千葉市にお住いの樋口直美さんという主婦の方が書かれた、「誤作動する脳」という本が医学書院という所から出て評判になっています。出版社名や本のタイトルを見ると、何やら難しい医学書?と思ってしまいますが、本を読むとそんな先入観が一気に吹き飛びます。ある日突然、嗅覚や味覚を失い、幻視や幻聴に悩まされ、動かないはずのものがチョロチョロ動いて見えてしまう、時間の感覚もあいまいになる、料理を作っても味がわからない、そんな体験をした(今もしつつある)一人の主婦が日々の生活を描いたものですが、「調理に対して頑なな抵抗感を示していた夫」について「『妻任せ』という方は、不老不死の奥様をお持ちなのでしょうか」と腹を立てるところなど、クスッと笑えるシーンもあります。ちなみに、この怒られているお連れ合いは、市民運動家の樋口博康さん、習志野市民でもご存知の方が多いと思います。今は一緒に台所に立ってくれているそうです(笑)
「レビー小体型認知症」(認知症というより、意識障がい、と言った方が良いかも知れませんが)、1995年に知られるようになった新しい疾患で、ジョン・レノンの妻オノ・ヨーコさんも患者ではないかと言われています。まだわからないことも多いようです。著者の樋口直美さんも、さんざん悩み、格闘したあげく、単なる「脳の誤作動」、これと上手く付き合って人生をエンジョイしよう、と今は考えておられるようです。
柳田国男の「遠野物語」に出てくる座敷わらしも、昔の人は「幻視」だなどと思わずに、「吉祥の訪れ」、めでたいことだととらえた話がこの本にも出てきますが、「幻」を「病」ととらえ、その患者を社会から排除する、そういう不寛容な今の社会こそ「病んでいる」のかも知れません。
いろいろな読み方ができる本です。新聞での書評も面白いので、ブログの後半に掲載しました。是非ご一読ください。
(樋口直美さんのホームページです。下の画面をクリックすればご覧になれます)
(NHKの「ガッテン!」で放送された内容の一部が下のサイトでご覧になれます)
(5月4日付東京新聞)
(4月26日付毎日新聞:認知症啓蒙色のオレンジのスカーフを付けた写真は、著者のお連れ合いが撮影したものだそうです)
(5月2日付毎日新聞:「アジア主義」「保守と立憲」などの著者、中島岳志さんの書評です)
(4月25日付朝日新聞:「紋切型社会」「日本の気配」などの著者、武田砂鉄さんの書評です)