汝復讐するなかれ

牧師室だより　２０１１年１１月２７日　汝復讐するなかれ

　皆さん、吉田敬太郎って人物、ご存知だろうか？この度、若松バプテスト教会から、著書『汝復讐するなかれ』(初版1971年)が再々発行された。私は話にはいろいろ聞いていたが、著書を読むのは初めてだったので、大変興味深く、一気に読んだ。

　さて、吉田敬太郎氏だが、一口で紹介するのは難しい人物である。それほどに波乱万丈な人生であった。1899年(明治32年)福岡県若松市に生まれる。戦前、福岡県会議員2期、さらに衆議院議員当選。1945年3月、軍の弾圧により軍法会議によって投獄される。敗戦により10月出獄。獄中にて聖書と出会い、出獄後、西南女学院でバプテスマを受ける。1949年若松バプテスト教会牧師就任。1951年若松市長当選以後、牧師兼職で3期市長を務める。1963年北九州5市合併により政令市となった初代市長就任。1988年召天。

　敬太郎先生（地元や教会の人たちは敬愛の念を込めてそう呼んでいた）の父親吉田磯吉は「九州一の大親分」と呼ばれた侠客。この磯吉親分、敬太郎先生以上の波乱万丈の立志伝中の傑出した人物なのである。火野葦平の小説『花と竜』に実名で描かれている。映画などにもなった。ちなみに、この火野葦平の甥がペシャワール会の中村哲医師。中村医師は日本バプテスト連盟の香住ヶ丘教会の教会員である。『花と竜』は火野葦平の両親の、これまた波乱万丈の人生を自叙伝風に描いたもので、これに吉田の親分がたびたび登場するという、大変面白い小説である（今でも文庫で売っている）。

　以上、聞いただけでも数奇な人生だと思われるだろうが、そこに「神の摂理」があったと敬太郎先生は書いておられる。敬太郎先生は信者になって間もない上に、神学校も出ていなくてどうして牧師に？また、どうして牧師が市長に？国会議員がどうして軍に弾圧されて投獄？なぜ、聖書に出会ったのか？などなどは読んでのお楽しみ。一部1,000円。5冊あります。私にお申し出ください。