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21年ぶりの静岡鉄道

2022-12-13 22:33:11 | 旅行記
JR東日本パスの旅。新静岡駅から、2001年以来21年ぶりの静岡鉄道に乗車。
静岡鉄道の鉄道路線は、現在は新静岡と新清水(旧・清水市)を結ぶ「静岡清水線」のみ。バス部門の子会社「しずてつジャストライン」が、静岡市周辺の路線バスを独占している。
新静岡駅同様、新清水駅も、JR清水駅とは別の場所にある。静岡駅~新静岡駅よりも、清水駅~新清水駅のほうが距離があって700メートルほどで、道も分かりにくい。

21年前は、全線を乗り通した(たぶん新静岡→新清水片道)だけだった。今回は、最初に新静岡→新清水、翌日に新清水→桜橋、桜橋→草薙と3回乗車できた。
新清水→桜橋で乗ったのが、先にアップしたハロウィン電車。そのほかをまとめてこの記事で。

21年の間に、新静岡駅が新しくなり、車両が新しくなり、ICカードで乗車できるようになった。
2001年は、「ちゃっきりフリーきっぷ」だったか、鉄道とバスのフリー乗車券を使用。磁気情報のない紙のきっぷで、ほかの乗客が皆、自動改札機を通過する中、有人通路に回った。
今回はSuicaをタッチするだけで、運賃がいくらかも気にせず(フリーきっぷでも同じだけど)、気軽に乗ってしまった。新静岡~新清水は330円、JRの静岡~清水は240円。

車両は、1973~1985年に導入された「1000形」を、2016~2023年にかけて「A3000形」に更新途中。新旧とも2両編成×12本。
2001年撮影。たぶん新清水駅付近
↑写真の1004-1504の第4編成(1004号編成と呼称するようだ)。この編成が、いちばん最初に廃車された。
また、清水でロケされた1985年の映画「ビー・バップ・ハイスクール」の、走行中の電車から川(巴川)へ飛び込む【19日訂正】投げ落とされるシーンでは、1004号編成と1010号編成が映るようだ。どちらの編成から飛び込んだのかは、よく知らないので不明。

1000形は、地方私鉄にありがちな大都市圏の中古車ではなく(理由の1つは後述)、自社発注のオリジナル。角張って窓が大きい正面のスタイルは独特。ただし、東急車輌製造が手がけたため、側面や車内は東急の車両に似ている点が多い。
A3000形も、製造元自体は同じだが、企業は2011年にJR東日本系列に替わって「総合車両製作所」となった。

A3000形は、7本は「shizuoka rainbow trains」として、1本ごとに静岡にちなんだ7つの色で塗装(ラッピングシール?)されている。
ハロウィン電車だったのは、みかんをモチーフにしたBrilliant Orange YellowのA3004号編成。
最初に乗ったのは、水色の電車。富士山にちなんだClear BlueのA3001号編成。これがいちばん最初に導入されたA3000形(この代替で、上の1004号が廃車)。
新清水駅到着後、折り返し待機中
正面下のスカート(排障器)右側に、白い文字が書いてある。
ドア横にも
「Laurel Prize 2017」。
A3000形は鉄道友の会による「ローレル賞」を2017年に受賞している。車内には、友の会から贈呈されたであろう、その旨のプレートが貼られるのが通例で、A3000形は水色にも、みかん色にもあったはず。車外の白い文字は、静岡鉄道独自かと思われ、A3001号以外の編成にはなかった。


7色でない残り5本(3本導入済み、2本未導入)は、無塗装でラッピング広告に対応するそうで、よく考えている。そして、銀色だとまた印象が違う。
A3010編成
↑広告主はトヨタユナイテッド静岡。静岡県最大手のカーディーラーで、静岡鉄道の関連会社とのこと。
無塗装の編成とすれ違った時、一瞬、リゾートしらかみ(HB-E300系)とかE233系とか、JR東日本の車両と錯覚しかけた。フロントガラスの傾斜なんかが、似ていると思う。

車内は各編成とも共通(ハロウィン電車の記事も参照)で、青いロングシート。「全席優先席」ということになっている。
荷棚
今どきの標準的な車内だが、荷棚(網棚)が、ロングシートの中央部分にしかないのがおもしろい。
吊手(つり革)
紐を束ねる部品(?)は、レインボートレインの7色が並んでいる。無塗装編成ではどうなっているだろう【15日追記・ネットで調べると、静岡鉄道100周年記念のラッピング編成では、この部分に「ありがとう」のシールが貼られていた。広告と連動させることが可能なようだ。また、何も貼らないグレーのままの写真もあったので、それもあるのかも】。
東急系の電車のこれと言えば、広告が入っているもの(弘南鉄道譲渡車)。1000形にも地元の広告が入っていたが、A3000形ではやめたということか。

握る部分の形がユニーク。全国初の「2段つり革」。個人の身長や手の大きさに合わせて、いろいろつかめるということらしい。
ドア付近は、一般的な三角形(おむすび型)。

また、上の写真奥のドア付近天井際で、吊手の支柱のパイプが、壁とつながっている。これが、今の総合車両製作所のステンレス車両の特徴で、衝突事故時の安全性を高めている。


A3000形の座り心地、乗り心地は、まあ普通かなと思っていたのだが、最後の桜橋→草薙で、1000形に乗ることができ、それと比べると、やっぱりいい。
1000形は加速がガクガクするし、座り心地は悪くはないが「古い」。確実に進歩している。
草薙駅。1000形とA3000形
冒頭の2001年の1000形には、サイドミラーというかバックミラーが付いていて、スカートはない。現在はミラーがなくなり、スカートが付いた。ミラーは2011年に撤去、スカートは2008年から設置されたらしい。
写真の1000形1012号編成は、キリン午後の紅茶ミルクティーのラッピング広告。廃車になったが、午後の紅茶レモンティーの編成もあったとのこと。
黄緑のA3000形は、山葵(わさび)をモチーフにしたFresh GreenのA3008編成。詳細は不明だが、清水エスパルスのヘッドマークが付いていて、運転室内にマスコットのパルちゃんと旗がある。お茶モチーフは、別に濃い緑のNatural Green編成がある。


前日は、残る1000形のもう1本・1011号編成、ピンク色のちびまる子ちゃん(アニメ仕様)のラッピング編成とすれ違った。清水港の「ちびまる子ちゃんランド」とのコラボレーションで、まる子による車内放送もある(時間帯による)とのこと。
A3000形(A3009号編成)にも、「ちびまる子ちゃん静岡音頭」として、3DCGのまる子たちが描かれたラッピング編成(静岡市による?)があった。各編成の運用は、静岡鉄道のサイトで公開。


新静岡~新清水は、11.0キロ、途中13駅を23分で結ぶ。昼間でも8分間隔で運行。
JR東海道本線の静岡~清水は11.2キロ、途中2駅を11分。
両端の駅は、静岡鉄道とJRで別なわけだが、途中2キロほどでは、ぴったり並行する。上のトヨタのラッピング編成の隣を、JRの貨物列車が走っているように。
桜橋駅新静岡行きホーム
↑左側2本が東海道本線。中央奥が新清水行きホームだが、こちら側とズレた独特の配置。
並行区間にJRの駅はないため、ここで乗り換えはできない。乗り換えできる駅は、長沼駅~JR東静岡駅と草薙(くさなぎ)駅~JR草薙駅。
草薙駅での乗り換えが便利なので、今回最後の下車駅が草薙駅だった。それでも、駅がつながっているわけではなく、100メートルほど歩いて横断歩道を渡らないといけない。
草薙駅新静岡行きホーム
↑構内踏切を渡った向こう側が駅出口で、その左方がJRの草薙駅。ちなみに「くさなぎ」のアクセントは平板ではなく、「宮崎」と同じ。
車内放送では、JRのほか、しずてつジャストラインの路線バスと乗り換えられる駅で案内放送が入った。そこでは「ジャストライン各路線(はお乗り換えです)」と言っていた。よそから来た人には、ジャストライン=バスとは思われなそう。


大都市静岡。沿線の家並みが途切れることはない。下町というほどではなさそうだが、生活感がある街が続く。スーパーマーケット「しずてつストア」や静鉄自動車学校もあって、しずてつグループは静岡市の生活に欠かせない存在のようだ。※しずてつストアは沼津駅前などにも店があって、県内広範囲で展開。
今回乗った限りでは、両端のターミナルでの乗降ももちろんあるが、途中駅から乗って、途中駅で降りる人がだいぶ多く感じた。地方の小都市の鉄道やバスでは、中心市街地と沿線各地の単純な行き来がメインになってしまうが、そうではないのは、やはり大都市だからだろう。そして、たった8分前に前の電車が行ったばかりなのに、何人も列車を待っている。【19日補足・2度しか経験できなかったが、始発の新静岡や新清水発車段階では、ガラ空きだった(それで車内を撮影できた)。時間帯にもよりそうだが、途中駅からの乗車が相当ある。】

駅には頻繁に停まることになり、対向列車とも頻繁にすれ違うが、複線なので待たされることもなく、きびきびと進む【14日補足・ワンマン運転だが、各駅に自動改札機類が完備され、車内で運賃収受を行わない「都市型ワンマン」方式】。駅に近づくたび、運転席でぷーぷーブザーが鳴っていたのは、誤通過防止装置のようだ。
静岡鉄道では、停車駅が少ない「急行」が運行されていた。新型コロナによる利用減を理由に廃止されたが、急行対応として、装置が搭載されているのだろう。駅通過時などに鳴らすミュージックホーンも搭載。


これまで、静岡鉄道は、弘前市~大鰐町の弘南鉄道大鰐線とちょっと似ているかなと思っていた。本数と利用客数の差は別として。ちなみに、輸送量(本数)としては大鰐線の7.5倍。
ターミナルがJR駅と別の位置にある(中央弘前駅)、距離や駅数が近い(13.9キロ、途中12駅、約30分)、東急系列の車両(初代7000系中古)、2両ワンマン運転(車内収受方式)など。
でも、新しい電車で、各駅の乗り降りが盛んなところを見てしまうと、あんまり似ていない。【14日補足・最高運転速度は静鉄70km/h、弘南60km/h(実際は55km/h?)と大差ないが、弘南鉄道は揺れる揺れる。線路の規格や保守体制の違いによるのだろうけれど、この点でも違う。】

それに電化方式(電圧)。弘南鉄道は、JRや大手私鉄でも主流の、直流1500ボルト。
静岡鉄道は、今は少数派の直流600ボルトなのだった。だからこそ、中古車入手が難しく新車を入れたのかもしれない。高頻度運転路線の最新車両が600Vなのが意外だった。

今度訪れた時は、ほかの途中の駅でも降りて、市内をいろいろ回ってみたい。
今回は、清水の街をうろついた。続く

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11 コメント

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静岡鉄道 (タロー犬)
2022-12-15 08:51:38
静岡鉄道の乗車記、興味深く拝見しました。
見慣れた風景、事象を、あらためて遠来のお客様にご紹介いただくのは、地元民としてはなんとも嬉しいものです。A3000形の「吊り手の紐を束ねる」部分が、無塗装車ではどうなっているのか…ということには、日頃乗っているのに迂闊にも気づいていませんでした。今度乗ったときに確認してこようと思います。
静岡鉄道が保有車両をすべて自社発注のオリジナル車で揃えているのは、直流600V電化なので大手私鉄からの中古車入手が難しい…ということも、ひょっとしたらあるのかも知れませんが、同社には昔から「新車を導入して使い倒す」というポリシーがあるようで、やはりこれに依るところが大きいのかな、と思います。同社は昭和30年代前半以降、かつて存在していた非電化の軽便路線、駿遠線も含めて、他社の中古車を一切導入していません。資金さえ調達できれば(連結決算ベースでみると、静岡鉄道は準大手私鉄と遜色のない財力を持っているそうです)、新車を導入して長く使うことで車両にかかるトータルコストが抑えられる、という経営判断があるのではないでしょうか?
ちなみに静鉄は、1000形の導入以前、昭和30年代から40年代前半にかけて21形、100形、300形、350形と、一連の「静鉄形電車」と呼ばれる車両を導入していますが、これらは驚くことにすべて自社の長沼工場で製造されていました(同様に駿遠線の気動車・機関車も、自社で製造していました)。特に300形は、18m級両開き3ドアでカルダン駆動という、昭和40年代初期の大手私鉄の通勤型電車とほぼ変わらないスペックで、一地方中小私鉄が自社製造したとは思えない出来ばえの車両でした。
それでは、清水区内の探訪記も楽しみにお待ちしております。
秋田にも (FMEN)
2022-12-15 20:18:23
東北で非JRの都市線は弘前の弘南、福島の飯電、仙台市営地下鉄。
秋田は街が広いからこういうのが欲しかったです。
勝平、仁井田、雄和あたりに出来ていたらなあ。
御所野モノレールが頓挫しなければ?
コメントありがとうございます (taic02)
2022-12-15 23:15:00
>タロー犬さん
もっとじっくりと見て、乗れば良かった気がしていますが、楽しく乗車させてもらいました。
無塗装編成のつり革について、改めてネットを見ると、静岡鉄道100周年記念のラッピング編成では「ありがとう」などのシールを貼っていたようです。車体の広告と連動させて、貼り替える対応ができそうです。また、納車直後なのか、グレーのまま何も貼っていない写真もありましたので、ラッピング車ではそれもありそうです。
廃止された他路線の車両までは考えが及ばなかったです。財政はむろん、技術力もあったのでしょう。
ジャストラインのバス車両も、中古車はあまり導入していないようで、比較的長く使っているので、同じ意識があるのかもしれません。
地方の交通事業者がいろいろある中、静岡鉄道は安心できる企業だと思います。

三保の松原、清水港などは以前に行ったので、今回は観光地とは言えないようなところを歩きました。

>FMENさん
静岡清水線は、元は隣町どうしですし、開業当時は、街並みは続いてはいなかったようです。となると、そもそもの存在意義としては、秋田市電と似ていたように思います。
都市化しても、変化に合わせて生き残ったことになります。

秋田市では、JRと競合路線があっては成り立たないでしょう。既存JR路線に駅の増設か、東西方向などまったく別の路線があればいいのでしょうけれど。
Unknown (コメント失礼します)
2023-01-06 22:21:31
横からコメント失礼します。

静鉄は確かに始発よりも途中での乗降が多いのはあるなと思いますね。
学生が多いエリアを通るので、市街地よりも少し離れた住宅地の学生が多く乗ってくるのもあるかもしれません。
関東関西のような本数は無いですが、地方にはこのくらいがちょうどいいのかなと思ったりします。

次回静岡に来られる際は、県内のその他のJR以外の私鉄もぜひ乗り継ぎの旅をお勧めします!

有名どころでは伊豆箱根鉄道とか遠州鉄道などですかね。結構味わい深い私鉄が多くて旅好きの方はハマるとおもいます!
静岡の私鉄 (taic02)
2023-01-07 22:12:27
都市の規模を踏まえれば、充分に利用しやすく、実際によく利用されていると思います。
ジャストラインのバスとの接続は思ったほど多くはなく、鉄道とバスですみ分けられているように見えます。鉄道単独で路面電車のような感覚で使われているのでしょうか。

静岡県内の私鉄では、伊豆箱根鉄道駿豆線を伊豆長岡までと、天竜浜名湖鉄道は乗りました。天浜線では浜名湖の入江の眺めが印象に残っています。
遠州鉄道は、大都市の小私鉄として、静鉄に似たところがあるのでしょうか。興味があります。
もっとのどかな大井川鐵道もありますね。街から山まで、静岡にはさまざまな私鉄があるものです。いつかぜひ。
静岡鉄道電車 (五ケ堀之内佑樹)
2024-03-24 01:01:27
2024年02月05日の未明に3000系の最後の
車輛が長沼車庫に納車され、02月23日に営業車として走行を開始しました。1000系で唯一残った、
1008号車も2024年06月で終了予定との事で
撮影記録しておきたいものです。
静岡鉄道電車 (英行)
2024-03-24 21:40:00
毎年春頃に見かける「教習電車」ですが、本年も
今月の上旬頃から走行しているのを見かけます。
いつかは撮影したいと考えています。
コメントありがとうございます (taic02)
2024-03-24 23:37:50
>五ケ堀之内佑樹さん
置き換えもいよいよ大詰めですか。
1000形は熊本と福井へ1編成ずつ譲渡されたそうで、そちらでの活躍も見ておきたいところです。

>英行さん
1000形、3000形とも丸い「教習」マークを掲げて運行するのですね。
ダイヤは非公開でしょうから、タイミングが難しいことでしょう。
静岡鉄道電車 (英行)
2024-03-26 23:15:00
「教習電車」の時間はわかりませんが、平日の
新静岡発で柚木ゆきが3便設定されていますが、
最初の柚木ゆきが教習電車になることが多いです。
教習車 (茶町浩樹)
2024-04-11 23:35:35
以前新静岡駅改札上の発車表示器に発車時間が
表示してあるのを見た事があります。
尚、新清水駅には表示されていませんでした。

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