先月「文字・書体」カテゴリーで取り上げた、放送開始60周年を迎えるNHK「みんなのうた」の昔の作品。※以下、一部敬称略。
ステージ歌唱などがある「60周年特番」もあったけど、みんなのうたそのものじゃない。注目すべきは、昔の作品を放送する「60年スペシャルセレクション」。
いつもの再放送枠と同じなのだが、60周年を意識した選曲や構成になっている。そのため、初冬を歌った「北風小僧の寒太郎(堺正章版)」が2月に放送されるなど季節感は失われてしまうけれど。
2021年5月分のスペシャルセレクションのうち、「1980~1990年代」の作品枠で4曲放送。うち2曲が、おもしろい組み合わせで、どちらも懐かしい。
1曲目は「メトロポリタン美術館(ミュージアム)」。
これは、みんなのうたを代表する曲として、異論はなかろう。「北風小僧の寒太郎」と並んで。
「(人形アニメーションによる)映像が怖い」「トラウマになっている」と感じている人もいるそうだ。僕は嫌いではないけれど、好きでもない、という程度。
「靴下を片っぽ」はケチなようでトンチンカンなようだし(遠回しに断ってるのか?)、五千年眠っているファラオを起こすような余計なお世話をし、バイオリンとトランペットのケースをトランク代わりにしては収容力がないのじゃないのかと、そういうツッコミをしたくなった。
メトロポリタンミュージアムが何かよく分からず、ニューヨークに実在する美術館だと知るのはだいぶ後でもあった。
【2023年10月10日追記】「世界の民謡・童謡(https://www.worldfolksong.com/kids/song/metropolitan-museum.html)」サイトによれば、「メトロポリタン美術館」には元ネタとなった絵本が存在する。
1967年にアメリカで出版された「クローディアの秘密」。メトロポリタン美術館に泊まろうと、バイオリンとトランペットのケースに荷造りするといった場面があるとのこと。(以上追記)
作詞・作曲・歌が大貫妙子なわけだが、当時はシンガーソングライターは珍しかった。今のみんなのうたの新曲など、ほとんどが作者と歌唱者が同じ。
そして、小学校低~中学年の頃やたらと放送されていて、飽きてしまった記憶もある。
調べると、1984年4~5月が初回放送で、Wikipediaによれば同じ年度の12月にさっそく再放送。初出はもう少し古いかと思っていたが、記憶と一致。
その後、1990年代初めまでは毎年度再放送があり、以降は散発的。北風小僧~ほどではなくなっている。
久々に見た感想。
ステレオ音声だった(1981年度の新曲からステレオ放送だったそうだ)。当時モノラルテレビの我が家で、画面左下に出るステレオマークを指をくわえて見ていた思い出はある。今回、初めてステレオで聴いたかも。
曲も映像も、記憶よりは「明るく」感じた。やっぱり少々怖いようなイメージは植え付けられていたのかも。
アニメの後半に、主人公がスクーターに乗るのは覚えていたが、考えてみれば場違い(館内で乗ってるのか?)だし、今なら若い女性はあまり乗らないだろう。でも、当時はああいう小型の原付バイクがブームになっていた。赤い帽子のままヘルメットをかぶらずに乗っているが、当時の日本では義務化前だった。
例によって字幕。これはモリサワ「テレビ太ゴシック体BT1」のはず。
「ン」が「ソ」に見えてしまったり、「美」の横棒の長さのメリハリ(上から長短長短)が目立ったり、「羊」と「大」がアンバランスなように見えてしまったり、学校で習った文字と違うのではと悩んだ思い出もあった。今のモリサワのデジタルフォントのオールド系ゴシック体でも、それらは似ているが、「ン」は微妙に調整されたか?
もう1曲が「東の島にコブタがいた」。これが再放送されるとは! もう一度視聴したいと思っていたが、なかなか再放送されなかった。
みんなのうたでは、音声と映像は残っているはずなのに、再放送されない作品が存在する(ラジオのみ再放送という作品も)。単に人気がなく忘れ去られたのか、権利上の問題か、映像の中身に不都合があるのかと思っていた。
この曲は、実際には、2008年と2011年に再放送されていたそうだけど。
初回は、平成に入って間もない、中学生の夏休み中に放送された。爆風スランプが歌い、テンポがよくコミカルながら、環境問題を扱った内容で印象付けられた。「東の島のめがねをかけたコブタ」というのは、日本、日本人の比喩なんだろうなと思った。
1989年かと思っていたが1年後、1990年8~9月放送。爆風スランプが「Runner」「大きな玉ねぎの下で」をリリースした翌年。
歌手名は、英語表記の「BAKUFU-SLUMP」。
作詞はサンプラザ中野(現・サンプラザ中野くん)。
作曲は豊岡正志、Newファンキー末吉(ファンキー末吉の一時期の改名)、パッパラー河合。豊岡氏は、爆風スランプの由来となったバンド「スーパースランプ」のリーダーだそう。
さらに編曲者もいて(公式サイトでは最近まで抜けていたし、JASRACにも未登録)、宮下博次。
2週間に1度、「NHKのど自慢」で編曲、ピアノ演奏、バンドマスターを務めている人(最近の記事)。当時は、のど自慢を担当し始めるかどうかの頃(=アコーディオンがいたかいなくなったの境)だったのではないだろうか。
宮下先生は、テレビや舞台でのバンド演奏用の編曲がお得意なようで、こういう形の編曲は珍しいと思う。もし、この歌でのど自慢に出場したら、どう編曲してもらえるのかな。
映像は古川タクのアニメーション。
独特のタッチが印象的で、みんなのうたは29作品も手がけている。1986年の「こぶたのしっぽ」でもコブタを描いているが、本作とは別豚。
シングル発売はされていないが、爆風スランプのアルバムには「東の島にコブタがいた(TEKE TEKE SONG)」として収録され、それがネット配信されているようだ。
部分的に試聴した限りではみんなのうたと同じに聞こえたし、時間は2分29秒だから、みんなのうたと同一音源かもしれない。だったら宮下先生も著作権者にするべきなのでは? 音楽の著作権って難しい。
一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)のデータベースを調べてみた。
「東の島にコブタがいた」は、上記の通り編曲者のほか、アーティスト(歌唱者ってことでしょう)も未登録。
さらに、いずれもサンプラザ中野作詞、(Newなしの)ファンキー末吉作曲で「東の島にブタがいた VOL.2」「東の島にブタがいた VOL3」という、コブタでないブタの曲もあった。※左記はJASRACの登録名ママ。
アーティストは前者は小泉今日子、後者は爆風スランプで登録。
さらにWikipedia等で調べた。
vol.2は、小泉今日子の1987年3月のアルバム「Hippies」収録。
vol.3は、爆風スランプの1987年10月のアルバム「JUNGLE」収録。
2と3は曲は同じで、歌詞が異なるようだ。2は物語のようなお話風の内容、3は反戦・平和を題材にしている。
VOL.1がないが、コブタは「4」的位置づけなんだろうか?
当時はバブル崩壊前の絶頂期で浮かれていたのか、「おどるポンポコリン」をはじめコミカルソングがブームであった。
一方で、「さよなら人類」など、社会性あるテーマの歌も、あまり違和感なく受け入れられていたと思う。地球環境では、オゾン層破壊、温暖化、酸性雨などが問題になり始めていた。
ちなみに、みんなのうたでは、1981年に小椋佳の「まだ遅くは」という地球環境を題材にした歌があった。Tell me what do for youなど英語入り。
左の箱はテレビ、煙を出す煙突が映る。当時らしく横にスピーカーが突き出た大画面
例によって字幕。
実は歌詞の書体が、1989年度の途中(6月か8月か10月の新曲から)で写研「石井太ゴシック体」に変更されている。※モリサワ時代も、何らかの事情で部分的に写研書体が使われたことがある。
上の画像では、「タ」の3画目が2画目に突き出ない、「を」の1画目が短い、「か」の3画目が上寄り(「が」と位置が違う?)といった点が、モリサワ書体とは異なる。
【26日補足・ちょうど写研ホームページに詳しい書体紹介がアップされた。以前から知ってはいたが、それを見ると、石井ゴシック体には太さや細部が違うシリーズものがたくさんある。みんなのうたは石井ゴシック系統なのは間違いないが、「太」なのかは判断できない。記事中では「石井太ゴシック体」のままにしておきます。】
ところで、メロディーに乗らない「セリフ」が入る曲がたまにあるが、その字幕の対応。
「コンピューターおばあちゃん」の「ずっといつまでも…」のように、モリサワ時代は、メロディー部分と同じBT1。
写研変更後は、セリフはナールで表示するようになった。1989年12月の所ジョージ「背中でツイスト」がそうだったのを覚えている。
忘れていたが「東の島にコブタがいた」でも、セリフがあって、やはりナール。
歌詞より少し小さい字。「へ」は言っていないように聞こえるが
なお、歌詞の字幕が石井太ゴシック体なのは1994年度途中まで。1994年8月から全面ナールになり、2003年度辺りまでという変遷。詳しくは機会があればいずれ。
歌の中身。合いの手みたいなのが2回1セット(最後だけ1回)で繰り返される。今回気付いたのは、各1回目は「ブタがいた コブタがいた」、各2回目が「コブタがいた ブタがいた」と、「コ」の位置が異なること。ブタとコブタ両方あるのは記憶していたけど。
3番としていいのか最後は、「東の島にコブタが『いた』」が「~コブタが『いく』」に変わる。
これも前から感づいていたが、字幕は「東の島『に』コブタがいく」だが、実際には「東の島『の』コブタがいく」と歌っているようだ。ストーリーからしても、また作詞者自身が歌っていることを踏まえても、「の」のほうが適切だと思うので、字幕の誤植なのだろう。
昔のみんなのうたでは、誤植はたまにあって、手書きで修正されたり、後年にデジタル修正されたりすることもあるが、そのままのこともある。
久しぶりに聴いても、記憶と大きな相違はなかった。メトロポリタン美術館の後では、伴奏が大きく・歌声が小さく感じたけど。
そして、歌もアニメも、示唆に富んでいることを、改めて実感した。
アニメでは、最後の「コブタがいく」シーンで、デパートのエレベーターの横に「マチス展」の告知が描かれる。自然を愛したアンリ・マティスのことか?(フォントワークスの明朝体の商品名「マティス」の由来でもある)
右上の字幕は後年の追加
最後の最後は、ブタ顔の地球から、宇宙空間に向かってピンク色の高級リムジンが出てくる。後部座席には札束を持った金髪女性。その側面に「THE EARTHcond」と書いている。どういう意味なんだろう? 何やら意味深。
30年後の今、エコという言葉もできて環境意識は高まり、対策も進んではいる。オゾン層や酸性雨はさほど言われなくなった。
しかし、温暖化は今なお深刻で、マイクロプラスチックのような新たな課題も出ている。今でも充分通用してしまう歌。
この2曲が放送されるのは、テレビでは5月27日【26日訂正】5月31日が最後のようなので、興味のある方は公式サイトや電子番組表で確認の上、ご覧ください。
来月以降への期待としては、「ラジャ・マハラジャー」を見て・聴いてみたい。1985年2月だから、メトロポリタン美術館の年度末だったのか。
あと、1981年「メゲメゲルンバ」もいいな。明るい楽しい歌ではあるが、大人になってみればいろいろと思うところがある内容だ。あと、歌詞の字幕に誤植が複数あるらしい。【2023年10月3日補足・ラジャ、メゲメゲとも、2023年までに再放送が実現した。メゲメゲの誤植は上手に修正。】
ステージ歌唱などがある「60周年特番」もあったけど、みんなのうたそのものじゃない。注目すべきは、昔の作品を放送する「60年スペシャルセレクション」。
いつもの再放送枠と同じなのだが、60周年を意識した選曲や構成になっている。そのため、初冬を歌った「北風小僧の寒太郎(堺正章版)」が2月に放送されるなど季節感は失われてしまうけれど。
2021年5月分のスペシャルセレクションのうち、「1980~1990年代」の作品枠で4曲放送。うち2曲が、おもしろい組み合わせで、どちらも懐かしい。
1曲目は「メトロポリタン美術館(ミュージアム)」。
これは、みんなのうたを代表する曲として、異論はなかろう。「北風小僧の寒太郎」と並んで。
「(人形アニメーションによる)映像が怖い」「トラウマになっている」と感じている人もいるそうだ。僕は嫌いではないけれど、好きでもない、という程度。
「靴下を片っぽ」はケチなようでトンチンカンなようだし(遠回しに断ってるのか?)、五千年眠っているファラオを起こすような余計なお世話をし、バイオリンとトランペットのケースをトランク代わりにしては収容力がないのじゃないのかと、そういうツッコミをしたくなった。
メトロポリタンミュージアムが何かよく分からず、ニューヨークに実在する美術館だと知るのはだいぶ後でもあった。
【2023年10月10日追記】「世界の民謡・童謡(https://www.worldfolksong.com/kids/song/metropolitan-museum.html)」サイトによれば、「メトロポリタン美術館」には元ネタとなった絵本が存在する。
1967年にアメリカで出版された「クローディアの秘密」。メトロポリタン美術館に泊まろうと、バイオリンとトランペットのケースに荷造りするといった場面があるとのこと。(以上追記)
作詞・作曲・歌が大貫妙子なわけだが、当時はシンガーソングライターは珍しかった。今のみんなのうたの新曲など、ほとんどが作者と歌唱者が同じ。
そして、小学校低~中学年の頃やたらと放送されていて、飽きてしまった記憶もある。
調べると、1984年4~5月が初回放送で、Wikipediaによれば同じ年度の12月にさっそく再放送。初出はもう少し古いかと思っていたが、記憶と一致。
その後、1990年代初めまでは毎年度再放送があり、以降は散発的。北風小僧~ほどではなくなっている。
久々に見た感想。
ステレオ音声だった(1981年度の新曲からステレオ放送だったそうだ)。当時モノラルテレビの我が家で、画面左下に出るステレオマークを指をくわえて見ていた思い出はある。今回、初めてステレオで聴いたかも。
曲も映像も、記憶よりは「明るく」感じた。やっぱり少々怖いようなイメージは植え付けられていたのかも。
アニメの後半に、主人公がスクーターに乗るのは覚えていたが、考えてみれば場違い(館内で乗ってるのか?)だし、今なら若い女性はあまり乗らないだろう。でも、当時はああいう小型の原付バイクがブームになっていた。赤い帽子のままヘルメットをかぶらずに乗っているが、当時の日本では義務化前だった。
例によって字幕。これはモリサワ「テレビ太ゴシック体BT1」のはず。
「ン」が「ソ」に見えてしまったり、「美」の横棒の長さのメリハリ(上から長短長短)が目立ったり、「羊」と「大」がアンバランスなように見えてしまったり、学校で習った文字と違うのではと悩んだ思い出もあった。今のモリサワのデジタルフォントのオールド系ゴシック体でも、それらは似ているが、「ン」は微妙に調整されたか?
もう1曲が「東の島にコブタがいた」。これが再放送されるとは! もう一度視聴したいと思っていたが、なかなか再放送されなかった。
みんなのうたでは、音声と映像は残っているはずなのに、再放送されない作品が存在する(ラジオのみ再放送という作品も)。単に人気がなく忘れ去られたのか、権利上の問題か、映像の中身に不都合があるのかと思っていた。
この曲は、実際には、2008年と2011年に再放送されていたそうだけど。
初回は、平成に入って間もない、中学生の夏休み中に放送された。爆風スランプが歌い、テンポがよくコミカルながら、環境問題を扱った内容で印象付けられた。「東の島のめがねをかけたコブタ」というのは、日本、日本人の比喩なんだろうなと思った。
1989年かと思っていたが1年後、1990年8~9月放送。爆風スランプが「Runner」「大きな玉ねぎの下で」をリリースした翌年。
歌手名は、英語表記の「BAKUFU-SLUMP」。
作詞はサンプラザ中野(現・サンプラザ中野くん)。
作曲は豊岡正志、Newファンキー末吉(ファンキー末吉の一時期の改名)、パッパラー河合。豊岡氏は、爆風スランプの由来となったバンド「スーパースランプ」のリーダーだそう。
さらに編曲者もいて(公式サイトでは最近まで抜けていたし、JASRACにも未登録)、宮下博次。
2週間に1度、「NHKのど自慢」で編曲、ピアノ演奏、バンドマスターを務めている人(最近の記事)。当時は、のど自慢を担当し始めるかどうかの頃(=アコーディオンがいたかいなくなったの境)だったのではないだろうか。
宮下先生は、テレビや舞台でのバンド演奏用の編曲がお得意なようで、こういう形の編曲は珍しいと思う。もし、この歌でのど自慢に出場したら、どう編曲してもらえるのかな。
映像は古川タクのアニメーション。
独特のタッチが印象的で、みんなのうたは29作品も手がけている。1986年の「こぶたのしっぽ」でもコブタを描いているが、本作とは別豚。
シングル発売はされていないが、爆風スランプのアルバムには「東の島にコブタがいた(TEKE TEKE SONG)」として収録され、それがネット配信されているようだ。
部分的に試聴した限りではみんなのうたと同じに聞こえたし、時間は2分29秒だから、みんなのうたと同一音源かもしれない。だったら宮下先生も著作権者にするべきなのでは? 音楽の著作権って難しい。
一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)のデータベースを調べてみた。
「東の島にコブタがいた」は、上記の通り編曲者のほか、アーティスト(歌唱者ってことでしょう)も未登録。
さらに、いずれもサンプラザ中野作詞、(Newなしの)ファンキー末吉作曲で「東の島にブタがいた VOL.2」「東の島にブタがいた VOL3」という、コブタでないブタの曲もあった。※左記はJASRACの登録名ママ。
アーティストは前者は小泉今日子、後者は爆風スランプで登録。
さらにWikipedia等で調べた。
vol.2は、小泉今日子の1987年3月のアルバム「Hippies」収録。
vol.3は、爆風スランプの1987年10月のアルバム「JUNGLE」収録。
2と3は曲は同じで、歌詞が異なるようだ。2は物語のようなお話風の内容、3は反戦・平和を題材にしている。
VOL.1がないが、コブタは「4」的位置づけなんだろうか?
当時はバブル崩壊前の絶頂期で浮かれていたのか、「おどるポンポコリン」をはじめコミカルソングがブームであった。
一方で、「さよなら人類」など、社会性あるテーマの歌も、あまり違和感なく受け入れられていたと思う。地球環境では、オゾン層破壊、温暖化、酸性雨などが問題になり始めていた。
ちなみに、みんなのうたでは、1981年に小椋佳の「まだ遅くは」という地球環境を題材にした歌があった。Tell me what do for youなど英語入り。
左の箱はテレビ、煙を出す煙突が映る。当時らしく横にスピーカーが突き出た大画面
例によって字幕。
実は歌詞の書体が、1989年度の途中(6月か8月か10月の新曲から)で写研「石井太ゴシック体」に変更されている。※モリサワ時代も、何らかの事情で部分的に写研書体が使われたことがある。
上の画像では、「タ」の3画目が2画目に突き出ない、「を」の1画目が短い、「か」の3画目が上寄り(「が」と位置が違う?)といった点が、モリサワ書体とは異なる。
【26日補足・ちょうど写研ホームページに詳しい書体紹介がアップされた。以前から知ってはいたが、それを見ると、石井ゴシック体には太さや細部が違うシリーズものがたくさんある。みんなのうたは石井ゴシック系統なのは間違いないが、「太」なのかは判断できない。記事中では「石井太ゴシック体」のままにしておきます。】
ところで、メロディーに乗らない「セリフ」が入る曲がたまにあるが、その字幕の対応。
「コンピューターおばあちゃん」の「ずっといつまでも…」のように、モリサワ時代は、メロディー部分と同じBT1。
写研変更後は、セリフはナールで表示するようになった。1989年12月の所ジョージ「背中でツイスト」がそうだったのを覚えている。
忘れていたが「東の島にコブタがいた」でも、セリフがあって、やはりナール。
歌詞より少し小さい字。「へ」は言っていないように聞こえるが
なお、歌詞の字幕が石井太ゴシック体なのは1994年度途中まで。1994年8月から全面ナールになり、2003年度辺りまでという変遷。詳しくは機会があればいずれ。
歌の中身。合いの手みたいなのが2回1セット(最後だけ1回)で繰り返される。今回気付いたのは、各1回目は「ブタがいた コブタがいた」、各2回目が「コブタがいた ブタがいた」と、「コ」の位置が異なること。ブタとコブタ両方あるのは記憶していたけど。
3番としていいのか最後は、「東の島にコブタが『いた』」が「~コブタが『いく』」に変わる。
これも前から感づいていたが、字幕は「東の島『に』コブタがいく」だが、実際には「東の島『の』コブタがいく」と歌っているようだ。ストーリーからしても、また作詞者自身が歌っていることを踏まえても、「の」のほうが適切だと思うので、字幕の誤植なのだろう。
昔のみんなのうたでは、誤植はたまにあって、手書きで修正されたり、後年にデジタル修正されたりすることもあるが、そのままのこともある。
久しぶりに聴いても、記憶と大きな相違はなかった。メトロポリタン美術館の後では、伴奏が大きく・歌声が小さく感じたけど。
そして、歌もアニメも、示唆に富んでいることを、改めて実感した。
アニメでは、最後の「コブタがいく」シーンで、デパートのエレベーターの横に「マチス展」の告知が描かれる。自然を愛したアンリ・マティスのことか?(フォントワークスの明朝体の商品名「マティス」の由来でもある)
右上の字幕は後年の追加
最後の最後は、ブタ顔の地球から、宇宙空間に向かってピンク色の高級リムジンが出てくる。後部座席には札束を持った金髪女性。その側面に「THE EARTHcond」と書いている。どういう意味なんだろう? 何やら意味深。
30年後の今、エコという言葉もできて環境意識は高まり、対策も進んではいる。オゾン層や酸性雨はさほど言われなくなった。
しかし、温暖化は今なお深刻で、マイクロプラスチックのような新たな課題も出ている。今でも充分通用してしまう歌。
この2曲が放送されるのは、テレビでは
来月以降への期待としては、「ラジャ・マハラジャー」を見て・聴いてみたい。1985年2月だから、メトロポリタン美術館の年度末だったのか。
あと、1981年「メゲメゲルンバ」もいいな。明るい楽しい歌ではあるが、大人になってみればいろいろと思うところがある内容だ。あと、歌詞の字幕に誤植が複数あるらしい。【2023年10月3日補足・ラジャ、メゲメゲとも、2023年までに再放送が実現した。メゲメゲの誤植は上手に修正。】