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町内のクリスマス会場

2022-12-23 22:37:11 | 旅行記
JR東日本パスの旅、+クリスマスにちなんだ話。
静岡鉄道に乗った後、翌・3日目にかけて静岡市清水区(旧・清水市)を歩いた。
ただ、清水港や三保の松原などはこれまでに訪れているので、今回は行かない。
清水と言えば、次郎長、サッカー、はごろもフーズ等々いろいろあるけれど、やっぱり「ちびまる子ちゃん」。

中学生だった1990年1月に放送が始まったアニメで作品を知り、特に初期作品で強い、シュールな世界観に惹きつけられた。
その舞台である、清水という街の存在も、ほぼ初めて知り、港があって富士山が見える暖かい土地として、印象付けられた。以前の記事のように2001年に初めて訪問し、その後も何度か訪れることになるきっかけは、「ちびまる子ちゃん」。

ちなみに、この旅行で先に訪れた長野県諏訪市と岡谷市も舞台となった、教育テレビの「たんけんぼくのまち」。岡谷の前年度・1989年度は、清水市が舞台だった。まる子よりひと足早く放送されていて、僕も多少見たはずだが、「清水」はあまり意識していなかったと思う。


今回するのは、いわゆる聖地巡礼。
忘れてはいけないのは、ちびまる子ちゃんは、完全フィクションではないが、ノンフィクションでもないこと。作中と同じ町が広がるわけではない。例えば「巴川」は、川田さんひとりできれいにできるような河川ではない。
また、反対に作中と同じものがあったとすれば、それは実際に生活する人がいる町の一部であるわけで、観光地気分で深入りするべきではないとも思う。※この点から、この記事中では、具体的な町名や施設名の文字での記載を避けることとします。【と思ったが、実際には公表されていた。末尾リンク続きの記事の後半参照。】
それでも、この街で暮らした人があの作品を作り、作中のあれのモデルがこれかと思うと、想像が広がって楽しい。

ちょうど先日、一般社団法人 アニメツーリズム協会が「訪れてみたい日本のアニメ聖地88(2022年版)」を発表した。その1つに「ちびまる子ちゃんランド 」が選ばれている。これは、清水港の商業施設内にあるミュージアムで、その名の通り、作品ありきの施設。ここが舞台になったわけではない。


作者・さくらももこが生まれてから高校まで過ごし、ちびまる子ちゃんの舞台でもある土地は、清水区の中でも、静岡鉄道の入江岡駅~桜橋駅にかけての一帯。旧東海道が通る。
JR清水駅~静岡鉄道新清水駅周辺の繁華街や、海とは、若干距離があり(遠くはない)、古くからの住宅街+ちょっとした商店街といったところ。港町や宿場町を象徴するようなアイテムは多くなく、どこにでもありそうな街並みでもある。
さくら先生の生家(以下、さくら家)は、実は青果店。入江岡駅からほど近い所にあったが、だいぶ以前に店をたたんで、父ヒロシら家族は引っ越している。昔は生家の場所を知らせる看板(公的なものではなさそう)があったようだが、今はなくなっていると思う。知らなかったが、建物は今も残っているそうだ。


さて、アニメでは1990年12月23日に放送された、51話「まるちゃん町内のクリスマス会に参加する」の巻 というのがある(後年のリメイク版もあるはず)【原作漫画については末尾の追記参照】。
町内主催の、ツッコミどころが多い、子ども向けクリスマスイベントのお話。

その会場からしてツッコミどころで、神社の「社務所」。
「まるちゃんたちの町内では、町内のあらゆる行事を社務所で行う。クリスマス会とて例外ではない」みたいなナレーションが入る。節分の豆まき大会もやったんだっけ?【末尾追記の原作の内容についても参照】
その社務所のモデルが実在するらしい。

ちびまる子ちゃんの聖地巡礼をした人たちによる訪問記を、ネット上でいくつか見ることができる。社務所については、複数の説が存在していた。
作中での「町内」とは、町内会=自治会か町内子ども会だとすれば、「町内」に所在する「神社」だろうから、数は限られ、特定は難しくはなさそう。

作中では、まる子の家は、架空の町名「入江町(いりえちょう)」にあることになっている。
実際の清水の町名には、「入江○丁目」や「入江南町」は実在する。また、大正時代に清水市が発足する以前は、この一帯は「入江町(いりえまち)」という自治体だった。
さらに、まる子もさくら先生も通った小学校は「入江小学校(現・清水入江小学校)」であり、地域の総称(小学校の通学区単位)として「入江地区」と呼ばれるようだ。

実際のさくら家があった住所は、「入江」が付かない町名。そこの町内会はどういう区割りなのか。【1月15日追記・アップ当初は町名を文字にしないことにしていたが、地域の案内地図に生家の位置が記され、町名を特定できることが分かったので記載します。新富町】
秋田市などでは、住居表示実施後も、実施以前の町名単位のまま町内会が組織され、地図上の町名と町内会の名称・区域が一致していないケースもあり、よそ者には把握困難。
ところが、静岡市では、市民局 市民自治推進課運営のサイト「ここからネット(https://kokokara-net.jp/map/story/list)」に、「自治会・町内会マップ」があり、市内の町内会の区割りと名称(さらに小学校区も)を調べられた。
それによれば、さくら家一帯では、町名と一致するエリアと名称で、自治会が組織されていた。

以上を手がかりに、ネット上で挙げられている“候補”に当ってみる。
1.淡島神社
虚空蔵尊も祀り、大きなクスノキがある。
1997年放送「こくぞうさんの木」の巻の舞台で、まる子ファンにはよく知られる。僕は青森にいて見ていない時期だけど。
したがって、クリスマス会会場とは「別の神社」であることは明白、ということになっているようだ。時々、混同してしまう人がいる程度で。
場所は入江岡駅の近くだが、さくら家とは道路の向かい側で、その道路が町境界なので「町内」でもない。

2.淡島神社の北の住宅地にある八幡神社(入江南栄町公園)
淡島神社同様、町内が異なる。
Googleマップストリートビューで見る限り、社殿のみで、「社務所」に該当するような建物はなさそう。

3.白髭神社
大きめの神社で「しらひげ神社通り」も存在。ここがクリスマス会会場だと思っている人は多いようだ。
だけど、町内会を調べる以前から、違うと思っていた。なぜなら、一帯の道路配置と町の構造を踏まえると、同じ町内とは考えにくい位置関係にあるから。さくら家の町内とは、旧東海道で隔てられている。新興住宅地ならともかく、古くからの町で、こんなに広範囲で、まとまりが悪そうな町内会は考えにくい(上記の通り、実際に違う町内会であった)。
神社の所在地が“入江”一丁目であること、隣接する幼稚園・保育園にさくら先生が通っていたという説(実際には別の園らしい)があること、この神社も作品中には登場するらしいこと、などから誤解されやすいのだろうか。

4.【1月15日追記・アップ当初は名称を文字にしないことにしていたが、地域の案内地図に記載されていることが分かったので記載します。若宮八幡神社】
さくら家の町内会のエリアにある、唯一の神社だと思われる。さくら家とこの神社は、町内のほぼ対角線上に位置する。
4番目の候補を否定する理由がないので、そこを現地確認。
この大木もクスノキか
過去に何度か通ったことがある大きい道路からも、見えることは見える。
だが、その入口は小路からさらに入った所に所在し、ストリートビューでもほぼ見えなかった。民家の間からおじゃま。

神社の格や名称を示した、石柱などは見当たらない。鳥居は、境内(敷地)の入口というよりは、社殿の直前にちょこんと立っている。小さめの木製の鳥居で、赤く塗られているが、2021年頃までは無塗装だったようだ。
石灯籠は歴史がありそうだが、社殿は、まだ新しそうでコンパクトながら立派。賽銭箱前の格子戸はアルミサッシで、無人の神社なので閉まっている(規模からすれば当然)。格子戸に開いた穴から賽銭を投入できる。雪国の者からすれば、瓦屋根なのが珍しいが、こちらでは当たり前か。

その左側に、別棟で、新しくはない建物がある。同じく瓦屋根で、社殿に接するように入口(玄関)があって、きゅうくつそう。これは、
「(町名)公民館」
ここで言う公民館とは、職員や管理人が常駐する市町村の施設ではなく、町内会館、自治会館、町内の集会所のこと。
ほかに建物も見当たらないし、これこそが、町内のクリスマス会の会場のモデルに違いない!
そして、ちびまる子ちゃんの設定年である1974年時点でも、同じ建物だったに違いない(社殿は違う建物だったことになろう)。

秋田市でも、町内ごとの稲荷神社などに隣接して、この規模の町内会館が建てられていることがある。竿燈まつりに参加する町内では、練習や準備の拠点にもなる。
考えてみれば、無人の神社に社務所はさほど必要ではない。町内のよりどころとして存在する無人の神社の管理を、町内会で行うのと、ある意味引き換えに、その敷地に町内会館を建てさせてもらっているような感じか。
作中では、分かりやすく、かつツッコミやすくするために、「社務所」としたのだろう。【末尾追記の原作の内容についても参照】
それでも、キリスト教の行事を、違う宗教施設の敷地内で行う(しかもほとんどの参加者が仏教徒)のは、シュールかもしれない。だけど、その寛容さが、日本らしくもあろう。

玄関前のきゅうくつさは別として、町内の広さを考慮すれば、一般的で妥当なサイズの公民館だと思う。
でも、作中のクリスマス会では、かなり大勢の子どもが参加していたが、この建物では収容できなそう。

鳥居の外というか横だけど、境内は駐車場として貸しているようだ。これも秋田でもある
自治会と八幡神社による看板
車が通行できる幅の出入口もあり、そこの注意書きは、自治会と神社の連名だった。
遠慮して、境内のクスノキのあるほうには行かないでしまったが、位置によっては富士山が見えるはず。

周りの道路も含めて、作中とはちょっと違って、下町っぽいというか歴史がある町の雰囲気があった。そんな違いを感じるのも楽しかった。もう1つ、まる子の舞台を訪れたので続く

【2023年6月4日追記・原作での描写・表記について
原作本は、第1巻「その5『まるちゃん町内のクリスマス会に参加する』の巻」。「りぼん」では1986年に掲載されたようで、最初期の作品。
クリスマス会場について、姉が「せまい町のくせに会場は思いっきりはずれにあるのよね……」と発言しており、実際の若宮八幡神社の位置と一致する。
アニメでのナレーションに相当する説明では「町内の神社にある集会所を“社務所”といってクリスマスの会場もそこである」。社務所の絵は、社殿とは別の建物として描かれ、実際にどことなく似ている。
したがって、作中ですでに、社務所は通称であって、神社本体とは別物であることが説明されていたのだった。そして、それが若宮八幡神社の実情と一致しているととらえることができよう。

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3 コメント

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まる子の街は (FMEN)
2022-12-24 00:30:57
海から離れている、電車が走る、商店街、神社からして秋田市なら保戸野や牛島に近いんでしょうか。保戸野は市電。
入江町の商店街が「さくら」町や牛島商店街ほど寂れたかわかりませんが。
巴川ほど旭川や猿田川はきれいじゃないですけど、金砂の土手あたりでは野口さんの姉のバカップルがいそうで、城ヶ崎さんや花輪君は中町のあたりか。
ならばひろしはあの八百屋なのか?といいたくなりますが。

フジテレビの日曜アニメは地理がいいかげんでありまして、サザエさんは山手線が世田谷に乗り入れていたりこち亀は亀有から浅草や神田に歩いていける、キテレツも多摩ながら話によっては都心数分。
でも、それが良かったんですよね、ゆるくて。
返信する
入江地区 (タロー犬)
2022-12-24 11:03:05
旧清水市の入江地区…私は生後まもなくから29歳まで、弘前大学在学時の4年間を除き25年間清水市で暮らしてきましたが、そのうち4歳頃から11歳になるまでの約7年間は、入江地区に住んでいました(最初は入江南町に住んでいて、のちに入江1丁目に転居)。なので、「清水市立入江小学校」は私の母校です。ちなみに、さくらももこ氏は入江小学校の、私の3年後輩で、私の弟とは同級生でした。私はこの学校に小学5年生まで在校しましたが、転居に伴い6年生の1年間だけは市内の他校に通っています。したがって、そちらも母校(ちなみに、椎名林檎やサッカー指導者の反町康治氏が通った小学校です)ということになるのですが、やはり私の「母校」への思い入れは、入江小に対するものが圧倒的に強いです。
入江1丁目在住時は、さくらももこ氏の実家からほんの数百mの場所に住んでいましたが、学校から帰ると、淡島神社へも白髭神社へもよく足を運んだものです。淡島神社では、目の前を走る東海道線と静鉄の列車を飽かずに眺めていたものです(線路が切り通しを走っているので、神社脇の細い土手道から見下ろしていました)。そんな次第で、ここは私が鉄道好きになった、まさに原点だといえる場所です。
一方、白髭神社の方は、夏休みになると子ども会のラジオ体操の会場として通いました。さくら家と同様、我が家もこの神社とはたぶん別町内会(徒歩6~7分程度の距離ですが…)なのですが、他にラジオ体操会場として適当な広さの場所が思い浮かばないので、いくつかの子ども会合同で、白髭神社の境内を使っていたのかも知れません。白髭神社では、ほかにも子ども会の行事や地域のお祭りが開かれていて、都度足を運びましたが、ここでクリスマス会が開かれた…、というのは記憶にありません。弟が幼少時、神社隣の「清水市立入江保育所(当時)」に通っていて、保育所で行われたクリスマス会の写真が残っているのですが、もしかすると、その見学が地域住民にも開放されていたのを、隣にある「神社の社務所」と強引に(?)結び付けて、エピソードを創ったのかも知れませんね。
そうそう、今思い出しましたが、白髭神社の境内には毎日紙芝居屋さんが来ていて、ときどき見に行っていました。1つ10円かそこらの駄菓子を買って…。昔ながらの紙芝居屋さんが、私が入江地区で暮らしていた最後の年、1973年に未だ活躍していたというのは、かなり遅くまでの残存事例のように思います。
ここまで大変長文となってしまいました。ほかにも入江地区、旧清水市のこととなると、お話しできること・したいことがいくらでも出てくるのですが、キリがなくなるので今回はこの辺で。また、機会があればコメントさせていただきます。
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コメントありがとうございます (taic02)
2022-12-25 20:24:20
>FMENさん
海との位置関係としては、土崎の臨海バイパス東側の旧国道の、さらに東側の一帯のような感じでしょうか。
一方で、ご指摘のような保戸野や牛島っぽい雰囲気もたしかにありました。続きでも触れます。
個人商店の寂れぶりは、どこも似たようなものでしょう。お店の絶対数は、それでも秋田より多いと思います。

巴川も、きれいとは言えません。規模感は旭川に近いでしょうか。入江地区は河口近くのため、茨島付近のように川幅いっぱいが水で、川田さんが手を加える余地がなさそうです。それでも、灯籠流しがされるなど、親しまれてはいます。

ちびまる子ちゃんのアニメは、いつの頃からか、静岡色が薄められてしまった印象。地名が出てくる程度で、舞台が清水である必然性が弱まったというか。スポンサーなどの都合もありそうですが。


>タロー犬さん
入江地区ご在住だったとは、なんだかうらやましいです。3学年上となると、さきこお姉さんと同学年に当たるでしょうか。
入江岡駅のオーバーパスからは、両路線の列車がよく見えて楽しそうだと思っていましたが、神社横からのほうが落ち着いて見られそうですね。かつての東海道本線は、いろいろ通って見応えあったことでしょう。

ちびまる子ちゃんでは、クリスマス会と同じ神社で、ラジオ体操もしていたことになっていたはずです。
入江地区には神社が散在し、それが公園というか子どもの遊び場としても機能している感じでしょうか。あちこちを渡り歩いて遊べたのでしょう。秋田市、弘前市もですが、そんな神社は多くない気がします。
記事中では「町内」にこだわりましたが、合同開催だったり、近隣の会場を借りた可能性もありますよね。
秋田市での我々の頃は、町内会館がないこともあり、小学校学区単位で設けられた児童館/児童センターの部屋を借りて、町内子ども会の行事をしたこともありました。

ちびまる子ちゃんにも、紙芝居屋やその他子ども向け物売りが登場します。神社でなく公園や空き地に来ていたことになっていますが。全国的にまだそんな時代だったのかと思っていましたが、最後の最後だったのですね。

貴重なお話をどうもありがとうございました。お住まいだった方の手前、恥ずかしいですが、入江地区の話が少々続きます。
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