広く浅く

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キムワイプ車体

2023-04-22 19:33:57 | その他もろもろ
バスや鉄道車両の車体塗装の話題。
ツイッターなどネット上では、「○○バスってキムワイプみたいだ」「XXX系電車はキムワイプカラー」といった声が日々アップされている。
秋田中央交通(の一般路線バス)も、それに含まれる。


「キムワイプ」はご存知でしょうか。
キムワイプは、アメリカのキンバリー・クラーク社の「産業用ワイパー(※)」の商品名。キンバリーとワイパーからの造語のようだ。
※Wikipediaでは「紙製ウエス」「産業用紙ワイパー」としている。

日本では日本製紙クレシアが、製造販売。
2019年2月26日付、日本製紙クレシア株式会社の発売50周年の「お知らせ」によれば、アメリカでは1942年頃、日本では1969年3月から発売。
当初は十條キンバリー株式会社の扱いで、1996年の合併により日本製紙クレシア株式会社が発足。


キムワイプは、ティッシュペーパーのような使い捨ての紙だが、毛羽立たず、パルプのかすが飛び散らない特性があり、実験器具や精密機器の水分拭き取り、吸水などの用途に向く。
理系の研究室のほか工場、医療機関などでも使用されているとのこと。模型工作をする人も使うそうだ。

ボックスティッシュ同様、紙箱に入った製品で、中の紙のサイズ(シートサイズ)は大小複数ラインナップされている。
いちばん一般的なのが、120ミリ×215ミリのシート200枚入りの「キムワイプ S-200」(公式サイトの画像でもいちばんよく登場)。そのボックスはほぼ立方体。

そんなわけで、理系専攻の人の多くにとっては、なじみと思い出があるアイテム。
鼻をかんだ(紙質はむしろ硬めだし、肌の水分が吸収され、肌荒れするとか)とか、甘い味がするとか、コーヒーフィルター代わりにしたとか、“武勇伝”を語ったり投稿したりする人がいる。
最近は、日本製紙クレシアもそれを意識したのか、特設サイトやSNS発信、LINEスタンプやグッズ類まで登場している。

理系の端くれである僕も…と言いたいところだが、ほとんど縁がなかった。
必修科目の実験では、学科共同使用の実験室のキムワイプは使った。でも、卒業研究の研究室では、キムワイプは使わない(ごく限られた用途でしか使わない?)ことになっていたので。
代わりに使ったのは、生協の再生紙ティッシュペーパー。研究室の経済状況を鑑みて、ということなのだろうが、ティッシュでも困ることはなかったと思う。
大学生協の店舗では、店頭にキムワイプが陳列されバラ売りされていた(まとめ買いも可能)。今でも変わらないようで、「大学生協 研究用品カタログ」には、「実験室の大定番」として掲載。2018年版ではS-200が1箱 税込組合員価格172円、2021年版では1箱176円、1ケース・72個入り1万1600円。
同じ値段で、ティッシュペーパー5箱組が買える。紙のサイズはキムワイプのほうが小さいのだから、いかに高いかが分かる。近年、ティッシュペーパーの値上がりが著しいが、キムワイプはいくらになっているだろう。


そして、キムワイプを知る人は、そのボックスを記憶していることだろう。真四角な形と、それにデザインされた色。
公式サイトより S-200
白地に濃い緑と黄緑のライン。
僕も、個性的な名前と箱のデザインは、しっかりと覚えている。

なお、上記50周年のお知らせには、発売当初のパッケージの画像が載っていて、それは今と異なるデザイン。色はどちらかといえば黄緑色の1色印刷。いつ変わったかは不明だが、僕が初めて知った1997年には現行デザインになっていた。
また、本家アメリカ版も、やはり緑色基調だが、デザインは別物。

キムワイプのイメージカラーは緑なのだろう。公式サイトには「癒やしの緑色」のフレーズもある。
そして、現行の日本版では、濃淡2色の緑が、実質的にキムワイプの象徴になっている。コカ・コーラといえば赤、MONOといえば青・白・黒みたいな。


ここで、冒頭のバスや鉄道の車体塗装の話になる。キムワイプを知る人が、地元や旅先で見た車両の写真とともに、投稿するのだ。
ざっと見ると、道北バス、濃尾バス、たけのこ観光バス(東京都葛飾区)、相鉄バスの旧塗装、国際興業グループ各社、秋田中央交通、JR東日本115系電車“二次新潟色”(廃車済み)、JR東日本E127系電車新潟地区用(転用計画があり今後の色は不明)、JR東日本横浜線、JR東日本仙台エリア周辺の“小牛田色”などに、キムワイプを連想する人がいる。※それぞれの塗装を知りたいかたは、画像検索願います。
(再掲)右手前・国際興業グループ山梨交通
秋田のご当地ヒーロー「超神ネイガー」も、4月16日に、キムワイプの箱を持参して秋田駅西口へ出向き、秋田中央交通のバスといっしょに写真を撮って、ツイッターに投稿している。
ネイガーさんもそういう分野の人なのか、何の説明もなく「キムワイプ」の語を用いている。知らない閲覧者(21日時点で18.7万回閲覧)は戸惑ったかも。

上記各社・各車両とも、たしかに「キムワイプカラー」だと思う。「キムワイプの色」と言えば、知る人には間違いなく伝わるメリットがある。
しかし、キムワイプの箱のデザインとは異なるわけで、受ける印象は違う。色の面積、2色の比率、全体のデザイン等々により。これらの車体塗装が、キムワイプの箱と、必ずしも結び付かない。

それに、キムワイプカラーの2色の組み合わせは、キムワイプ以外にもわりと使われている。デザインというかカラーコディネート的には、「近い色の濃淡2色をいっしょに使う」のは常套手段ではないだろうか。青と水色、赤とピンクなど。
日本製紙クレシア内にも、キムワイプカラーの商品があった。
日本製紙クレシア「商品情報」では、キムワイプと同じ画像内に共存
おなじみの「クリネックス ティシュー」の緑の箱。
これも、色の組み合わせなら同じ。ちなみに、ライバルである王子ネピア「ネピアトイレットロール」にも、同じ色の袋がある。
余談だが、昔(30年くらい前?)は、水色以外の色の箱では、中のティッシュペーパーもその箱の色の紙であった。クリネックスもネピアも、その他各ブランドもそうだったはずだが、いつの間にか、全部白い紙になった。
少なくとも僕は、緑のクリネックスを見てもキムワイプは連想しない。消防車や郵便車を見て、誰もがコカ・コーラを連想するわけではないように。
「色彩のみからなる商標」に認められたMONOの3色とか、ウクライナ国旗=ふなっしーの2色ならば、ほかにあまりない組み合わせ。一方、キムワイプの2色はありふれた組み合わせで、その色の一致だけをもって「キムワイプみたい」とするのは、少々雑だと思う。


キムワイプの箱は、2色だけでなく、「地色が白色で、緑より広い面積」で、そこに「太い黄緑の帯(線)、隣接して少し細い濃い緑の帯が並行する」のが肝だと考える。
だから僕は、たしかに色はキムワイプでも、線が斜めだったり、線でなく塗りつぶしだったりする国際興業塗装を見ても、キムワイプを連想できない。
ネイガーさんにも申し訳ないが、秋田中央交通も同じ。
(再掲)現在多数派であるいすゞエルガミオ
中央交通の、特に黄緑のほうは「線/帯」とするには太すぎる。「塗りつぶし」だ。
それに、2色が直接接しておらず、間に白い線が入っているし、窓上はキムワイプでは使われないベージュ(クリーム色)で、ベースとなる白色部分がなく(※)、やはり、これをもってキムワイプとは言い難いと思う。
※現行塗装が導入された初期は、窓上が白色塗装だった。これのほうが若干、キムワイプ感が増すかも。
(再掲)現在は見られない、窓上が白い塗装


ほかにも、キムワイプカラーの乗り物がある。
先日代替わりして役目を終えた、秋田市建設部公園課の先代ごみ収集車(塵芥車)も、この2色。
でも、黄緑は地色としたほうが適切だし、間に白線が入っていて、やはりキムワイプとは違う。
(再掲)

秋田市には現役のキムワイプカラーの車もある。
2021年度に2台導入した「災害対策用排水ポンプ車」。消防車両ではなく建設部(道路建設課?)所管で、河川氾濫や大雨による浸水被害時に出動する、排水ポンプを積んだトラック。
この車体塗装は、白ベースで、濃淡2色の緑色ライン。写真を見る限りでは、2色の間に白線があるが細いようで、中央交通のバスや先代塵芥車よりは、キムワイプ感がありそう。



以上、キムワイプにほぼ思い入れがないクセに、厳しく判定してしまったけれど、僕が比較的キムワイプに近いと感じるのは、濃尾バスと横浜線。
でも、濃尾バスは、実は緑色が3色(もっと濃い緑)で、それぞれの太さは同じ。
横浜線は、ステンレスボディの帯色なので、白地ではないのだが、なぜかかなり近い印象がある。黄緑の色味が似ているのか? 同じJR東日本でも、新潟の115系・E127系には、どこか違う印象がある。
そんなわけで、真のキムワイプバス/キムワイプ電車には巡り会えていない。

キムワイプのラッピング広告車両を作るという、奥の手はありますね。
かなり昔、青森市営バスに、クリネックスの箱のデザイン(ラッピングフィルムでなく塗装だと思う)の車体広告バス(ラッピング広告という概念がまだなかった頃で、先進的)はあったかと思う。業務用商品のキムワイプでは、広告は難しいかな。

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2 コメント

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理科室 (FMEN)
2023-04-22 23:10:46
理科室の定番でした。
十條製紙という秋田ゆかりの商品でもあります。
当時は市営バスしか走ってない地域でしたが。
成分に蝋が一部入ってるから顔を拭くなと注意された子がいたり。

中央交通にキムワイプはたしかに感じません。
奇しくも明日は統一地方選ですが、昔の自民党の車がこれに近かった気がします。
秋田県連では最近見なくなりましたが県外にはまだあるとか。
自民党もキムワイプも昔あったスカイアイスに近いような気も。

中央交通だとヤマト運輸ラッピングバス失敗してからしばらくはやりませんでしたからさすがにキムワイプにはしないか。
くだんの十條製紙もなくなりましたし。

市営バスはセブンイレブン(ワンロマは羽後交通で八丈もなにかに似ていたような)ですかね。
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連想するモノ (taic02)
2023-04-22 23:55:34
秋田市と十條製紙には縁がありましたね。今も、別会社「日本製紙株式会社」の工場が向浜にあるので、いちおうつながりはまだあると言えそうでえす。
理科室、意識していなかったけれど、言われてみればあったような…
緑は自然を連想させる色だから好まれることもあるでしょう。

市営バスの路線塗装は、旧塗装から新塗装になった際にできた、太い赤い線が印象的で、かき氷シロップのいちご味を連想していました。明治屋の瓶入りとか。
それだと、中央交通はメロン味だけど、もう少し太いほうがリアルかも。
ワンロマ=旧貸切塗装は、羽後交通っぽかったですよね。秋田八丈はオレンジ・薄い黄色・水色、その3色の組合わせのモノは、なかなか思いつかないです。
復刻中の中央交通旧塗装は、色としては例えようがないような、あいまいな色です。悪くはないですが。
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