隠花の飾り | ||
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読 了 日 | 2012/04/10 | |
著 者 | 松本清張 | |
出 版 社 | 新潮社 | |
形 態 | 文庫 | |
ページ数 | 218 | |
発 行 日 | 1982/08/25 | |
ISBN | 4-10-110949-4 |
ある短編集の1冊。僕は松本清張氏の短編が好きだ。本書の巻末には珍しく著者のあとがきがあって、ここに収められた短編はどれもが、雑誌掲載のための原稿用紙30枚という指定の長さだそうだ。しかし、「30枚でも100枚にも当たるものを志向した」とある。
その通りになっているかは、読者の判断に俟つ、となっているが、どれもが僕は素晴らしい短編だと思っている。100枚だろうが300枚だろうがそうした長編にはない味わいがある。逆に30枚に収めるという技術と、ストーリーの組み立てはなまなかにできるものではないだろう。
前にも書いたが、松本清張氏の作品はドラマや映画になったものが数多くある。この中にもいくつかはドラマ化されているだろう。
清張氏が彼の地に旅立ってから、すでに20年になろうとしているが、作品の映像化はとどまるところを知らぬように、次々とテレビ局は清張ドラマを制作している。僕はその中でも短編を脚色して2時間ドラマにした中にも、傑作といっていいものがあると思っている。もっとも、映画やドラマが傑作かどうかは、原作とはかかわりのないところで評価されることもあるのだが。
ここに収められているのは下記の初出でわかるように、全部で11篇だ。
すべてが映像向きだとは言えないが、脚色の仕方では2時間ドラマにもなりうるものがいくつもあると思う。僕のこの読書記録は、「ミステリー読書雑感」と謳っているから、読む本のすべてをミステリーとして読んでいるが、中にはどうしてもミステリーとは呼べないものも含まれてくる。
本書の中にも、謎があってそれが最後に明らかになるという、ミステリーの形になっていないものも数編あるが、それはそれで小説として味わい深いものがあって、唸らされるのだ。
本を読んでいるときに、僕は登場人物や、その舞台となっている場所や土地に、内容とは関係のない思いが突如として湧いてくることがままある。この中では「誤訳」で、デンマークはコペンハーゲンを舞台としたエピソードが語られる部分があって、行ったこともない場所に僕は切ないような憧れを感じる。
なぜだかわからないが、多分過去に読んだ小説や、あるいは見た映画やドラマの記憶の部分に触れたのかもしれない。
明亜呂無氏の解説では、各作品のテーマは女の愛、と言っているが、そう言われればそう受け取れないこともないが、僕には70歳を過ぎた今でも、“女の愛”などといわれても、ピンとこないこともあって、まあ自分なりの受け止め方をしている。 好きか嫌いかという範疇では、この中で「愛犬」、「見送って」、「誤訳」、「百円硬貨」、「再春」などがミステリーとして面白く読めて好きだ。特に「百円硬貨」は省略のテクニックと言うか、簡略化されたストーリーが見事だと感じる。その省略された部分を脚色によって膨らませれば、2時間ドラマにもなりうると思う。よく言われる「どんでん返し」に似た結末が生きてくる。
# | タイトル | 発行月・号 |
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1 | 足袋 | 1978年1月号 |
2 | 愛犬 | 1978年2月号 |
3 | 北の火箭 | 1978年3月号 |
4 | 見送って | 1978年5月号 |
5 | 誤訳 | 1978年6月号 |
6 | 百円硬貨 | 1978年7月号 |
7 | お手玉 | 1978年8月号 |
8 | 記念に | 1978年10月号 |
9 | 箱根初詣で | 1979年1月号 |
10 | 再春 | 1979年2月号 |
11 | 遺墨 | 1979年3月号 |
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