昭和50年中ごろ、日本が活気に満ち、企業が家庭的な雰囲気を持っていた頃の話です。4月1日は入社式でした。私が勤めていた会社も、毎年数人の新人が入社しました。悪戯大好きの私が、エイプリルフールを仕掛けました。
3月中ごろから、準備しました。長髪をリクルートカットにし、私が新人の頃に着ていたスーツを出しました。総務の女子達にエイプリルフールのあらすじを話し、演技指導をしました。
さて、当日は始業2時間前に出社し、社の廻りの清掃をしました。残念ながら新入社員は来ませんでした。食堂で、手を膝の上に置き、こじんまり座りました。遠くで女子社員達が「六兎さん、新入生みたい(笑)。」作戦は順調です。
始業1時間前、一人の新入生が来ました。私はじっとテーブルを見ていました。新入生が目ざとく私を見つけ、私の隣に座りました。幼少の時と同じく、男の戦いはここから始まるのです。相手の値踏みをするのですね。私のスーツは安物、髪はリクルート。隣から優越感が漂ってきます。私は一言も発していません。嘘は言ってないのです。二人目の新入生が来ました。二人は入社試験で顔なじみだったようでした。試験の話が聞こえてきました。『俺、俺が点付けしたのだぜ!。』と思いながら、私は採点の結果を思い出そうとしましたが、いかんせん二人の名前をまだ知りません。二人目が私に「入社試験で会いませんでしたね?。」と切り出した。私は少し伏せ目がちに「はい、試験は受けておりません・・・。」と答えた。嘘ではない。「縁故?」と言われた。答え辛そうな演技をしました。嘘は言ってません。しかし、『俺達は戦った勝利者』と熱気が伝わってきました。男達の戦いって、無邪気ですね。
女子社員がコーヒーを持ってきました。私の前に置きました。「どうぞ、召し上がれ。」演技指導通りでした。私は両手を合わせ合掌し、大きな声で「いただきますッ!。」と言いました。女子社員は、同じように、隣にコーヒーを置き、同じように言いました。二人の新入生は私と同じ所作で挨拶をしたのですが、声は小さく、目は泳ぎ、少し怯えていました。制服の熟女で、お化粧完璧のお姉様から「どうぞ、召し上がれ。」なんて言われたことは、いまだかって無かったのでしょうね。ましてお返しの挨拶などしたことがなかったのでしょう、当たり前ですね、刑務所やクラブじゃあるまいし。
三人目、四人目の新入生は、その光景を見ていなかったのですが、先に来た子が『手を合わせていただきますって言うみたいだぞ・・』と伝授したようでした。飲み終えた私が、コーヒーカップを洗い場に返すとき、「ご馳走様でした。」と大声で礼を言うのが、その年のエイプリルフールの寸劇でした。大声で礼を言ったとき、クリント・イーストウッドそっくりのヤマちゃんが長期出張から帰り、出社したのでした。ヤマちゃんが「六兎君、新入生に見間違えたけど、どうしちゃったの?。髪切ったの?。」新入生全員から、神経がピ~ン、アッケラカ~ン、ハァ~って音が聞こえたようでした。涙ぐんで笑いをこらえる熟女の姉様。
さて10時から会議室で入社式がおこなわれました。私は最前列で彼等を大きな拍手で迎えました。彼等は決して私を見ませんでした。三人の重役が挨拶をしました。最後の重役が「六兎君、君から一言、今朝は面白かったみたいですね。見たかったよ。」と言いました。
「皆さん、○○・・・へ入社おめでとうございます。君達に聞きます。今日この日は君達にとってどのような日か、順に聞かせてください。」と質問した。彼等は綺麗な言葉をならべて謝辞を言いました。私は彼等に「皆さん、今日はエイプリルフールですよ。」会議室が大爆笑であった。
新入生に伝えたかったことは、(1)詐欺は自分の思い込みから始まる。(2)正しいと思ったことをやれ。因習に囚われるな。(3)友人から聞くのであっても、噂や迷信を信ずるな、でした。おしまい。
3月中ごろから、準備しました。長髪をリクルートカットにし、私が新人の頃に着ていたスーツを出しました。総務の女子達にエイプリルフールのあらすじを話し、演技指導をしました。
さて、当日は始業2時間前に出社し、社の廻りの清掃をしました。残念ながら新入社員は来ませんでした。食堂で、手を膝の上に置き、こじんまり座りました。遠くで女子社員達が「六兎さん、新入生みたい(笑)。」作戦は順調です。
始業1時間前、一人の新入生が来ました。私はじっとテーブルを見ていました。新入生が目ざとく私を見つけ、私の隣に座りました。幼少の時と同じく、男の戦いはここから始まるのです。相手の値踏みをするのですね。私のスーツは安物、髪はリクルート。隣から優越感が漂ってきます。私は一言も発していません。嘘は言ってないのです。二人目の新入生が来ました。二人は入社試験で顔なじみだったようでした。試験の話が聞こえてきました。『俺、俺が点付けしたのだぜ!。』と思いながら、私は採点の結果を思い出そうとしましたが、いかんせん二人の名前をまだ知りません。二人目が私に「入社試験で会いませんでしたね?。」と切り出した。私は少し伏せ目がちに「はい、試験は受けておりません・・・。」と答えた。嘘ではない。「縁故?」と言われた。答え辛そうな演技をしました。嘘は言ってません。しかし、『俺達は戦った勝利者』と熱気が伝わってきました。男達の戦いって、無邪気ですね。
女子社員がコーヒーを持ってきました。私の前に置きました。「どうぞ、召し上がれ。」演技指導通りでした。私は両手を合わせ合掌し、大きな声で「いただきますッ!。」と言いました。女子社員は、同じように、隣にコーヒーを置き、同じように言いました。二人の新入生は私と同じ所作で挨拶をしたのですが、声は小さく、目は泳ぎ、少し怯えていました。制服の熟女で、お化粧完璧のお姉様から「どうぞ、召し上がれ。」なんて言われたことは、いまだかって無かったのでしょうね。ましてお返しの挨拶などしたことがなかったのでしょう、当たり前ですね、刑務所やクラブじゃあるまいし。
三人目、四人目の新入生は、その光景を見ていなかったのですが、先に来た子が『手を合わせていただきますって言うみたいだぞ・・』と伝授したようでした。飲み終えた私が、コーヒーカップを洗い場に返すとき、「ご馳走様でした。」と大声で礼を言うのが、その年のエイプリルフールの寸劇でした。大声で礼を言ったとき、クリント・イーストウッドそっくりのヤマちゃんが長期出張から帰り、出社したのでした。ヤマちゃんが「六兎君、新入生に見間違えたけど、どうしちゃったの?。髪切ったの?。」新入生全員から、神経がピ~ン、アッケラカ~ン、ハァ~って音が聞こえたようでした。涙ぐんで笑いをこらえる熟女の姉様。
さて10時から会議室で入社式がおこなわれました。私は最前列で彼等を大きな拍手で迎えました。彼等は決して私を見ませんでした。三人の重役が挨拶をしました。最後の重役が「六兎君、君から一言、今朝は面白かったみたいですね。見たかったよ。」と言いました。
「皆さん、○○・・・へ入社おめでとうございます。君達に聞きます。今日この日は君達にとってどのような日か、順に聞かせてください。」と質問した。彼等は綺麗な言葉をならべて謝辞を言いました。私は彼等に「皆さん、今日はエイプリルフールですよ。」会議室が大爆笑であった。
新入生に伝えたかったことは、(1)詐欺は自分の思い込みから始まる。(2)正しいと思ったことをやれ。因習に囚われるな。(3)友人から聞くのであっても、噂や迷信を信ずるな、でした。おしまい。
私が、一般社会に出ていれば そういった経験ができたのでしょうか?とっても楽しそう。
素敵なお話です。
特に3番。いまからも、肝に銘じておきます。
ありがとうございました。
「昔は良かった」と言うと、爺むさいからなぁ・・・。
景気に左右されるけど、昔の会社は大きな家族だった。
もしかしたら、あの宗教もそうだったかもしれない。
でも、厳しい決まりはなく、働くのが楽しかった。
究極の目標は『リーマンは、会社に利益をもたらす。』だった。
記事読んでいて1人、うふふと笑ってしまいました
リクルートカットにまでして演じたとは気合い十分って感じで読んでいて楽しかったですよ。
楽しい記事ありがとうございます~
明日は、その会社で若い人と打ち合わせです。
昔の予期時代のお話をしてあげます。
首がはんれないように絵文字挿入っと
オイラのコメント削除したけど・・残ってるな。
クマさんが会社にいたら、きっと出番多かったと思う。
明日は、その会社で若い人と打ち合わせです。
昔の良き時代のお話をしてあげます。
首がはなれないように絵文字挿入っと
さて、どうだ?
今度はバッチリつながってますよ~