老人(としより)の目(『ある年寄りの雑感』)

「子どもの目」という言葉がありますが、「年寄りの目」で見たり聞いたり感じたりしたことを、気儘に書いていきたいと思います。

家バエや、ノミや蚊のこと

2016-11-08 16:12:00 | インポート
昨日の朝、居間のテーブルの上に、7~8ミリほどの小型のハエ(蠅)がとまっていた。
ここ何年か見かけたことがなかったので、ハエに似た虫かと思って、虫眼鏡を取り出して見てみたら、間違いなく背中が小豆色の家バエであった。そういえば、ハエには随分長いこと会っていなかったなあと思い返した。

一般の家庭からノミ(蚤)やハエ(蠅)が姿を消してから、もう随分時間が経つ。蚊(カ)は、まだわが家には少しいるが、数はかなり少なくなった。蚊が出るということはその地が田舎だということだろうが、見方を変えれば、それだけ自然が豊富に残っているということでもあろう。それにしても、このハエは、どこで生き続けていたのだろうか。

昔は、飼い猫にもノミがいて、猫のノミ取りも、思えば懐かしい仕事であった。猫のノミは、猫に咬まれないように背中や頤の下、あるいは鼻のすぐ上の、短い毛が密集しているところなどに潜んでいる。そこを指で探ってノミをつまみ出し、指でこすって弱らせたやつを、両手の親指の爪でパチンとつぶしてしまう。うっかりすると、ノミが卵を持っているのか、つぶした拍子にその卵らしいものが顔にかかったりした。

人間にたかるノミは、戦後間もなくは生存していたが、そのうちにいなくなってしまった。進駐軍がもたらしたあのDDTで駆除されてしまったのであろうか。それとも、家庭の衛生状態がよくなって、ノミは住むことができなくなってしまったのであろうか。夜中、太もものあたりを微かに動くノミを、そっと手をいれて人差し指の腹で押さえつけて捕らえ、こすりつけて弱らせる。それを指で摘まみ出して、これも両手の親指の爪でパチンとつぶしてしまう。すると、爪にほんの少し血がついたりする。

ハエやノミがいなくなり、蚊もほとんどいなくなって、ハエたたきやハエ取り紙、それにノミ取り粉や蚊帳(かや)などが過去のものとなり、われわれの暮らしは随分快適になったが、長い間、人間と共に生きてきた彼ら小動物が、今や人間に共に生きることを拒否されて姿を消してしまったことは、考えてみれば可哀そうな気もする。