格はうれしいもの。しかもこうしたセレモニーがあれば、なおさら。出席した人たちはみな大満足。きっとまた継続されるものと思います。

ただ、一つだけ気付いてしまったのは、こうしたガウンや帽子、色やデザインのせいもあるのでしょうが、白人には似合うものの、東洋人が着るとみんなカンフーになってしまうことです。その風土や歴史の中で生まれてきた「服」は、やはりその土地の人に最も合うようですね。当然のことで、仕方のないことです。でも、式自体になんら傷をつけるものではありません。

↓「励みの一票」をお願いします!
日記アクセスランキング

パリ商工会議所フランス語試験。

2007-01-27 01:53:23 | 学校
先日、パリ商工会議所 (Chambre de commerce et d'industrie de Paris) の主催するフランス語試験を受けてきました。“Diplome de Francais des Affaires 1er Degre”(実用フランス語第1段階)というタイトルで、ソルボンヌ文明講座の最上級・上級で実用フランス語のクラスをとっている40人くらいが一緒にひとつの教室で受験しました。

会場は、Ecole Commerciale(商業学校)でした。


それなりに伝統を感じさせる校舎ではありました。

試験は初日に筆記(ビジネス文書の理解力・実用フランス語の単語力・聞き取り・ビジネスレターの作文など)、2日目が面接で、フランス語の記事のまとめと質疑、母国語で書かれた記事のフランス語でのまとめと質問、という構成になっています。

と、ここまではいたって平凡なご紹介なのですが、この試験、思わぬビックリがふたつありました。

まず最初は、辞書持込可。単語力を問うパートがあるのにもかかわらず、辞書の持込がOK! 仏仏辞書だけでなく、2ヶ国語の辞書も可。問題数が多いので辞書など見ていると時間がなくなってしまう、な~んていうことは全くありません。理解力と単語力を問う部分は1時間、でも30分ほどで終わってしまう程度。じっくり辞書を引いても時間が余ってしまいます。でも実際には、辞書が必要なのは2問程度でしたが、とにかく単語力を問う試験で辞書持込可、とはビックリでした。なお、辞書は辞書でも電子辞書は持ち込み不可。どうしてなのでしょう。機械類が嫌いなフランスらしい決定なのでしょうか?

もうひとつは、騒音。聞き取り試験があるというのに、校庭から大音量の音楽。試験時間中、ず~っと騒音が鳴り響いていました。まだ廊下に近いほうに座っていたのでよかったですが、窓側の人はいい迷惑だったようです。その騒音の基は、なんと遊園地にあるような機械仕掛けのロデオ。ロデオ乗り競争を校庭で学生たちがやっていたのでした。いくら間借りで行う試験とはいえ、せめて聞き取りの時間くらい音楽を止めてもらえばと思うのですが、お構いなく試験は騒音のなか行われました。

辞書持込可と騒音と・・・これも彼我の差。こういうものなのだと納得するしかないですね。いろいろなことをやればやるほど、彼我の差に直面することになります。それが憂鬱になると、ここにいるのが苦痛になってしまうでしょうが、面白いもんだと思えるうちは、まだここにいようと思っています。

↓「励みの一票」をお願いします!
日記アクセスランキング

誰の責任?

2006-12-17 02:19:47 | 学校
ソルボンヌの授業では、毎日10分程度、その日の話題をみんなで話すことになっています。生徒が話題を提供したり、教師が紹介したり・・・新聞やTVで報道された内容が多いのですが、先日は日本が話題になりました。



Metro(メトロ紙)に小さく紹介された「安倍首相の給与返上」です。見出しは“安倍晋三の自己処罰”。給与を三ヶ月返上することを発表したが、その理由は、2001年から174回開かれたタウンミーティングでやらせ質問を頼むため政府が参加者にお金を支払ったこと。このように紹介されています。

これを読んだ欧米の人たちは、なぜ首相がこの程度の責任を取るのか理解できないようです。もし安倍首相が指示したものなら、この程度の自己処分ではすまされない。逆に彼が指示したのでないなら、どうして責任を取るのか。役人が勝手にやったのなら、その人間が明確に責任を取るべきだ・・・。

「個」がしっかりしている社会では、責任も、まずその所在を明確にした上で、どう罰するか決めることになるようです。前政権下での問題に、なぜ現政権のトップが責任を取るのか。前政権のトップの指示なら前首相が責任を取るべきだ。誰が指示したのかがはっきりしないのに、現首相が自己処罰をどうしてするのか・・・。日本は価値観の違う国だ、と思われてしまうようです。

日本には組織を守る方法がふたつ。トカゲの尻尾きりか、トップがまず謝ってしまい、責任の所在をうやむやにし、騒ぎを大きくしないこと。今回のは後者。首相まで給与を返済したのだから、この辺で止めておこう(官僚の処分は出たようですが)。そして、手打ち。やったことはやったこと、賞賛も責任も明確にその個人に行く社会と、個より組織が大切で組織を守るために責任の所在をはっきりさせない社会。

それがどうした、日本には日本のやり方がある、という意見もあると思います。その通りです。それぞれの国に、それぞれのやり方がある。それは尊重すべきです。ややもすると、アジアやアフリカのやり方を、遅れている、間違っている、こんなやり方だからいつまでたっても遅れているんだ、と決め付けてしまう意見を日本でもときどき聞きますが、それもやり方、方法が違うだけなのかもしれません。

なかなか相互理解は難しい。信じられなくてもそういう社会があることをまず知ることからはじめないと。拒否したら、理解もそこでストップしてしまいます。知ること、そしてその背景を理解するよう努めること。その積み重ねが必要なようです。


↓アクセスランキングへ「励みの一票」をお願いします!
日記アクセスランキング

真実を認めるまでの時間。

2006-12-15 02:46:02 | 学校
ソルボンヌのコンフェランス(講義)で「フランス映画の諸相」(Aspects du cinema francais)というのを取っているのですが、これが非常に面白い。基本はフランス映画の歴史なのですが、ところどころに映画に関するオモシロねたが盛り込まれています。たとえば、フランス映画は殆ど1時間半前後の長さなのだが、どうして2時間以上の作品が殆どないのか・・・こちらでは多くの映画館が1作品だけを上映する。従ってあまり長尺だと1日の上映回数が減ってしまう。入場料は映画の長さに関係なく同じなので、上映回数の多いほうが収入が増える。従って、上映時間は短いほうがいい。営業上の理由だったのですね。


(講義はこんな階段教室で行われています)

最近は、フランス人が第二次大戦下の自らの状況をどう認識したか、その変遷を映画で端的に示してくれました。

①La Bataille du Rail(鉄路の闘い)
ルネ・クレマン監督の1945年の作です。ドイツ占領下のフランスで、鉄道員たちがいかに抵抗運動を行ったかを、セミドキュメンタリータッチで描いた佳作で、46年のカンヌ映画祭で監督賞と国際審査委員賞を受賞しています。フランス人が皆、レジスタンスとしていかに勇敢に戦ったかにスポットが当てられています。

②La Traversee de Paris(パリ横断)
1956年の作品で、監督はクロード・オータンララ、主演はジャン・ギャバンです。ナチ占領下のパリ、闇市で肉の運搬を生業としている男とその相棒の日々をコメディタッチで描いています。占領下でも、闇市を利用してしたたかに生きていた人たちがいた、つまり全員がレジスタンスだったわけではないことが言外に伝わってきます。

③La Chagrin ou la Pitie
1969年の作品で、たぶん日本未公開。戦後フランスで最も重要なドキュメンタリー映画といわれている作品。フランス中部、クレルモン・フェランに近い村で、戦争中ナチやその傀儡政権(Vicy政権)に協力した人、あるいはドイツの軍服を着て闘った人たちの心の中を描いています。反ユダヤ、あるいは反共産主義からドイツを支援した人が多いそうです。

④Indigenes
今年公開の作品で、先日このブログでも紹介しましたが、フランス軍の一員として最前線で戦いながら忘れられてしまっていた旧植民地の人たちを掘り起こした作品です。

要は、戦後すぐは、フランス人はみんなレジスタンスとして自由のために勇敢に闘ったのだ、という認識で堂々と胸を張っていたのですが、そんなことはない、自分の生活のために闇市をやっていた人もいたのだ、と認めるのに11年。ナチあるいはVicy政権への協力者(コラボ=collaborateurs)もいたのだという事を受け入れるのにさらに13年。そして、フランスのために戦った植民地の人たちに思いを馳せるのにさらに37年もかかった、ということです。

明晰な思考を好むフランス人にしても、自らの暗い過去を認めるには時間がかかったわけです。できれば、自らの暗部は白日の下に晒したくない。なかったこととして忘れていまいたい。人間共通の気持ちなのかもしれません。そこに自らメスを入れ、人類共通の教訓として残したのが映画だった、ということです。映画の力、映画人の良識・勇気に拍手を贈りたいものです。そして、こうした事情を私たち外国人留学生に聞かせてくれた教師には、さらに大きな拍手を贈りたいと思います。


↓アクセスランキングへ「励みの一票」をお願いします!
日記アクセスランキング