木村忠啓の大江戸百花繚乱

スポーツ時代小説を中心に書いている木村忠啓のブログです。

東海道中膝栗毛と下の話

2007年02月01日 | 江戸の風俗
またもや下の話で失礼する。

前回、し尿が金銭で売買された話を書いたが、し尿は金銭だけでなく現物でも交換された。
十返舎一九の「東海道中膝栗毛」にその下りがある。

「膝栗毛」が書かれた1800年初頭には、江戸ではし尿は金銭取引が多くなっていたようで、すでに物々交換が珍しくなっていたらしい。
京都に行った際に、大根とし尿を交換する肥え取りに遭遇した弥次さん、北さんは、物珍しそうに眺めている。

「大っきな大根と、小便しょ」
と呼び立てていくあとから、武家屋敷の中間とみえるしみったれた男がふたり、
「これこれ、わしらがここで小便してやろが、その大根三本、寄こさんかいな」
と、肥え取りを呼び止める。(略)
「さあ、ここへやっておくれんかいな」
小便桶をおろすと、中間は二人ながらその中へしゃあしゃあ・・・・
「もう、これきり出んのかいな」
「打ち止めに屁が出たさかい、もう小便はそれきりじゃ」
「こりゃ、あかんわい。今一度身体をようふって見さんせ」
「はて小便くすねて置いて、どうしようぞい。ありたけ出してのけたわいな」
「これでは大根三本、ようやれんわ。二本持っていかんせ」
「量は少のうても、わしらの小便は質がええわい。茶粥腹のやつとは違う。わしらは肉を食うておるさかいな」

と、続く。
弥次さん、北さんは面白がって見ていたが、北さんが声をかける。

「もしもし、さいわいわっちは小便がしたくなったから、ぶしつけながらお前がたに上げやしょう。わっちのを足して大根三本お取りなせえ」
肥え取りも江戸者と見て追従とも取れるようなことを言う。

「そりゃ、すばらしい。お前さまのは京都産じゃないからじゃ。とにかく小便は関東物が一番。地もとのは薄うて値打ちがないわい」
「もうちっと早かったらもっと出たんだが・・・。わっちは生まれつき小便が近いので、日ごろ小便桶を首に掛けて歩いていた男さ」

北さんは、豪語していた小便が少ししか出なかったので、こう言って強がる。

今読んでも「膝栗毛」は、大変面白い。


気位の高い京都御所の女中(一九画)

東海道中膝栗毛  十返舎一九 (杉本苑子訳) 学研

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