Sketch of the Day

This is Takeshi Kinoshita's weblog.

諸力の総和としてのデザイン/プランニング

2005-05-18 | Japan
2005.5.16.Mon
*日本造園学会全国大会最終日@東新宿
今年で3回目(3年目)になる分科会「“アーバニズム”とどう向き合うか? その3 都市化する河川とランドスケープのデザイン」を、マスターピースの高橋さんとツイン・モデレート。石川さんが言うように面白い話が幾つか出てきました。でも、一番刺激的だったのは石川さんご本人のプロポーザル「沈み行く東京」でした。

この日はもう一つ企画サイドとして関わった分科会「コラボレーションと造園技術者の役割」に出席。ほんとうに久しぶりに上野泰さん(ウエノデザイン)のお話が聞けた。タイトルは「都市設計における建築・土木との協働」。「都市設計という営みにおける様々な力(特に人的ファクターについて)の相互関係、作用のプロセス(諸力の総和としてのデザイン/プランニング)が全く記録・評価されていないことは大いに問題である」というのが上野さんのご指摘のポイント。さすが。

もう一つ、ランドスケープ遺産研究委員会主催の分科会「ランドスケープ遺産を考えるー学会設立前後をめぐる状況についてー」にギャラリーとして参加。こちらも面白かった。日本造園学会の設立(1925年)、自然景観や郷土景観をめぐる諸制度(国立公園や、史跡名勝天然記念物ほか)の施行は、社会全体のベクトルが内向きに傾斜し、その帰着点として第二次世界大戦に行き着くという時代状況において発生した。一方、昨今の、観光立国施策、景観法施行、文化的景観の保全をめぐる動きと、改憲論やナショナル・アイデンティティをめぐる議論の高まりという世相に80年前との相同性を見る。このような見方は、景観法を切る一つの大事な視点になりうるはずである。

2005.5.15.Sun
*日本造園学会全国大会3日目@東京大学農学部
「江戸の火除地の防火性能の評価とその動態」「日韓の国土づくりのシステムと関連法制度の比較」「超高層住宅居住者の意識からみた俯瞰景としての公園緑地の評価」の3本の論文(いずれも共同研究)について発表。

火除地の論文では、白幡洋三郎先生(日文研)から「図絵等をみるかぎり火除地というのは空地(くうち)であるものがほとんど。したがって、よく調べたわけではないが、江戸人の防火認識というのはただそこを空けておくこと(空地化)によって延焼を防ぐ、という程度のものだったのではないか。そのへんは文献研究で補完する必要がある」という示唆に富むご指摘をいただいた。それにたいして、慶応大学の石川幹子先生、兵庫県立大学の斉藤庸平先生が、「火除地にも樹木が濃密に植えられていたところがある。それは江戸人が、空地性のみならず、緑地性にも防火性能を認めていた証拠ではないのか」と反論し、いずれにしろ文献研究が必要であると指摘された。非常に有意義な意見交換だった。ありがとうございました。