昨日、3月22日の春のお彼岸の中日の午後、居間のガラス戸でガタンと大きな音がした。鳥がぶつかったのだと、すぐ分かった。たまに、透明なガラス戸にぶつかる野鳥がいるのだ。
ガラス戸を開けて庭を見ると、果たしてツグミが地面にころがっている。
そそっかしいやつだな、と思いながら目をつぶってぐったりしているツグミを手にとって、気つけに水でも飲ませてやろうと、庭の蛇口のところで水を嘴に垂らしてやったが、気を失なっているので、飲もうとしない。
これはだめだ、そっとしておいて様子をみるしかないと、コンクリートの三和土(たたき)に小さな人工芝のようなものを敷いて植木鉢が置いてある、そのそばに寝かせておいた。
庭の柘植(つげ)の木で、ヒヨドリが二羽、けたたましく鳴いている。これは事件だ、仲間の鳥が人間に捕まったぞ、とでも叫んでいるのであろうか。
驚かせては悪いと思って、ガラス戸を閉め、隠れるようにしてカーテンの陰からじっとツグミの様子を窺っていたが、なかなか意識を回復しない。目をつぶったままぐったりして全く動かない。体が微かに規則的に動いているから、息はしている。このまま息が続けば助かるかも知れないと、しばらく見ていたが、3,40分経っても一向に気がつく様子がない。
家内が、「もうすぐ帰っていく時期だろうにね」と言う。渡りを終えて故郷へ帰る時期を目前にして、ここで命を落としてしまっては可哀想だ、というのであろう。
ふと気がついてみると、ツグミがコンクリートの上に立ち上がって、こちら向きに立っている。ああ、助かった、と思った。
しかし、立ち上がったツグミは、目を力なく開けてはいるようだが、立ち上がった姿勢のまま一向に動こうとしない。時々、首をゆっくり動かしてはいるが、大体はじっとして立ったままである。
そのまま1時間近くが経った。同じ姿勢でじっとしていたのでは、脚が疲れないかと心配になるが、脚を動かす気配も見せない。コンクリートの上では冷たいだろうに、そのままの姿勢でじっとしている。
あたりがうす暗くなってきた。ヒヨドリも、スズメたちも、もう塒(ねぐら)に帰ったであろう。ツグミは、このあとどうするつもりなのだろう。このままじっと明日の朝までここで過ごすつもりなのだろうか。こちらはツグミがそうしてもいいけれど、そうすると、雨戸が閉められなくなってしまうが……。家内は、ここで夜を過ごしたのでは猫にやられてしまうよ、と心配する。小生は、猫は来ないだろう、とのんきに構えている。
と思っていたら、隣の部屋で家内が雨戸を閉める音を聞いて気をとり直したのか、ツグミが向きを変えて、庭のほうに向き直り、三和土の端に立っている。飛ぼうという気力が出てきたのだ。
「おおい、ツグミが飛び立とうとしているぞ」と、大きな声で家内に知らせたが、やがてツグミは庭の柘植の木に飛び移った。やれやれ、助かった。一時はどうなることかと心配したが、それにしても、意識を取り戻して飛び立つまでに、随分時間がかかったものだ。
お腹も空いたであろうが、今日はもう暗くなってきたから、これから餌を食べるわけにはいかないだろう。水でも飲めばいいが。ツグミはどこで寝るのだろう。……などと、しばらくはツグミのことを思いやったことであった。
ガラス戸を開けて庭を見ると、果たしてツグミが地面にころがっている。
そそっかしいやつだな、と思いながら目をつぶってぐったりしているツグミを手にとって、気つけに水でも飲ませてやろうと、庭の蛇口のところで水を嘴に垂らしてやったが、気を失なっているので、飲もうとしない。
これはだめだ、そっとしておいて様子をみるしかないと、コンクリートの三和土(たたき)に小さな人工芝のようなものを敷いて植木鉢が置いてある、そのそばに寝かせておいた。
庭の柘植(つげ)の木で、ヒヨドリが二羽、けたたましく鳴いている。これは事件だ、仲間の鳥が人間に捕まったぞ、とでも叫んでいるのであろうか。
驚かせては悪いと思って、ガラス戸を閉め、隠れるようにしてカーテンの陰からじっとツグミの様子を窺っていたが、なかなか意識を回復しない。目をつぶったままぐったりして全く動かない。体が微かに規則的に動いているから、息はしている。このまま息が続けば助かるかも知れないと、しばらく見ていたが、3,40分経っても一向に気がつく様子がない。
家内が、「もうすぐ帰っていく時期だろうにね」と言う。渡りを終えて故郷へ帰る時期を目前にして、ここで命を落としてしまっては可哀想だ、というのであろう。
ふと気がついてみると、ツグミがコンクリートの上に立ち上がって、こちら向きに立っている。ああ、助かった、と思った。
しかし、立ち上がったツグミは、目を力なく開けてはいるようだが、立ち上がった姿勢のまま一向に動こうとしない。時々、首をゆっくり動かしてはいるが、大体はじっとして立ったままである。
そのまま1時間近くが経った。同じ姿勢でじっとしていたのでは、脚が疲れないかと心配になるが、脚を動かす気配も見せない。コンクリートの上では冷たいだろうに、そのままの姿勢でじっとしている。
あたりがうす暗くなってきた。ヒヨドリも、スズメたちも、もう塒(ねぐら)に帰ったであろう。ツグミは、このあとどうするつもりなのだろう。このままじっと明日の朝までここで過ごすつもりなのだろうか。こちらはツグミがそうしてもいいけれど、そうすると、雨戸が閉められなくなってしまうが……。家内は、ここで夜を過ごしたのでは猫にやられてしまうよ、と心配する。小生は、猫は来ないだろう、とのんきに構えている。
と思っていたら、隣の部屋で家内が雨戸を閉める音を聞いて気をとり直したのか、ツグミが向きを変えて、庭のほうに向き直り、三和土の端に立っている。飛ぼうという気力が出てきたのだ。
「おおい、ツグミが飛び立とうとしているぞ」と、大きな声で家内に知らせたが、やがてツグミは庭の柘植の木に飛び移った。やれやれ、助かった。一時はどうなることかと心配したが、それにしても、意識を取り戻して飛び立つまでに、随分時間がかかったものだ。
お腹も空いたであろうが、今日はもう暗くなってきたから、これから餌を食べるわけにはいかないだろう。水でも飲めばいいが。ツグミはどこで寝るのだろう。……などと、しばらくはツグミのことを思いやったことであった。